ALPHA×SHIPS GENERAL SUPPLY特別対談
10年間続くコラボレーションの魅力
SHIPS GENERAL SUPPLYのラブコールから始まったALPHAの別注ミリタリーウエア。その取り組みは今年で10年にもなる。なぜここまで長く続くのか。その魅力はどこにあるのか。この両者がタッグを組むことで生まれる化学反応とは? その魅力を紐解くための、ALPHAのセールス担当歌原洋氏と、SHIPS GENERAL SUPPLYバイヤー辻友一の、スペシャルカンバセーション。
――今年で10年目のコラボレーションとなりますが、そもそものなれ初めと言いますか、コラボレーションに至った経緯はどういったものだったのでしょうか?
辻 僕からオファーをさせてもらったのですが、まあ正直にいいますとミーハーな部分はありましたね。当時ALPHAさんはいろんな時代を象徴するブランドさんやクリエーターとコラボレーションを展開されていて、我々もそこに混ぜていただけないかなと(笑)。もちろん、ナイロンツイルといえばALPHAという不動のステータスにも魅力がありました。
――今30代半ばかそれ以降くらいの人たちは良く知っているでしょうね。ALPHAの別注ジャケットは一世を風靡していました。
歌原 まあ結構やらせていただいていましたね。数あるミリタリーウエアブランドの中でもALPHAは別注のオファーがかなり多いと思います。確かに30代オーバーのクリエーターさんからの打診は多いです。
辻 SHIPSとしてはM65にナイロンツイル素材を乗せた別注をやらせてもらったのが始まりだったかな。ミリタリーアウターというのは作るのにノウハウが必要だし生産背景も必要なんです。オリジナルで頑張って本格的なミリタリーに近い品質を追求するのなら、ALPHAにお願いした方がいいのではないかと。僕の中ではミリタリーのカテゴリーはALPHAに一本化していこうというくらいのつもりで取り組んでいました。そうすることでより訴求しやすく、なおかつお客様も手にとりやすい完成度の高いものが得られると思ったんですね。で、気がつけば10年。
歌原 10年続く取り組みってそうそうないですよね。本当に貴重なコラボレーションです。ALPHAは冬中心のブランドではあるのですが、今回SHIPSでは春も仕掛けてもらって。型から別注もしていますし、弊社からの提案含めいろんな要素を揉んで形にしていくという作業を繰り返しているので、非常におもしろいコラボレーションになっていると思うんです。定番ものの生地を別のものに置き換えてがらりと雰囲気を変えてしまうということもSHIPSは積極的にやっていらっしゃいます。うちは本来ナイロン系のフライトジャケットを中心にやっているブランドではありますが、SHIPSとの取り組みではかなりウールにも比重を置いたコレクションになっている。数あるコラボの中でも突出した見え方になっているんじゃないかな。
辻 ここまで続けてこられたのも、ひとえにお客様に支持をいただいたということ。年々ALPHAの別注アイテムへの期待が高まっている実感もあります。それが結果としてSHIPSらしい取り組みにつながっているのかなと。その“一体感”みたいなものが結果として商品を通して出せている。お客さんもスタッフも喜べる商材ってそんなにないですから。広いマーケティングで商材を見比べたところでも、自信のあるクオリティを完成させているという自信があります。
歌原 僕らも元ネタがアーカイブとしてたくさんあるので、それを軸にしていろんな提案をさせてもらっているのですが、そこからぐりんぐりんとひねってきますからね、辻さんは(笑)。
辻 わがままばかりで恐縮です。
歌原 今年の春もGジャンを仕掛けたんだけど、そのアプローチがまたおもしろかったんですよ。インラインじゃできないことを結構膨らましてくるので、僕らもやりがいがあるというかおもしろいですね。社内の人間も楽しんでやっていると思います。
――ほかの別注と比べるとSHIPSの別注は違いがありますか?
歌原 辻さんは結構やりたいことがはっきりしているんですよね。しかも“継続”でやるという意志がもの凄く強い。だから僕らとしてもやりがいがある。ワンショットの打ち上げ花火的な別注ももちろんアリです。だけど継続で、なおかつ型数も複数揃えて取り組んだほうがやれることの幅は広がります。
辻 現実的な話ではありますが、継続的に展開することである程度コスト面もクリアできる。高品質なものがなるべく手に取りやすい価格で展開できるんです。続けることにはそういったメリットもあるんですね。
歌原 見通しの距離が長いほど、こちらもいろいろと準備も提案もできる。選べる生地の幅も広がってくる。そうすると必然的にコラボレーションのバリエーションが増えるわけです。
辻 生地に凝ったりディテールに凝ったりするブランドはほかにもたくさんあるんですけど、クオリティを保持したままで手に取りやすいプライスを実現させているものは意外に少ない。そこを分かるお客様に支持してもらっていると言うのが強みですね。
――長く取り組むとそこまで違いが出るんですね。
歌原 それは間違いないです。売り場もとても良いところを確保してくれているじゃないですか。そこでお客様の支持もいただき、また進化する。かなりいいスパイラルになっています。僕らもいただいたオファーをすべて受けられるわけじゃないんです。本国のアプローバルもありますし、なんでもOKというわけにはいかない。長い継続性がいい信頼関係を作っているんですね。
――春から型数も増やしていますね。
辻 コレクションとまではいかないまでも、ある程度まとまったラインナップで見せることでイメージが作れる。昨今のトレンドでもあるセットアップ提案もできます。だから春はジージャンとボトムスという形で提案しました。売り場での見え方も考えながら、よりしっかりと世界観を作ることでその魅力が伝えられるんです。
――ひとつひとつの作り込みに関しては何かこだわりが?
