SHIPSと人 〜フォトグラファー 横浪修さん〜
ファッション誌から広告まで、幅広く活躍されているフォトグラファーの横浪修さん。今回は、SHIPS KIDSで毎シーズンカタログ撮影をお願いしているご縁もあり、渋谷のアトモスフィアでおこなわれていた写真展(2012年10月 8日〜21日)へお邪魔することに。 約2年ぶりとなる横浪さんの写真展「assembly」は、女の子たちが自然のなかに存在する様子を、ひいたアングルで描写した作品群で構成していた。そこには、人物を撮影しながら、あえて“個”の存在を主張せず、“集団”として表現したいという思いがあったという。
―今回の「assembly」は、いつくらいからスタートした企画なのですか?
横浪 2年くらい前ですね。一般的に「個」がクローズアップされて被写体のテーマになるところを「個」の存在を消した「集団」を撮りたかったんです。半分素人、半分モデルみたいな子たちで集団をつくりました。
―女の子たちは制服らしきものを着ていて、表情も見えず、また自然を背景にした場所が多いですね。
その意図を教えて頂けますか?
横浪 意味を持たせたくなかったので、どこかよくわからない場所にしたかったんですよ。そこで、人工物がなくてシンプルな背景を探しました。同じ格好をした集団がそこで動くことで、それぞれの顔は見えなくてもグル―プとしての個性が見える。そこがおもしろいと思ったんです。
―フルーツを肩ではさんでいる子どもたちの写真集「100children」とは、また違ったアプローチですね。
横浪 そうですね。子どもたちの写真では、より個々の個性が浮かぶようにしています。3年前に100人で発表しましたが、引き続き撮り溜めていて、いま600人を越えました。最終的には1000人を目指しているんです。1000人のほうが圧倒的に強いし、説得力があると思うんですよ。また、何か新しいものが見えてくるような気がして。
写真右:「assembly」¥2','500、 写真左:「100children」(プランクトン刊)?3','800
―それもまたおもしろい作品になりそうですね。とはいえ、毎日お仕事で忙しいなか、自分の作品を撮り続けるのは大変そうですね。
横浪 1か月に1度程度、スケジュールを先に決めています。その日はお仕事も断るようにしていて。そうしないと、なかなか難しいですね。
―仕事とは別に、作品を撮っていくきっかけは何だったのですか?
横浪 仕事として依頼されたものは、一年やって振り返ってみても、自分が残しておきたい、近くに置いておきたい写真っていうのがなかなかないんですよね。いつかまた焼きたい(プリントしたい)写真が、どれだけあるのかは疑問で。あるとき、「このままやっていても何も残らない」と思ったんです。そこで、自分から発信する写真とは何かを考えるようになりました。でも、実際にカタチに残して、世に出さないとそのまま終わってしまうので、写真展や写真集をやるようになったんです。
―横浪さんの写真はちょっと何かが違うというか、不思議なおもしろみがあるのですが、そこは意識されていますか?
横浪 自分では自然な感じでピュアに撮るものと、ちょっとヒネったもの、その両方がありますね。モデルと自分、モデルと背景、モデルと空間などの「間」みたいなものを常に探しているんです。
―作品も女の子が多いですし、お仕事でも女性を撮影することが多いですよね。
横浪 メンズの撮影はあんまりやらないですね。昔は来ても断っていました。メンズの現場の雰囲気が苦手なんですよ。男性誌などは絵の決め方がコンセプチャルなので、そういうのが向いていなくて。いまはそんなことないですけどね。撮影前に方向性だけは考えておいて、あとは現場に行ってモデルが洋服を着た状態、メイクを仕上げたときの雰囲気などを見ないとわからないことが多いし、その瞬間を大事にしたいんですよ。仕事のスタイルも、普段はゆったりしているんだけど瞬間的に集中するのが好きなんです。ブラジルのサッカーみたいな感じで。
―今後、撮影してみたいのはどんなものですか?
横浪 同じ動作をして貰うことで、その人の個性が出てくるみたいことをやりたいですね。ちょっと複雑な動きを指定すると、それぞれ思ってもいないようなポーズになると思うので(笑) やっぱり、人を撮るのが好きなんだと思います。
―その作品も楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。
横浪 修
1967年、京都府生まれ。1987年、大阪ビジュアルアーツ卒。1989年、文化出版局写真部入社。中込一賀氏に師事。現在は独立し、「装苑」「GINZA」「SPUR」などのファッション誌や、「アクタス」「JR」「SEIBU」「カネボウ」などの広告多数、またアーティスト撮影など、数多くのファッション写真やCDジャケットなどを手がけている。