ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤さんが編集長を務めるフリーペーパー 『THE FUTURE TIMES』がついにシップス各店で配布! ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤さんが編集長を務めるフリーペーパー 『THE FUTURE TIMES』がついにシップス各店で配布!

ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤さんが編集長を務めるフリーペーパー 『THE FUTURE TIMES』がついにシップス各店で配布!

アジカンの後藤さんが編集長を務めるフリーペーパー
『THE FUTURE TIMES』がついにシップス各店で配布!

ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤さんが編集長を務めるフリーペーパー
『THE FUTURE TIMES』がついにシップス各店で配布!

SHIPS'S EYE

東日本大震災後、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんが発起人となり誕生した不定期刊の無料新聞『THE FUTURE TIMES』。表紙には「新しい時代のこと、これからの社会のこと。未来を考える新聞」という副題が付けられており、毎号、現代の日本社会に対して何かを問いかけ、そして未来について考える内容となっている。
現在、CDショップやアパレル店舗、個人店など日本全国で配布されているが、今回の05号からシップスでも全国30店舗で配布をスタート。そこで今回は編集長の後藤正文さんに、『THE FUTURE TIMES』についてお話を伺った。


――まずは、『THE FUTURE TIMES』を知らない方の為に、この新聞が生まれたきっかけから教えて頂けますか?

後藤 震災が起きた後、自分でも何か人の役に立ちたいと思ってとりあえず募金をしてみたんです。そのときに控えの用紙だけが手もとに残って、手ごたえがまったくなかったんです。もちろん、正しい使われ方をされたら嬉しいという気持ちはありましたけど、これはどういうことなんだろうと思いながら帰った経験が大きかったですね。もちろん震災前から社会のことについては考えていたんです。でも、ロックミュージシャンとして大きな声を上げてきたかといえば、臆病だった自分がいて。

――具体的にいうと、どういうことですか?

後藤 震災前、原子力発電ってどうなの? と正面から切り込むのは難しかったですね。かつて六ヶ所村に行ったことを日記で書いたのですが、柔らかい表現をしてもさまざまな厳しい反応がありました。でも、あのときに怖がらずもう少し大きな声で発していたら、何かできたことがあったのでは? という思いもあって。

――そこから新聞という発想になった経緯を教えてください。

後藤 人のため、社会のために何をするかを考えたとき、お金は手応えがないことがわかって。それなら行動や行為といったものを寄付していこうと。音楽という手段も考えましたけど、思っていることをそのまま歌にするのも違うなと思ったんです。まず、誰も聴かないでしょ。テレビで流れている音楽との差を考えたら、説教じみたプロテストソングなんて効果が期待できない。何でも消費されちゃうシステムのなかで、もっと強いもの、色褪せないもの、そうじゃないやり方。そう考えて何が一番強いかなと思ったとき、意外に紙って強いなと思ったんですよね。古文書が見つかったり、古い新聞が出てきたり、紙に書かれたものってすでに何百年・何千年と生き抜いている。それくらい紙は耐用年数が長いし強いんですよね。印刷代とかお金もかかりますけど、僕は何かを調べて紙で発信することを社会のためにやっていこうと思ったんです。

――『THE FUTURE TIMES』はウェブサイトもありますよね。

後藤 紙を最初に作りたいとは思ったんですけど、同時にウェブもやりたくて。ウェブは文字数制限がないですし、サクサク更新できて誤字脱字も2〜3分あれば直る。それに、どこからでもアクセスできるなど紙とは違った魅力がありますから。紙は残るという強みがありますけど、欲しいときは取りに行くなどそれなりに読み手に努力を強いるというか。なので、最初に紙で読んで貰って、拡大版をウェブで読んで貰うなど2WAYで行ければいいなと思ったんです。

――でも、それは作業としては大変ですね。

後藤 そうですね。原稿も2パターン必要になるしなかなか大変です。でも、仕方ないですよね。好き好んでやろうと集まっちゃったから。


――取り上げている内容は社会的なことが多いですが、編集方針などは決めているのですか?

後藤 何を取材するかはみんなで集まって会議して決めています。でも、断言できることなどほとんどないので、自分たちも勉強しながら情報発信しています。結局、「THE FUTURE TIMESっていい新聞ですね」って言われることよりも、これを読んでどう変わったかとか、どういう人が出てくるかのほうが重要なんです。そこは意識していますね。

――今後も取り上げる内容というのは、震災後の日本を考えるという視点で一貫しそうですか?

