Spectators Evergreen Library vol.21   緑色世代の読書案内 Spectators Evergreen Library vol.21   緑色世代の読書案内

Spectators Evergreen Library vol.21
緑色世代の読書案内

SHIPS MAG 読者の皆さん、こんにちは。
スペクテイターの青野です。
今年も残すところ、あと僅かとなりました。街もすっかりクリスマス・モード。寒いけれど心が暖かくなる季節です。
ところで、クリスマスに大切な人と贈り物を交換しあう習慣が、いつ、どのようにして始まったのか、ご存知ですか。
今回は、クリスマスについて書かれた本から拾い集めた「クリスマスのトリビア」を紹介します。

Spectators Evergreen Library vol.21

“深夜のミサは、クリスマスに行なわれるキリスト教の行事としてはもっとも古いもので、いうまでもなく、クリスマスの名の由来となったのもこのミサだ。「クリスマス」の語は、古英語の「クリステス・マエセ」からきている”
(「クリスマス・ウォッチング」デズモンド・モリス/扶桑社)

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“実際の聖ニコラスは、4世紀、現在のトルコがあるミラという地域に住んでいた司教でした。裕福な家庭に生まれ育ったニコラスは、受け継いだ財産を故郷の貧しい人びとに寄付しました。そこから人を喜ばせるために贈り物をする行為が伝承され、今日のサンタクロースにまつわる習慣に発展していったのです”
(「サンタへの手紙」序文:J.ハーモン・フラッグストーン/クロニクルブックス)

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“「アメリカの政治風刺画の父」とされるトーマス・ナストは一八四〇年九月二十六日、ドイツのランダウという町で生まれ、六歳のときに母とともにアメリカに渡った。(略) 一八六二年、ナストは週刊誌「ハーパーズ・ウィークリー」の特派員として南北戦争の取材におもむく。彼の戦時報告は人気を博し、戦争が終わるころには彼の名前はアメリカ中に知れ渡っていた。またこの年の「ハーパーズ・ウィークリー」クリスマス号に彼は、クレメント・ムーアの詩「クリスマスの前の晩」に触発され、八頭のトナカイが引くソリに乗ったサンタクロースを描いた。ここで初めて、〈丸まる太ってニコニコ顔、白い髭をはやしたサンタクロース〉がこの世に登場した”
(「クリスマスの文化史」若林ひとみ/白水社)

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“大昔、サンタクロースの衣装の色はこれといって決まりはなかった。緑色の服を着ていることもあれば、紫色あり水色あり、藍色も茶色も赤もあった。(略) それが一変したのは一九三〇年代のことだ。コカ・コーラ社が冬の販売促進キャンペーンにサンタクロースを起用することを決め、一九三一年にハッドン・サンドブロムというアメリカの画家を雇って、おなじみのこの紳士の統一イメージをこしらえるよう依頼した。サンドブロムの描いたサンタ像は、三〇年代のはじめから六〇年代初頭まで市場を席巻した。こうして、これぞクリスマスに贈り物をもってやってくるおじさんのイメージ決定版というのができ上がったのだ”
(「クリスマス・ウォッチング」デズモンド・モリス/扶桑社)

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“新聞界で活躍した進藤信義が日曜学校の子供向き教材として書いた『さんたくろう』(教文館)という読本が明治三一(一八九八)年に刊行される。 ストーリーそのものは民話の『笠地蔵』のたぐいであるが、なんと、サンタクロースが、北国の親父〈三太九郎〉という日本名で表記され、しかも、この本の扉絵には、おそらく日本で最初と思われるサンタクロースの絵が描かれていた。この三太九郎の絵は、トナカイではなくロバを従え、片手にクリスマス・ツリー、もう一方の手には杖を持っている”
(「クリスマス どうやって日本に定着したか」クラウス・クラハト/角川書店)

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“クリスマスはもともと、キリスト教の祭りではなくヨーロッパで古くからおこなわれていた土着的な「冬祭り」を起源にしています。イエス・キリストがいつ誕生したのか聖書には記されていませんが、ローマ帝国で伝統的におこなっていた冬至の祭(サートゥルナリア祭)に合わせて12月25日が生誕の日と定められ、土着信仰とキリスト教が合わさり、クリスマスの原型がつくられました”
(「生と死の精霊たちとクリスマス」坂本大三郎/気流舎)

