いま、日本は空前のコーヒーブーム。こだわりのカフェからコンビニまで、街のあちこちでいろんなコーヒーを味わえるようになりました。この第3次コーヒーブーム、いわゆる「サードウェーブ」とは、一体どんなムーブメントなのでしょうか? ノルウェーに本店を構える人気コーヒーショップ『FUGLEN TOKYO(フグレン トウキョウ)』にお邪魔して、サードウェーブコーヒーにまつわるお話をたっぷり伺ってきました!
「サードウェーブ」とは、2000年頃にアメリカで始まったとされるコーヒー・ムーブメント。「サード」というくらいですから、「セカンドウェーブ」や「ファーストウェーブ」ももちろんありました。まずはコーヒーの歴史を紐解いてみましょう。
真空パックをはじめとする食品加工技術や遠距離流通が急発展し、スーパーなどで安価なコーヒーを買えるように。コーヒーが一般家庭で飲まれるようになったのはこの頃からです。浅煎りのいわゆる「アメリカンコーヒー」が大量に生産・消費されました。
スターバックスコーヒーに代表される、シアトル系コーヒーショップが登場。高品質の豆を深煎りした、濃厚なコーヒーがブームになりました。ミルクと合わせてカフェラテにしたり、テイクアウト用におしゃれなフタつきカップを用意したりと、店ごとのさまざまなアレンジが大ヒット。
「キリマンジャロ」「ブルーマウンテン」などの従来の銘柄は、国や地域ごとに複数の農園の豆をブレンドしたもの。一方でシングルオリジンとは、単一種の苗木から収穫した豆だけを使用するコーヒーのことです。豆の産地を重視し、それぞれの個性を味わうための焙煎や淹れかたを追求するスタイルが、サードウェーブの最大の特徴。味の違いを最大限に楽しめるよう、浅煎りが主流となっています。
サードウェーブの流れを汲んだカフェの出店が相次ぐ日本。2012年に東京の富ヶ谷にオープンした『FUGLEN TOKYO』は、ノルウェーの老舗コーヒーショップ『FUGLEN』の海外進出第1号店として、出店当初から注目を集めています。
今回取材に応じていただいたのは、『FUGLEN TOKYO』でデータイムマネージャーを務める力武元太さん。10年近くコーヒーの仕事に携わっているという大のコーヒー好きの力武さんに、サードウェーブを気軽に楽しむ方法をお聞きしてきました。
『FUGLEN TOKYO』データイムマネージャー 力武 元太 Genta Rikitake
――北欧って、実はコーヒー大国なんですよね。
そうなんです。『FUGLEN』本店があるノルウェーの一人当たりのコーヒー消費量は、ルクセンブルク、フィンランド、ベルギーに次いで4位です(※)。本店に出張して1日働かせてもらったことがあるのですが、ノルウェーの人たちは1日に何杯もコーヒーを飲むのが当たり前。日本以上に日常に溶け込んでいるんだなぁと感じました。
※2014年7月 IOC(国際コーヒー機関)統計より
――『FUGLEN』は地元ではどんなお店なんですか?
1963年にオスロで創業した老舗コーヒーショップです。オスロは、かつてニューヨークタイムズ紙で「世界で最高、飛行機に乗ってまで試しに行く価値あり」と絶賛されたほど、コーヒーのクオリティが高いことで知られる地域。その中でも『FUGLEN』は、昼はエスプレッソバー、夜はカクテルバーとして、地元の人たちに親しまれてきました。唯一の海外店舗である『FUGLEN TOKYO』は、本店で修行を積んだ代表の小島がオープンした店舗です。1963年当初のヴィンテージな店内を再現し、本店と同様にカフェ&バーとして営業しています。
――『FUGLEN TOKYO』で働くことになった経緯を教えてください。
以前はシアトル系コーヒーショップで6年ほど働いていました。といっても、昔からコーヒーが大好きだった、というわけではないんです。地元の鹿児島では当時カフェが珍しく、「おしゃれなお店で働いてみたい」というミーハーな気持ちから始めた仕事でした(笑)。その後コーヒーの魅力に夢中になり、上京してさらにコーヒーの仕事を追求しようと思っていたときに、縁あって知り合ったのが小島代表。そこで声をかけてもらいました。
――『FUGLEN TOKYO』のことは知っていたんですか?
