編集長代理・富永亜紀さんが語る
『エル・オンライン』がますます楽しくなる話
1945年にフランスで産声を上げた雑誌『ELLE』の日本版として誕生した『エル・ジャポン』。そのウェブマガジンとして『エル・オンライン』は18年前に日本で初めて、お目見えしました。ウェブ媒体そのものが目まぐるしい勢いで成長していた時代に立ち上がり、数多くのファッションを愛する女性たちと共に成長し、その進化を体現しています。そこで今回、新たに編集長代理に就任された富永さんにSHIPS MAGが独占インタビューを敢行。
ウェブ媒体の在り方や世界を舞台に展開する『エル・オンライン』の魅力について、圧倒的なファンの多さを誇る秘密を富永さんの口からじっくり語っていただきました。
??もともとは雑誌の編集からスタートした富永さん。そこからウェブサイトの編集業務へと移った時はどう感じられましたか?
「10数年前に入社して以来、いくつかのファッション誌を経験したのですが、パソコン音痴でアナログ大好きタイプかもしれない・・・、と自分にウェブの適正はないと思っていたのが正直なところです。入社してまず『25ans(ヴァンサンカン)』、その次に『marie claire(マリ・クレール)』(2009年休刊、2012年よりウェブのみで展開)で美容の分野を軸に編集業務をしていました。その経験を基に、『エル・オンライン』に携ってからは、雑誌とウェブが融合した面白さを感じています。ウェブで出来る表現が幅広いので楽しくって仕方ないです」
??ウェブサイトのメリットってどんなところにあると思いますか?
「私たちはいつも、アンケートはもちろん、SNSやページビューといわれる反応から読者の皆様の“声”に耳を傾けることを大切にしています。それを分析しながら、編集的なカンや感覚も加味して、多くの人に楽しんでもらえる内容を日々、練っているんです。ページビューは、テレビで言う視聴率のようなもの。興味に“刺さった”か“刺さらなかった”かといった反応はダイレクトに数字に出ます。
例えばこちらがヒットするであろうと思っていた記事の反響が、数字的にはさほどでもなかった場合、原因の特定はできなくても想像しながら改善できるんです。記事のアップするタイミングが悪かったり、写真の見せ方に反省点があったり、タイトルが不明確だった!?といった、想像できる要因もすぐ記事に反映できる。こうしたことも面白いですし、反応があるということもありがたいと思うんです。読者の皆様が「このサイト、好き?」と思って下さることと、こちらが提案したいものをよりマッチングさせることができますしね。聞こえない“声”と交信して、必死に耳を傾けているような感覚。なんなら、ウェブを通して話しかけているともいえます。それがスピード感をもって反響として返ってくる手応えこそがウェブならではだと思います。
そして、『エル』として発掘しなくてはいけないこともしっかり押さえつつ、ある種遊ぶような気持ちで楽しんでいる部分は、雑誌のものづくりのスタンスと比べると少し変わった気がします。毎日、毎日、スタッフのみんなが、楽しみに見て下さっている読者に対して、友達に共有するような気持ちを込めて愛情一杯で更新しているのも、人気をキープできている秘密ではないでしょうか。
??では、編集長代理を務めている『エル・オンライン』とは、どういう媒体だと思われますか?
「『エル』はフランス生まれなので、パリジェンヌのスタイルはお任せ!大得意のジャンルで、そこをベースにハッピーモードな実用性とおしゃれ感度を融合しながら、日本の“今“を捉えたハイセンスなライフスタイルを提案しています。
1年に2回、パリジェンヌのおしゃれテクやリアルヴォイスを「パリ特集」として掲載しています。その感覚ってとても日本人の女の子たちが共感できる部分があって。シックでベーシックなアイテムを大事にしながら、トレンドもうまくミックスする着こなし。「気を遣ってないように見えて、実はおしゃれをしっかり考えているルック」をパリジェンヌたちは目指しているようで、それを私たちはエフォートレスルックとして取り上げています。フルメイクでなくポイントメイクで抜け感を出したり、上から下まで飾るのではなく、ちょっとしたラフさを作るのが粋なんですよね。
また人気のコンテンツのひとつに「定番図鑑」という連載があります。長く使い続けられるエッセンシャルアイテムを紹介する企画なんですが、それこそパジャマ、シャツ、靴下、万年筆など女性の生活に密着したものを特集しています。
『エル・オンライン』を読んでくださっている読者の方々の多くはお仕事をされているということもあり、どれだけ賢く使えるアイテムかという事も大事なポイント。長く使えるラグジュアリーなものを厳選してお届けするのはとても大切な役割だと思っています。それだけに着回し企画も、“妄想ワードローブ”という企画も、読者の方からの反応が凄く良くてうれしいです」
??海外セレブについても積極的に特集されていますよね。
「セレブはもう、鉄板ですね。例えば海外セレブの恋愛事情だったり気になるゴシップ、そうしたミーハーな切り口は得意とするところなので。そうそう、最近では、ソチ五輪の最中に「イケメン選手」特集をしたら目を見張るヒット数を記録しました。そういった部分もお祭りのように素早く対応して楽しんでしまうという速報感、ライブ感を大切にしています。エディターのみんなも、その打てば響く感覚は楽しんでいると思いますね。
セレブについては日々、リサーチして着こなしやその人の生きざまがそのまま注目されるハリウッドセレブと、憧れの存在である往年の大女優では読者の方の見方も違うようにも思います。例えばミランダ・カーのように話題の尽きないセレブだったり、レディ・ガガに至ってはアート級の衣装から目が離せなかったり、常に読者の興味を引きつける吸引力が段違いですね。フランスの女優は揺るぎないスタイルと変わらないアティテュードがある分、憧れの存在としてずっと根強い人気を確立しているので、その辺は取り上げ方もバラエティに富んでいます」
??ではここで、富永さんのバイブルになる書籍を紹介していただけますか?
