毎号、ゲストの方にお友だちを紹介いただき、注目アーティストを数珠つなぎにしていく本企画。第18弾は、LISACHRIS(リサクリス)さんの紹介で、Ryohu(KANDYTOWN)さんが登場! 聡明で落ち着きのあるナイスガイの生い立ちを中心にお訊きしました。
リサはすごくアーティストっぽいですよね
ーーLISACHRIS(リサクリス)さんからの紹介ということで、今日はよろしくお願いします。彼女とはいつ頃からのお知り合いなんですか。
Ryohu リサはYENTOWNというクルーに所属していたので、その絡みで知っていて。年齢も近いですし。。
ーー彼女が作るトラックについての感想を教えてください。
Ryohu 頭がおかしい(笑)。でも、「リサが見ている、生きているなかで聴こえてくる音楽なんだな」と思うと考え深いですよね。感情を吐き出しているようにも聴こえてくる。いろんな意味で、すごくアーティストっぽいですよね。
YENTOWNのメンバーとも交流があるんですね。
Ryohu 俺はあんまり深く遊んだりしないですけど、現場で会ったりするんで。KANDYTOWNの年下連中とかは結構交流があるみたいですね。
ーーRyohuさんがヒップホップ好きになるきっかけは何だったのでしょう。
Ryohu 最初はTSUTAYAに行って、シングルCDチャートとかを参考にしながら聴いていたんですけど、小学校の高学年になって、ちょっとやんちゃな先輩が「キングギドラがヤバいから聴いてみなよ」って。そこで「これがヒップホップか!」ってなったんです。もちろん、それまでにもケツメイシとかキック・ザ・カン・クルーとかチャートに入っていた人は聴いていましたけど、キングギドラは衝撃でしたね。不良っぽい感じがかっこよくて。
ーー中学時代とかはどうだったんですか。
Ryohu 2PACとかスヌープとかのウェッサイ系、あとはエミネムとかが人気だったのでよく聴いていました。中3くらいで、亡くなったYUSHI(ex.ズットズレテルズ、KANDYTOWN)と出会って。その頃はすでにDABOさんとか雷家族とかも聴いてたんで、デイイベントのライブとかに一緒に行ったり。当時の俺からしたら、そこで見るものすべてが「すげぇ〜」って。YUSHIとは家も近かったんで一緒に遊んだり、音楽を貸し借りしたりしてました。
バスケに熱中していた高校時代
ーー高校時代、OKAMOTO’Sのメンバーとかとズットズズレテルズをやられていたので、同じ学校かと思いきや違うんですよね。
Ryohu そう、俺だけ違うんですよ。小学校も中学校も公立で、バスケットをずっとやってたんで高校もバスケの強豪校に行って。
ーーバスケが基本にあって、音楽も好きで聴いていた感じなんですね。
Ryohu そうですね。バスケが忙しくてあんまりできなかったですけど、たまにラップする機会もあって。遊びみたいな感じでやってました。
ーーラッパーになろうとか、音楽の道に進もうと思ったのはいつ頃からですか。
Ryohu 高校卒業のあたりですね、当時OKAMOTO’Sはすでに音楽の道に進むことが決まっていて。俺も大学に行く気はなかったので、いまのうちに好きになことやってもいいかなって。「これで食べていこう」まで本気で考えてなかったかもしれない。「こっちのほうが楽しそうだな」とか、そういう感覚でしたね。
ーー当時、ファッション的にはどんな感じだったんですか。
Ryohu 中学生の頃はいわゆるB-BOYファッション。黒人が店員のお店とかで2XLサイズの服を買ったり。
ーー当時、そういうファッションはそこまで主流じゃなかったような気もしますけど。
Ryohu う〜ん、でもB-BOYファッションな人はいっぱいいましたよ。服を見ればヒップホップが好きだってすぐにわかるような感じ。
ーーファッション誌はどんなものを読んでいましたか。
Ryohu 『411』とか、あとは音楽誌だけど『Blast』とか。
ーーおぉ、『411』ってことは結構ブリンブリンな感じだったんですね。買い物はどこらへんに行っていたんですか。
Ryohu 渋谷でしたね。でも、高校時代はバスケが忙しくなってあまり遊んでないんですよ。土日も練習があったし、私服を着る暇がなかった。学校もジャージで行くような感じでしたから。
"Ten Twenty" mixtape
「いつでもどこでも誰とでも」の理由
ーープロフィールなどでは、「いつでもどこでも誰とでも」という文言が入っていますけど、それはポリシーと考えていいのでしょうか。
Ryohu 10代のときからいろんな人とやることが多くて。そのなかで「音楽ってそういうものじゃん?」っていう。違うジャンルを無理にくっつけようとは思わないですけど、考え方としてはお互いにリスペクトすべきものがある。
ーーどのジャンルの人でも、始めたばかりの頃は「枠」にハマりがちだと思うんですけど。早くからそうやってオープンマインドになれたのはなぜでしょう。
Ryohu 周りにいろんな音楽を好きだった奴がいたんで、必然的にそれを受け入れる環境だったというか。
ーーなるほど。ご自身もいろんな音楽を聴いてきたんですね。
Ryohu それは今でもそう。
ーーそういった流れでバンドとやる機会も多いですが、DJをバックにラップするときと違いはありますか。
Ryohu もう慣れちゃったんで、よくわからないですけど・・・。バンドは人が演奏してるんで、モニターから出てくる音が毎回違うんですよ。DJとかのオケものは、極論を言えばカラオケみたいなものだから。バンドサウンドはナマモノなんで、そこをどう楽しむか。あとは、クラブでやるのとライブハウスでやるのではお客さんの雰囲気も違うし、ライブハウスは一曲終わると拍手が起こったりしますからね。
いまはそれぞれがソロを頑張る時期
ーーKANDYTOWNとしてはもちろん、ソロ活動や、Aun beatzというバンドがあったり、いろいろやられていますけど、それぞれ意識を変えているのでしょうか。
Ryohu
ーーソロのときは自分のやりたいこととか、自分の意思を信じて通す。一方で、KANDYTOWNのときは一歩下がって見るようにしているんです。みんなが「どんなことをやったら楽しいのかな」とか。この曲なら「こうしたらいいんじゃない」とか、バランスが取れるように。Aun beatzに関しては以前から言っているんですけど、「C級バンドでいい」と思っていて。それが素晴らしければいい。文化祭くらいの気持ちで、たまに集まる感じ。だから、ウェイトとして大きいのはKANDYTOWNとソロ活動ですね。
ーーKANDYTOWNとしてはいまはどんな時期なんですか?
