Sectators Evergreen Library vol.4 緑色世代の読書案内 Sectators Evergreen Library vol.4 緑色世代の読書案内

Sectators Evergreen Library vol.4 緑色世代の読書案内

Sectators Evergreen Library vol.4 緑色世代の読書案内

SHIPS'S EYE

MAG読者の皆さん、こんにちは。スペクテイター編集部の青野です。

最新号『OUTSIDE JOURNAL 2013』(通巻28号目)を、ご覧いただけましたか?

野外(アウトサイド)をテーマにした特別号の2号目にあたる今号では「野生のレッスン」というタイトルのもとに、僕たちが考える「野生」にまつわる記事を集めてみました。

ところで、皆さんは「やせい」という言葉から、なにを思い浮かべますか?

手元の辞書(明鏡国語辞典)を開くと…。

【野生】ヤセイ

?〔名〕動植物が、山野で自然に育ち、生きていること。また、その動植物。
???(例)野生の馬/野生植物。
?〔代名〕(文)男子が自分をへりくだっていう語。小生。

【野性】

〔名〕自然または本能のままの性質。飼いならされていない、荒々しい性質。
(例)野性に目覚める/野性を失う/野性味/野性的。

「野性」と書くと、なぜか精力ドリンクをイメージしてしまうので、あえて「野生」と名付けたわけですが、文明的な暮らしを送っている僕たちが忘れてしまった「野生の感覚」があるとしたら、それはどんなものなのかという疑問から、この特集を考案しました。
インターネットが全盛の現代では、野山に近い場所で自給自足型の暮らしを送るなんて、まるで遠い世界の話のようだけど、もともとは人間だって動物とおなじように自然の恩恵に授かりながら野生的な日常を送っていたわけで、そういった日々を送るための感覚や技術を取り戻すことさえできれば、自然のなかで悠々と暮らすこともできるんじゃないかと考えたわけです。
土を耕して野菜を収穫したり、蜂や鶏を飼育したり、野生生物を狩猟採集したり…文明の便利さに慣れてしまっている僕たちの手に、そんな技術を取り戻すことができるのだろうか?
そんな疑問を晴らすべく、京都在住の猟師や、軒先で豚を飼育したルポライター、アメリカで人気のDIY雑誌の編集長などにインタビュー取材をおこないました。
野生の感覚を日常に取り入れた暮らしとは、いったいどんなものなのでしょう? 
その答えを、最新号「野生のレッスン」特集のなかに発見してください。

今回紹介する本は最新号の取材に応じてくださった方々や、原稿を寄せてくれた方々の著書です。
野生について考える上でも参考になると思うので本誌とあわせて読んでみてください。

京都郊外に暮らしながら、ククリワナと呼ばれる昔ながらの猟法でイノシシやシカを獲り、自らの手で解体した肉を食生活に取り入れている猟師・千松さんの単著。どうしたら猟師になれるのか?  どうやってイノシシを捕まえるか?その肉はどんな味なのか?  猟師の暮らしがよくわかるノンフィクションの本です。

内澤さんは屠畜の現場や有名作家の書斎の風景などを緻密なイラストと文章を駆使した独自のレポーティングのスタイルが評判の女性イラストルポライター。「豚が肉になる前を知りたい」と思い立ち、軒先に豚小屋を建て3匹の豚を一年かけて飼育して、その肉を自分の胃の中に収めるまでの過程を綴った異色のルポルタージュ。

ウルトラライトハイキングとは、テントや寝袋などの装備を軽量化することで、より自由な気持ちで山歩きを楽しもうという北米生まれのアウトドアアクティヴィティの新体系。その動きにいち早く注目し、2008年にアウトドアウェア&ギア専門店〈ハイカーズデポ〉をオープンさせた土屋さんの単著。単にノウハウだけでなくハイキングの歴史や哲学についても熱く深く語られていて読み応えがあります。

『SKI LIFE』、『Made In U.S.A. Catalog』、『平凡パンチ』、『POPEYE』など、数々の若者雑誌の編集者として活躍された天才編集者テラさんこと故・寺崎央さんの追悼記事を、本誌最新号では20ページ以上に渡って掲載。本書は、そんなテラさんのアンテナに引っかかった70年代アメリカの若者たちの新しいライフスタイルと野外生活の道具に関するコラム集です。

バックパッキングやフライフィッシングといった新種のスポーツが日本に最初に紹介されはじめた70年代初期から80年代にかけて自らがバックパッカーやフライフィッシャーとなって自然のなかに身を置き、そこでの体験や想いについての数多くの優れた文章を世に残された芦沢一洋さん。稀代のアウトドアマンが綴った巻頭の文章「バックパッキングのスピリットとマインド」は時代を超えて読み継がれるべき論考です。電子版で読むことができます。

青野利光

1967年生まれ。エディトリアル・デパートメント代表。
大学卒業後、2年間の商社勤務を経て、学生時代から制作に関わっていたカルチャーマガジン『Bar-f-Out!』の専属スタッフ。1999年、スペクテ イター創刊。2000年に現在の会社を設立。昨年の夏から長野市に活動の拠点を移して出版編集活動を続けている。

Spectator

1年におよそ3冊のペースで刊行を続けるカルチャー&ライフスタイルマガジン。新しいジャーナリズムを標榜する現場主義・体験主義にこだわったコンテンツに定評がある。
スペクテイター28号
特集『OUTSIDE JOURNAL 2013』発売中
定価952円(税別)
発行=エディトリアル・デパートメント
http://www.spectatorweb.com/