井浦新×窪塚洋介の名コンビが復活! 映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』が面白い。 井浦新×窪塚洋介の名コンビが復活! 映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』が面白い。

井浦新×窪塚洋介の名コンビが復活! 映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』が面白い。

井浦新×窪塚洋介の名コンビが復活!
映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』が面白い。

SHIPS'S EYE

02年に大きな話題となった映画『ピンポン』以来、久しぶりにコンビを組むことになった井浦新さんと窪塚洋介さん。11月23日より全国ロードショーされる『ジ、エクストリーム、スキヤキ』では、大学時代以来15年ぶりに出会うダメな先輩と後輩を演じている。
原作・監督・脚本は、劇団『五反田団』を主催し、演劇『生きているものはいないのか』で岸田國士戯曲賞、小説『夏の水の半魚人』で三島由紀夫賞、テレビドラマ『お買い物』でギャラクシー賞優秀賞を受賞するなど各方面で話題の前田司郎さん。初監督となった前田さんが描き出したのは、大きな出来事があるわけでもない、あまりにもリアルでゆる?いロードームービー。そのグルーヴ感に気づけばどっぷりハマってしまうはず!
というわけで、今回は主演の井浦新さんと窪塚洋介さんにお話を伺いました。

ーー井浦さん演じる洞口も、窪塚さん演じる大川も社会的にはダメ人間ですよね。そんな彼らの間の抜けた会話のやりとりがとても面白く、そしてあまりにもリアルな日常が描かれていて気づけばぐいぐい引き込まれていました。まずは、この脚本を最初に読まれたときの感想を教えて頂けますか?

井浦 脚本を読む前に前田監督とふたりで会う機会があってお話しをしたんです。その後に脚本を渡されたので、読んだときには「前田さんそのまんまじゃん!」って思いました。洞口も大川も前田さんだろうなって。

窪塚 合体すると前田さんになる(笑)

井浦 あとは読み応えがあるほど文字だらけでした。

窪塚 しかも、台詞が「、」から始まっていたり、誤植かと思えるような感じなんですよ。でも、実は誤植ではなくて「すべて狙いなんです」って言われて。

井浦 とにかく、前田さんの世界が溢れ出している本でした。

窪塚 最初に会ったときから、監督はホントにゆるい人で。何を話したか覚えていないくらい、取り留めのない話をしていたんですけど。アラタくん(井浦新)と同じように脚本を読んだときは、すごくあの人の空気感だなぁと思って。その感じがそのまんま映画になった気がしますね。

ーーふたりのやり取りも、お芝居と思えないほどリアルでしたが、会話にはアドリブも含まれているのですか?

井浦 いや、脚本にはすべての台詞がびっしり書かれていました。間合いなどはそれぞれの役者が試行錯誤していますけど、台詞に関しては監督の世界そのままです。

窪塚 現場で台詞を足したものは、ほとんどないですね。

井浦 映画のイメージとは違って、本の作り方はすごく緻密ですよ。でも、どんなメッセージが込められているのかは何もわからない(笑)。

窪塚 なんで先輩が亡くなったのかなど、肝になるような設定に関しても言わないっていう。すごく優しい雰囲気の映画だけど、実はすごく荒いというか設定は優しくない。勝手に感じて、勝手に想像してごらんみたいな。前田さんからの挑戦状なんですよ。僕らも教えて貰えなかったから。

ーーということは、迷いながら演じていたのですか?

窪塚 へんな確信はありましたね。通常ならもっと深く確信しながら演じるんだけど、もう少し浅いところで確信しているっていうか。右利きなのに左手で絵を描いたみたいな。初日に、「この作品は何の意味もメッセージもないので、掘り下げるようなことはしないでくれ」みたいなことを言われて。なんだこの人は! って(笑)。その一言にみんな掴まれて現場もひとつになりましたね。大黒柱みたいな監督ではなくて、常にいるような空気みたいな監督だから。

ーー演じる側としてはとても難しい役だと思いますが、どういう作業からこの役が生まれたのですか?