後藤 そこはどうしても逃れられないものだと思います。幅広くいろんな人の気持ちを拾う記事は、自分たちより優れた媒体がいっぱいあって。特に新聞や雑誌の情報量って本当にすごいと思うんですよ。僕たちがそこを意識しても薄まっていくばかりなので、同じところへ何度も取材に行こうという気持ちはあります。こういう小さなメディアで「あれからどうなりましたか?」っていう話を聞くのはおもしろいと思うんですよね。

――『THE FUTURE TIMES』はすごく文章が読みやすいですよね

後藤 そう言われるのは嬉しいですね。

――注釈も細かく付いていて

後藤 若い子が読むことを意識しています。自分たちが感心のある話題って、ついついみんなも知っていると思い込みがちですから。あと、漢字にするか、ひらがなにするかなどもみんなで相談します。わからない人を攻めるわけにはいかないし、伝わることが一番大事なことですし。


――これまでにも、NANO-MUGEN FESの主催、音楽レーベルであるonly in dreamsの運営などをやられていますよね。誰かをサポートしたいという気持ち、その行動力というのはどこから生まれてくるのですか?

後藤 すべては還流させることが目的なんです。自分たちが音楽で稼いだお金もそうですし、お金だけでなくチャンスもそうなんです。どれも自分たちだけの利益ではないので、みんなで共有していくのが正しいあり方だと思うんですよ。レーベルも儲かるものではなくて、商売だけだったらやらないほうがいい。でも、そこには意味や意義があるんです。たまたまチャンスに恵まれなかった素晴らしいバンド、そういう若い人たちにフェスという大きなステージを含めて機会を与えていきたいんです。

――いつ頃からそういうお考えになったのですか?

後藤 売れたときに、うわぁって思ったんですよ(笑)。いろんなものが集まってくるというか。そのときに、ここに浸かるとまずいぞって気持ちになりましたね。

――それはどういう感じなのですか?

後藤 自分たちの好きな人を集めて囲って閉じてしまったら、ある種の宗教化した活動になっちゃいそうな気がしたんです。本来、エネルギーも含めてぐるぐる回っているものを止めたら大変なことになるなと。だから回そうと思ったんです。回っていればいつか還ってくるかもしれないし、還ってこないかもしれない(笑)。でも、それが正しいあり方なのでは? と思ったんですよね。

――素人考えでは、囲ってしまったほうが活動もラクなような気もします。

後藤 いわゆる国民的なビッグアーティストのライブに行くと、音楽の感動とは別に、みんなの思いを引き受けているというか、すごく背負っている感じが見えるんですよね。それって、波大抵のカリスマでないと背負いきれないですよ。そういうアーティストの多くは早死にしちゃっていたり、つまりは宗教化させられちゃった人たちだと僕は思うんです。

――何万、何十万の人の前で受けて立つわけですからね。

後藤 さらにスタッフを含めて、彼らの後ろにどれだけの人がいるのかと思うと、凄いなと思いますよ。


――すでに6号目は動き始めているのですか?

後藤 渾身の第5号だったので、いまはまだ脱力していますね。この新聞は「とりあえず3年」を目標に始めたので、次の6号が節目になるんです。なので、続けていくならどう続けていくのかもテーマになってきます。震災から2年半過ぎて、自分たちの生活とか仕事のパターン、リズムとかもありますから。震災直後は躁のスイッチが入っていたし、自分自身が立ち直るためにも頑張ろうっていう気持ちがエネルギーになっていた部分もあって。でも、これから先は、どうやれば自分たちのペースを崩さずにやっていけるのかを考えないといけない。同じことを続けていくと、いい部分でも悪い部分でも馴れ合いが出てきますし、そこから見直さないといけないですね。

――新聞を発行してきて、何かおもしろい反響はありましたか?

後藤 南相馬に行ったとき、林業をやっているお爺ちゃんが『THE FUTURE TIMES』の1号がきっかけで、ペレットストーブの研修に行くと仰っていたんです。きっと、お孫さんなどが持っていたものをたまたま読んでくれたんだと思うんですよ。

――それは紙ならではのエピソードですね。

後藤 そうですよね。「娘がさっきまでスマホで見ていたリンク先の記事を読んだ」なんてことはないですからね。紙ならたまたまお茶の間に置き忘れた、会社の食堂に置き忘れたとか、そういうので広がることもある。

――逆に紙ならではの課題はありますか?

