毎号、ゲストの方にお友だちを紹介いただき注目アーティストを数珠つなぎにしていく本企画。巷を賑わせているトラックメーカーから始まり、ここ最近は徐々にミュージシャンの方たちが続くという展開に。第8弾となる今号は、相対性理論の永井聖一さんのご紹介で、GREAT3の片寄明人さんとショコラさんによる夫婦デュオ、Chocolat & Akito(ショコラ&アキト)が登場! おふたりの活動スタイルからファッションまで幅広くお話を聞きました。
「彼は音楽の趣味がわりと渋いので、話していても楽しいですね」(アキト)
??前号の永井さん(ex.相対性理論)からご紹介をいただいて、今日はよろしくお願いします! このコーナーはつながりの意外性も面白いのですが、そもそも永井さんとはどういうきっかけで出会われたのですか?
アキト 僕は音楽プロデュースの仕事もしているんですが、2007年頃かな、その頃手がけていたフジファブリックと同じEMI(現・ユニバーサルミュージック)のスタッフから「いい新人バンドがいるから観てみて」って話をもらったのが、相対性理論だったんです。まだ結成直後くらいで、会場も渋谷の小さなライブハウス、お客さんも20人くらいしかいなくて。でも、その頃から飛び抜けたセンスでしたね。家に帰って「すごいの観たよ!」ってショコラに話したくらい。
ショコラ 話を聞いていたからすごく気になって。でも数ヶ月後に私が観に行ったときはすでに人気が出ていて。
アキト 自主で音源を出してからは早かったですよね。僕が観たのは発売される直前だったのかな、永井くんのギターがザ・スミスのジョニー・マーを思わせるスタイルで新鮮でしたね。そのあとにショコラ&アキトと一緒にライブをやったり、僕らのライブに永井くんがギターで参加してくれたり。
ショコラ ショコラ&アキトの『扉』という曲ではリミックスをお願いしているし、私がソロのベスト盤を出したときは1曲プロデュースをしてもらって。家も近いから奥さんと遊びに来たこともありますよ。私がごはんの写真をInstagramにあげると「今から行ってもいいですか?」ってコメントが入ったりね(笑)。仲良くしてもらっています。
??フィーリングが合ったんですね。
アキト 僕よりもかなり年下なんですけど、彼は音楽の趣味がわりと渋いので、話していても楽しいですね。
??いまアキトさんの音楽活動はどんな感じなんですか?
アキト GREAT 3っていうバンドを1995年からやっていて、2004年に一度活動を休止をしたんですけど、2012年に再開してからは今も続けています。そしてもちろんショコラ&アキトがあって、その他にプロデュースもたくさんやっているって感じですね。
??ショコラ&アキトとしての活動ももう長いですよね。
アキト そうですね、11年くらい。
ショコラ なんかあっという間に10年以上経っちゃって。
「僕は自分以外のメンバーとの化学反応で曲を作るタイプ」(アキト)
??おふたりでやるときと、GREAT3ではまったく別の感覚なんですか?
アキト ミュージシャンのなかには、自分ひとりですべての音を作りたい人もいると思うんですけど。僕は自分以外のメンバーとの化学反応で曲を作るのが好きなタイプ。だから、ショコラ&アキトではショコラに触発されるし、新しいアルバムの『Chocolat & Akito meets The Mattson 2』では、一緒にやったカリフォルニアのザ・マットソン・ツーに触発されて曲やアレンジが生まれるんですよ。自分としては、そのときに作りたい音楽を作っているだけなんですけど、出てくるものは組む人によってかなり違いますね。
??ショコラさんは、アキトさんの作る音楽をどう感じられていますか?
ショコラ 結婚したのが20歳の頃で、私に音楽を教えてくれたのがアキト。なので、住み込みの弟子みたいな感じなんです。アキトの作る音楽は結婚する前から好きでしたし、ダサいって思ったことは1回もないですね(笑)
??それは素敵ですね。家でも音楽の話題は多いですか。
アキト 僕は音楽の話しかしていないかも。
ショコラ 9割がた…。
??えっ、ほぼ音楽じゃないですか(笑)
アキト 自分がプロデュースしているアーティストの音も聴いてもらいますし、一番意見が信頼できるパートナーであり、聴き手でもあって。
ショコラ 嘘を言えないから(笑)
アキト そう、基本的に嘘を言わない人なので厳しいときもあるんですけど。だから褒められると嬉しいですね。
「昔、テープを作ってくれたことがあったよね?」(ショコラ)
??ショコラさんは当初モデルとして活動されていて、1997年に歌手としてデビューされましたけど、どんなことがキッカケだったのですか?
