TRANSIT (トランジット) 林編集長の旅の お土産、なに買った?  ゲスト:佐伯ゆう子(イラストレーター) TRANSIT (トランジット) 林編集長の旅の お土産、なに買った?  ゲスト:佐伯ゆう子(イラストレーター)

TRANSIT (トランジット) 林編集長の旅の お土産、なに買った? ゲスト:佐伯ゆう子(イラストレーター)

トラベルカルチャー雑誌 『TRANSIT (トランジット)』の林編集長が、「旅のお土産」をテーマに、毎号ゲストの方と対談する連載企画。今回は、広告や雑誌などで活躍されているイラストレーターの佐伯ゆう子さんが登場。絵にまつわるお話や、旅のお土産についてなど、いろいろなお話が聞けました。

TRANSIT (トランジット) 林編集長の旅の お土産、なに買った?  ゲスト:佐伯ゆう子(イラストレーター)

ポルトガルの田舎町をロードトリップ

林 『TRANSIT』の40号(6/18発売)がポルトガル特集ということで、先日取材から帰国したばかりなのですが。今回の旅はスペシャルゲストとして佐伯さんにも同行いただいて。

佐伯 楽しかったですね〜。林編集長とは同じ歳なので、よくゴハンに行ったり仲良くさせていただいているんです。あるとき、共通の知人であるフォトグラファーとポルトガルに行くという話を聞きつけまして。それならと、私だけは遊び感覚で自腹で取材に同行させていただきました(笑)。でも、迷惑じゃなかったですか?

林 いえいえ、おかげさまでリラックスしながら取材ができてすごくよかったです。旅の雑誌なのでリアルに旅を楽しめるほうがいいんですよ。現地での人との出会いも増えるし、自分にはない角度で物事が見えたり。

佐伯 私は遊んでいましたけど、林編集長は大雨のなかでも一生懸命取材されてましたので。そこはちゃんとアピールしておかないと(笑)

林 あははは。ありがとうございます。

佐伯 でも、今回はポルトガル北中部の田舎町をぐるりと毎日移動して。車の運転を3人で交代しながらロードトリップする感じとか、自分ひとりではできない貴重な体験ができました。林さんが予約してくれていた宿はどこも素敵で、馬小屋を改築したところや、お城だったところとか。

林 しかも、到着して二日目がたまたまイースターで。ポルトガルは人口の90%近くがカトリック教徒という敬虔なクリスチャンの国。ミサにも参加しましたけど、すごかったですよね。詳しくは『TRANSIT』を読んでいただきたいんですけど(笑)

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いつもと同じ日常なのに、風景だけが違う感覚が好き

佐伯 でも、ポルトガルは治安もいいし、人も優しいし、田舎の風景は宮崎駿さんの世界でしたね。『魔女の宅急便』や『天空の城ラピュタ』と同じ景色が広がっていました。

林 『魔女の宅急便』はポルトが舞台だなんて言われていますよね。佐伯さんは、これまでにいろいろと旅をされていますけど、海外旅行へはどれくらいのペースで行かれてます?

佐伯 年に一度は行きたいなと思っていて、いまのところ実現できていますね。

林 行き先はどうやって決めることが多いですか。

佐伯 1ヶ月前くらいに、なんとなくの思いつきですね。でも、ここ3〜4年は友人が住んでいることもあって、ベルリンに行っています。街のサイズ感とか、いろいろなものがちょうどいいんですよ。時間の流れもゆっくりで、みんなが好きなことをやっている感じ。イラストレーターという仕事は今ではどこでもできるので、パソコンを持って向こうで作業をしたり。いつもと同じ日常なのに、風景だけが違うみたいな感覚が気に入っています。

林 旅行なのに仕事をしているストレスもなく?

佐伯 ないですね。忙しい時期には行かないので、朝起きてWi-Fiのつながる近所のカフェで軽く作業して、昼に友だちとランチをして、その後は美術館とか好きな場所に行って、夜またみんなでごはんを食べるみたいな。

林 それはなぜ?