井浦 映画作りには珍しく、稽古の時間が2週間あったんです。現場で「初めまして」から生まれる作品も尊いと思いますけど、今回は役者も監督も技術チームも、前田司郎という共通認識を持ってからやったほうがいいと、稽古をやりながら確信しました。結局、自分が当初考えていた洞口の要素はゼロで、すべては大川とのやり取りから生まれたものになりましたから。京子(市川実日子)や楓(倉科カナ)の距離感よりも、大川との距離感がすべて。あとは撮影現場でいかに力を抜いて自然にやるかを重視しました。でも、そこまでにどう詰めていくかが一番難しくもあり、一番楽しかった作業ですね。稽古をやって良かったと思える映画は本当に珍しいです。

窪塚 例えば、ツッコミの台詞で落ちる場面とかは、そのツッコミ加減が難しくて。おもいっきりツッコむとコントみたいになるし監督にも怒られる。かといって、ぬるすぎると場面が落ちない。その間にあるすごく狭い範囲を狙っていくみたいな、それが稽古だったので。そういうことをやっているうちに温度が合ってくるんです。グルーヴを捉えてくる監督なので不安でしたけど、監督がOKって言ったらOK。あとはゆるく、二度寝しちゃうときの自分を出す感じでしたね。

ーー完成した作品を見た感想はいかがでしたか?

井浦 冷静にはまだ見れないし、反省点も生まれちゃいますけど。前田組の現場が愛せたのと同じように、愛せる作品になったと思います。

窪塚 俺は現場で楽しみきっちゃったので、なんかホームビデオを観ている感じでしたね。なので、他の人が観たらどう思うんだろう? ってすごく気になって。この作品が許されるのかどうか興味と不安があります。

井浦 そうだね、それすごくわかる。ホームビデオをみんなに見せている恥ずかしさみたいな。

窪塚 うん、そういう感じ。

ーー監督はメッセージなど何もないと仰られたと伺いましたが、おふたりはこの映画にはどんな意味があると感じていますか?


井浦 前田さんの眼差しだと思うんですけど。言葉にすると何でもないような生活にも意味があって、そこには小さな喜びや幸せが散りばめられているっていうか。監督はそういうことを漏らさず目を向けている人で、本当は細かい人なんだと思うんです。洞口目線でいえば、この旅はすごく大切なものだったと思いますね。きっかけのきっかけを掴んだというか。大川と15年ぶりに会って、自分が一番輝いていた頃の気持ちを一瞬でも感じることができたことで、何か突き動かされるものは得たと思う。それをキャッチできるかどうかは自分次第だと思います。感動的なエンディングやメッセージは前田作品に必要ないんだろうなと勝手に分析しています。

窪塚 ドラマティックなことなんかそんなねぇよ、って感じなのかな。ダメなふたりが映画になっちゃう。そう考えてみるとアラタくんの言う、きっかけのきっかけというか、もう一度自分の人生にスポットライトを当ててみる。そういうことをして貰えれば嬉しいですね。ゆるい空気のなかで知らぬ間にホームビデオを観せられて、いつの間にか5人目の登場人物としてクルマに乗せられちゃうみたいな。この作品が、きっかけのきっかけ的なものになったらいいなと思います。

ーー井浦さんはデザイナー、窪塚さんは音楽活動など、多岐に活躍されていますが、改めてお芝居の魅力はどにあると思いますか?

窪塚 一番の魅力はいろんな人生を生きられるってとこですね。本当ならば一度きりの人生なのに、演じることでとある人物が実際に現れて動き出して、フィルムに焼き付いて残るってことは贅沢だなって思います。気持ちひとつでその役を豊かに立体的にしていけるというか。それが役者をやっていて幸せだなと思うところです。

井浦 まったく一緒ですね。人生を思いのままに作れるっていう。井浦新はひとりだけど、役者として参加させて貰うことで、普段ならまったく共感できないような人間を思いっきり作ってみたり。自分ならそういうふうには生きない、またはこんなふうに生きたかったという人生を、作品のなかで生きることができるのが醍醐味なんだと思います。

ーーおふたりとも10代から活躍されていますが、ファッション感などは変わりましたか?

井浦 10代の頃は古着も好きだし、デザイナーズブランドも面白いと思ったりと幅が広かったんですけど。だんだんと自分が好きなものや自分がわかってきて。そこから削ぎ落としたり、新たに勉強したりしていきました。そういう意味では変化していると思います。

ーー服作りに関しては、いまどんなモチベーションでやられているのですか?

