音SHIPS −注目アーティストの友だち巡り・OKAMOTO’S(オカモトズ)・オカモトショウ編− 音SHIPS −注目アーティストの友だち巡り・OKAMOTO’S(オカモトズ)・オカモトショウ編−

音SHIPS −注目アーティストの友だち巡り・OKAMOTO’S(オカモトズ)・オカモトショウ編−

毎号、ゲストの方にお友だちを紹介いただき、注目アーティストを数珠つなぎにしていく本企画。第22弾は、Yogee New Wavesの(ヨギー ニュー ウェーブス)のボーカル&ギターを務める角舘健悟さんの紹介で、OKAMOTO’S(オカモトズ)のオカモトショウさんが登場。デビュー10周年を迎え、武道館ライブも成功を収めた現在の心境など、充実の内容となっています!

注目アーティストの友だち巡り・OKAMOTO’S(オカモトズ)・オカモトショウ編

バンドを始めた頃は同世代がほとんどいなかった

ーーYogee New Wavesの角舘さんからのご紹介ということで、今日はよろしくお願いします。まずは、おふたりの出会いについて教えてください。

オカモトショウ(以後、ショウ)  出会いはすごく昔!大岡山の「ピークワン」です。

ーーそのライブハウス、角舘さんの話にも出てきました。若いバンドマンが集まるとか。

ショウ メジャーデビューする直前、年130〜150本くらいライブをやっていた頃ですね。彼は当時ドラムをやっていたんじゃないかな。俺はカッコつけていた時期なんで、プライベートで遊ぶほどではなかったですけど、レイジはよく遊んでいました。レイジの家に行くと、「カクダテシンゴ」と名前の書かれた水筒があったから(笑)

ーー彼らが作る音楽にはどういう印象がありますか?

ショウ 「Yogee New Wavesってバンドを組んだらしいよ」と聞いて、そこからみるみるうちに人気になったイメージ。音源を聴いたときは「かっこいいじゃん!」っていう。「いつか対バンやりたいね」なんて話になるくらい、お互いをリスペクトする間柄です。

ーー過去、この連載に登場いただいた方から、何度かOKAMOTO’Sさんの名前が出てきているんです。

ショウ へぇ〜、嬉しいな。

ーー豊作ともいえる世代で、良いミュージシャンが多いですよね。

ショウ 俺らは17歳からライブハウスに出始めたので、当時は「同世代がほとんどいないな」と感じていたんです。その後、ズットズレテルズで2009年の「閃光ライオット」(10代のアーティストのみが出演するロックフェス)に出て、挫・人間(ザ・ニンゲン)とかいくつかのバンドに出会ったのが同世代に出会った最初。

注目アーティストの友だち巡り・OKAMOTO’S(オカモトズ)・オカモトショウ編

ーーOKAMOTO’Sは、19歳でメジャーデビューしていたりと経歴が長いですもんね。

ショウ でもこの2〜3年で、それこそYogee New Wavesとか、RyofuのいるKANDYTOWN、Suchmos、AAAMYYYちゃん、Tempalayのボーカルの綾斗くんとか、同世代がうわっとシーンに出てきて嬉しいし楽しいですね。

ーー皆さんつながっているんですか?

ショウ もともとはそんなにつながっていないですけど、最近はお互いのライブを観に行く機会も増えてそこで仲良くなったり。それぞれ文化圏が微妙に違うので、フェスだと会わないんですよ。だから、友だちの友だちとか、知り合いのデザイナーさんと仲が良いとか、そうやってつながりができている感じです。

Dancing Boy

『さんピンCAMP』のタイミングが6歳

ーー確かに、方向性はちょとずつ違いますよね。でも、どこか根っ子の部分は近いのかなという気もします。子どもの頃はどんな曲が流行っていましたか?

ショウ 自分でCDを買うようになる前は、ZeebraとかDragon Ashとか宇多田ヒカルとかsweetboxとかですね。『さんピンCAMP』(1996年に日比谷野外音楽堂でおこなわれたヒップホップの伝説的イベント)のタイミングが6歳なんです。当時、街では1992〜93年頃にヒットしたヒップホップやR&Bが流れているイメージ。ロックだと、ニルヴァーナやレディオヘッド、レッドホットチリペッパーズとか。

ーー90年代の音楽が無意識下に刷り込まれているんですね。

ショウ ポップスだと、モーニング娘。の全盛期。テレビ番組の『ASAYAN』を遅くまで起きて観てたり(笑)。中学になると映画『8 Mile』が流行って、リップスライムやキック・ザ・カン・クルー、ケツメイシがヒットを連発していました。だから、うちの学校はラッパーになる人が多かった。KANDYTOWNのメンバーの1/3は、俺らと同じ出身。Ryofuは違う学校だけど、休み時間にサイファーしに来るみたいな。バンドをやっている人は少なかったですよ。

ーーそこからOKAMOTO’Sのメンバーだけは、ローリング・ストーンズやビートルズ、村八分といった60〜70年代の音楽を聴きまくったわけですよね。そういう情報に関して、誰かリーダーみたいな存在がいたのですか?

