前回に続きは、特定のモノやコトに強いこだわりや愛を持っている選手を紹介。橋本拳人選手は話題になったトレーニング動画を解説しながら、股関節へのこだわりについてを。さらに、7歳離れた中学生の弟が可愛くて仕方がないという岡崎慎選手には「兄弟愛」についての話を伺いました。
「股関節愛」の人
橋本拳人選手
股関節と肩甲骨の連動がポイント
ーー今年の夏、FC東京の公式SNSにあがったストレッチをしている動画は衝撃的でした。
橋本選手(以後、橋本) すごく反響がありました。チームメイトからはいつも「気持ち悪い」と言われています(笑)
ーーあの独自の動きはいつからやられているのですか。
橋本 本格的に始めたのは一年前くらいです。チームでおこなうトレーニングをしっかりやったうえで、個人的に取り組んでいます。でも、いきなりアレを始めたのではなくて、基礎の柔軟から徐々にレベルを上げて、夏の段階でやっとできるようになったんです。あの動画もまだ完璧じゃないです。
ーーそもそも、あれは何をやっているんですか。
橋本 すべては股関節なんです。股関節と肩甲骨を連動させてうまく使えるようになることで、筋肉を効率良く使えたり、動きやすい体になるんです。プロ野球選手や格闘家など、いろいろなスポーツで取り入れられているみたいです。
ストレッチというよりも股関節を鍛えている
ーー動画を見ながら解説をしていただきたいのですが、まずはコレからお願いします。
橋本 M字にしゃがみこむときに、尾てい骨を地面に垂直に刺すみたいな、ぐっと腰を入れる動きがポイントです。そこから手をつけて、肩甲骨をうまく使いながら横に移動します。ストレッチというよりも、股関節を使って鍛えているんです。止まった状態で股関節を伸ばすとかではなく、動きながら使うことで肩甲骨との連動性を高めています。
ーーなるほど。
橋本 これも結構キツい動きですよ。感覚的にはチーターを意識しています。人間ももともとは四足歩行だったので、肩甲骨と股関節は繋がっているんです。そこをうまく連動させることで動物的な動きやパワーが出せる。
ーー次は、この動画にいきましょう。
橋本 これも、肩甲骨で体を支えながら股関節を動かしていくのがポイント。う〜ん、腰の位置が高いし浮いちゃってますね。いまのほうが、もっとしっかり蹴れる。本当は低い姿勢のまま足を前に持っていきたいところ。これもチーターの走りをイメージしています。
ーーどの動画もストレッチではなくて、鍛えていたんですね。
橋本 でも、柔らかくないとこの動きは出せないので。トレーニングの初期段階はシンプルなストレッチを徹底してやりました。そこから段階を上げていて、いまはさらに進んでいます。
いきなりのコモドドラゴンは負担が大きい
ーーでは、大きな話題を集めたこの動画についてお願いします。
橋本 このトレーニングの名前はコモドドラゴンと言って・・・。う〜ん、これも甘いですね。腰が高いし、安定していないし、力強さがない。これは股関節のしなりを強化しています。イメージは爬虫類の動き。本当ならば、腰を上下をさせずに低い姿勢のまま歩いていきたいところです。そのためには体幹を強くないといけない。
ーー膝下をクイっと動かしますが、これはなんですか。
橋本 準備運動みたいなものです。いきなりコモドドラゴンをすると負担が大きいので、股関節を起こしているんです。
ーーこれらのトレーニング方法を取り入れてから、何か変化はありましたか。
橋本 以前はプレーすると膝に負担がかかっていたんですけれど、股関節が動くようになってから膝の痛みがほぼなくなりました。そこが一番実感できた点ですね。あとは、いろいろな筋肉をしっかりと使えるようになった。また、コンタクトのときに力任せではなく、うまく足が出せるようになり、ボディバランスもよくなりました。股関節はすごいですよ!