後藤 いまはチェーン系の各ショップに置いてもらうことが多いのですが、店員さんが僕のことを知っていたり、意識が高かったりしたらサッと出してくれるけど。本部からよくわからないものが送られてきたっていう場合は、店頭にも出さずに紙ごみとして捨てることもいっぱいあると思うんです。実際、置いてなかったとか、尋ねたら奥の方から出てきたなんていう話も聞いていますし、そこは悩みですね。これが100円でバカ売れしているなら話は早いんですけど、無料なものって利便性と効果がイコールじゃないし、そもそも気持ちがないと始まらないですから。

――無料で広告もないものは、いろいろと意味合いが変わりますよね

後藤 商売じゃないですからね。作っている側が自腹でやっているので、配ってくれる方も自腹が必要なんです。それはお金という意味ではなく、売り場のスペースを使って置いてくれるとか。この試みは、ちょっとの手間をみんながどれくらい差し出してくれるのかもテーマなんです。

――そこはすごく重要ですね

後藤 ほんのちょっとの手間をみんなが惜しまなくなったら、もう少しよくなると思うんですよね。日本は特に利便性が追求されていて、コンビニで並ぶことに腹を立てたり、飲食店で料理を待つのにイラっとしたり。100円払ったんだから100円分のサービスをしろよっていう、そういう気持ちがいろんなところに蔓延している。そうじゃないところで何をするか。お金が一番偉いって社会で、「いやそうじゃないでしょ」っていう楔を打って行くことも『THE FUTURE TIMES』でやりたいことのひとつなんです。

――今後、こうなっていったらいいなと思うことはありますか?

後藤 こういうのをみんな作ったらいいじゃん! て思いますね。好きな音楽についてでも、好きな本についてでもいいので。紙に刷って人に教えたいほどのことってなかなかすごいですよ、ブログに書くのとはワケが違うから。ミニコミ誌とかフリーペーパーを作っている人は、それだけのエネルギーがあるってことだと思うし。自分で作ってみて改めてすごさがわかりましたね。

――話変わって、このインタビューがアップされる頃、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの10周年記念ライブがありますが。10周年の区切りってどんな感じですか?

後藤 メジャーデビューして10年なので、結成して17年のほうが個人的にずっしりきますけど(笑)。でも、自分たちが世に出て10年なので、これまで聴いてくれた人たちに感謝の気持ちはありますね。

――お客さんに向けてのお祭りと謳っていますよね

後藤 そうですね。自分たちおめでとうではなくて、10年も応援してくれてありがとうっていう気持ちが強いですね。聴いてくれる人がいて音楽は成り立つし。普段、そういうことはあんまり言わないですけどね。これからもお互いリスペクトがあればいいかなと思います。

――今日はありがとうございました。


<新作情報>

「ザ・レコーディング at NHK CR-509 Studio」

2013年9月11日(水)リリース
【初回生産限定盤(CD+DVD)】KSCL-2300〜2301 ?3','500(税込)
【通常盤(CD)】KSCL-2302 ?2','800(税込)

■CD収録曲
1. 遥か彼方 / 2. 未来の破片 / 3. 君という花 / 4. リライト /
5. ブルートレイン / 6. 転がる岩、君に朝が降る / 7. ムスタング /
8. 藤沢ルーザー / 9. 新世紀のラブソング /10. 夜を越えて /
11. アネモネの咲く春に / 12. 今を生きて / 13. Loser

■特典DVD収録曲
1. ループ&ループ / 2. マーチングバンド / 3. 踵で愛を打ち鳴らせ /
4. それでは、また明日 / 5. AとZ

<ライブ情報>

ASIAN KUNG-FU GENERATION
「デビュー10周年記念ライブ」

9/14(土) <ファン感謝祭>
9/15(日) <オールスター感謝祭>
場所:横浜スタジアム
時間:OPEN 15:00/START 17:00
チケット:1日券?6500(アリーナスタンディング/スタンド指定席)
※チケット一般発売中(P:193-297 / L:79818)
問ディスクガレージ?050-5533-0888(平日12:00?19:00)
www.asiankung-fu.com

後藤 正文

1976年生まれ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターを担当し、ほぼすべての作詞、作曲を手がけている。2003年にキューンレコードよりメジャーデビュー。これまでに7枚のアルバムを発売。NANO-MUGEN FESの主催や、音楽レーベルであるonly in dreamsの運営など精力的に活動。