Safe & Clean Vol.4
ライフセービング発祥の地オーストラリア。
特定非営利活動法人下田ライフセービング・クラブ(以下、下田LSC)は、1998年から姉妹提携を結ぶオーストラリアのライフセービング・クラブ、マルチドー・サーフ・ライフセービング・クラブ(以下マルチドーSLSC)とクラブ・メンバー交流事業を行っています。オーストラリアからは日本のオンシーズンである8月に約2週間マルチドーSLSCのメンバーが来日し、日本からはオーストラリアのオンシーズンである12月に約2週間研修のため渡豪します。今回は昨年12月にクラブ運営・管理の研修に参加した、下田LSCジュニア部担当ディレクター 坂部悠(ライフセービング歴21年)が、オーストラリアと日本のライフセービングについてレポートします。
※ジュニア部とは・・・子どもたちを対象とした海辺の安全指導及びライフセーバー育成事業
そしてその中心にあるのがビーチに設置されているサーフ・クラブと呼ばれるライフセービング・クラブの運営する施設です。サーフ・クラブとは各市町のライフセービング・クラブが運営する活動施設でライフセービング・メンバー向けのトレーニング施設以外にも、州によってはレストランやバーなども経営しています。オーストラリアでは海水浴場を開設している街の住人の殆どがライフセービング・クラブを認知し、応援しています。
なぜオーストラリアではここまでライフセービングが支援されているのか、今回の研修ではその文化とも言えるオーストラリア人のライフセービング観にせまりました。
まず、オーストラリアでは休日を水辺で過ごす家族が多く、それに伴い幼少期から頻繁に水辺で遊ぶため、学校では授業の一環として安全指導が行われているそうです。そこで水辺の危険を理解し、安全管理を学び自分の身を守るための意識が植え付けられます。
また、サーフ・ライフセービング・クラブでは5歳児から参加出来るライフセービングのスクールを行っており、安全指導だけではなく、海の状況を自身で判断するための技術や体力向上のためのトレーニング、更にはライフセーバーの育成を行っており、街の多くの子どもたちが、それに参加しています。下田LSCと姉妹提携を結ぶマルチドーSLSCでは5歳から14歳までの300人以上の地元の子どもたちが参加しています。
現在、下田LSCでは首都圏からの遊泳客の子どもたちを対象とした「SHIPSジュニアライフセービングコース」(参加者約90名)と下田・南伊豆及び近隣市町村の子どもたちを対象にした「地域ジュニア」(参加者約40名)を展開していますが、下田市と同規模の都市であるマルチドーという街ではなぜそんなにも多くの子どもたちが率先して参加しているのか。
疑問に思った私は、研修時にマルチドーSLSCのジュニア担当理事にその理由を聞いてみたところ、こんな回答が返ってきました。
『オーストラリア人はよく水辺で遊ぶため、水辺での事故の危険性は多いです。だから多くの親は子どもの身を守るためライフセービングを学ばせ、そして自分自身でも家族や身の回りの人の命を守るため、ライフセービングに携わるのです』と。
下田市という自然に恵まれた環境に生まれ育ち、自分自身で守るためにと小学校三年生からライフセービングを始め、身の周りの人々の安全や、海水浴のために下田・南伊豆を訪れる人々の安全のためにライフセービングを続けてきましたが、その言葉によって文化の違いはあっても進むべき方向は同じだと、確かな手ごたえを感じることが出来ました。
現在私は、生まれ育った下田市に住み、実の弟である下田LSCジュニア部担当理事 坂部琢とともに下田・南伊豆及び近隣市町村の子どもたちを対象とした、ライフセービング教室を手掛けています。今後も子どもたちがより安全に海で遊べるよう、そしてその子どもたちからその友達や家族、更には周りの多くの人々へと広がり、より多くの人々が安心して水辺での活動を楽しめるような環境作りに発展させていけたらと考えています。
ライフセービングがオーストラリアのように文化として根付いていくよう、下田LSCはこれからも普及活動を続けていきます。