SHIPS MAG 読者のみなさん、こんにちは。
スペクテイター編集部の青野です。
今回は4月下旬頃に発売予定のスペクテイターで特集する「文章を読むこと」そして「書くこと」にまつわる話をしたいと思います。
鋭意編集作業中なので正式なタイトルや詳しい中身についてはお伝えできませんが《クリエイティブライティング》というキーワードのもとに古今東西の優れたノンフィクション作品を紹介したり、自分で集めた素材をもとに文章を執筆することの価値を掘り下げる特集にしたいと思っています。
スマートフォンやSNSと向き合うことが日常生活の一部に組み込まれたおけげで、わたしたちは今まで以上に多くの活字を読んだり書いたりするようになりました。
若者の活字離れが進んでいると囁かれているけれど、世界中の人が一日じゅうスマホやパソコンに流れてくる活字を追いかけている。その質はさておき、これほどまでに一般の人が発信した活字が身近に溢れていた時代があったでしょうか。
こんな時代だからこそ読みたい/読まれるべきクリエイティブライティング作品とは?スマホ全盛の時代に活字を読む/書くことの意味とは?
次号では、その答えを編集部が選んだ傑作ライティング作品や先輩ライターたちの言葉のなかに見いだし、これからのライティング=文章とのつきあい方について考えてみようというわけです。
ところで、ここに積んであるのは(ビジュアル=本を積んだ切り抜き写真?)僕が個人的に所有している、本棚のあちこちに散らばっていた文章術・取材術の類いの本を集めたものです。
「日本語の作文技術」から「取材術」まで。まがいなりにも編集者として書き手に意見を言って手直しをしてもらう立場上あまり公開したくはないのですが、本棚を整理するたびにこの手の本がザクザク出てくるのには我ながら驚かされます。本当だったら取材のイロハは会社の先輩に教えてもらったりすることかも知れないけれど、自分たちで取材をして、自分で原稿を書いて、編集してできあがった雑誌を自分たちで販売するという、いわば家内制手工業スタイルで雑誌を作ってきた僕は、文章の書き方も自己流で学ぶしかなかったのです。
ライターが寄せてくれた原稿をより良いものへと仕上げていくために編集者としてどんなアドバイスをおこなえばいいのか? 自分の書いた文章はこれで大丈夫か?
そんな不安や疑問を常に抱きながら編集・執筆活動をおこなってきました。
そんなときに頼れたのが、これらの本でした。
残念ながら、ここに積んであるような本は、「なるほどー!」と赤線を引きながら読み進めているときは小説でも長編ルポタージュでも何でも書けるような気にさせてくれるけど、自己啓発系のビジネスの本と同じで、一冊、二冊読んだところで劇的に上手になるというものではなさそうです。文章というのは、多くの作家が言うように、自分で頭を悩ませながら書き続けることだけが上達できる唯一の道だと、まぁ、これも、こういった本を読んでわかったことでもあるのですが…。
もっとも、こうした本を読んできた理由は、日本語の正しい使い方にまつわる不安を解消するためだけではありません。
ノンフィクション作家によって書かれた取材術の本などは読み物としても面白いものが多いのです。さすがに手練れのノンフィクションライターの文章術だけあって構成も引用も絶妙で、一本のルポが誕生するまでの経緯や取材の裏話などはとても読み応えがあります。また、例に出てくるノンフィクション作品のタイトルは、そのまま読書ガイドとして役に立つ。さすが一流の舞台で活躍するライターは誰もが一流の読書人であり、面白そうな本を紹介してくれています。
今回は、そんな本のなかからオススメの5冊を紹介しましょう。
『ルポルタージュを書く』
鎌田慧 - 岩波新書
『自動車絶望工場』『非国民!?』など多くの社会派ルポを著書に持つベテラン・ルポライターがカルチャーセンターでおこなった講座をもとに着想・取材・執筆の方法までを語った本。作品の背後にある書き手の苦労や葛藤が垣間みれる。
『大学生からの「取材学」』
藤井誠二 - 講談社
少年犯罪を扱ったルポに定評があるノンフィクション作家が、話しを聴く技術、取材とは何か、取材活動をおこなうことで社会とどのような関わりを持つことができるかなどについて、大学の授業を再現するたかちで説いた本。
『調べる技術・書く技術』
野村進 - 講談社現代新書
取材や執筆の方法にはフォーム(型)が存在するという持論を唱える著者が取材テーマの設定から手紙の書き方、執筆から脱稿までの方法を、実例を示しながら丁寧に解説した技術指南書。巻末でノンフィクションの名著が多数紹介されている。
『ノンフィクションの書き方』
ヘイズ・B・ジェイコブズ - 講談社
『ニューヨーカー』『エスクァイア』『ハーパーズ』などメジャーな雑誌で健筆をふるってきたアメリカのノンフィクション作家によって書かれた取材・執筆・売り込みガイド。雑誌の原稿料、執筆のための場づくり、書き手として成功を手に入れた後の心構えまでが具体的に説かれている。
『インタビュー術!』
永江朗 - 講談社現代新書
ジャンルを問わず多くのノンフィクションや書評など執筆活動をおこない、二〇年で二千人以上ものインタビューを手がけたベテランライターによるインタビュー術。話の聞き出し方から原稿の書き方までが実例を交えて語られていて、インタビュー世界の奥行きと魅力を知ることができる。
スペクテイター33号
特集『クリエイティブ・ライティング』
2015年4月末発売予定
定価952円(税別)・B5版・224ページ
発行=エディトリアル・デパートメント
http://www.spectatorweb.com/