Ryohu 2016年末にアルバムが一枚できたんで、またすぐ動き出すことはないだろうっていうか。まずはソロをみんなで頑張ってみようと。それをお互いがサポートしている感じですね。それぞれが音楽家としてラッパーとして、どう世の中に出て行いくかという時期。
ーーRyohuさんはトラックメイキングされていますが、楽曲制作はいつ頃からしているんですか。
Ryohu 高校を卒業した17〜18歳くらいで初めてMPC1000を買って、その他も一式揃えて。わからないながらに始めたんです。
ーー昨年発売されたミニアルバム『Blur』や、その他の作品でもメロウでテンポもゆっくりとしたトラックが多いですよね。気持ちよくて、どこか憂鬱さもあるような。
Ryohu そこは意識してないですね、前作は歌を取り入れるというのがコンセプトにあったんで。だから、「超ラップしてぇ」ってときはそういうトラックを作るし。でも、確かにもともとそんなに盛り上がるタイプではないですね。そういう音楽を聴くことはありますけど。
大事な音楽を作って、ブレずにやっていくだけ
ーーSuchmosやBase Ball Bear、ペトロールズなどに客演として呼ばれたり、Ryohuさんの立ち位置は独特ですよね。常に挑戦を楽しんでいる感じがします。
Ryohu そうですね。やってみないとわからないし。もう28歳ですけど、若いうちにいろいろやりたいんですよ。子どもの気持ちを忘れちゃいけないし、かといって子どものような無知な感じを出しちゃいけないと思っていて。自分が楽しいと思えることを伝えて、みんなに影響を与えられればいいかなと思っています。
ーーいま、音楽以外に興味のあることはありますか。
Ryohu いまは、ちょうど音楽しか興味のないタイミング。まぁ、最近引っ越したんで家具とかは気になりますね。あと、VRは気になっています。昔からずっと興味があるのはクルマと音楽、あとはファッションかな。
ーー今後の予定を教えてください。
Ryohu 11月末頃に新しい作品を出そうかと思っていて。感覚的にはミックステープの立ち位置、DJ MIXをするわけじゃないですけど。新作が5〜6曲あって、残りの5〜6曲は過去曲のリアレンジなどを入れて、わりとごっちゃな感じ。ソロではやってこなかったフィーチャリングも入れたりしています。
ーー音源が売れない時代と言われますが、そこはどう考えていますか。
Ryohu そういう時代なら、こちらもそのうえで音楽を提供するだけというか。みんなで知恵を出し合ってやっていくだけで、根本はそんなに変わらないです。アーティストがビジネスのなかに飲み込まれるのはよくない。大事な音楽を作って、自分の生き方はブレずに、いかに成立させていくかだと思っています。
PROFILE
10代より音楽活動を始め、ジャンルや場所を超えて音と人、出来事をつないできたアーティスト。 Base Ball Bear、ペトロールズ、Suchmosなど様々なアーティスト作品に客演してきたことや、所属するヒップホップ・クルー、KANDYTOWNの1stALをメジャー・ディールにて発表しラッパーとして注目を集める傍ら、楽曲制作・トラックメーカーとしての顔も知られた存在。
音楽や車などライフスタイルに根差したファッションスタイルにも多くの注目を集め、コラボ楽曲/MV公開などアパレル界隈を巻き込みバイラルに話題を振りまいている。
近年はよりソロとしての活動を広げ、SxSW2017ではオースティンでプレイするstarRoと東京のステージをリアルタイムに繋ぐCYBER TELEPORTATION TOKYO ショーケースへの出演、メロウかつレアグルーヴなビートで紡がれたEP『Blur』のリリース、楽曲コラボレーション参加、バンドを従えてのライブ公演など、ニューレコードを更新する日々。10/11にAll in One (remix) [feat.IO&KEIJU]、11/2にNothing But A Blur [feat.MALIYA]をリリース。11/30に新作『Ten Twenty』を配信オンリーにてリリース予定。