ーーいまはどんなことをやられているのでしょうか。
橋本 可動域が広がってきたので、力強さを出す練習に移行しています。力強く柔軟性を出すイメージですね。
どんなトレーニングがいいのかは人それぞれ
ーー世の中にはたくさんのスポーツ理論がありますが、どう選ぶのでしょうか。
橋本 筋トレをひたすらやっていた時期や、柔軟だけをやっていた時期など、僕もいろいろ試してきました。でも、怪我をしてしまったり、うまく体が動かないこともあって。でも、このトレーニングを試したとき、すぐに「動きやすい」と感じたんです。どんなトレーニングが正解かはわからないですけど、自分にとってフィーリングが良かった。
ーーどう選ぶのがいいと思いますか。
橋本 本当に多くの選択肢がありますからね。でも、結局は「その人に合うかどうか」だと思います。体格やクセもあるので、人それぞれ違うんだと思います。
ーー股関節を鍛えるようになって、日常生活で変わったことはありますか。
橋本 敏感になっているので、長時間同じ体勢で座っていると詰まっちゃう感じはあります。ですから、長時間運転のときは、途中で休憩して股関節ストレッチをしちゃいます。常に股関節はいい状態でいたいですね(笑)
「兄弟愛」の人
岡崎 慎選手
赤ちゃんの頃から見ているので、可愛くて仕方がない
ーー岡崎選手は弟さんがFC東京U-15 深川にいらっしゃるんですよね。
岡崎選手(以後、岡崎) そうなんです。うちは3兄弟で上に3歳離れた姉がいるんですけれど、弟は7歳年下。いま中学1年生の13歳です。弟が生まれたとき、すでに自分は物心がついていたので、ちっちゃくて可愛い記憶が鮮明にあるんです。だから、今でも彼の行動すべてが可愛く感じてしまうんですよ。
ーー余談ですが私も男三兄弟の末っ子で、兄と歳が離れているんです。そうすると、ちょっと悪いことをしていたり、何か隠し事をしようとしても兄貴にすぐバレてました。
岡崎 その感覚、すごいわかります! 何を考えているのか、何をしようとしているのかがわかっちゃうんですよ。
ーーそれ、弟からすると結構キツいんです(笑)
岡崎 そうですよね。とくにいまは13歳の思春期なので、気づかないふりをしてあげることも大事ですね。
ーー弟さんがサッカーを始めたのは、やはり岡崎選手の影響が大きかったですか。
岡崎 自分もU-15 深川でサッカーをしていたのですが、弟を家にひとりで残すことはできないので、親が送り迎えしてくれるときは常に連れられて来ていたんです。だから、弟が物心ついたときには、すでに深川のグランドでサッカーボールを蹴っていて。みんなからも可愛がられていたし、いつの間にかサッカーに染まっていました。
ーー会うとどんな話をするのですか、やはりサッカーの話になったり。
岡崎 いや、むしろお互いサッカーの話はしないですね。サッカーのことになると、弟は僕をライバル視をしているというか「なにくそ」という感じで見ているので。それもまた僕からすると可愛いんですけどね。だから、「試合で点を取った」などの情報は親から聞く程度です。
小学校3年生頃
小学校5年生頃
彼のほうが才能があると思います
ーー一緒にサッカーをすることもあるんですか。
岡崎 近所で一緒にパス回しみたいなことはするのですが、教えたりはしないです。でも、弟は兄貴の存在をおおっぴらにしたくないみたいで。
ーーそうなんですね。
岡崎 いろいろ言われるんじゃないですかね。でも、初蹴りのときとか、たまにU-15 深川の練習に行くときがあって、そのときは露骨に嫌な顔されますね。コーチからは「子どもたちのためになるから来い」と誘われるのですが、弟の気持ちを尊重していまは行ってないです。
ーープロのサッカー選手になりたいと言ったらどうしますか。
岡崎 自分が中学1年生のときと比べると、彼のほうが上手いし才能があると思います。当時、自分はまだ具体的な目標はなくて、漠然とプロのサッカー選手に憧れていただけ。でも、弟はプロ選手が身近にいるので「この程度になれば、プロになれるんだ」という物差しがあるのは恵まれていると思うんです。だから、一生懸命やっていれば、大きな怪我でもない限り可能性はあると思います。
ーー今回の企画で打診があった際は、すぐに「兄弟愛」というテーマがピンときたのでしょうか。
岡崎 うちは家族全員が仲良くて、この歳になっても父と弟と3人で銭湯に行ったり。そういう話をすると周囲に驚かれるんですよ。弟からの愛を感じるし、自分もあいつのことが好きなんで、テーマといえばそれくらいしかないかなって。
岡崎家はみんなファッションがダサいんです
ーー弟さんにとってお兄ちゃんは憧れの存在なのだと思います。そうすると、ファッションとかも真似しませんか。買ってくる服とか。
岡崎 岡崎家は全体的にファッションに疎いんです(笑)。そこが悩みでもあって。最近はプレゼントするようにしています。
ーー岡崎選手は、FC東京に入ってからファッションに目覚めたのですか。
岡崎 そうですね、加入してから「ヤバいな」と気づきました。高校まではほぼジャージで、おしゃれをする必要もなかったんですけど。いまは家から練習場に向かうときも、ちゃんと着替えています。行く途中でファンやサポーターの方に会うこともありますし、私服でイベントに出演したり、先輩が素敵なお店に連れて行ってくれたりもするので。だから、センスがどうのというよりも、まずは揃えなきゃという感覚です。
ーー買い物は誰と行くことが多いですか。
岡崎 弟とよく行きますね。その際に弟の服も一式買ってあげるんです。あまり高いお店は行かないですけど。
ーー弟さんに似合う服を選んであげるんですね。
岡崎 いや、自分で選ばせます。でも、選ぶ服がイマイチで……。背も高いし、顔もかっこいいのにそこだけが残念。そんなときは「店員さんと相談してきな」って促します。
ーー岡崎選手が口を出さないのはなぜですか。
岡崎 いまは週1回のペースで実家に帰っているので面倒を見ることができますが、いつか離れたときに不自由しないようにですね。自立してくれたら嬉しいなと。
ーー発言が完全に親心ですね(笑)。最後に、いつか弟さんと一緒にピッチに立ちたいと思いますか。
岡崎 同じチームになったら楽しそうですね。でも、ピッチ上で弟に怒られるのはイヤだなぁ(笑)
PROFILE
生年月日:1993年8月16日
出身:東京都板橋区
身長/体重 :182p/74kg
血液型:O型
前所属チーム:ロアッソ熊本
フィジカルの強さを武器に激しい当たりでボールを奪い、2列目からの積極的な飛び出しで攻撃に絡むユーティリティプレーヤー。
生年月日:1998年10月10日
出身:東京都北区
身長/体重:181cm/74kg
血液型:A型
前所属チーム:FC東京U-18
高校3年時にFC東京U-23としてJ3リーグ29試合に出場し2得点を挙げているセンターバック。1対1の強さで自らボールを奪うだけでなく、優れた危機察知能力を活かしたカバーリングで守備陣を統率する。