独自の子育て方法がメディアで話題のデザイナー田中千絵さん。子育てが楽しくなる4つの言葉をお届けした前編に続き、今回はプライベートで仲良しという漫画家ひうらさとるさんとのスペシャル対談が実現! クリエイティブな世界で活躍するワーキングマザーという共通点をもつお二人の、明るくポジティブな子育て談義をお楽しみください。
「グラフィックデザインやイラストレーションなど、幅広いフィールドで活躍する田中千絵さん(写真右)。中学3年生の長男、小学5年生の次男をもつ2児のママでもあり、クリエイターならではの子育て方法やおしゃれなインスタ投稿で「素敵ママ」として注目されています。
ひうらさとるさんは、『ホタルノヒカリ』『ヒゲの妊婦(43)』などで知られる売れっ子漫画家(写真左)。43歳で出産し、現在は小学2年生の愛娘のママ。子どもが1歳半のときに東京の青山から兵庫県豊岡市へ移住し、温泉地として有名な城崎で仕事と家庭を両立する日々を送っています。
ひうらさんが東京に住んでいた頃からの付き合いというお二人ですが、子育てについて話したことはあまりなかったそう。今回は、お互いの子育て論や仕事と両立するコツなどを自由に語り合っていただきました!
<子育てが楽しくなる魔法のコトバ ?前編? はこちら>
??まずは、お二人の出会いをお聞かせください。
田中:青山のブックショップ『ユトレヒト』(現在は神宮前に移転)にアムールというカフェがあった頃、そこでたまたま席が隣になったのが始まり。店長さんを交えてワイワイ話していたら、その女性が店長の奥さまで、実は漫画家さんだったとあとで知ったんです(笑)。
ひうら:当時は自宅が青山で、その近所で主人がアムールを運営していて。その頃は千絵さんのオフィスも青山だったんですよね。そこから仲良くさせていただいていて、誕生会やイベントにもよく来てくれていました。
??お互いの子育てについてもよく話していたんですか?
ひうら:それがそういうことは意外と話さなかったんですよね。私が兵庫に移ってからは、サイトとかで千絵さんの記事を拝見して、すごいなぁと思っていました。特に、やるべき家事を全部洗い出して、希望を取りながら家族で分担しているのはすごいなと。息子さんたちが使っている「家事分担表」をもらったこともあります。
田中:そうそう!お送りさせていただきましたね!家事がどれくらいあるかって、書き出さないと理解してもらえないんですよね。男子には特に(笑)。ひうらさんの子育てですごいと思っていたのは、娘さんが小さい頃からよく海外に連れていっていたこと!
ひうら:当時、NHKの番組のロケで、2?3年間に10ヶ国くらい旅する機会があって。娘は保育園だったから休みやすいし、主人もフリーランスだったので、3人で一緒に行っていたんです。最初は大変なこともありましたが、何度も行くとコツがわかってくるんですよね。この前の夏休みはプライベートでヨーロッパに行ったんですが、インドア派の娘はけっこう疲れたみたいで、帰宅後の1行日記に「長い旅がやっと終わった」って書いてました(笑)。
??お子さんが生まれてライフスタイルも大きく変化したと思いますが、いちばん変わったことは何ですか?
