NPO法人 下田ライフセービングクラブの活動理念に賛同し、1995年からその発展と振興をサポートしているSHIPS。前回に引き続き、今号もひと足早く、夏の海水浴シーズンに向けて、知っておくと役立つ知識をお伝えしていきます。教えてくれたのは、下田ライフセービングクラブ所属インストラクターの來島慎太郎さん。海に潜む危険生物や、リップカレント(離岸流)の怖さなど、さまざまな角度からお話を聞きました。
海を過剰に恐れる必要はないのですが、どういった危険があるかを知っておくことで、いざというときに役立つことは多いと思います。ここでは海で起こりうる基本的なことをまとめているので、ぜひご覧ください。また、海で何かトラブルがあった場合は、すぐに片手を大きく左右に振ってください。これは「助けて!」のサインですので、ライフセーバーが素早く出動します。
カツオノエボシ
見た目がユニークで色もキレイなので知らずに触ってしまう人も多いカツオノエボシ。本州以南の沿岸部に棲み、暖流に乗ってくる。関東地方ではよく知られた存在で、青い気泡体で海水に浮き、風が沖から吹いているときに現れることがある。触手は長いもので10メートル近くあり、刺されるとしびれるような痛みが出る。その後、ミミズ脹れができ、ひどい場合は頭痛、嘔吐、呼吸困難、ショック症状に陥ることも。
アンドンクラゲ
沖縄から北海道までの全域に生息し、8?9月にかけて沿岸に漂着するが、下田ではあまり見かけることがない。日中は水中深く沈み、夕方や早朝、または曇りの日に水面近くまで浮き上がってくる。立法体をした3センチほどの傘の四隅から6センチほどの触手が伸びているのが特徴。刺されると、カツオノエボシと同じく、しびれるような痛みが出る。その後、ミミズ脹れができ、頭痛、嘔吐、呼吸困難、ショック症状に陥ることも。
アカクラゲ
沖縄から北海道まで分布しており、春から初夏にかけて沿岸部に漂着する。関東地方では千葉の海に現れることが多い。直径10センチほどの傘に16本の褐色の放射模様が見られるのが特徴。40本もの触手を持ち、そのすべてに毒針となる刺胞(しほう)があり毒性も強い。刺されると激しい痛みと炎症を起こす。
ミズクラゲ
日本近海でもっともよく見かけるクラゲのひとつ。傘に透けて見える胃腔、生殖腺が4つあることから、ヨツメクラゲとも呼ばれる。毒針となる刺胞(しほう)があるが、刺されても痛みを感じることは少ない。しかし、人によっては痛みや痺れ、ショック症状になることも。注意しておきたい。
応急手当
まずは海水で洗い流して触手や刺胞(しほう)を取り除く。この際、触手に触れてはならず、流れないときはゴム手袋をはめて刺激しないよう静かに取り除く。擦るのはNG。その後、氷嚢や冷たい缶ジュースなどで患部を15分程度押さえて冷やす。その後、症状が落ち着けば問題ないが、それでも痛みが残るようなら病院へ。
アカエイ
中部寄り南の日本全域と東シナ海に分布している。最大全長1メートルほどで、浅海や、やや深いところの砂底で、砂に埋もれて隠れていることが多い。そのため、気づかずに踏みつけてしまうことも。すると、毒腺のある尾っぽ部の鋭いトゲが、サソリのように丸まって刺されてしまう。刺されると深い傷を負い、痛みが長時間続く。傷口周辺は赤紫色に腫れあがり、水疱が出る。重症になると、血圧降下、下痢、発汗、呼吸障害を起こし、死に至る場合もある。
応急手当
擦らずにトゲを注意深く取り除き、受傷部位を40?45℃のお湯に60?90分程度浸けると痛みが和らぐ。というよりも、お湯に浸けていないと痛くて耐えられないほどだとか。ひどい場合は5時間ほど痛みが続いたという例も。クラゲの応急手当は冷やすことだが、エイは温めるので注意。そして、必ず病院に行くこと。
ウツボ
本州中部以南の太平洋沿岸の浅い海や、岩影、岩穴に生息。主に夜間に活動する。体調は0.8?1メートルに達し、口が大きく目の後ろまで避け、毒はないが歯は鋭く、顎も強い。一度噛みつかれると容易に外すことができず、無理に引くと傷口が避けて強い痛みと出血をともなう。日中の海水浴場にいることは珍しいが、ダイビングや磯遊びをする際には注意をしたいところ。
応急手当
傷口を真水でよく洗い流し、ガーゼやタオルがあればただちに圧迫止血をおこなう。そして、傷口を心臓より高い位置に保つ。また、二次感染予防のため病院に行くことをおすすめする。
ヒョウモンダコ