ショコラ 当時、私が出演していたCMを観たレコード会社の人が声をかけてくれて。もともと音楽は好きだったので、ちょっとやってみようかなって。
??そのときに戸惑いはなかったですか?
ショコラ それがなかったんですよね。わりと自然にやっちゃって、いま考えるともっと怖気付いても良かったんですけど。
??そこからだんだんと歌の奥深さみたいなものに気づいていくわけですね。
ショコラ そうですね、アキトと19歳くらいで出会って世界がぐっと広がって、どっぷりと音楽に浸かっていった感じですね。
??それまではどんな音楽が好きで、どう広がっていったのですか?
ショコラ 最初は永井くんと同じくビートルズだったんですよ、中学生の頃かな。高校生になって、ジャミロクワイとかアシッドジャズとか、フリーソウルとかが好きになって。だからいまでも黒人に憧れがあるんですけど(笑)。アキトと出会ってからは、ステレオ・ラブとかハイ・ラマズとか。あとはトッド・ラングレンやキャロル・キング、ジョニー・ミッチェルなどのシンガーソングライターを教えてもらったり、ブラジル音楽とかソウルとかも。昔、テープを作ってくれたことがあったよね?
??うわぁ?、甘い思い出ですね。
アキト 覚えてないねぇ?。
ショコラ アシッドジャズが好きだって言ったら、「そういう音楽のもとになっているものを聴かないとダメだよ」って。
アキト あはは、偉そうなヤツだな。
ショコラ ソウルの名盤といわれているものをMIXしてカセットテープに入れてくれて。
アキト へぇ?、何を入れたんだろ。
ショコラ そのテープどっか行っちゃった(笑)。でも、そんな感じにありとあらゆるものを聴きましたね。
「まず最初に浮かぶのはムードなんです」(アキト)
??それがいまやご自身でも作曲されていますけど、何を使って作っているんですか?
ショコラ いまはウーリッツァー(ヴィンテージの電気ピアノ)で作ることが多いです。最初、アキトが仕事で家にいないとき、ひとりでやることもなく鍵盤を弾いてみたらいい感じのものができちゃって。
??これは毎回ゲストの方にお聞きしているのですが、おふたりはどういう方法で音楽を生み出しているのでしょうか? 例えば、アタマに浮かんだ風景を音にしているとか、メロディや音符が降ってくるとか、そういう抽象的な話なんですけど。
アキト 自分の場合は、まず最初に浮かぶのはムードなんですよ。ムードを決めるのはコード進行だったりするので、このコード進行だとこんなムードの曲になりそうだなって、それを繰り返しているうちに自然とメロディが生まれてきて。そのメロディのなかに、なぜか最初から言葉の母音だけこれがいいっていう感覚があって。それを元に初めはデタラメな英語風の歌詞が付いているんです。その母音の感覚をほぼ忠実に日本語に置き換えるので、作詞には時間がかかるんですけど。
??それは面白いですね! ちなみにムードっていうのはどういうものなんでしょう。
アキト 僕の場合はあまり明るい感じはなくて、メランコリックなものが多いかな。コード進行のなかに内包されている感情があって。
??つまり、気持ちや感情みたいなものを曲にしているんですね。
アキト あっ、それはそうですね。理論的ではなく、どちらかといえばエモーショナルなタイプだと思います。
??先ほどの化学反応の話も、自分以外の人と一緒にやるなかで生まれるムードなんですね。
アキト そうそう。セッションをしているなかで、ミュージシャンが出してくるコード進行やフレーズのなかに、自分が求めるムードを見つけたら「それっ!」っていう感じで、そこをどんどん広げていく作業が自分のコラボレーションのやり方で。ザ・マットソン・ツーは、そういう意味で好みなムードの感覚がとても近いんだなと思いました。本当に合わない人とは曲が作れないと思うんですけど、そういう相違がまったくなかったですね。
「天然でやってるだけなんで、よくわかんない」(ショコラ)
??ショコラさんはどういう風に作られていますか?
