SHIPS MAG読者のみなさん、こんにちは。
『スペクテイター』編集部の青野です。
先日発売したばかりの最新号「新しい食堂」を、もうお手にとっていただけましたか?
東京都内で営業を続けている4軒の「新しい食堂」の店主にインタビューをおこない、いまこの時代に食堂を運営することの意味を探った特集です。
「新しい食堂」とは、オープンしたばかりの食堂という意味ではありません。
珍しい料理を出す店という意味でもありません。
では、「新しい食堂」とは何か?
ひと言で言えば、店主の考え方に新しさが感じられる食堂ということになるでしょうか。
料理を客に提供して代金をいただく。店が繁盛したら、たくさん儲かる。これまでの「商売」とは、このように儲けを増やすことを目的とした活動を意味していたわけですが、時代や社会の進化と共にその目的も変わってきているような気がします。
美味しい料理だけではない、新たな価値を提供したい。
食堂という場所を介して新しいことをしてみたい。
従来の常識にとらわれない発想で、あたらしいスタイルを追求している食堂を「新しい食堂」と呼び、店主たちの考え方を探ってみたのが、この特集です。
くわしくは本誌掲載の各々2万字に及ぶロングインタビューで確認してほしいのですが、今回のSHIPS MAGではもっと深く特集を楽しんでもらうために、本誌が取材を申し込んだ4軒の食堂の印象などについて、特集を製作した編集部の対話形式で語ってみたいと思います。
■最新号は4組の食堂店主へのロングインタビューを掲載した特集だけど、まずは「ウナカメ」。中野にある「食堂」…と言って良いのかな?
▲カフェ&ギャラリーと名乗っているけど、編集部的には食堂として捉えて話を聞きました。「ウナカメ」は、中野駅の近くで34年間営業を続けてきたレストラン「カルマ」店長の丸山さんが始めた店ですね。
■「カルマ」は伝説の料理人を世に多く送り出した店だったそうですね。
▲高山なおみさんとか枝元なほみさんとか、他にもいろんな方が「カルマ」に関わったそうです。僕も「カルマ」の客だったんですよ。以前中野に住んでいたことがあって、たまに「カルマ」でお茶飲んだり食べに行ったりしていたんですね。別の町へ引っ越してから忘れてたんですけど、今回、食堂特集をやると決まってネットで情報検索していたら、「カルマ」は「ウナカメ」という店の中で、「旅する星 カルマ」と名前を変えて、今も中野駅の南側で丸山さんが営業されてることがわかってちょっと驚いた。潰れたと思ってましたから。それで早速行ってみたんです。
■「カルマ」は、どんなお店だったんですか。
▲キーマカレーが美味かったですね。あと、当時は珍しかったチベット餃子とか。
■モモという料理ですね。
▲85、6年頃って、そういう料理は珍しかったんですよ。
■当時の雰囲気はどんな感じでしたか。
▲小さい店だけど家族的というのか。イベントのフライヤーとか写真集なんかも置いてあって、なんというか、人の家に遊びに行くような感じだった。
■アットホームな雰囲気ってことね。現在の「ウナカメ」は、どんな店?
▲マンションのワンフロアをつかっていて、前よりもギャラリー寄りというか。
■マンションの一階で、庭がある?
▲ええ。庭をまたいで、靴を脱いで、友人の家にちょっと入るみたいな感じ。ちいさな中庭があって、雰囲気も良いんですよ。斜め向かいに教会があったりして。
■隠れ家的な。
▲そうね。中野の静かな住宅街にあって。いいところですよ。でも、オシャレとか、気取った感じではない。町に自然と溶け込んでいる、都会の隠れたエア・ポケットという感じで。
■どんな料理を出しているんですか。
▲家庭的な料理ですよ。中野オムライスといって、ちょっとスパイシーなオムライスとか。ビビンパップルーロー(魯肉)というのも美味しかった。魯肉飯(ルーローハン)という台湾の大衆めしがあるでしょう。豚肉がドンと乗っかっている。それとビビンバを掛け合わせたみたいな料理。でも味付けはしつこくなくて、なかなかでした。
■(メニューに記載のある)「裸足でスパイス シナモンドリンク」というのは?
