TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家) TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)

TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」
ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)

トラベルカルチャー雑誌 『TRANSIT (トランジット)』の林編集長が、「旅のお土産」をテーマに、毎号ゲストの方と対談する連載企画。今回は、かつての同僚であり、現在はフリーランスの編集者・フォトグラファーとして活躍する小林昂祐さんが登場。奥様が店主を務める、写真集を中心とした吉祥寺の書店「book obscura(ブックオブスキュラ)」でお話を伺いました。

TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)

会社員を辞めて『TRANSIT』編集部へ

林 今では編集者のみならずフォトグラファーとしても活躍されていますが、小林くんは2009年から5年半ほど『TRANSIT』編集部に在籍されていて。編集部にアポなしで履歴書を持ってきたという話はもはや伝説ですけど(笑)

小林 あははは。怪訝そうな顔をした林さんが扉を開けてくれたのを覚えています。

林 普通、アポなしで来ないですよ。しかも、当時は会社員だったのに。

小林 それまでは、メーカーで海外の展示会に出展するチームにいたんです。就職のときから、海外に行く仕事をしたかったんですよね。その後、『NEUTRAL』のアフリカ号を見つけて、こういう仕事がしてみたいと思ったんです。

林 もともと雑誌が好きだったとか?

小林 そうですね、写真や文章の世界に憧れがありました。

林 「旅」に興味を持つようになったのはいつ頃からですか?

小林 高校を卒業してすぐに西表島に行ったのがきっかけです。というのも、高校の生物の先生が西表島に通われている方で、授業中も島で採ってきた生き物を並べて、現地の話をよくしていたんです。

林 へぇ〜、それは面白そう。

TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)

生物の先生の影響で、西表島に

小林 高校生って野遊び的なものが一度落ち着く時期じゃないですか。僕も、当時は軽音部に入っていたり、自然に触れる機会がほぼなくなっていた。小さい頃はザリガニ釣りとかが好きだったんですけどね。

林 でも、小林くんは東京出身ですよね。

小林 実家が三鷹にあったのですが、住んでいた社宅が大正時代の建物だったんですよ。森もたくさんあったので、タヌキやキジもいましたし、家のトイレにヘビが出たこともあって。

林 東京とは思えない・・・。

小林 だから根っ子には自然があるんです。そんな生い立ちなので、「西表島は日本のアマゾン」とか言われると興味が生まれて、先生にはずっと「連れて行って欲しい」と頼んでいたんです。「卒業したらね」ということで、高校を卒業してすぐに友だちと先生の3人で行ったら、どハマりしてしまった。

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林 その後はどんな旅が多かったですか?

小林 西表島にはこれまで10数回行っています。あと、大学時代はバックパッカーになりきれないような、日数の少ない旅が多かったですね。タイやチベット、あとはフィリピンにバスで行ったり。アジアは文化的にも共感できて好きなんですよ。それ以外だと、アメリカのハイキングカルチャーも好き。日本は昔からいろいろと影響を受けてきた国なので、「これがオリジナルか!」みたいな気づきも多くて。山が少ない国なので、歩いて自然を旅する感じも肌に合うんです。

林 やっぱり自然が多い場所に足が向くタイプなんですね。

小林 そうですね。大学時代はとくに「ここのアレが見たい!」と、ピンポイントで目指すことが多かったです。宿がない場所も多くて、同じバス停で降りた人に「ここには宿はないけど、どうするの?」と言われて、「泊まってく?」って感じで泊まったり。

小さいものをいっぱい集めるほうが好き

TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)
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林 そうなると、旅のお土産を買うのも難しそう。

小林 山に行ってしまうとお土産屋さんはないですね。でも、山小屋でピンバッヂやステッカーを買うことは多いです。あとは旅の必需品でもある地元の地図。日本では買えないですし、僕は同じ場所に何度も行くことが多いので大切に保管しています。地図を眺めていると記憶が蘇るので、それもまた楽しい時間。地図は情報量がすごいので新しい気づきもあります。

林 あざらしとか、かわいい動物の置物もありますね。

小林 これはロシア連邦のブリヤート共和国、バイカル湖にいるバイカルアザラシ。いわゆるお土産物屋さんみたいな場所で、掘り出し物を探すのも好きなんです。気づくと動物ものが増えていて。スノードームも集めたいんですけど、意外に動物モチーフが少ないんですよ。

TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)
TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)

林 小さいものが多いのは、荷物を考慮してですか?

小林 それもありますけど、小さいものをいっぱい集めるほうが好きなのかもしれない。あとは、本屋さんがあれば必ず入ります。釣りやアウトドアの古い雑誌とかはよく買いますね。たまに、山で拾いものをすることもありますよ。大きな松ぼっくりとか。これが100個くらい落ちていて、当たったら大変だろうなって(笑)

340ページの『NatureBoy』をひとりで作り上げた

TRANSIT (トランジット) 林編集長の「旅の お土産、なに買った?」ゲスト:小林昂祐(編集者・写真家)

林 そんな小林くんが昨年創刊したのが、『NatureBoy(ネイチャーボーイ)』。340ページもある西表島の特集を、写真、デザイン、原稿まですべてひとりでやっていて、イラストまで描いている。

小林 全部自分でやりたいというより、そうなっちゃった。一部、寄稿してもらっているページもありますよ。

林 それにしてもすごい。

小林 4年かかっちゃいました(笑)

林 創刊号は高校の先生にも贈ったんですか?

小林 贈りました。蝶々が好きな方なんですけど、「この蝶々はもう西表島にはいないよ」って。温暖化の影響で、70年代を最後に見つかっていないらしいのですが、「これを見つけたら200万円で買う」って(笑)。

林 あははは、本の感想よりそっちの興味しかないのがいいですね。

小林 あとは、島の人が喜んでくれたのは嬉しかったです。

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林 『Nature boy』の第2弾はいつ頃になりそう?

小林 今年の夏には出したいんですけど、いま半分くらい組んだところで納得行かずにバラした状態。次は、ヒマラヤとモンゴルの特集を予定しています。この前モンゴルに行って、もっと面白そうなところを見つけてしまったので、「もう一回行きたいな」とモヤモヤしてますね。

林 創刊号に4年かかったのに、ペース早くない?

小林 今後は年1回発刊したいんですよ。毎回作りは変えてこうと思っていて。装丁は近い感じにしつつ、ページ数や紙、写真の入れ方を変えたり・・・。全部文字だけの号も作ってみたいし。

林 アイデアが溢れているんですね。次号も楽しみにしています。今日はありがとうございました。

PROFILE

小林 昂祐 | Kosuke Kobayashi

1985年東京生まれ。編集者、写真家。10代から旅をはじめ、秘境や辺境と呼ばれる地のフィールドワークに傾倒。TRANSIT編集部に在籍中、「アウトドアを科学する」をテーマにした雑誌『terminal』を創刊。2014年独立。2018年秋、長年通いつづける西表島を特集した『Nature Boy』を発刊。吉祥寺の写真集専門書店〈book obscura〉ディレクター。

林 紗代香 | Sayoka Hayashi

1980年岐阜県生まれ。編集者。『NEUTRAL』に創刊時より参加。その後いくつかの雑誌編集部を経て、『TRANSIT』に参加。最新号、ネパール特集が発売中。
http://www.transit.ne.jp/