インド洋から太平洋域の暖かい海に広く分布している。日本では伊豆、沖縄、宮古、八重山諸島に分布。近年、伊豆半島の西海岸などでも見られるようになり ニュースでも取り上げられるようになった。ちなみに下田では以前より生息が確認されている。体調12センチ程度の小型のタコなので、そのかわいさからつい捕まえがち だが、フグと同じ神経毒を持っているため、噛まれると呼吸筋麻痺を起こし心肺停止状態になることがある。
応急手当
噛まれたらすぐに毒を絞り出し、受傷部位をきつく縛る。その後、ただちに病院へ。
リップカレント(離岸流)
波が多い日に起きやすい現象で、沖へと戻る海水の流れが一箇所に集中してしまうことを指す。沖へと向かう流れが集中した場所(リップカレント)は、どんなに屈強なスイマーでも抵抗するのが不可能なほどのパワーを秘めている場合もある。そのため、流されてしまった場合は抵抗することなくそのまま流され、落ち着いたところで横方向へ移動。その後、波の力を利用して浜辺へと戻るのが最善だ。リップカレントが起きる場所は、サンゴ礁や岩の海岸では常に定位置の場合もあるが、砂の海岸などでは流動的なので常に注意しておきたい。また、大潮の日や満潮のときには突然現れやすい。そのほか、人工の固定物の周辺はリップカレントが起きやすいので近づかないのが一番だ。
?リップカレント(離岸流)の見つけ方?
・海底の砂が巻き上げられて海水が濁り、海の色が周囲と異なっている
・その場所だけ、沖に向かって波がない
・波が崩れたときにできる泡やゴミが沖に向かって流れている
・波が穏やかなときでも波紋が現れる
レスキューチューブ
持ち運びが容易で、ライフセーバーはパトロールの際に常時持ち歩いている。これひとつで、大人3人が浮いてられる程度の浮力がある。また、両端をフックで留めれば浮き輪のようにすることが可能。これを持って出動する場合は、フィン(足ヒレ)を付けて行くことが多い。
レスキューボード
沖へ素早く出ることができるため、海岸から遠方で救助するときなどに使用する。通常は、救護者をボートの上に乗せて救助するが、人数が多いときなどはつかまってもらいバタ足で移動する。最大で大人10人程度がつかまることができる。操作が難しいため、練習を重ねないと扱うことが難しい道具でもあるが、熟練したライフセーバーが使用することで、迅速な救助を行うことができる。
インフレータブル レスキュー ボード
エンジン付きのゴムボートで、浜から遠く離れた沖での事故や、救助者が複数いた場合など、迅速に救助に向かうことができる。一度に最大で大人4?6名の救助が可能。
伊豆半島の東側にある下田ライフセービングクラブのパトロールエリアは、白浜、外浦、吉佐美、南伊豆の4地区に分かれていて、それぞれ特徴のある美しいビーチを誇っている。ここでは各浜の特徴を紹介していこう。
?白浜地区 (白浜大浜海水浴場/白浜中央海水浴場)
ここには白浜大浜海水浴場と白浜中央海水浴場があり、どちらも白く美しい砂浜が広がっている。若者の人気スポットとして知られるが、波のサイズや流れが穏やか場所が多いのでファミリーにも愛されている。
?外浦地区 (外浦海水浴場)
入り江にある静かなビーチで、透明度も高く家族連れや女性に大人気。沖合いではウィンドサーフィンやシーカヤックが盛んにおこなわれている。また、臨海学校の授業でこの場所を訪れる学校も多い。
?南伊豆地区 (弓ヶ浜海水浴場)
弓ヶ浜海岸は伊豆半島の南側にあり、全長1.2キロメートルと長い海岸線が特徴。湾内にあるため、波が穏やかで、アカウミガメが産卵に訪れる癒し系ビーチとしても知られている。ファミリー層に人気のスポット。
?吉佐美地区
(吉佐美大浜海水浴場/舞磯浜海水浴場/入田浜海水浴場/多々戸浜海水浴場)
両側を岩場で区切られた4つの海水浴場を有するエリア。
吉佐美大浜:家族連れに人気の落ち着いた浜ながら、波が立つ日はサーファーに人気のスポットに変身。
舞磯浜:約50メートルと狭い海水浴エリアながら、磯場が多いので磯遊びに最適。家族連れに人気。
入田浜:堤防もなくもっとも自然に近い浜として知られる。サーファーからファミリー層まで幅広く愛されている。
多々戸浜:高波の立つサーフスポットとして知られ、この浜から多くのプロサーファーを輩出した。
21シーズン目となる「SHIPS ジュニアライフセービングコース」では、安全についての知識を本で読んだり聞いたりするだけでなく、経験を通して身につけることで、安全の啓蒙と事故の予防を目的としています。