▲「裸足でスパイス」という個人経営のスパイス屋さんがあるそうで、そこからスパイスを譲ってもらってレシピも教わってつくっているそうです。オーナーは女性で、アフリカを旅した際に現地でスパイス料理を覚えてきたらしい。最初に「ウナカメ」を訪問した時、冷たい日本茶が出されたと思ったんですけど、これが旨かったんですよね。「なんですか?」って聞いたら、シナモンスティックを煮出したドリンクだって。
■オーナーの丸山さんの職歴については本誌で深く触れているけど、一言で言うとどんな人?
▲飄々としているというか、軽やかな人ですよね。自分は中野から別の町へ引っ越したら中野と疎遠になってしまって、今回10数年ぶりぐらいに丸山さんに会ったらまるで昨日会ったみたいな軽い感じで「おひさしぶりです!」って言われて。
■すごい!
▲喋ったことは一度もないんですよ。
■当時も丸山さんは店にいたんですか。
▲いましたよね。小さい店だから。でも、会話はしたことがない。
■それなのに30年も前の客の顔を覚えているなんて、ちょっとビックリです。
▲そういうところは客商売を続けていくうえでの要諦なのかと思ったりしましたね。
ウナカメ
〒164-0001 東京都中野区中野2-12-5 メゾンリラ101
電話:03-5340-8292
https://www.facebook.com/UnaCameraLivera/
karma-marka.org
■「按田餃子」は、小田急線の代々木上原駅の近くに2012年開店した餃子屋さん。最初に行ったときは中国が好きな若者が経営している店なのかなと思ったんですよ。中国に何年か暮らした経験があって、いわゆる中華料理ではなく、もっと庶民的な中国の普通の人が食べているような大衆料理店の味とか佇まいをマニアックに再現しているのかなと。実際は違っていたんですが。
▲内装がマニアックだった?
■内装というよりも、まずは料理の味が、それまで日本で食べたことのないような味だった。ちょっと変わったスパイスが効いていて、本格的というか、日本人の味覚に媚びていないというか、全体的に整えすぎていない感じが良かった。白酒という中国のちょっと珍しいお酒を置いていたり、中国語のカレンダーがかかっていたり、なんか現地っぽいなと感じたんですよ。
▲人気のお店みたいですね。
■ドキュメンタリー番組で取り上げられたり、ミシュランのガイドブックで銘店として選ばれるようになって、みるみるうちに行列のできる人気店になっちゃった。
▲僕も一度だけ行ったことがあります。昼頃に行って、先に2人くらい並んでたかな。水餃子定食を食べました。お酢とラー油か何かを混ぜて随時お召し上がりください、みたいなことが書かれてあって。
■備え付けの調味料が3種類あるんですよ。生姜とターメリックの味が印象的な「味の要」、花椒がピリっと効いた特製ラー油みたいな「餃子のタレ」、醗酵黒生姜と豆鼓を原料とした「豆鼓ミックス」。どれも癖になる旨さ。
▲調味料はお店でも販売していますよね。
■小瓶に入って、ひとつ500円で販売されている。お土産に買って帰るお客さんも多いみたい。なかでも「味の要」は茹でた野菜なんかにつけるだけで本格料理の味になるから重宝しています。
▲店の雰囲気も料理も家庭っぽいところが良いと思いました。あまり業界っぽくないんですよね。
■そうですね。何料理屋とカテゴリできない感じが良い。働いてるスタッフの世代とかもバラバラで、それも家庭的な雰囲気に結びついているのかも。
■「マリデリ」を知ったきっかけは?
▲北尾くんというかつて同僚だった編集者がwebでマリデリについて長めの文章を書いていたんですよ。「ブッダボウルを食べて、その味におどろいた!」と。それで興味を持って。店主のマリさんは著名な海外のミュージシャンがコンサート時に楽屋で食べる食事をつくる仕事もされているそうで、その話も面白いと感じたんですよね。
■アメリカのR&Bシンガーのエリカ・バドゥのコンサートの食事係を担当されたそうですね。マリデリは恵比寿で営業してるんですよね。
▲恵比寿にある雑居ビルの二階で営業しているバーの昼間に間借りをして、ほぼ「ブッダボウル」という料理のみを提供している。デカダンスな店の雰囲気に最初は圧倒されたけど。
■昼のランチの時間だけ開店しているのが「マリデリ」なんですね。
▲その場所は、スライ&ファミリーストーンみたいな髪型の人が経営しているバーらしい。もとはフィリピンパブだったとか。
■ブッダボウルの印象は?