“近しい間柄の人々とおたがいに贈り物を交換し合う習慣は、冬至のしきたりのうちでももっとも古くから続いているものだ。遠い起源をたどれば新石器時代、すなわちおよそ一万年前、人類があてにならない狩猟採集生活を捨てて、もっと安定した収穫を得られる農耕社会に移行しはじめた時期にまで遡ることができる。(中略)冬至を迎えると、冬も峠を越える。それからあとは辛い日々は減る一方で、春のよき日がやがて戻ってくる。これはぜひとも盛大にお祝いをしなければならない。貴重な食料をけちけちと食いつないできたけれど、この日ばかりはいっとき息抜きをしようではないかというわけで、大宴会が催された(略) この料理の交換が、そもそも真冬の贈り物交換のはじまりであり、冬至の祝いの核として欠かせないものになっていった”
(「クリスマス・ウォッチング」デズモンド・モリス/扶桑社)

“太陽の力がもっとも弱くなる冬至の期間、生者の世界に、おびただしい数と種類の死者の霊が訪れてくる。この死者の霊のために、生者たちは、心をこめたさまざまなお供物の贈り物をしたのである。(中略) 生者はそこで、訪れた死者の霊を心をこめてもてなし、贈り物を与えて、彼らが喜んで立ち去るようにしてあげる。そうすると世界には、失われたバランスが回復され、太陽はふたたび力をとりもどして、春が到来して、凍てついた大地の下にあった生命がいっせいによみがえりを果たす季節が、また到来してくることになる”
(「火あぶりにされたサンタクロース」クロード・レヴィ=ストロース、中沢新一/角川書店)

“世界中には冬のお祭にやってくる様々な精霊がいます。 北欧のユールトムテは、クリスマスに家事を手伝ってくれ、お世話になった家ではお礼にお粥やスープをプレゼントします。 北米南西部に住むネイティブ・アメリカンのカチーナは仮面をかぶって村を訪れ、子供たちによい子で親の言うことを聞くように諭します。日本のナマハゲなどもその仲間です。 また、お祭りの時には生命の樹である、常緑樹のもみの木や樫の木、ヤドリギなどを飾りました。 これがクリスマスのお祭り、サンタクロースやクリスマス・ツリー、クリスマス・プレゼントの由来でした。 クリスマスのこの時期、精霊たちへの贈り物として、キャンドルに命の象徴でもある火を灯し、太古から続く死と再生のお祭りをともに祝いましょう”
(下北沢のイベント「小径のノエル」フライヤーより)

スペクテイター40号

写真は、下北沢で毎年クリスマスの時期に開催されている「小径のノエル」というイベントの模様です。小規模な個人経営店が店先にキャンドルを灯し、下北沢の街を彩る素敵な催し。参加者はキャンドルを目印にお店を巡り、ワークショップに参加したり、スペシャルメニューを味わったり、スタンプラリーを楽しむこともできます。寒い冬の夜にほっと暖かい気持ちになれる2日限りのイベントに、みなさんも参加してみては?

http://www.komichinonoel.info
開催期間=12月23日(土)と24日(日)の2日間
撮影=Momo Yago

〈参考図書〉
『クリスマス・ウォッチング』(デズモンド・モリス著、屋代通子訳/扶桑社)
『サンタへの手紙』(選者:メアリー・ハレル=セスニアック、序文:J.ハーモン・フラッグストーン、手紙翻訳:カヒミ カリィ/クロニクルブックス)
『クリスマス どうやって日本に定着したか』(クラウス・クラハト著、克美・タテノクラハト/角川書店)
『クリスマスの文化史』(若林ひとみ/白水社)
『気流舎通信Vol.2 PAPERS 04』「生と死の精霊たちとクリスマス」(坂本大三郎/気流舎)
『火あぶりにされたサンタクロース』(クロード・レヴィ=ストロース著、中沢新一訳・解説/角川書店)
下北沢のイベント「小径のノエル」フライヤーより

写真=矢郷桃

スペクテイター40号

スペクテイター40号

?特集:カレー・カルチャー

好評発売中
定価=1000円(税別)
発行=有限会社エディトリアル・デパートメント
http://www.spectatorweb.com/

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青野利光

青野利光| TOSHIMITSU AONO

1967年生まれ。エディトリアル・デパートメント代表。大学卒業後2年間の会社勤務を経て、学生時代から制作に関わっていたカルチャー・マガジン『Bar-f-Out!』の専属スタッフになる。1999年、『スペクテイター』を創刊。2000年、新会社を設立、同誌の編集・発行人となる。2011年から活動の拠点を長野市へ移し、出版編集活動を継続中。