Landscape Products中原 慎一郎が描く STUDY SHIPSの“景色” Landscape Products中原 慎一郎が描く STUDY SHIPSの“景色”

Landscape Products中原 慎一郎が描く STUDY SHIPSの“景色”

Landscape Products中原 慎一郎が描く
STUDY SHIPSの“景色”

SHIPS JET BLUE

今年3月にSHIPS渋谷店で始まった『STUDY SHIPS』。これは、YAECA とSHIPS JET BLUEのコラボコレクション「YAECA STUDY」のアイテムを中心に、その世界観とリンクするさまざまなアイテムを集積するプロジェクトだ。前回のSHIPS MAGではそこでセレクトするアイテムを紹介したが、今回はそれをディレクションする中原慎一郎氏にフォーカス。そのフィロソフィーに迫る! さまざまなプロジェクトの仕掛人として知られる氏は、どんな目線で『STUDY SHIPS』を捉えたのか!? キーワードは“人生の景色を変える事”。


――中原さんは1997年にLandscape Productsというレーベルを立ち上げ活動していらっしゃいますが、それはどういった経緯だったのでしょうか?

中原 僕は大学生の頃からインテリアショップで働いていました。鹿児島から東京に出てきた時からなにかしようとは漠然と考えていて、でも当時は家具屋を始めようという気持ちはなかったんです。自分ができる事を模索していくなかで、いろいろなご縁がつながって今があるという感じですね。

――好きで始めたことがそのまま形になったという感じで。

中原 そうですね。

――でも独立した時はヴィジョンみたいなものはあったんですよね?

中原 もともとヴィンテージの家具を扱っていたので、自分でもそういうものを作ってみたいなというのは漠然とありました。

――ミッドセンチュリー呼ばれる40?50年代テイストのものがコンセプトですよね。

中原 そうですね。その辺のヴィンテージ家具をベースに家具作りをはじめたのがきっかけです。鹿児島で作って東京で販売するというのが当時のスタイルでした。

――ミッドセンチュリーの家具の魅力はどこに感じていらっしゃいますか?

中原 シンプルだと言う事ですね。素材もややこしいものは使わない。木とか鉄とかガラスとか、時代の変遷に価値が左右されないものを使っているところでしょうか。服で言うとデニムなんかがそうですよね。ほら、ハイテクって必ずハイテクに追い越されるでしょ。

――普遍的である意味完成されたものだと言う事ですね。そこに手を加えて、オリジナルの家具として表現する時に気をつけている事などはあるんでしょうか?

中原 特にはないですね。時代感みたいなものはある程度気にはしますが、やっぱり素材ありきなんですよ。いってみれば料理と同じ。美味しい食材をみると美味しく料理して食べたくなるのと一緒で、いい材料を見つけたら「これでテーブルが作りたいな」って思うし、珍しい材料を見つけたら「この素材でこういうものを作ったらきっといいだろうな」って思う。単純にそういう事ですね。それをどうやって世の中のニーズに合わせていくかというのをある程度照らし合わせながら作っています。

――素材があってインスピレーションが沸いてくるという事ですね。

中原 やっぱりいい材料を見つけると興奮するし、いい材木屋に行っていい出会いがあるとそことずっとお付き合いをしていきたくなる。うちは今レストランもやっているから食材のツアーもするんですが、おもしろい農家の人と出会ったらやっぱりそこにあるものを素材として扱いたくなる。そういう事だと思います。

――今お話にも出た通りLandscape Productsでは今飲食関係も手がけていらっしゃいますが、昔から生活全般をプロデュースしていきたいというイメージはあったんですか?

中原 最初はありませんでした。家具作りから発展して店舗の内装や空間演出へと自然に内容が膨らんでいったという感じです。結果、今は住宅作りまでやっています。「これができるならあれもやらせてみたい」と思ってくれた人がまわりにいたおかげです。

――やはりそれはただ物を作って、あるいはセレクトして売っているというだけでなく、生活そのものをよりよくしたいというアプローチがあったからなのではないでしょうか。

中原 なにかひとつインテリアを買うということは単純に物が増えるという事ではなく、その人の部屋の景色全体が変わるという事。僕はそういう事に興味があるんです。たったひとつのもので部屋の雰囲気が変わって、気持ちが変わる。それが生活全般を豊かにする事だってあるわけです。

――Landscape Productsという名前にもそういった思いが込められていますね。

中原 個人のインテリアもそうですが、例えば自分たちが関わる事でその会社の景色を変える事ができるかもしれない。自分たちは主役ではなく、いい景色を醸し出すためにどう動くべきかを常に意識しています。それは物や事だけじゃなく、すべてに関わる事。例えば自分の会社でもスタッフが変わると景色が変わるじゃないですか。思い通りに仕事ができない人がいたとしても、その人をどう動かしてあげたら会社として景色がよくなるか。そういう事をどれだけ前向きに楽しめるかという事なのかなと思いますけどね。

――そういう風に俯瞰で物を見ることができるからこそ、今のようなスタイルに発展したのでしょうね。

中原 僕は必然的につながっていったものを表現しようと思うタイプ。「こういう事はまだ誰もやっていないから僕がやってやろう」とかそういう事はまったく考えないんです。本当に目の前にある出会いを大切にして、「あの人とこれが交わったらおもしろいんじゃないか」とか想像している感じです。

――そういったイマジネーションを広げるために日々している事はありますか?