2016年の開催日・会場
第1回 7月30日(土)白浜大浜海岸(静岡県下田市)
第2回 8月6日(土)入田浜海岸(静岡県下田市)
第3回 8月13日(土)弓ヶ浜海岸(静岡県南伊豆市)
時間:13:00?15:30 ※集合・受付12:30
■対象:小学生(1回につき定員30名)
ジュニアの保護者の方にも、ライフセービングに関する理解を深めていただくプログラム(約30分)をご用意しています。
■参加費:1,000円(傷害保険の費用含む)
※当日会場にて徴収させていただきます。
※参加者にはSHIPSオリジナルのジュニアライフセービングTシャツをプレゼント。
※Tシャツは毎年デザインや色が異なります。
■集合場所:各ビーチのSHIPSテント前
■お申し込み方法:SHIPSホームページにありますSAFE & CLEAN CAMPAIGN21のSHIPSジュニアライフセービングコースのご案内からお申し込みいただくか、申込書に必要事項をご記入の上、SHIPS各ショップへお持ちください。(申込書はSHIPS KIDS各ショップにてご用意しております)
■お問い合わせ先:SHIPSホームページ www.shipsltd.co.jp
特定非営利活動法人 下田ライフセービングクラブ事務局 TEL.0558-27-1557
■クリーンキャンペーン
美しい自然を守るために、ビーチにいる方々に呼びかけをし、皆で一緒にゴミ拾いを行います。参加者には、SHIPSオリジナルノベルティ等をプレゼントします。
日程:7月16日(土)?8月28日(日)
時間:毎日午後1回実地
場所:下田市内ビーチ(白浜大浜・白浜中央・外浦・多々戸浜・入田浜・吉佐美大浜・
舞磯浜)南伊豆(弓ヶ浜)
■セーフティーキャンペーン
海の安全のための活動として、1日2回の「たすけてサイン」を実地します。
日程:7月16日(土)?8月28日(日)
時間:毎日午前・午後2回実地
場所:下田市内ビーチ(白浜大浜・白浜中央・外浦・多々戸浜・入田浜・吉佐美大浜・舞磯浜)南伊豆(弓ヶ浜)
■スポーツキャンペーン
一般参加のビーチフラッグスを通じて、ライフセービングが体験できます。上位入賞者には、SHIPSからオリジナルグッズをプレゼントいたします。
日程:7月31日(日)白浜大浜 8月7日(日)吉佐美地区 8月14日(日)弓ヶ浜
時間:11:00?
■クイズキャンペーン
安全についての知識をクイズ形式で楽しみながら身につけていただきます。海の知識や下田に関する問題、またファッションについての様々な問題を出題。全問正解者には抽選でSHIPSオリジナルグッズをプレゼントします。
日程:7月31日(日)多々戸浜・入田浜・吉佐美大浜・舞磯浜・弓ヶ浜 8月7日(日)白浜大浜・白浜中央・外浦・弓ヶ浜 8月14日(日)白浜大浜・白浜中央・外浦・多々戸浜・入田浜・吉佐美大浜・
舞磯浜
時間:11:00?
※各キャンペーンは、天候などにより変更になる場合がございます。
※プレゼントは無くなり次第、終了とさせていただきます。
下田へのアクセス
電車の場合
東京駅から終点伊豆急下田駅まで「特急踊り子号」で約3時間。
車の場合
東京駅から東名厚木→小田原→国道135号→河津→下田
伊豆の東海岸を眺望しながら東名厚木より約3時間30分。
伊豆急下田駅徒歩3分の場所にある、下田ライフセービングクラブ御用達のそばの名店。こしのある細麺に舌鼓を打てば、暑い夏でも気分爽快です!
蕎麦 いし塚
住所:静岡県下田市敷根4-21
電話:0558-23-1133
http://www.xn--ghq0xt92gnkt.jp/
來島慎太郎 | Shintaro Kijima
下田ライフセービングクラブ理事兼白浜地区パトロールディレクター
日本ライフセービング協会サーフライフセービングインストラクター
日本ライフセービング協会 JLA ACADEMY 指導委員会BLS分科会委員
※BLS:一次救命措置(Basic Life Support)
2001年 大学入学と同時にライフセービング部に入部、下田LSCに所属
2003年 全日本室内選手権大会 アセスメントテスト競技優勝
全日本学生選手権大会 ボードリレー準優勝
2004年 全日本学生選手権大会 ボードリレー第3位、CPR(心肺蘇生法)競技優勝
2005年 全日本選手権大会 レスキューボードレスキューレース準優勝
2008年 日本ライフセービング協会公認インストラクター資格取得