辻 言葉では語りづらい部分なんですけど、ミリタリーウエアはパターンがすべてというか。言ってしまえばそこが命ですね。
歌原 弊社には勝手知ったるパターンナーがおりまして(笑)。ですので、SHIPSさんのその辺の好みはもう分かっているつもりです。
辻 いや、それはもう本当に素晴らしいですね。神業の領域です。僕は作り手ではないのでその辺のノウハウは薄いのですが。そのおかげで値段以上の価値を持たせることができていると思います。それとパーツの使い方も“分かっている”という感じ。こちらからいちいち細かく支持する必要がなく、生地を変えればそれに合うパーツをちゃんと選んでくれる。それはコミュニケーションを重ねることで培ったものだと思いますね。
――では実際に今季のアイテムをご紹介いただけますか。
辻 まずはN2B。これはほとんどすべてが新しいですね。
歌原 ほかのアイテムに比べてN2は陰に隠れやすいアイテム。それをあえて日の当たる場所に引き出していただきました。素材はコットン。秋口に着られる軽めの素材で。これは春も着られることを想定しています。
辻 ファーやジップを排除して、よりタウンユース仕様にしています。ALPHAといえば防寒アウターが主軸ですが、実は丈の短いブルゾン型も求められている。その中でこういったアイテムを提案することで、時期にもほかとかぶらない新しいアイテムが提案できる。年間で考えると意味のあるアイテムかなと。
歌原 もの凄く新鮮に仕上がっています。色もなかなか渋く出ていますね。
――そしてM51。いわゆるモッズコートですね。
歌原 ライナーが取り外し可能で、着丈をミドル丈にしています。
辻 ミリタリーというカテゴリーを超えて広く受け入れてもらえるアイテムです。ウール素材ならばスーツにも合わせられるし。支持率の高い形ですね。
歌原 毎シーズンのトレンドなどをふまえながら修正を欠けて展開しています。ウールバージョンはシックで都会的な見映えになっていていいですよね。
辻 キレイめにこなしてもALPHAらしさは残していて、ミリタリー好きにも支持される。そういうバランスを追求しました。ちなみにネイビーのウール地って本来海軍でしか使われない素材なんですよね。それを陸軍のフィールドジャケットで使うという洒落感も含んでいて。細かすぎて伝わらないかもしれませんけど(笑)。
歌原 その辺の遊び方っていうのはいつでもできるわけじゃないんですよ。何度も言いますが、信頼関係あってこそです。
――鉄板のN3Bも今季リリースされていますね。
歌原 これはちょっと凄いですよ。今季の横綱というか、期待の一品。実はこれダウンなんですよ。ほかではなかなか見ないんじゃないかな。
辻 極めつけですよね。かなりプレミアム感が出ていると思います。
歌原 N3Bのダウンはインラインで何度かやってはいますがこれはまた特別ですね。
辻 ここ最近、プレミアムダウンというカテゴリーが強かったですよね。その中で『N3Bでダウンと言えるのはALPHAでしょ!』 というところで。これは本当に強いマッチング感が出せたアイテムです。
歌原 シルエットはほんのちょっと修正したくらい。袖内のリブも“二段リブ”というオリジナルと同じ仕様が踏襲されている。そういう本格感は残しながら、素材やパーツで変化を付けてゴージャス感を出しています。
辻 いままで墨黒はやったことあるけど、真っ黒っていうのは意外になかったですよね。しかもこれはコットンナイロンのいわゆる“ロクヨン”クロス。それも初の試みです。
――こちらもウールバージョンがありますね。
辻 こちらはダウンではなく中綿。アーミーグリーンのミリタリーアウターは多いですが、意外にウールはないんじゃないかというところで。
歌原 確かにありそうでないですね。少なくともうちでこの色はやったことないと思う。
辻 ブリティッシュなカラーリングのローデングリーンはキレイめのスタイリングにも合わせやすいです。
――この冬も充実した内容ですね!
歌原 ほかとは違う部分でおもしろいことをやりたいと言うことで知恵絞りながらやっています。その上で10年間続いて、なおかつこれだけのアイテム数を展開して、売り場でも認知していただいてというのは本当に貴重。ありがたいことです。これからも是非続けていきたいですね。
辻 トレンドのサイクルが早まる中で、ALPHAのアイテムは廃れない。そこもこの別注アイテムの強みなんです。
――今回の対談では“継続性”がキーワードに上がりましたが、すでに先のことも見据えていらっしゃるのではないでしょうか。
歌原 ちょうど先日、プロジェクトがスタートしていて。いくつか弊社の提案と辻さんのお題をシャッフルして揉んでいるところですので、何かしらまたおもしろいことができるのではないかと思いますよ。
辻 もっと言えば来年の秋のことも視野に入れています(笑)。
歌原 “長い目”で見てますのでね。ちょっとおもしろいことになると思いますよ、これから先も。