中原 とにかく動く事ですね。日本国内、海外、いろんなところに動いて、いろんな接点を作る事。でもさっき言った事と同じで、まるで縁もゆかりもないところに行こうと思った事はまったくなくて、なにか接点を感じたところには行くようにしています。いろんな偶然が重なって、接点がなかった場所に接点が生まれる。そういう縁を逃さないように、素直に従うようにしています。

――物から始まって人がつながる。そういういい連鎖が新しいアイデアを生むと。

中原 物でもアイデアでもいいんですが、探そうと思った時ほど見つからない。でも例えば旅の途中で気持ちが自然に解放されていると、気になるものが次々見つかったり思いついたりする。実際にそれがお店の商材になっています。それがお店の新しい雰囲気を作り上げたり、それを好きなお客さんが集まってきたりして、また新しい連鎖が起こる。そういう事をどれだけ自然にできるかっていうのが重要なんじゃないかなと思いますね。「売れそうだから仕入れる」というのではなくて。

――『STUDY SHIPS』との出会いもそのひとつですか?

中原 YAECAのデザイナーの服部くんがうちの店(Playmounatain)によく来てくれていて、僕と同い年だったという事もあって仲良くさせてもらうようになったんです。たまたま彼が好きなものをぼくが扱っている事もあるし、彼が素材作りを大切にして物作りしている事に僕が共感できたりして。それでなにか一緒にできたらいいねっていう、やっぱり自然な流れでした。

――それこそ予想しないご縁だったわけですね。

中原 そうですね。そしてそれをSHIPSでやるのもふさわしいように思えたんです。

――というと?

中原 もともとYAECAとSHIPSの相性がいいんじゃないでしょうか。SHIPSはとてもまっとうなものを、きちんと編集してオリジナリティを加えながら提案している。行き過ぎる事もないですがありきたりでもない。そんな世界観がリンクしている気がします。

――単純にYAECAの服だけじゃなく、空間として演出しようという試みだったわけですが、そのオファーを受けてどのようにしようと思いましたか?

中原 服部くんが好きなものというのは洋服だけでは表現できていないところがあったりして、そういった部分を僕がサポートできる活動ができればいいのかなと思いました。オリジナルのプロダクトを作る感覚で好きなものを揃えていって、ゆくゆくは本当にオリジナルが作れたらいいなって思っています。

――数ある名作の中から今回のプロジェクトにフィットするプロダクトをセレクトする基準はどこにあるのでしょうか?

中原 素材の良さ、ニュートラルなテイスト、多機能性じゃなくちょうどいい機能性、シンプルである事。ここで集めたものをひとつの部屋にまとめた時も違和感がないように、何かが飛び出しすぎている事はないように。そういった事を意識しました。僕は鹿児島に知り合いを泊めるためのゲストルームを作ったのですが、今回の仕事はそこを手がけた時と近い感覚があるんです。自分が好きなものではなく、かといって誰かを想定したものでもなく、シンプルに、でも当たり障りがないわけではない。そういう感じ。言葉にするのは難しいですね(笑)。

――お話聞いていて感じたのですが、中原さんはとても、人をおもてなしする事がお好きなんですね。

中原 そうかもしれませんね。あの人にこれを教えたらおもしろいんじゃないかとか、この会社がこうしたら楽しいんじゃないかとか。そういう事を想像するのが好きですね。

――物だけでなく、空間、人。全体を見ているんだなと。

中原 例えば内装だけやればいい仕事があったとしても、その会社にとって有益に思えるアイデアがあったりするとどうしても紹介したくなるんです。その会社にとっての新しい景色を作るためには何が新しくあるべきなのか。常にそれを考えてやっています。

――『STUDY SHIPS』で見えてくる新しい可能性はありますか?

中原 それは服部くん次第かな(笑)。でも機会があれば彼と旅とかもしてみたいし、彼との間にもっと自分との接点を見つけて、そこから何が生まれるかを考えたいですね。もちろんシップスのバイヤーの北畠さんもすごく重要な役割を担っています。3者のやり取りがいい形に育っていけばいいなと思います。

――先ほどおっしゃっていたオリジナルアイテムも展開する予定ですか?

中原 少なくとも僕はできたらいいなと思っています。このプロジェクトは僕らだけでやってもおもしろくないいし、YAECAだけでもおもしろくない。そしてLandscape ProductsとYAECAの2者でやってもおもしろくない。そこにSHIPSが加わる事によってできるおもしろい事をやるべき。そこの接点ですよね。

――目に見えないものも含め、イマジネーションを膨らませながらデザインしていると。

中原 今、『STUDY SHIPS』にどれくらい反響があるかは分かりませんが、今までSHIPSのお客さんが目覚めていなかった分野に、ショップに訪れてくれた人が目覚め始めたら、その人もすごくハッピーだし、僕らもハッピーだと思う。そういう事のお手伝いができたら嬉しいですね。

中原慎一郎

1971年、鹿児島県生まれ。ランドスケーププロダクツ代表。オリジナル家具等を扱う「Playmountain」、カフェ「Tas Yard」、コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」、子供のためのレーベル「CHIGO」を展開。 また住宅/店舗のデザイン業務、イベントプロデュース/ディレクションを手がける。2012年より「Shibuya Hikarie ShinQs」内のイベントスペース「Craft Bureau」のディレクターに就任。 2012年9月には「IMS × Casa BRUTUS みんなでつくる九州案内」のプロデューサーを務めた。2012年11月から香りのブランド「M tree」のアート/プロダクトディレクションを手がけている。

Tas Yard

今回インタビューをさせていただくにあたりお借りした場所が、千駄ヶ谷にある庭をテーマにしたカフェ「Tas Yard」。食材を販売するスペースも併設されており、鹿児島で作られた有機野菜などが購入できる。

東京都渋谷区千駄ヶ谷3-3-14
Tel:03-3470-3940
営業時間:11:00〜20:00
定休日:無休

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