佐伯 ゲストハウスやホステルが好きな理由と一緒なんですが、要は自分の好きにしていたいんだと思います。誰かと一緒に旅をしていると、どうしても一緒に行動しなければいけない時間がでてくるじゃないですか。でも、ゲストハウスでのひとり旅なら、誰と飲んでも、どこにいても、いつ寝ても起きても自由なんですよね。制限されるのがすごく苦手なんだと思います。旅先で友達ができることも多いので、寂しくなることはあまりありませんし。

林 へぇ〜、素敵な過ごし方。観光地を巡るのではなく、日常の延長として旅をするスタイルはいつ頃からですか。

佐伯 もともとその感覚は好きだったんですけど、ベルリンに行くようになってから強く思うようになりました。ホテルではなく、友人の家に泊まっているのも大きいかもしれない。

林 東京でも、仕事スペース以外での作業が多いですか。

佐伯 言われてみればそうかもしれない。アイデアを考えるときはカフェに行ったり、仕事部屋ではなくあえて自宅で作業したり。環境によって趣向が変わるので、その発展系として海外があるのかも。

林 そうなると、旅の一番の目的はどこになるのでしょう。

佐伯 東京を離れることですね。カラカラになった自分を補いに行く旅。

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文房具屋、画材屋、本屋を巡るのがお気に入り

林 なるほど、逃避行的な。ポルトガルではお土産をいろいろ買っていましたけど、旅先で買い物をするほうですか。

佐伯 美術館やギャラリーに行ったり、本屋や画材屋さんを巡ったりしながらですね。このマーカーは、ルーブル美術館(パリ)の目の前にある老舗の画材屋さんで購入しました。でも、そこのシャープペンシルコーナーはすべて日本ブランドで、ちょっと誇らしい気分になりましたよ。

林 海外に行くと、いい感じの文房具屋さんは日本のものが売っていますよね。

佐伯 そう、日本の文房具ってすごい。でも、ドイツも文房具は有名なので買って帰ることは多いですよ。その他、どう使えばわからないけどフィーリングで買うこともあって。いずれ使うときがくるんですけど(笑)。あと、ドイツのカクカクしたデザインというか、インドダストリアルな感じも好きで。この歯磨き粉とかも。

林 かっこいい! 日本の歯磨き粉ってデザインがいまいちですよね。

佐伯 ね、この歯磨き粉は朝用と夜用に分かれている点も面白くて。ドイツは医療も進んでいるから説得力がある。

林 このポップでかわいらしいテープは?

佐伯 トランジットでスウェーデンの空港に立ち寄ったときに買いました。イラストレーターは梱包する機会が多いので、これを使うだけでオシャレになる。しかも、強度も高いしおすすめ。スウェーデンの空港に行ったらぜひ!

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林 あと、ポルトガルの書店で買っていたこの絵。いまさらながら、私も買えばよかったな〜と思って。

佐伯 シルクスクリーンで刷られていて、台紙もかわいいし。あと、キリストにまつわる絵なので、イースターと重なった今回の旅の思い出にぴったりだったんですよね。

林 佐伯さんが旅に必ず持っていくものってありますか。

佐伯 本かなぁ。普段からバッグに入れているので、ないと不安になるんですよね。あとはスケッチブックみたいなノート。

林 ポルトガルの宿でもささっと描いていましたもんね。あれを見ていると、本当に絵を描くのが好きなんだなって。

佐伯 旅先で出会った面白い人とか風景を、日記感覚で描いているだけですよ。私の場合、文章を書くより絵を描くほうが早いからメモみたいな感覚。

林 でも、佐伯さんの絵のタッチやモチーフを見ていると、旅先に都市を選ぶことが多いのがわかる気がするんです。おしゃれで洗練されているから。

佐伯 NYとかも大好きなので、そうかもしれない。でも、最近は自分のなかで気持ちが変化しているのを感じるんですよ。これまでは、商業的な仕事というか、明るく都会的なタッチが向いていると思っていたんですけど。昨年個展をやってからは、自分の内面にあるものを表現する楽しさも知って。しかも、これまでの自分らしさは少し暗いというか内向的だったのが、徐々にハッピーな方向になってきている。だから、最近はリゾート地にも旅行してみたくて。

