トラベルカルチャー雑誌 『TRANSIT (トランジット)』の林編集長が、「旅のお土産」をテーマに、毎号ゲストの方と対談する連載企画。今回は、世界40カ国以上を旅した経験のあるベテランながら、気に入ったものは迷わず買うというピュアな心を忘れないフォトグラファーの加治枝里子さんが登場。あまりにも量が多いので、ご自宅にお邪魔しちゃいました。
幼少の頃から家族と一緒に旅をしていた
林 加治さんはいろいろな国に行かれているイメージがありますが、旅はいつくらいから行かれるようになったのですか。
加治 物ごころがつく3歳頃から6歳まで家族でNYに住んでいたこともあって、デスヴァレーやグランドキャニオンに行ったり、ヨーロッパ周遊もしていました。東海岸だとヨーロッパも近いですから。
林 ご両親が旅好きでいらしたんですね。
加治 そういうイメージはないんですけど、小さい頃からいろいろ連れて行ってもらっているんですよね。
林 幼少期にそういった環境で育つと、海外へ行くハードルが低そう。20代の頃はフランスで数年間暮らしていたそうですね。
加治 それはあるかもしれない。高校生の頃に夏休みのホームステイでロンドンに行ったりしました。ほかにも、母親と一緒にマレーシアの小さな村で高床式住居にホームステイしたり。テレビ番組の『世界ウルルン滞在記』みたいで楽しかったです。
林 アメリカやヨーロッパに住んだ経験がある人の場合、「旅好き」と言ってもアジアやアフリカは苦手だったりするパターンも多いんですが、そこは大丈夫なんですね。
加治 私はどこでも大好き(笑)。同じ国に何回も行ったり、長期滞在することもありますけど、これまでにだいたい40カ国以上は行っていると思います。
地元の人との出会いが大事、そのための宿選び
林 お仕事で海外へ行かれる機会も多いと思いますが、プライベートの場合はどうやって行き先を決めているんですか。
加治 旅先で出会った人や、仲のいい友達が「ここはすごく良かったよ」と話していた場所が多いですかね。頭の中に、日頃から気になっている国や地域のリストがあって、そこから選ぶことも多いですね。アイスランドもそうだし、メキシコの地底湖とかも。
林 海外に住んでいるお友だちも多そうですね。
加治 最近、日本の女友だちが海外に嫁いで行くことがすごく多くて(笑)。旧知の仲間がベルリン、LA、インドにいるので、嫁ぎ先に遊びに行ったりもします。ベルリンに住んでいる親友は子どもがいるので、家族で毎年のように遊びに行っています。
林 旅先ではどんなことをされているのですか。
加治 友だちがいる場合は、地元の人ならではのところに連れて行ってもらいます。ベルリンの廃墟になった遊園地とか、ガイドブックに絶対に載っていないところに行けたりして面白いんですよ。知り合いがいない場所でも、Airbnbのようなところや、民宿のような場所に泊まって、なるべく地元の人に出会えるようにしています。だから、宿選びは大事にしています。
林 生活感のある場所を選ぶのがポイントなんですね。
加治 林さんが編集長をしていた雑誌『BIRD』で私がトルコに単独取材に行ったときも、カッパドギアの外れにある村で地元の小さな男の子が村を案内してくれたっていう話を覚えていますか?ああいうことはよくあります。
林 確かにそんなこともありましたね! 加治さんは誰とでも仲良くなれるのがすごい。
加治 最近は私よりも娘のほうが積極的で。元々人見知りをしない子なんですけど、1歳でタイに行ったときもカレン族の村でフツーに馴染んでいて。同じ歳の子と仲良くなって、その子の家にお邪魔することになったり。そうやって、ローカルの深いところに行くのが好きなんですよ。
スウェーデンのお皿や、チュニジアのグラス、ギリシャの栓抜きなど世界を旅して集めた食器。最近のお気に入りは、トム&ジェリーのロゴ入りカップ。アメリカの各地にあるようで、キャラクターが描かれていないものを探しているとか。
チュニジアの絨毯、トルコの座布団、そしてアンティークの額は世界各国でお気に入りを見つけては購入している。
後悔しないために、気に入ったら即買い!
