ユニオンワークスで靴を修理してみた
レザーシューズ好きには、すでに広く知られている靴修理のプロショップ『ユニオンワークス』。ファッション誌などでたびたび取り上げられているので、「いつかはお願いしてみたい」と気になっている方も多いことだろう。工房の基本ポリシーは、「各メーカーの個性を大事にしながら、新品に近い状態に戻す!」ということ。
現在、渋谷、青山、銀座に直営店があるが、SHIPSでも渋谷店と銀座店に持ち込まれた靴の修理は『ユニオンワークス』にお願いしている。今回は、その日本随一とも言われる靴修理を勉強するために工房にお邪魔させて頂いた。さて、プレスの今が持ち込んだ靴底に穴が開いたクロケット&ジョーンズは、果たしてどんな工程を経てどこまでキレイに直るのだろうか?
今回持ち込んだのはグッドイヤーウェルトで作られたもの。確認したところウェルトは生きていたので、アウトソールの交換のみでOKということに。「きれいに履かれていますね」と工場長。
@ヒール部分の革を一枚ずつ剥がしていく
一般的に3〜4層になっているヒールをベリベリと一枚ずつ丁寧に剥がしていく。あまりの早さにびっくり!
A飛び出たクギを抜く
作業の邪魔になるので、クギは抜いておく。
Bステッチを機械で削り、糸を切断する
ウェルトとソールをつないでいる縫い目を解くため、薄く削って切断していく。
Cアウトソールを剥がしていく
ヒールと同じように、ベリベリと剥がしていく。
Dクギを抜く
E接着剤を塗り、シャンクを貼り直す
シャンクとは靴における背骨のようなもの。程よい柔軟性があり、また湿気を吸ってくれるので高級品ほど天然素材が使われることが多い。
Fコルクを詰め直す
隙間ができないようにしながら新しいコルクを詰めていく。
G新しいアウトソールに接着剤を塗布
ここで使われている接着剤は、乾いた状態になると粘着能力が増すので塗ったあとしばらく放置する。
H新しいアウトソールを立体的にカタチ作る
シューズは平面にできていないため、ある程度の曲線をあらかじめつけて革を馴染ませる。
Iウェルト部分を挟み、仮留めする
ソールを貼り付けた後、ウェルトの出っ張りを挟みながら仮留めしていく。
J余分な革をカット
ゴム切りと呼ばれる機械で余分な革をカットする。
K圧着機でアウトソール全体をプレス
プレスをかけることでソールをしっかり留めていく。
L余分な革を細かくカット
Mステッチがアウトソールに見えないようにするため、縫製箇所のみ革をすく
アウトソールからステッチが見えない仕上げ(ヒドゥン・チャネル)にする際は、縫製する部分をリンゴの皮を剥くようにすいていく。この作業をいとも簡単におこなうさまに感動!
N縫製しやすいように革を立たせる
特別な機械を使い、すいた革を立たせていく。
O縫製する
わずかなスペースに縫製していくのは難しい作業。腕の見せ所でもある。
Pヒールを付ける
接着剤を使い、ヒールを付ける。
Qヒールを仕上げる
アウトソール同様、余分な部分をカットするなどきれいに仕上げていく。今回、取材できた工程はここまで。
Rその後、アウトソール底面を着色して磨いていく。最後にアッパーの汚れを取り除き、着色をして磨いて完成させる。必要があれば補修もおこなう。
数日後、完成品が届きました。その新品同様の仕上がりに一同驚愕! 大切に履いて、修理しながら長く愛用する。これぞ高級シューズとの正しい付き合い方であり、紳士の身だしなみということがわかった今回の取材。ユニオンワークスの皆さん、ありがとうございました!
――ユニオンワークスさんは、どのように始まったのですか?
青木 社長の中川がもともとイギリス好きで、この仕事を始めるきっかけというのも、自分のお気に入りのチャーチを修理に出した時、その仕上がりに満足いかなかった苦い経験からなんです。そのため、パーツの仕入れも現地の部材屋さんと交渉して、できる限り各メーカーが使っているものと同じものを使うようにしています。もちろん、門外不出のものも多いですから、そういったものは自分たちで似たものを作ったりもします。
――修理に出す目安としてはどこを注意すればいいですか?
青木 ヒールにしてもアウトソールにしても、一番外側の層がなくなる前ですね。ライニングは穴があいたら修理に出したほうがいいです。内側で見えにくいですが定期的にチェックして欲しいですね。
――もう修理が難しいという破損はどんなときですか?
下田 アッパーの屈曲部に穴があいてしまった際は、ひとつの寿命かもしれないですね。裏からレザーをあてたりして補修するここともできますが、穴の程度によってはきれいに仕上がらないこともあります。
――技術的に難しいのはどんなことですか?
青木 オールソールの交換は、かなりの状態まで分解するので難しいですね。あと、定番と言われる靴もマイナーチェンジはされているので、年代ごとの特徴をしっかり把握して修理していくことが大事なんです。そのためには知識と経験が不可欠です。
下田 メンズの高級レザーシューズは修理することを前提に作られているので比較的修理しやすいのですが、レディスシューズは造形美を求める分、繊細で華奢に作られているものが多いため、作業もより慎重に気を使っておこなっています。
――最近は修理しながら長く履く方が増えているので、毎日お忙しいんじゃないですか?
青木 そうですね。ここでは、平均して月に3000足ほど修理しています。でも、靴を愛するものとしては、そうやって皆さんが大事に履いてくれることはすごく嬉しいですね。
――私たちも良い靴を修理しながら大事に履いていきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。