林 すごい心境の変化! 年齢を重ねて、いい意味で肩の力が抜けてきたのかもしれないですね。早く新しい作品を見てみたい。今日はありがとうございました。

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ドイツで買ったお土産たち。シロップのように見えるのは実は卓上糊。デザインもよく使いやすくて便利なのだとか。また、小さな陶器のスープ皿は、スタビロのスワン型鉛筆削りのカス入れとしてセットで愛用中。歯磨き粉や絆創膏はドイツらしいインダストリアルなデザインが気に入っている。

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ポルトガルのポルトにある、『Museu de Arte Contemporanea de Serralves(セラルヴェス現代美術館)』で購入したノートとペン、そして軸全体が芯になった色鉛筆。同美術館の建物は、ポルトガルを代表する建築家 アルヴァロ・シザによるもの。

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トランジットで立ち寄ったスウェーデンの空港でたまたま見つけたビニール製のガムテープ。カラフルでポップな色合いは、貼るだけで梱包がオシャレに変身する。ハサミを使わないと切れない頑丈な強度もお気に入り。

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ルーブル美術館(パリ)の目の前にある老舗の画材屋さんで購入。ブルーのマーカーは、三菱鉛筆のポスカのような商品。鮮やかで美しい発色は、隣に置かれた佐伯さんの人気イラストでも存分に生かされている。その他の2アイテムは未使用で、使い方もどんな特徴あるのかも不詳。

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ポルトガルで買ったお土産たち。オレンジとブルーの台紙が素敵な絵はリスボンの書店で購入。シルクの布にキリストの生誕が描かれている。隣の牧歌的なイラストは包装紙のパック。ポルトガルの伝統的なのど飴は、パッケージのかわいらしさで購入。また、ポルトガルは陶器が有名なこともあり、蟹座ということでカニの立体的な造形が施されたマグネット式のオブジェもお土産に購入。

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有名アーティストの作品集などは重くてかさばり、また日本でも買えるため、旅先の本屋や美術館では主にZINE系の雑誌や書籍を購入するとか。絵やデザインの良さはもちろん、装丁や仕様が珍しいものを選ぶことが多い。それらは資料として生かされる。また、折りたたみ方がユニークなフライヤーなどを貰って帰ることも多い。

PROFILE

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佐伯 ゆう子 | YUKO SAEKI
イラストレーター

神奈川県出身、東京都在住。
広告、書籍、雑誌、ファッション、ウィンドウペインティングなど国内外で活動。ドローイングを軸に様々な企画に携わる。 第8回TIS公募展入選、PETER’SGalleryコンペ2011 鈴木成一賞次点入選

マガジンハウス『&PREMIUM』、太田出版『ケトル』、NHK出版『NHKまいにちフランス語』カバー、CHINTAI『賃貸情報CHINTAI』(季刊誌)カバー、LCC航空会社PEACH『PEACH LIVE』(機内誌)ほか書籍の挿画も多数手がけている。

2017年4月代官山蔦屋書店、9月に写真家 若木信吾氏がオーナーを務めるBOOKS AND PRINTS にて展示を開催。
2017年11月UNITED ARROWS(ROKU)原宿店にて展示とドローイングイベント。
2017年12月横浜にて【暮らし】をテーマにした個展開催。

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林 紗代香 | Sayoka Hayashi

1980年岐阜県生まれ。編集者。『NEUTRAL』に創刊時より参加。その後いくつかの雑誌編集部を経て、『TRANSIT』に参加。発刊第39号、キューバ特集が発売中。ポルトガル特集は6/18(月)に発売!当日は代官山蔦屋書店でトークイベントも(予定)。
http://www.transit.ne.jp/