35thスペシャルインタビュー ―ナチュリラ 梅田良子編集長―
常に進化してアップデートし続ける
普段はいろんな人を取材する立場なので、自分が取材を受けるのはとても新鮮と語る梅田さんは、全国各地に数多くの読者を抱える人気ファッション雑誌「ナチュリラ」の編集長。多くの人に影響を与える雑誌作りに10年以上携わり、さまざまな人やファッション、カルチャーを目の当たりにしてきた梅田さんが今、改めて考える「STYLISH STANDARD」とは? それが何かお話を聞いているそばから、浸透してくるような、ご本人の言う通り「実感ベース」なインタビューになりました。
―まず梅田さんがSTYLISH STANDARDという言葉から何をイメージされますか?
ベーシックやトラディショナルでありながら、古臭くない──そんなイメージです。“軸になるものがありつつ、それが日々進化してアップデートしていく感じ”と言ったらわかりやすいでしょうか? たとえば、人物だったらイチロー選手。以前、インタビューでイチロー選手がアレックス・ロドリゲス選手について語ったそうです。「(アレックス・ロドリゲスが)ぼくの試合前の準備についてきいてきた。あの姿勢を見習いたい。あれほどの選手がそれをすることに驚いたし、すごいなあと思いました」と。そういう受け止め方するイチロー選手こそ、今の自分に満足せずに日々新鮮なものを吸収しようとしているってことですよね。その姿勢がスタイリッシュだな〜と。思いました。
―ではご自身が編集長を務めて5周年を迎える雑誌「ナチュリラ」のSTYLISH STANDARDとは?
『ナチュリラ』では、創刊号からずっと取り上げているテーマがあります。それは<巻き物><靴&ソックス><リネン素材の服>の3つ。ナチュラルでリラックスした着こなしに、このテーマははずせません。でも5年前は無彩色だったリネンの服が、最近ではカラフルなものが増えたり、新しい靴下ブランドが登場したり、とそのスタイルが進化しています。軸はぶれなくても時代や気分で“素敵”“新鮮”と感じるものは変わる。それを敏感にキャッチして読者さんに伝えていきたいですね。そしてもうひとつの軸である “実感ベース”の記事も大切にしています。表紙と巻頭以外は、一般の方の中から雑貨ショップのオーナーやカフェのスタッフさんなど、暮らしの背景が透けて見える人に登場していただいています。実生活で本当に「いいな」「素敵だな」と思えることを読者さんと共有していきたいですね。
―梅田さんの生活でのスタイリッシュスタンダードとは?
私自身、新鮮さには常に敏感でいたいと思っています。そのために、やはり体調管理は気を付けていますね。せっかく新鮮なことに出会っても、アンテナが反応しないといけないので。きちんと食べて、寝て、運動するということは気をつけています。
器作家・イイホシユミコさんのグラス
「陶器の作品を作っていらっしゃる器作家の方なんですが、作品もご本人もとても素敵で6月には本『今日もどこかの食卓で』を出版させていただいたくらいなんです。これは熟練のガラス職人さんとコラボされた作品なんですが、普段は陶器ばかりのイイホシさんが作る陶器に合うガラス食器として作られている。老舗の職人さんの技術と、イイホシさんの感覚やセンスが融合したプロダクトですね」
秋田で購入した山ブドウのかごバッグ
「これは使い始めてかれこれ10年くらいになる山ブドウのかごバッグ。普通のかごバッグってどうしても、横長のデザインが多いんですが、これはA4がすっぽり入る縦長のフォルムが特徴的。使い込めば使い込む度に、深まっていく色や風合いもお気に入りです」
ユリ・パークのカシミヤニット
「ニットウェアとしてデビューして、今年で10年目を迎えるユリ・パーク。これはカシミヤなんですが、薄くて軽いのにとにかく暖かくってびっくりしますよ。これも私の秋冬のワードローブのなかの定番です」
ナチュラルとリラックスを組み合わせた造語から生まれた雑誌「ナチュリラ」。2007年の創刊から「実感ベース」をモットーに、人にフューチャーして作り込まれた企画が不動の人気を誇る。ナチュラル系ファッションの草分け的存在として、今現在も多くの読者を抱える。
梅田 良子
月刊誌など様々な女性ファッション誌で経験を積み、「ナチュリラ」(主婦と生活社刊)の編集長に就任。明るく健やかな美肌の秘訣は、趣味である週末の温泉めぐりとマラソンの賜物。