TRANSIT × BIRD NAONORI KATOH × SAYOKA HAYASHI

加藤　ああ、ネグリル（ジャマイカ）の夕陽は美しいなあ。こんなに綺麗なのはなにかの作用かな？まあいいか。（トルルルルルー）それにしてもハヤシはSkypeに出ないなあ。もう100回以上もリフレインしているんだけどね。

林　わーー！（ガチャン！）

加藤　（トルルルルルー）おいおい切りやがったよ。嫌だねえ。フランスかぶれは。

林　あー、ボンジュール、ボンジュール。すみません、さっき運転中でした。もう大丈夫です。

加藤　おフランスでdrivingとはまたシャレオツだな。RENAULTちゃんのエンジンの調子はdo？BGMはダブだろ？スカとかも重層な城とか見るのに合いそうだな。俺はロッカーズで有名なオレンジストリートのレコ屋にいるよ。レコの中心がズレてて鳴らないから交換にきたんだよ。そしたらまあこれも聞いてけあれも聞いてけってなって2時間くらい帰れない。

林　（無視して）パリでレンタカーして、今はロワール地方のお城をめぐっています。車とダブのことはさっぱり分からないのですが、スピード違反を2回ほどしてしまい…罰金支払わないといけないんですよ……。円安だし取材経費少ないのに、まったく困ったもんです。

加藤　にしてもジャマイカやカリブの島々を巡っているとイギリスやらオランダやらフランスが敵に見えてくるんだよなあ。富を横取りしやがって！バビロン・バーニン！チキチキチキチ。

林　（ああ、かわいそーにカリブの太陽が脳天直撃…）いや、ちょっと今ジャマイカのことは考えられませんね。やっぱりフランスは最高ですっ！まず圧倒的にご飯がおいしい。ガストロノミー（美食学）を学んだシェフが作る料理なんて、もう芸術です。ふわっプシュッとろ〜シャキン、みたいな。もちろん街の小さなお店で売られているチーズもパンもスイーツもおいしいし。あとは街そのものが映画の舞台のようにドラマチックなんですよ。パレ・ロワイヤルの中庭でコーヒーを飲んでいたら落ち葉舞い散るなか老夫婦が手をつないで歩いきて、それがドアノーの写真みたいで、素敵だったのなんのって。やっぱりパリはいいなぁ。

加藤　おいおい、ちょっとゆっくりじゃべってくれ、ヤーマン。何言ってるのかわからない。ダブ平がどうしたって？こっちはお馴染みのジャークチキンとフルーツだな。あとはレッドストライプ（ビール）があれば何もいらない。音楽と酒、そして海。ヨーロッパ人が本当に欲しかったのはこの太陽なのかもしれないな。しかもジャマイカの人びとはつらい過去を引きずったり恨んだりしていない。とても大らかな人びとだよ。ところで、なんでそんなにも素敵なおパリを離れてロワールへ? BIRDは女子が好きなパリ特集だろ?

林　パリと見・せ・か・け・て、実はBIRDは「パリからの週末旅行」特集なんです。巷にはレストランや小さなセレクトショップといった路地裏などの情報が溢れて日本人含むアジア人なんかはパリの街に大挙していますが、正直パリジェンヌはそんなパリの街にちょっとヘキエキしています。週末やバカンスは喧騒から逃げるように郊外へと出掛けるそうです。ちょうど東京近郊に暮らす人が鎌倉で寺院をめぐったり軽井沢で避暑したり長野で山登りをしたり群馬の温泉へ行くように。あとフランスといってもモロッコ等のイスラム文化やイタリアのルネサンスの影響を多いに受けているわけだし、表層的なパリだけじゃない本当のフランスを知りたいんです。もちろんまだ分かっていませんが、パリジェンヌの日常を見つめたいと思います！

加藤　なるほど。俺もパリの移民地区でカリブ音楽を聴いたことがある！うおおおおお！（海に駆け出す）。フランスとカリブ。遠いようで繋がっている。歴史という重層なミルフィーユのごとく。我々はどちらにも立脚し、雑誌を編まねばならない。毎年毎年パリ特集やってもしかたがないしな！俺らは旅の本質を探るため突き抜けなきゃいけないんだ!!（あ、とっくにSkype切れてる…）というわけでパリ郊外のBIRDとカリブ特集のTRANSITをよろしくお願いしまーす！