「はい、今日は2冊持ってきました。」
「ラヴェンダーの装丁の『HOW TO DRESS FOR SUCCESS』は、『ローマの休日』などの映画衣装を手がけていたことで知られているスタイリストのイデス・ヘッドという女性が書いた本です。これはイギリスのヴィクトリア&アルバートミュージアムで購入したんですが、彼女の直筆のイラスト入りだったり、ウィットに富んだ内容がとっても面白い。スタイルブックよりももっと客観的な目線でファッションや着こなしに対するアイディアが綴られていてよく読み返しています」
「もう一冊、下の『I?Your Style』は、時代を追ってファッションのヒストリーが見られる時代別のスタイルや、それを象徴するミューズをわかりやすく紹介しているので、昔のファッションを知らない20代の子にもおすすめ。『エル・オンライン』を見てくださると、この本に登場するミューズのスタイルを現代に再現した着こなしを楽しんでもらえると思います」
??やはりルーツをきちんと追いかけたうえでのスタイル提案は説得性も違いますよね。
「そうですね、スタイルアイコンたちの色あせない着こなしは参考に、今どんな気分で着けたいか…と相談しながら取り上げています。
読者の方々がグローバルな視野をもって仕事をこなす女性であるという事をふまえた企画を考えて、アイテムを丹念にセレクトしていますね。スタイリストさんは方々からその主旨に合ったアイテムを集めて来てくれて、コーディネート力を底上げしつつ、今すぐトライできる着こなしをお届けしています。
その他にも海外セレブや女優の生き方やスタイル、哲学に触れる企画はボリューミーにアップしている方だと思います。
今日持ってきた本以外にも白洲正子さんが書かれた『美しくなるにつれて若くなる』も個人的には愛読しています。女性らしい感性、自分の価値観をどう熟成させていくかがちょっと辛口に書かれていてとても素敵な本なんです」
??そんな富永さんが考える、『エル・オンライン』のこれからのヴィジョンを聞かせてください。
「おかげさまで『エル・オンライン』も18年めを迎えて、認知度が上がってはいるものの、知らない方たちもまだいらっしゃるのは事実。新しいファンをどんどん増やしたい!という思いは強くなる一方ですね。デジタルコミュニケーションが盛んになってきているので、ウェブの強みを活かして動画などの表現にもアクティブにチャレンジし続けたいんです。
そうすると出てくるのが言語の壁。日本の編集力はずば抜けて高いと言われているんですが、それを日本語でしか展開できていないのがもったいないと感じています。英語も入れればもっと多くの人に見てもらえるし、ブログもそこから世界へ羽ばたく日本発のブロガーが育って欲しい。すぐにすべてを2か国語化と言うのはハードルが高くて、少しずつ変えていければ状況は変わっていけるんじゃないだろうか!と思っていて。そうすれば他の国にももっとアプローチできると思うので、目下、そのチャレンジも強化していきたいですね。
海外のユーザーも増やしたいと思いますし、フェイスブックやインスタグラムでグローバル化しているSNSを活用してよりグローバルに、相方向のコミュニケーションを仕掛けられたらと思っています」
??今日は本当に勉強になるお話ばかりありがとうございました!
エル・オンライン 編集長代理 富永亜紀さん
1999年にハースト婦人画報社に入社。その後、『25ans(ヴァンサンカン)』、『マリ・クレール』などのファッション誌で編集業務に携わる。2014年に『エル・オンライン』の編集長代理に就任。「キラキラしたものと色にとにかく目がなく、ダンサーを思わせるコスチュームっぽいアイテムが好き」と語る通り、女性編集者としてファッションや哲学に対する愛情、好奇心は尽きないもよう。最近では、ファッションアイコンとしてキャロライン・デ・メイグレがとっても気になる存在とのこと。
エル・オンライン
http://www.elle.co.jp/
『エル』日本版のウェブメディアとして、2014年で誕生18年めを迎える日本初の女性誌ウェブマガジン。ファッション、ビューティを中心に、セレブ、占い、カルチャー、インテリア、グルメなど多彩なコンテンツを毎日更新でお届け中。ハッピーモードを軸に、今すぐ“使える”情報とおしゃれ感度の高い読者に熱い支持をうける厳選したトレンド情報が満載。(月間PV1,700万)
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