井浦 20代の頃は自分が着たいもの、欲しいものしか作れなかったんですけど。それがベースにあったうえで、最近はどんなものを作れば着ている人が日常のなかで楽しくなるのか、機能するのかを考えるようになりました。自分が欲しい機能美を搭載させて、どうデザインすればいいのか。自分はこう使うけど、それを電車のなかで使うとどんな使い方になっていくのかとか。そういうところで遊べるようになっています。

窪塚 よく言うんです、ビーサン履いて、エンジニアブーツ履いて、ラバーソール履いて、エアフォースワン履いてきましたって。それが俺の根本にある。リミックス世代とか言われたけど、自分が何を好きかもわからないから古着も着て、サーフブランドも着てという10代を経て。それが役者やっていくうえでの原型みたいなもので。どの靴を渡されても履きこなすっていう。どの役が来てもやりこなすっていうのと同じで、その根本は変わってないはずだけど、最近はファッションに対して甘んじている気もします。10代のほうが貪欲でしたからね。でも、洋服は自分を表現するものだから、常にどこかで自分らしくいたいと思っています。

ーー最後に、おふたりが感じるシップスのイメージを教えてください。

窪塚 俺、買い物したことありますよ。ソフィスティケートされているセレクトショップというか。そういうイメージがありますね。

井浦 そうだね、あるね。高校くらいの頃、自分で古着屋マップを作って原宿?渋谷を回っていたんです。その頃は、すべて見終わった最後に、シップスでトレンドをチェックするって流れができていました。IVYが得意なイメージがあったし、紺ブレ買うならシップスって感じでしたよ。

窪塚 すごく品があるイメージ。だから、高校生のときは敷居が少し高い感じがして。

井浦 わかるわかる。10代の頃は、スウェットパンツにシップスの紺ブレを着たりとか。古着とミックスしながら、背伸びしてシップスを着てる感じ。

窪塚 へぇ?、でもいまでもその合わせ方は全然ありだね。

ーー今日はありがとうございました。

スタイリング/上野健太郎
ヘア&メイク/樅山敦(Barber MOMIYAMA)

(C)2013「ジ、エクストリーム、スキヤキ」製作委員会

出演は『ピンポン』以来、実に11年ぶりの共演となる井浦新と窪塚洋介。ふたりの息のあった絶妙な掛け合いが最大の見どころ。そんなどこか夢見がちな男たちと一緒に旅をするヒロインには、市川実日子と倉科カナ。また、前田が脚本を担当した『横道世之介』の高良健吾と沖田修一監督が友情出演し、監督デビューに華を添えている。音楽は、惜しまれながら2011年に活動休止を発表、35年の活動に終止符を告げたムーンライダーズのメンバー・岡田徹が担当し、劇中でも“思い出の曲”としてムーンライダーズの音楽がBGMとして流れ、ドライブ中の4人の男女の心を、やさしく包み込む。全編を彩るムーンライダーズの名曲と共に、特別(エクストリーム)な旅に出かけよう。2013年11月23日(土)テアトル新宿、ほか全国ロードショー。
http://ex-sukiyaki.com/

11/16(土)〜22(金)SHIPS 原宿店メインウィンドウにて本作品の写真展示を行います。期間中、このイベントに関するSHIPS NEWS(HP)のページをご呈示いただいた原宿店にて商品をお買い上げのお客様先着5名様にオリジナル・サウンドトラックCDをプレゼント。ぜひチェックして!

井浦 新

1974年、東京生まれ。98年『ワンダフルライフ』に初主演。その後、数多くの作品に出演し、12年には『かぞくのくに』で第55回ブルーリボン賞助演男優賞、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』では、第22回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞。今年の4月からはNHK『日曜美術館』のキャスターを担当し、『京都国立博物館』文化大使にも就任するなど多岐に渡り活躍している。

窪塚 洋介

1979年、神奈川県生まれ。95年にテレビドラマでデビュー、「GTO」や「池袋ウエストゲートパーク」など話題作に数多く出演。01年には映画「GO」で日本アカデミー賞の新人賞と最優秀主演男優賞を受賞する。その後も「ピンポン」「狂気の桜」「Laundry」などなど数多くの映画作品に出演。近年では12年の「ヒミズ」や「ヘルタースケルター」などが記憶に新しい。舞台も含め、俳優として活躍する一方、卍LINE名義でレゲエDeejayとしても活動している。