▲北尾くんがツイッターで挙げていたから、事前に写真は見ていたんですけど。いわばアメリカ西海岸版「ベジどんぶり」ですね。
■見た目にも美しいそうで。カラフルでインスタ映えするような感じだと。
▲野菜が10種類くらい入っていて、ライスも入っていて。「かき回してください」と言うから、一生懸命かき回しながら食べたら美味しかった。
■何味ですか?
▲日替わりで野菜の取り合わせも変わるらしいから言い切るのは難しい。その日はジャガイモのように焼いた野菜もあったけど、主な素材は生野菜。人参の甘さや野菜の生の味が感じられる。北尾くんは自宅から週に1度は食べに通って体調を整えてるみたい。
■外食中心だと野菜をたっぷり食べる機会が少ないから、こういう料理は貴重ですよね。
▲10種類の野菜の内容も毎回違うそうです。
■サラダをカレーみたいに混ぜて食べるという習慣は日本にはないけれど、全て混ぜてから食べると、また違う味わいが楽しめる。
▲マサラソーダというドリンクも美味しかったですよ。カレー味のソーダみたいな感じ。
マリデリ
〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-9-9 代官山テクノビル2F
電話:非公開
営業時間:12 時〜 15時半 不定休
https://twitter.com/maemaricoconuts
■次、なぎ食堂は?
▲渋谷と目黒の武蔵小山に2店舗ある、ベジ料理店。今回取材したのは武蔵小山店で、商店街のなかにぽつんとある小さな店だけど、始まりは渋谷の鶯谷町というインフォスタワーの近くの半地下みたいな場所にある渋谷店。昔一度行ったことがあるんですよ。今回10年ぶりで行ったんですけどね。
■10年ぐらい営業を続けているんでしたっけ?
▲今年で11年目です。
■僕も渋谷の「なぎ食堂」で食事したことありますよ。店で販売されていたZINEも買って帰った気がする。
▲あのZINEはリルマグの野中モモさんが置いているそうです。店主の小田さんは音楽を深く愛している人で、レーベルのオーナーでもあるからCDなんかも売っているという、ちょっと変わった店。ベジ料理屋と主張していますが、しっかり食べられる店でしたね。いわゆるカフェ飯とも違う、結構スパイシーで腹に溜まる感じがいいなと。
■肉は一切使用していないんですよね。
▲使ってないです。店主は「敷居の低いベジ屋」と名乗っていますけど、カジュアルで、気取ってない。サンダル履きで気楽に行ける感じの店ですね。
■昼の定食のおかずは何品ぐらいあるんですか?
▲ワンプレートに4、5種類かな。ランチが800円。
■安いですね。
▲渋谷店は1000円らしいけど。武蔵小山の店に食べに行ったときは近くで働くOLさんが弁当を買いにきてました。あと、Uberでも買えるんですよね。Uberの(注文をオンラインで受けると)ピポ! っと鳴る機械があって、料理を配達する係の人が弁当をピックアップしに来る。渋谷あたりのIT企業の人も利用してるんでしょうね。
■どんな客が多いんですか?
▲渋谷店は半分以上が外国人らしい。白人とかアジア人とか。
■ふつうの定食屋ではUberに対応していないけど、そういうところに即対応できる柔軟性が小田さんにあるのでしょうね。
なぎ食堂 武蔵小山平和通り店
〒152-0002 東京都目黒区目黒本町4-2-6 宝録堂ビル 103
電話:03-6412-8319
営業時間:11 時半〜 19時(18 時半・店内ラストオーダー)定休日なし
http://nagishokudo.com
■ところで、なぜ、いま食堂特集なのか? という話ですけど。
▲企画した理由としては、巷でこども食堂が流行っているという話や、マガジンハウスの『Hanako』が最近、食堂特集を組んでいたとか、世の中の動きに背中を押されたところもあると思うけど。
■「食堂」は以前から特集候補として挙がっていたキーワード。一年前にカレー特集を組んだけど、その前から気になっていた言葉ではありますね。
▲あまりに有名なので特集では取り上げてないのですが、神保町にある未来食堂という小さな店の運営方法が話題になったり。それもきっかけとしてあった気がしました。
■社会の構造が変化して、その要請に応じて今までの大衆食堂とは違うOSへとアップデートした食堂が「新しい食堂」なのかなと。
▲昨今ブームのようになっている「コミュニティづくり」とか「場づくり」みたいな社会の動きも関係しているかも知れない。最初に話した「ウナカメ」のように、5、6人の店主がお金を出し合って場所を借りて、日替わりで違う店が営業するスタイルとかあるし、高円寺の「Loca ★ Kitchen」みたいに、食堂でストレッチ教室を開催する人も現れてきた。
■複数のオーナーが共同出資して一軒の店を借り、日替わりで店を営業する形態を「シェアカフェ」というらしいですね。
▲そうした動きも「食堂」の周辺に感じられたので面白いなと思ったんですよね。食堂が単に、わっと飯を食って帰るという即物的な機能だけじゃなくて、食事プラスアルファの要素が出てきているんだなと。
■ただの食堂で終わらせるのではなくて、ちょっと違う使い方をしてみても良いんじゃないかと、これまでの食堂の役割をハッキングして自分たちの使い勝手の良いものへと改造する感じ?