林 加治さんの旅は体験重視型なのに、お土産もしっかり買われますよね。
加治 お土産探しも旅の楽しみのひとつなんです。でも、毎回買いすぎてしまって、いつもスーツケースが重量オーバー。ドキドキしながらも、必ず一度はチェックインカウンターでチャレンジするんですよ。たまに見逃してくれる人もいるから(笑)。ダメなときは、パリの空港であれば郵便局に行きます。5kgで45ユーロほどとそこまで高くなく送れるので。
林 さすが詳しい(笑)
加治 でも、パリ以外はあまり郵便局がないような印象です。この前は仕事で一緒に行ったライターさんのスーツケースに入れてもらいました。ほんと迷惑ですよね(笑)
林 長期の旅の初日に、そこそこ大きめだけど気に入ったものがあった場合も買っちゃいますか。
加治 気に入ったら買います。旅だと引き返すことがほぼできないじゃないですか。戻るはずが戻れなかったときの後悔が大きいので。「たかが3ドルだったのに!」とか、ケチった自分を恨む(笑)
林 さすがです。何度も行かれている場所でも、たくさん買うんですか。
加治 買っちゃいますね。前回と同じお店に行って、評判が良かったものを購入したり。
林 すべてが自分用というわけじゃないんですね。
加治 ほとんどがプレゼント用。なので、小さくて軽くてたくさん買えるものを狙っています。赤ちゃん用は、とりあえず買っとくみたいな(笑)。出産祝いとして、ヨーロッパで買い溜めすることが多いですね。かわいい靴とかがたくさん見つかるんですよ。
林 そうなると日本ではあまり買い物はしないですか。
加治 日常生活ではあまり買わないですね。ハンドソープとかの日用品も日本にないものが欲しいので。だから、海外に行ったらオーガニック系の薬局によく行きます。デザインがかわいいものが多いんです。あとは調味料もよく買うかな。とくにマウイ島のハーブ入りソルトはお気に入りで、幸運なことに、無くなりそうになるとマウイの仕事が入るんですよ。
林 うらやましい!
ベビーシューズはオーストラリア、オランダ、タイ。手前にある紅白の悪魔のぬいぐるみは、ラオスのナイトマーケットでお婆さんが手作りしていたとか。
空港の売店も隙なくチェックする
加治 他にも、いろいろな場所でアンティークの額を買って帰るので、いつかこれを使って写真展をやりたいんですよ。
林 日用品から雑貨からお洋服、そして額まで!もともとお買い物はお好きですか?
加治 普段はそうでもないんですけど、旅先だと「これは出会いだ!」とキュンとして買ってしまう。なので蚤の市とかは必ず行きますね。あと、ガイドブックを作るような仕事も多いので、撮影している雑貨がかわいくて買ってしまうこともあって。
林 ガイドブックはいいお店を紹介するから、かわいい雑貨に出会う確率も高いですよね。
加治 あとは、実際に作っている様子を見ると欲しくなっちゃう。
ベルリンの蚤の市で購入したアルファベットのプレートや、ニュージーランドのビニール製ポンチョ、スウェーデンが発祥のマッチなどかわいい雑貨類もたくさんある
林 仕事で買い物をする時間がないときは大変ですね。
加治 空港でバカ買いします(笑)。民芸品とか、空港にも意外にリーズナブルで可愛いものがあったりするんですよ。なので、空港でもちゃんとチェックします!
林 この企画にぴったりだ。私はついセーブしてしまうことがあるので、今日は勇気をもらった気がします。今度スリランカに行くので、私も気に入ったものは全部買ってこようかな。
加治 旅の思い出ですから、ぜひ!
PROFILE
1981年生まれ。アメリカの美術大学で写真制作をはじめる。2006年にフランス・パリを拠点に独立。2010年より活動の場を東京に移し、『TRANSIT』『Coyote』などをはじめ、雑誌、広告、書籍などで幅広く活動。アイスランドで撮影したZINE『となりの惑星 ICE CREAM ON ICE PLANET』がある。
1980年岐阜県生まれ。編集者。『NEUTRAL』に創刊時より参加。その後いくつかの雑誌編集部を経て、『TRANSIT』に参加。最新号、ニューヨーク特集が発売中。12/14(金)には、韓国・北朝鮮特集が発売予定。
http://www.transit.ne.jp/