ひうら:仕事をする時間帯ですね。もともと徹夜するタイプではなかったんですが、夜中1時とかまでは普通に起きていて。でも今は、3?4時に起きて、娘が起きてくるまで仕事して、娘と夫を送り出してから18時まで仕事して…という生活。仕事できる時間帯が決まっているので、朝型生活になってから仕事の効率はグッと上がりました。
田中:私も、昔は夜中まで仕事していたのが朝型に変わりました。特に保育園の頃は、自営業だと16時までに迎えにいかなきゃいけなかったので、それまでにどれだけ集中できるかが勝負。頭がクリアな午前中に入稿などを済ませて、午後は決めた時間内に打ち合わせ…というように工夫するようになりました。
ひうら:若い頃はがむしゃらにがんばることも必要だったけど、今はこの生活のほうが体も心も楽。以前は「あと何ページやったら終わり」という区切り方をしていましたが、たいてい過信するので(笑)結局できなくて投げやりになったりしていて。18時で強制終了の今は、近くに遊びにきた友達と夜ご飯を一緒に食べたりと、ずっと憧れていたアフターファイブ(笑)を楽しんでいます。
??ひうらさんは東京の都心から城崎に移住されたわけですが、未知の土地に住むことに不安はありませんでしたか? お知り合いはいたのでしょうか。
ひうら:城崎は主人の地元で、私も大阪出身なので近いといえば近いんですが、直接の知り合いはいませんでした。でも寂しさはあまりなかったですね。東京にいた頃は都心が大好きで、飲みの場に呼ばれたら夜中でもすぐに駆けつけていましたが、子どもが生まれてからはそうもいかなくなったので諦めがついた感じでしょうか。20年東京を満喫して、自然と心が離れていったのかも。梅田の近くで育って、東京でもずっと都心に住んでいたので、地方は逆に新鮮で退屈しませんでした。
田中:今住んでいらっしゃるところもすごく素敵そうですよね。
ひうら:温泉街なので、自宅から歩いて30秒のところの温泉に毎日入りにいきます。あと、主人が城崎国際アートセンターの館長を務めているので、そこにもよく出かけますね。舞台アーティストが滞在しながら稽古や制作に取り組める施設で、いろんなアーティストの方がいらっしゃるのでおもしろいんです。舞台などの生のものは、観たいと思ったら絶対に観にいくようにしていますね。ちなみにジャニオタなので、コンサートにもしょっちゅう行きます(笑)。
田中:ひうらさんは思考がすごくポジティブ。自分の今の生活を最大限に楽しもう!っていう姿勢を感じます。子育てなどで制限があるときは特に、楽しいほうばかり見ていたらキリがないですからね。
??田中さんもオフィスを青山から世田谷に移されたんですよね。
田中:はい。息子の学童保育が終わって、私が早めに家に帰らなくちゃいけなくなったので、自宅のそばにオフィスを移すことにしたんです。物件探しは息子と一緒にしました。学校帰りにそこで宿題をしたり、仕事を手伝ってもらったり、「秘密基地」みたいなオフィスにしようねって。
ひうら:千絵さん親子は、何でも参加型で楽しそう!
田中:自営ならではかもしれませんね(笑)。ひとつ、おもしろい物件があって。テニスコートの一角にある小屋みたいな物件で、もしかして、空き時間テニスできる?ってその気になっていたら、息子に「友達に家がテニスコートをやっていると思われたら説明に困るから絶対やめて」と言われてダメになりましたけど(笑)。物件探しも子どもにとってはいい経験。私はずっと実家暮らしで、いざ引越すとなったときに戸惑ったことがあったので。引越し業者さんも一緒に比較検討したりして、「引越しイベント」をみんなで楽しみました。
??お子さんとのコミュニケーションの取り方で工夫されていることはありますか?
ひうら:私は毎日娘と温泉に入るので、お風呂でその日あったことなどを話しています。まだ小2で甘えたい年頃なので、膝に乗ってくれたりしてかわいいですよ。友達が入ってくるとパッと離れるんですけど(笑)。
田中:女同士の裸の付き合いができていいですね?! うちは二人とも男の子だから。温泉に行ったら夫に任せられるので、ゆっくり入れるというメリットはありますけど(笑)。
ひうら:上のお兄ちゃんは中3ですよね。反抗期とかはありますか?
田中: 何があったわけでもないのに機嫌がただただ悪い、という時期はありましたね。反抗期ならではですが、親に対して何か思うところもあったんだと思います。そういうときはとにかく自尊心を守るようにしています。頭ごなしにけなさず、褒めポイントを探して褒める。「自分をちゃんと認めてくれていない」という思いが反抗心を生むと思うので。あとは下手に触らずに放っておきます。
ひうら: 女の子も反抗期がこわいと聞くので、今からちょっと不安。心が成熟してくる部分と、極端に子どものままな部分があって、そのバランスが取れなくて本人も辛いんですよね。もし反抗期が来たら、まずは自尊心を守ることを心がけます!