▲人が集まれる場所というか拠点をつくりたいとかいう願望もあるんじゃないですか。
■でも、あえて自分たちにツッコミを入れるならば、それはカフェでもできるじゃんという考えもありますが。
▲こんな話を新聞で読んだんです。2000年頃からカフェという業態が、それ以前のように利益が出しにくくなったらしいんですよね。官庁の統計によると。
■食堂のほうが利益を出しやすいということ?
▲そのあたりは厳密にはわかりませんけど、かつてのカフェブームが飽きられたことと、大手カフェチェーン店の台頭があるのではないでしょうか。
■実際に「食堂」を運営するというのは、どういうことか? 食堂開店How To的な情報を軸に、店主の目線から食堂経営の面白さについて、Loca ★ Kitchenのいとうやすよさんに寄稿してもらいました。
▲Loca ★ Kitchenは高円寺のガード下にある、30代の女性がD.I.Y.で立ち上げた食堂ですね。8月で開店1周年になります。
■この店も、ベジ・レストラン?
▲ビーガンカフェと言ってますね。
■どんな食べ物を出しているんですか?
▲ベジプレートという定食を、各種ドリンクと併せて提供している。毎週内容を変えて出してるそうです。
■どんな「おかず」が乗っているんですか?
▲カレーに春巻きが添えられていたり、家庭料理っぽい感じがしました。手づくりのチョコレートケーキが美味しかった。
■この店は、どうやって知ったのですか?
▲そもそもはオーナーのいとうさんが『ひろいものZINE ?ひろって生きるー』というZINEを出版していて、それを購入して知ったんです。なんでも簡単に買わずに、貰ったり拾ったりして済ませる。資本主義に懐疑的というか、お金に振り回されないで生きる。この著者は自分なりの考え方をしっかり持っている人だと思いました。Loca ★ Kitchenの開業を知ったのはそのあとの話で最近です。このお店は全体に手づくりで作られているという印象で、店の椅子なども、全部ではないそうですが、拾ってきたものやリサイクル品だったりするみたいですね。取材のリサーチで食べに行ったときも、いとうさん彼女が単身、どこかから木のテーブルを店に運んでくる場面を目撃しました。坂口恭平の都市型採集生活に通じるものがあるというか。
■彼女みたいに社会に対して何かオピニオンがある人が食堂というフォーマットを使って新しいビジョンを提案しはじめている気もしますね。
▲そう思います。いとうさんは大学院生のとき、上京して東京で生活していて、食に気をつかわずに毎日ポテトチップスとかで済ましていたら、そのうち身体を壊してしまったそうで、思い切って管理栄養士に相談したらプログラムをつくってくれて、それを忠実に守ったら、みるみるうちに体調が回復した。自分の体験から食べることの大切さを身にしみて実感したそうです。
■食の体験を通じて意識が変わったんですね。
■特集を編集し終えて、どんな感想を抱きましたか?