ショウ みんなで楽器を始めたタイミングでいろいろ聴き始めたんです。メンバーとCD屋さんにで行って、名盤100みたいなコーナーの前で「俺はドアーズ」「俺はレッチリ」・・・という感じで、少ないお小遣いから買っていました。

ーーレンタルはせず?

ショウ レンタル屋さんが巨大化していくちょっと前なんですよ。なので、古いロックがしっかり揃っているお店は地元になかった。

ーー気軽に借りられないというのも、熱中した原因のひとつかもしれないですね。

ショウ それもありますね。あとは、みんなで下北沢の古本屋さんに行って、音楽誌『クロスビート』のバックナンバーから情報を得たり。西新宿のブートレコード屋さんを回ったり。ちょっと変わった中高生でした。

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この3〜4年で、最新のファッションを気にするようになった

ーー好きな音楽が変わるにつれて、ファッションも変化していきましたか?

ショウ そうですね。学校が私服だったので、それぞれの文化圏がファッションに出やすい。そうでないと説得力がないとも思っていました。ストーンズの昔の写真を見つけて、似たようなジャケットを買いに古着屋を巡ったり、ニルヴァーナに憧れていたときはモヘアのカーディガンを探したり。一時期、カート・コバーンの服を見るだけで何年のライブか分かりましたもん(笑)

ーーカート・コバーンは真似したくなりますよね。やはり古着屋が多かったのでしょうか?

ショウ 古着屋ばっかりですよ。シカゴとかハンジローとか、あとは下北沢の500円均一のお店とか。最新のファッションを気にするようになったのは、ここ3〜4年です。意外とみんなファッションを気にしているんだと気づいてからですね。このままだと懐古趣味になる気がして、今のものを知ることも大事だと思ったんです。

ーー「懐古趣味になる」なんて思うんですね。

ショウ リアルタイムを追いかけてこなかったので、このまま行くとそうなってしまうというか。それこそ同世代のバンドがたくさん出てきて、その周りにいる子たち含め、意外に「今のこと」に関心があるんだなって。知ったうえで無視する、または知ったうえで影響を受ける、そういう姿勢は大事かなって。そこからちゃんと勉強するようになったんです。

注目アーティストの友だち巡り・OKAMOTO’S(オカモトズ)・オカモトショウ編

ーー今日のファッションについて教えてください。

ショウ コンセプトみたいのはないですけど、トップスは「チャールズ・ジェフリー ラバーボーイ」というイケイケの海外ブランドです。パンツは「カイダン エディションズ」という日本の怪談シリーズに影響を受けているイギリスのブランド。ファッション好きの友だちからいろいろ教えてもらって楽しんでいます。

今はすごく健全な気持ちで曲がつくれている

ーー今年でデビュー10周年。年齢に反して、経歴的には中堅の域に入ってきました。

ショウ それが良かったと思えるように頑張らないといけない。フレッシュなもののほうがパワーがあるし、みんなが飛びつくと思いますけど、その中でずっと関心を持ってもらえたら嬉しいです。

ーー作詞をされることが多いですが、他のバンドの詞が気になったりもしますか?

ショウ 気になるのでいろいろ聴きますよ。最近はラッパーの歌詞が良過ぎる。勝ち負けではないですけど、負けていられないなと。同じくらいのクオリティで書きたいですね。

ーー作曲に関してはどうですか?

ショウ 俺らのバンドはかなりの働きものだったんです。デビューから1年の間にアルバムを3枚出したり、常に締め切りがある状態で曲を書いてきた。それが、武道館でのライブを終えてからは、いつに何を出すと決めずに曲を書き始めていて、今すごく新鮮な状況です。

ーー締め切りが決まっていない楽曲制作は、ほぼ初めての体験ですか?

ショウ バンドを組んで、学校の音楽室で練習していたとき以来です。だから、めちゃくちゃ健全な気持ちでやれていますね。古着ではなく今のブランドを勉強しているのと同じで、リアルタイムで自分が何を感じているのか、それをどう楽曲に封じ込めるのかを大事にしています。どんな仕事もそうだと思いますけど、続けていくことで肩の力が抜けてくる。極端なことを言えば、「扉を蹴って大空に羽ばたいていくんだ!」という歌詞に対して、「そんなことしないよね?」と言えてしまう状態。

ーー先ほど、ラッパーの歌詞が響くと仰っていたのは、「今」という瞬間を切り取ってストレートに表現するみたいなことですか?