??ちなみに、おこづかいはどうされていますか? あげ方に悩む親御さんは多いと思います。
田中: うちでは家事をしてもおこづかいはあげません。家事はやって当たり前のことですから。ちょっとしたデータ入力を手伝ったら時給◯円、みたいなあげ方をしています。CDから曲を取り込んで曲名を入力するとか、簡単な作業を少し。そうして得たお金って、ただもらったお金とは違うので、使い道もよく考えるようになるんです。お手伝いを通じて普段教えられないような、何らかのノウハウも身につきますしね。
ひうら: 家事がおこづかいに換算されるのって確かに違いますよね。以前、娘に「ゲームアプリがほしい」と言われたので、1回100円で雑巾がけをお願いしたんですが、あとから「失敗した!」と思って。一度そうしてしまうと、家事をお願いするたびに「これやったらいくら?」と聞かれるようになるんですよね。「家事は家族で分担するものだから」と話して、家事でのおこづかいはナシにしました。
??お子さんたちのこれからの成長が楽しみですね。将来の夢などはあるのでしょうか?
田中:どうなんでしょう。私自身、デザイナーを志し始めたのは親の勧めで高校時代に予備校に入ってからなので、そんなに早くから考える必要もないと思っています。長男は情報を整理するのが好きみたいで、試験前は熱心にノートに切り貼りしたりしているので、レイアウトとか編集系の仕事とか向いているのかな? 次男は好奇心旺盛なタイプの小学生。金魚が好きだから金魚品評会を一緒に見にいったり、得意なルービックキューブの大会があると知って出場してみたり、一緒にいろんな世界を覗いています。そういう興味はどんどん引き上げてあげたいですね。
ひうら:娘は家でゴロゴロしていたいタイプなので(笑)、この先どんなことに興味を持つんでしょうかね。おしゃれにはやっぱり興味があるみたい。娘の誕生日に毎年靴を贈っているんですが、少し前までは「おもちゃがいい」と言っていたのに、最近は今まで贈った靴を全部並べて嬉しそうに眺めています(笑)。靴のプレゼントは娘が20歳になるまで続けるつもりで、20歳になったらマノロかルブタンをあげたいなと思っています。
??素敵すぎます!! 40代で出産・育児を経験されているひうらさんですが、大変な部分はありますか?
ひうら::「体力がいりそう」ってよく言われるんですけど、そんなに大変と感じたことはないですね。もともと体力も運動神経もありませんが(笑)。先輩ママからいろんな苦労話を聞いて覚悟していた分、思ったより大丈夫だったというケースも多いです。「揺らしていないと寝ないから、夜中にタクシーを呼んで近所をぐるぐるまわってもらった」という話も聞いてドキドキしていましたが、全然大丈夫でしたし(笑)。
田中:私も体力がなくて、朝礼でいつも具合が悪くなって保健室に行っていたタイプ(笑)。だから若いうちに子育てを終えたいと思って、29歳で長男を生みました。でも最近は医療や環境が進化して、年齢を重ねても出産や子育てをしやすい時代になっているので、ベストなタイミングって人それぞれですよね。
ひうら::本当にそう。早くに生めば若いうちに子育てから解放されるし、逆にある程度キャリアを積んだ私くらいの年齢で生むと、仕事から離れる不安は若い頃より少ないように思います。私の場合、『ホタルノヒカリ』の連載終了後の長期休暇をちょうど出産にあてられたのですが、20代だったら「休んでる間にチャンスを逃してしまう!」と焦っていたと思う。出産のタイミングも、子育ても、自分の思い通りにはならないですから、生んだらやるしかない! そう考えると、今を精一杯楽しめるようになると思います。
1966年、大阪府生まれ。1984年なかよしにてデビュー。代表作に『月下美人』『プレイガールK』『ホタルノヒカリ』『ヒゲの妊婦(43)』『メゾンde長屋さん』などがある。41歳で結婚、43歳で長女を出産し、現在は夫の地元である兵庫県豊岡市城崎町に在住。
講談社Kissにて「ホタルノヒカリBABY」連載中
WEB : http://www.satoru-h.com/
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1974年、東京都生まれ。武蔵野美術大学在学中に伯父である田中一光のもとでデザインを学び、卒業後は『TSUMORI CHISARO』『BEAMS』などのウインドウ・インスタレーションが話題に。デザイン全般、イラストレーション、アート、CMや映像の企画など、幅広いシーンで活躍している。著書であるペーパークラフトのアイデアブック『紙と日々、』(キノブックス)も好評発売中。
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