ショコラ 最初に「こういう曲を書いてみたいな」っていうのがあるんですよ。でも、全然違うものになっちゃうんだけど、そういうところから入るんです。鍵盤でコードを弾いて、このコード好きっていうのを集めていって、そこからメロディを考える。
アキト へぇ?、コードなんだ。僕はたまにコードよりもメロディが先に浮かぶことがあって、そういう曲は特別な強さみたいのがある。
ショコラ あっ、でもインストの曲はメロディが先だ。
アキト そうでしょ? それがすごいなと思ってたんだよね。彼女の作るインスト曲はすごく変わったメロディなんですよ、発狂したエリック・サティみたいな感じで(笑)
ショコラ 天然でやってるだけなんで、よくわかんないんですよ。う?ん、左手からきてるのかなぁ。
アキト ベースラインってこと?
ショコラ そう。
「不思議なことに出会うべき人と出会い、やるべきタイミングでできたりする」(アキト)
??おふたりを見ていると、自然なペースでいい感じの活動をされているなと思うんです。
アキト どうなんですかね、基本的には良い意味で流されているだけなんですよ。若い頃は野望や、それが叶わない不満も多かったんですけど、ここ数年はそういうのがなくなって。ただ目の前にあるもの、来たものを淡々とやっているだけ。何事も来るべきときが来たらすべてが動くだろうと思っていて、最近はそれが如実になってきてる。でも、結果的にすべてが仕組まれたようなタイミングで転がっていくので、いまはあんまり心配しないようになりました。そうすると不思議なことに、出会うべき人と出会い、やるべきタイミングで夢が叶ったりするんです。
??最近は、野外のイベントにも出られたりしていますよね。
アキト ショコラ&アキトで大型フェスにでたことはないんですけど、地方の小規模なフェスはよく呼んでいただいていて。町ごとに色があってユニークだし、音楽的にも面白いから楽しいですね。どんな場所にも音楽が好きな素敵な人がいっぱいいて。プラスチックケースがボロボロになった、僕らの古いCDを持ってきてくれたりして。当時、あまりツアーをしないタイプのミュージシャンだったので、いまになって当時から僕らの音楽活動を支えてくれた人たちと出会えて、自分がなぜミュージシャンとして続けられたのかを教えられる、すごくありがたい旅を続けてます。
ショコラ 夫婦なので家族旅行みたいなんですよね。前日入りしたり連泊したりして、温泉入ったり、器の窯元を訪ねたり、民芸品を見たり。そうやって観光スポットを必ずおさえるから本当に楽しいよね。
アキト スタッフを連れずにふたりだけで行くことが多いから観光写真ばかりで、ライブ中の写真がないんですよ(笑)
ショコラ 何しに行ってるんだって言われるんですけど、私たちはラッキーだよね。
??イベントのスタッフさんも、そういう風に楽しんでくれたら嬉しいと思いますよ。やはり、90年代からずっと追いかけてくれているファンが多いですか?
アキト そういう方も多いですし、僕がプロデュースしたバンドをきっかけに聴いてくれた若い子たちや、GREAT3に26歳の新メンバーが入ったこともあって、その世代も多いし、最近は年齢層も幅広いですね。
「アキトのTシャツを整理しようとすると大量のボーダーが色違いで出てきて」(ショコラ)
??ショコラさんのイメージってずっと変わらないなと思うんですけど。
ショコラ 最近、好きなファッションがミニマム化してきてはいるんですけど…。20代の頃はもっと派手だった気もして、あれっ? そんなこともないか。このピアスとかミニマムじゃないよね。
アキト 基本的なところは変わってないですよね。
??ファッションとか、ショコラさんから影響を受けたりしますか?
