Dining Room

食べるという行為はどこでだってできる。スタンド式の店があるくらいだから立って食べられなくないし、ベッドに腰掛けてスープをすすることだって可能だ。

それでもダイニングルームという飲食専用の空間が家にあるのは、食事をとる時間が暮らしにおいてとても重要であることを物語っている。

まだ頭が働かない朝、活動的な昼、癒しを求める夜…。どんな時でもその場所は清潔であるべきだし、そこを囲うものにもこだわりたい。

Key Items for Dining Room

  • 自分のために着るもの

    自分のために着るもの

    京を機に一人暮らしを始めてからチェストにしのばせるようになったもののひとつに、エプロンがある。もともと料理は嫌いではなかったけれど、母親を手伝って実家の台所に立つ際には母親のそれを借りていたから、マイ・エプロンがなかったのだ。

  • 食卓の名脇役

    食卓の名脇役

    い頃から実家のダイニングテーブルには、あるお菓子がいつも置いてあった。棒状のビスケットで、その名も「アスパラガス」(さほど形が似ているようには思わないが……)。手でつまんで食べると、ぽりぽりという歯触りの良さと練り込まれた胡麻の香ばしさがやみつきになってしまう。

  • 料理上手のテーブル

    料理上手のテーブル

    ある年上の女性が、自宅での食事に招いてくれた。地中海に位置するサルデーニャ海の島々を旅してきたので、その土産話で盛り上がりましょう、ということだった。  洗いざらしの白いテーブルクロスがかけられたダイニングテーブルにつくと、現地の名産というカラスミや数種のチーズ、そしてワインが並べられ、たちまち旅の食卓が再現された。これに旅の話も加わって、ワインが進む進む。

select:YUKO ANDA

料理の合間に読んで
“美味しい”本

  • イケメンホストを読み解く6つのキーワード BOOK_01

    イケメンホストを読み解く6つのキーワード

    著 関修

    フランス現代思想や美食を専門とする著者が、ホスト文化を丁寧に語りつくす異例の本。今や一般のカルチャーになりつつあるホスト文化を日常の一コマとして捉えた眼差しは、私たちの私生活へと大いに置き換えられる。思考の冒険ともいえる一冊。煮込み料理の合間などに、お気に入りの椅子に腰掛けて、いつもよりちょっといいワインをいいグラスで飲みながら読んでほしいです。

  • ふなずしの謎 BOOK_02

    ふなずしの謎

    編 滋賀の食事文化研究会

    滋賀県出身の著者が、同地発祥の伝統的な発酵食品、ふなずしを広い視点で語った本。ふなずしは日本の米文化のルーツ。著者が日本に稲作が入ってきた道を遡る旅に出て、様々な発見をしていくくだりは読んでいるこちらの胸まで熱くなります。同じ文化圏の仲間とお互いの共通点に喜び、異なる点を称え合う、そして、やっぱり滋賀のふなずしが一番だ、と結論づけるその誇りが素晴らしい。

  • ペルシア王は「天ぷら」がお好き? BOOK_03

    ペルシア王は「天ぷら」がお好き?

    著 ダン・ジュラフスキー/翻訳 小野木明恵

    コンピューター言語学を駆使しながら、料理本や老舗のメニュー、またウェブ上のレストランレヴューなどを解析して、料理の語源と味でたどる食の人類史。私たちは誰もが移民であり、孤立した文化はないとすると、文化、民族、宗教が接する混沌とした境界に生まれる料理にロマンを感じます。と同時に、自分の日々の何気ない食生活さえも歴史に参加しているということができます。

  • 大江戸美味草紙 BOOK_04

    大江戸美味草紙

    著 杉浦日向子

    寿司、蕎麦、天ぷら、どじょう、初鰹など、食べ物に関する川柳を入り口に、江戸の食文化をたのしく考察した一冊。見事なまでに合理的な江戸の暮らしぶりは、今も真似したくなるアイデアが多く詰まっている。今日は何も作らないぞ、日本酒と漬物だけでちびちびやるんだ!という気分のときに読みたい本。あるいは、日向子さんの快活な語り口に邪魔にならない食べ物をぜひおともに。

  • 水と小麦だけのパン種でつくる酵母パン BOOK_05

    水と小麦だけのパン種でつくる酵母パン

    著 林 弘子

    小麦は健康のために控えている、とか、普段パン作りはしない、という人でもたのしく読める酵母パンの本。酵母パン作りの手順を読むとおのずと発酵や小麦の歴史を学べ、また小麦は世界最古にして今もなお最大の食糧である所以に気づかされる。通常のレシピ本とは違うのは、作り方を追っていくと著者の追体験をしている感覚になること。予備知識のない方にもおすすめしたい一冊。

PROFILE

按田優子
東京生まれ。料理家。「按田餃子」店主。気候の特徴を利用した保存食に興味がある。著書に『男前ぼうろとシンデレラビスコッティ』、『冷蔵庫いらずのレシピ』、『たすかる料理』など。