ショウ まさにそうです、リアルで自然体なシーンを想像させられるものって良いですね。その中にもカッコつけられる箇所はあると思う。それと、俺らはあまりにも早くメジャーで活動してしまって、その間に、音楽が聴かれる環境が大きく変わったのも、「今」が新鮮に感じられる理由かもしれない。

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慢心せず、このままやっていくことが俺たちの正しい道

ーー音楽に限らず、すべてのビジネスが激変しましたよね。

ショウ デビューした2010年頃は、アニメのタイアップをやれば売れるとか、CMに使われると売れるとか、そういう方程式のようなものがまだ残っている時代だったんです。俺らはその恩恵をあずかっていないですけど(笑)。でも、インターネツトの発達やサブスクリプションとかで、2015年頃から音楽ビジネスが大きく変わっていった。さらに、同世代のミュージシャンも増えてきたなかで、自分たちがパイオニアとして進むことができる道を作らなくてはいけない。それができるチャンスでもあるし、古い体制にしがみつくと終わっていくんだなという感触もある。

ーー自分たちの作品をサブスクリプションで配信するかどうかは、議論になりましたか?

ショウ 「やるっしょ!」って感じでした。攻めた姿勢でやらないのはいいけれど、そこから逃げるのは良くない。俺の場合は、いまだにお金を払って、自分の足で買いに行くのも好きですけど、それを誰かに強制する気はないです。俺だってApple MusicやSpotifyで聴きますし。今を生きる者として、リスナーの欲するものをやれることが一番自然かなって。その感覚はわりとメンバーで一致していたと思います。

ーー激動の時代を10年間走り続け、ひとつの区切りである武道館が終わって心境の変化はありましたか?

ショウ 基本的には変わっていないです。俺らはジェット機のような駆け上がり方ではなく、のろのろと歩いて辿り着いたようなものですから。この時代に、俺らを愛してくれる人を地道に見つけて、それが武道館につながったことが嬉しかった。それと、武道館を終えてみて、全然まだ先があるなと思えましたね。いい意味での余裕というか伸び代を感じました。

ーーそれは素敵なことですね。

ショウ 音楽を作る上での価値観は、昔からほぼ変わっていないんです。でも、バンドを長く続けていると、「ヒット曲がない」という影や、妙な焦りも生まれてくる。その一方で、自分たちがやっていることは間違っていないという確信もあった。そんな中で武道館を経験して、不安みたいなものは抜けていきましたね。慢心せず、このままやっていくことが俺たちの正しい道なんだって。

Dreaming Man

PROFILE

注目アーティストの友だち巡り・OKAMOTO’S(オカモトズ)・オカモトショウ編
オカモトショウ | SHO OKAMOTO

1990年生まれ、ニューヨーク出身。
OKAMOTO’Sのボーカル担当。
2010年3月、「S×SW2010」に日本人男性としては最年少での出演を果たす。そのまま全米6都市を廻るツアーをおこない、5月に1st.アルバム『10’S』でメジャーデビュー。その後もオーストラリアツアーや夏フェスなどに出演。11月には2nd.アルバム『オカモトズに夢中』、翌年9月には3rd.アルバム『欲望』と、ライブを続けながらもアルバムを立て続けにリリースする。
2013年にアルバム『OKAMOTO’S』を発表。
2014年のデビュー5周年には、5thアルバム『Let It V』、豪華アーティストとのコラボによる5.5thアルバム『VXV(ファイブバイファイブ)』を発表。ツアーファイナルでは日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブをおこなった。
2016年には、TVアニメ「デュラララ!!×2承」のオープニングテーマ『HEADHUNT』、映画「ジヌよさらば」主題歌『ZEROMAN』、「日清カップヌードル」TVCMソング『Dance With You』と立て続けに大型タイアップを決め、ロック・オペラを現代版に昇華させたアルバム6th『OPERA』もリリース。
2017年、7thアルバム『NO MORE MUSIC』を発売し、中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを成功。
2019年、8thアルバム『BOY』を発表し、7月には日本武道館でのワンマンライブを成功させる。
2020年5月には、「90'S TOKYO BOYS in HALL “History”」と称し、東名阪にてホールTOURの開催が決定している。
その他、2018年よりNHK教育テレビ「ムジカ・ピッコリーノ」のベルカント号・船長、ジュリオとして出演中。