▲「食堂」そのものを定義するのが難しかったですよね。食堂ってカッチリと明文化された定義が無いんですよね。
■遠藤哲夫さんも今号に寄せてくれた論考(「結局、食堂って何?」)で書いてたけど、総務省の「日本標準産業分類」のなかにラーメン店や日本料理店はあるけれど、専門料理店の枠に収まらない「食堂」は、単にメシを食わせる「その他」の場所みたいな扱いになっているという話でしたよね。
▲タイ料理とかフランス料理のような専門料理店は食堂ではないと、総務省は言っているらしい。今回、取材をさせてもらったなかで「食堂」と正面から名乗っているのはなぎ食堂だけですね。あとはカフェ&ギャラリーとか。今回、店づくり体験について寄稿をお願いしたいとうさんのLoca ★ Kitchenだって、ベジタリアンカフェ&バーみたいな打ち出し方だし。
■按田餃子は餃子店だし。
▲マリデリも、冷静に考えてみれば食堂ではない気もする。
■それらを敢えて「食堂」として一括りにしたのは、1000円前後で食べられる定食が用意されていて、毎日食べても飽きない味を提供してくれる、それって「食堂」だろうと、昭和の大衆食堂に代わる飲食店のスタンダードになって欲しいという期待を込めてそうしたんですよね。
▲明確じゃないところが逆に面白いという感じが僕はしましたね。解釈の仕方が多様に出来ることを逆手にとれる。「すきま」というか、「食堂」を名乗ることで、単に食事の機能を満たす以外もやりようがある。
■カテゴリー化されていないほうが、いろんなことの受け皿になりやすい気もします。例えば、おじさんは今どきのカフェには一人では入店しにくい雰囲気があるけど、食堂だったら「ご飯を食べる」と言う大義名分があるから堂々と店に入れる。カフェに比べてニュートラルというか。「食堂」というのは客を選ばないフォーマットなのかも知れない。
▲サンダル履きで入店できる気軽さも「食堂」の良いところです。
■普段わざわざ食堂について考えることもないから、この特集がそのきっかけになれたら良いなと思いましたね。
▲ひとくちに食堂といって色んなレイヤーがある。食べ物の内容もそうだし、場所や運営方法など、食を通していろんなレイヤーが重なっているんですね。
■古い、新しいもあるし。
▲旧食堂と今の食堂の違いとかね。遠藤哲夫さんも原稿に書いていたけど、今はちょうど時代の変わり目らしくて、昔ながらの食堂が続々廃業しているらしいんです。東京オリンピックの頃に都内に労働者が押し寄せて、彼らの胃袋を満たすためのご飯を提供する場所ということで食堂が重宝がられて、東京に食堂がわっと増えた。それが5、60年前のこと。だから建物も老朽化してるし、代替わりもしなきゃいけないけれど後継ぎが見つからない。難問を目の前に抱えているみたいですよ、食堂界は。今が変わり目みたい。その一方で、Loca ★ Kitchenみたいに、かつて小料理屋だった店舗を居抜きで借りて、改造して店を始めたりする人も出始めている。食文化も、こうやって代替わりして引き継がれていくのかという気もしますね。
■新しいかたちの食堂が出てくると良いですね。
▲按田餃子などがモデルケースになって吉野家みたいに全国展開する新しい食堂も出てくるかも知れない。
■そうなると面白いですね。最新号を読んで、食堂の未来について考えてくれたら嬉しいです。
発売/2018年8月31日
特集;新しい食堂
◆「かわらばんくんと読む 食堂早わかり画報」構成と文 編集部 作画 三好吾一
◆ 食堂は人なり 撮影 安彦幸枝 画 TACT SATO
ウナカメ 丸山伊太朗「ブリコルールの場所」 構成と文 東良美季
按田餃子 鈴木陽介&按田優子 「ふつうの味が あたらしい」構成と文 青野利光(本誌)
マリデリ 前田まり子 「ブッダボウルはW自由Wの味がする。」 構成と文 北尾修一
なぎ食堂 小田晶房「当たり前のようで、特別な店の在り方」構成と文 赤田祐一(本誌)
◆「食堂幸福論」構成と画 物干竿之介
小上がり/ありがとね/東京ラーメン
◆「食堂開業心得帖 D.I.Y.とW はったりWの店づくりハウツー」文 いとうやすよ(ヴィーガンカフェバー Loca
★ Kitchen 店主)イラスト 菅野公平 撮影 伊藤和馬
◆「結局、食堂って何?」文 遠藤哲夫 画 東陽片岡
◆「ブックガイド もっと食堂を知るための本」構成・文 編集部
1967年生まれ。エディトリアル・デパートメント代表。大学卒業後2年間の会社勤務を経て、学生時代から制作に関わっていたカルチャー・マガジン『Bar-f-Out!』の専属スタッフ。1999年、『スペクテイター』を創刊。2000年、新会社を設立、同誌の編集・発行人となる。2011年から活動の拠点を長野市へ移し、出版編集活動を継続中。