はい。上京してからリサーチを兼ねていろんなカフェに通ったんですが、ピンと来るコーヒーにはなかなか出会えずにいました。そんな中、オープン直後で話題になっていた『FUGLEN TOKYO』に行ってみたら、豆本来のフルーティな味わいにものすごく感動して…。だから、代表に「うちで働かない?」と声をかけてもらったときは嬉しかったです。
――いま本日のコーヒーをいただいていますが、果実を絞ったような味わいですね。おいしいです。
ありがとうございます。当店のコーヒーの特徴は、豆そのものの味を最大限に活かした浅煎り。新鮮で高品質の豆を使っているからこそ、浅煎りでも雑味のないおいしさが出せるんです。以前はオスロから焙煎豆を空輸していましたが、鮮度や品質をより高めるため、現在はオリジナルの焙煎所でローストした豆を使っています。
――コーヒーをもっと楽しみたい方のために、アドバイスをいただけますか?
コーヒーを楽しむ方法は、ひとつではありません。味を楽しむもよし、知識や技術の追求を楽しむもよし、淹れるひとときを楽しむもよし、はたまたカフェ独特の雰囲気を楽しむもよし。まずは「コーヒーを通じてどんな時間を過ごしたいか」から考えてみてはいかがでしょうか。私の場合は、カフェという空間でお客様においしいコーヒーを提供することに楽しさを感じているので、『FUGLEN TOKYO』という空間全体を通じてコーヒーの魅力を伝えていきたいと思っています。
――自宅でおいしいコーヒーをいただくためのポイントがあればぜひ。
お気に入りのコーヒーを出すカフェがあれば、店員さんにコツを聞いてみるのがおすすめ。豆の種類や淹れかたを聞いたら、まずはそれを再現するところから始めてみてください。『FUGLEN TOKYO』でも、私やスタッフに声をかけていただければ詳しくお答えしますよ。
豆を均一に挽くことは、豆本来の味を引き出すための大切なポイント。購入したお店で、プロの手で挽いてもらうといいと思います。ただし、ミル(グラインダー)を使って自分で挽けば、より香りのいい新鮮なコーヒーを味わえるという利点も。器具に合わせた挽き具合があるので、新たにミルを買う場合は機能をチェックしてみてください。
『FUGLEN TOKYO』で使っている「エアロプレス」は、空気圧で瞬時に旨みや香りを抽出するコーヒー器具。確実かつスピーディに豆の味が反映されるので、ビギナーの方にもおすすめです。一方で、淹れる時間や手間そのものを楽しみたいという方には、ドリッパーが○。ご自身の好みに合った器具を選んでくださいね。
ドリップでコーヒーをおいしく淹れるためのキホンを、力武さんに実演していただきました。まずはこの淹れかたをマスターして、そこから自分なりに少しずつアレンジしていきましょう。
温度が高いほど豆の味は出ますが、同時に雑味も出やすくなります。『FUGLEN TOKYO』では93℃。家庭では沸騰したら30秒ほど待つか、ポットに移して温度を少しだけ下げましょう。
紙の味や匂いをなくすために、セットしたフィルターにお湯をゆっくりかけます。『FUGLEN TOKYO』で使っているのは、コーヒー機器総合メーカー『Kalita』のウェーブドリッパーとウェーブフィルター。ドリッパーとフィルターの接触面が少ないため、特定の箇所にお湯がたまらず、スムーズにドリップされます。
コーヒーをフィルター内に入れます。きちんと量って入れるのがポイント。
タイマーをスタートさせて、お湯を静かに注ぎます。コーヒーに水分が行き渡ったら、軽く混ぜて30秒ほど待機。このひと手間が、豆の味をしっかり引き出してくれます。
お湯が直接フィルターに当たらないように、低めの位置からそっと注ぎます。お湯の量は(4)と合わせて250cc。最初にお湯を入れてから2分を目安に抽出し終わるように調整して、できあがり!
築40年ほどの一軒家をリノベーションした店舗。FUGLENとはノルウェー語で「鳥」を意味するそう。
『FUGLEN TOKYO』
東京都渋谷区富ケ谷1-16-11 1F
小田急線「代々木八幡駅」・東京メトロ千代田線「代々木公園駅」より徒歩5分
JR山手線「原宿駅」より徒歩10分
03-3481-0884
月・火 8:00?22:00
水 8:00?翌1:00
木 8:00?翌1:00
金 8:00?翌2:00
土 10:00?翌2:00
日 10:00?翌0:00