ショコラ 全然受けないですよ、こだわりがすごくて。これだ! と思わないと、なかなか洋服も買わないし。
アキト 気に入ると同じ洋服ばかりを着たり、同じものを何着も買うタイプなんです。
ショコラ いま自分のなかで収納ブームなんですけど。アキトのTシャツを整理しようとすると大量のボーダーが色違いであって、同じ色でもあせてるものと新しいものとかたくさん…(笑)
アキト 中学からモッズ少年だったんですよ。そのシーンには、クロマニヨンズのヒロトさんとかマーシーさん、コレクターズの方々とかがいらっしゃって、当時は一番年下だったんですけど。彼らやポール・ウェラー、スモール・フェイセスのスタイルに憧れていて。
??モッズの方のこだわりはすごいですからね。
アキト 僕も16?17歳でバイトしてベスパに乗って、仕立てのスーツを作ったりしていたから、こだわってましたね。その感覚がいまだに抜けないのか、基本的にはモッズから派生したオールドスタイルなデザインが好きで。だから、デザイナーが奇抜なデザインをした洋服に抵抗があるんですよね。でも、最近はショコラにお伺いはたてますよ。「これどうですか?」って。
??一緒に買い物に行くことも多いですか?
ショコラ ありますね。でも、東京よりツアー先で買うことが多いですね、なぜかね。
アキト 海外でも買っちゃうね。
??では最後に、今年の予定を教えてください。
アキト 5月末にザ・マットソン・ツーが来日して、全国6箇所のツアーを4人でやります。あとは合間に日本中を回ったり、ショコラのアクセサリーの展示会をやったり、最近僕はNHK-FMでラジオの番組を初めたり…。
ショコラ いまはザ・マットソン・ツーとのライブであたまがいっぱいですね。
??ライブ楽しみにしています! 今日はどうもありがとうございました。
『Chocolat & Akito meets The Mattson 2』
¥2,500(+TAX)
2012年の『Duet』に続く4thアルバム。全曲をトロ・イ・モア、トミー・ゲ?レロ、レイ・バービー、etc…との活動で知られるカリフォルニア発、20代の若き双?子サーフ・ジャズ・デュオ The Mattson 2(ザ・マットソン2)と共作している。
2008年に両者が出逢ってから約8年の月日をかけて制作、熟成された全9曲は、アメリカ西海岸の香りがするJazzyでNaturalでPopなサウンド。キュートなジャケットは、トータスのドラマーであり、タトゥーアーティストでもあるジョン・ハーンドンによるもの。
Chocolat & Akito meets The Mattson 2 Official Page
http://chocolatandakito-mattson2.strikingly.com
『Chocolat & Akito meets The Mattson 2 Japan Tour 2016』
全会場: 前売り¥3800 当日¥4200(ドリンク別)
5/26(木) 名古屋 NAGOYA K.D. ハポン
開場 19:30 開演 20:00
http://www2.odn.ne.jp/kdjapon/
5/27(金) 大阪 OSAKA Conpass
開場 19:00 / 開演 19:30
www.conpass.jp/
5/28(土) 逗子 ZUSHI Surfers
開場 17:00 / 開演 18:00
http://surfers.jp
5/30(月) 福岡 FUKUOKA Brick
開場 19:00 / 開演 19:30
http://www.brick-fukuoka.jp/
5/31(火) 広島 HIROSHIMA Club Quattro
ゲスト:jan and naomi
開場 18:00 / 開演 19:00
http://www.club-quattro.com/hiroshima/
6/2(木) 東京 原宿 HARAJUKU',' TOKYO アストロホール
開場 18:30 / 開演 19:30
http://www.astro-hall.com
Chocolat | ショコラ
1978年、東京生まれ。97年デビュー。現在までに4枚のソロアルバムをリリース。
2005年にパートナーである片寄明人(Great3)とのユニット、Chocolat & Akito(ショコラ&アキト)を結成、3枚のアルバムをリリースしている。
また、自らデザインを手がけるアクセサリー・ブランド「Corchea(コルチェア)」を2003年に設立。現在では入手困難なベークライト素材など、貴重なヴィンテージ・ボタンを世界中から蒐集し、それらを贅沢に使用した1点ものアクセサリーなどが人気を博している。
www.chocolat.ne.jp
Akito(アキト) | 片寄明人
1968年東京生まれ。'95年、Great 3のボーカル&ギターとしてデビュー。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに確固たる地位を築いている。'00年には単身渡米、Tortoise、Wilcoのメンバーらと、ソロアルバム『Hey Mister Girl!』を制作。2005年、妻のショコラとChocolat&Akitoも結成。近年はプロデューサーとしても活躍。「DAOKO」「Czecho No Republic」「フジファブリック」などを手がけている。
2016年よりNHK-FM 毎週日曜16時『洋楽グロリアス デイズ』のDJも担当中。
https://about.me/akitokatayose