子どもに読ませたい絵本 〜「ストーリー311」の発起人、漫画家ひうらさとるさん〜
仕事中の東京で東日本大震災を体験し、自分に何かできることはないかと考えた漫画家のひうらさとるさん。悩んだ挙句、彼女は自分にできることは漫画を描くことだという結論に至る。そこで漫画家の有志たちと、被災者の体験を漫画で残す復興支援プロジェクト「ストーリー311」をスタートさせた。今回は、その活動の秘話をお聞きしながら、ひうらさんオススメの子どもに読ませたい絵本を選んでいただきました。
―ひうらさんが発起人となりこの「ストーリー311」をやろうと思われてから、どれくらいの期間で物事が進んでいったのでしょうか?
ひうら 2011年の秋に南三陸へボランティアに行った友人に、被災者の方が当時の体験を語る“語り部”という活動があることを教えてもらったんです。そこでは、報道では伝わらない被災者ならではの感じ方があることに感銘を受けました。そんな活動を知ってもらうため、また被災地に来られない方や子どもたちに向けて、語り部さんのようなことを漫画が描けないかと最初は考えたんです。その後、漫画家の知り合いに声をかけつつ、講談社さんに翌年1月頃にお話しをして、2月の終わりにはスタートしました。
―プロローグにもありますが、被災者の方に取材して何かを表現することはさまざまな配慮が必要だったと思います。漫画を描くうえで、もっとも気を使った点はどんなことでしたか?
ひうら 「ストーリー311」はドキュメンタリーですが、やはり漫画として成立させるためには物語に置き換える作業が必要なんです。それは、自分というフィルターをかけることでもあって。その物語が、本当に彼ら彼女らの意図を正しく汲んでいるのか、そこはすごく難しいところでした。
―漫画が完成して、お話しを語ってくれた方々の反応はいかがでしたか?
ひうら 最初は、震災を商売にする気なのではないか、どんなものができるのだろうかなど、皆さんの不安は大きかったですね。でも、出来上がったものを読んで頂いたら、喜んでくださる方も多くて。その背景には、あの体験を忘れ去られることが怖い”という思いが被災者の方々にはあるようです。そういう意味で、漫画というカタチで震災の記憶が残ることを喜んで頂けたようでした。
―取材〜作成までの流れや、どの漫画家さんがどの方を取材するかなどはどのように決めていられるのですか?
ひうら 皆さん連載を抱えている漫画家なので、スケジュールの問題もあって、取材をお受け頂ける方のスケジュールと合わせながら取材場所はランダムに振り分けています。
―参加した漫画家の方々は、どんな感想を述べていましたか?
ひうら 私もそうでしたが、被災地に初めて行くと、ここまで届いたという波の高さが圧倒的でショックを受けてしまうんです。その一方で、語ってくれる方々は皆さん前向きで明るく、とても勇気づけられます。とはいえ、取材を進めていくうちに傷の深さも見えてきて、いろんな感情が押し寄せてきますね。それは、他の漫画家さんも同じように感じていたようです。
―他の漫画家さんの作品を見て、何か感じることがありましたか?
ひうら いくつかの取材に私も同行したのですが、同じお話を伺っていても描くものが違うんですよね。どれも、私が想像する以上の作品になっていて、皆さんの熱い思いが伝わってきました。本当にやって良かったなと思いました。
―今後の展望を教えてください。
ひうら 先日の3月11日に、これまでウェブ上で発表していた漫画家11人の作品を単行本で発売しました。その印税や利益の一部は被災地に寄付します。それが好評だったら、2巻、3巻と続けて行きたいですね。次に機会があれば声をかけて欲しいと言ってくださる漫画家さんもいらっしゃるので、とても心強いです。
ストーリー311 (ワイドKC) /講談社
定価¥880
【作家】(敬称略) ひうらさとる・上田倫子・うめ(小沢高弘・妹尾朝子)・おかざき真里・岡本慶子・さちみりほ・新條まゆ・末次由紀・ななじ眺・東村アキコ・樋口橘
「ストーリー311」の情報はこちらからも発信しています。
ストーリー311事務局@311story
http://story311.com/
―これからも「ストーリー311」が続いていくことを期待しています。 今日はありがとうございました。
あらすじは、ひとりぼっちの「ちいさな1」が仲間探しに出かけて、いろんな数字と出会うのですが、誰も仲間に入れてくれない。最後に「わっか」の0が話しかけてくれて10になるというお話しです。私の子どもはまだ3歳ですが、こういう孤独な気持ちって小学校や中学校で感じるときが来ると思うんです、そんなときにこの話を思い出したり、心のどこかにあったらいいなと思うんですよね。絵もすごくかわいくておすすめです。
これはシールブックといえる一冊です。顔の土台になるものが52ページあって、そこに目や鼻、口などの顔パーツのシールを福笑いのように貼っていくんです。大人がやると本来あるべき場所にパーツを貼ってしまうんですが、子どもは自由に貼っていくのがおもしろくて。でも、最終的には顔になっていくんです。一緒に遊んでいて楽しいですし、また移動中にあると子どもが黙々と夢中になって遊んでますよ。
ひうらさとる / 漫画家
1966年大阪府生まれ。1984年に「はこの中のヒノエウマ」でデビュー。代表作は「レピッシュ」、「プレイガールK」、「ホタルノヒカリ」など。「ホタルノヒカリ」は2007年に綾瀬はるか主演でドラマ化され、干物女という言葉が流行語になった。
現在、リニューアルした月刊誌Kissにて、崖っぷちアラサー女子の離島での恋と人生の再生を描く『うらら』を連載中。コミックス『うらら』1〜2巻も好評発売中。
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