アートディレクター“近藤麻由”の興味の先
先シーズン、今シーズンとKhajuのカタログのディレクションを担当してくださっているのが、アートディレクターだけでなく、PUNKADELIXとしてDJとしても活動されるなど、多彩な顔をもつ近藤麻由さん。なぜこんなにも人を惹きつけるのか、そのクリエイションの秘密を探ってきました。まずは、そのカタログ制作の模様を映像でご覧下さい!
――今回のKhajuのカタログ制作はいかがでしたか?
Khajuのカタログは、自分らしいことができるので、やっていてすごく楽しい現場なんですよ。今回は、「Dreaming Girl」というテーマをいただいたので、こういう所に行ってみたいとか、こういう人に会いたいっていうパーソナルな夢を表現しました。すごく気に入っています。
――様々な作品のディレクションを手掛けていると思いますが、そのクリエイティブソースになっているものはなんですか?
旅と音楽と映画ですね。ドキュメンタリー写真が好きで作り込まれた世界というよりは人間っぽい感じが出ているほうが好きなので、そういうのがディレクションに活かされているといいなと思っています。なので、旅で見た景色や、聴いた音楽や、観た映画から影響を受けて自分の中で蓄積したものを少しずつ出している感じです
――その三つのクリエイティブソースについて詳しくお聞きしたいんですが、まず“旅”について。
旅は最も大きなインスパイアーを受けます。今までいろいろな所に行ったけれど、海外でいうなら、モロッコと南フランスはとても衝撃を受けた場所でしたね。南フランスのアルルは子供の頃に、印象派の絵が好きでよく見ていたので、そこで見た世界が実際にあるんだって思いました。日本だと、宮島がすごくよかったので、年内中にまた行きたいと思っています。旅先ではなるべくその土地の神社に行って、お参りをするようにしています。行くだけで、その土地のパワーをもらえる気がします。海外でも、建築や民族衣装など宗教から文化が生まれていることを感じる事が多いのですごく意識する部分ではありますね。
――では、“音楽”は?
音楽は日常的すぎて、なくてはならないものですね。音楽もファッションと同じで、クラシックなものと斬新なものどちらも好きです。新しい作品を聴く事で、今の時代背景や人間像とリンクする部分もあるので、すごく新鮮で、いい影響をもたらしてくれるものですね。
――“映画”は?
映画はロードムービーなどが大好きです。古いヨーロッパ映画も好きな女優さんも多かったりするのでよく観ます。映画は、女性像、空気感などを創るときのイメージソースになる部分が多いんですよね。あとは、映画に出てくる気になった場所は、調べて行ってみたり、それをもとに作品のシチュエーションを考えることもあります。
――オススメの映画を教えていただけますか?
本当に沢山あります。その時の気分もありますしね。例えばアッバス・キアロスタミ監督の『ともだちのうちはどこ?』は、子供が主人公なんだけど、すごくキレイでかわいくてハートフルな映画です。ロードムービーなら西ドイツとフランスの合作映画『パリ、テキサス』とか、色々な国のタクシードライバーと乗客の人間模様が描かれている『ナイト・オン・ザ・プラネット』とか。どれも映像が凄く綺麗で、人間味溢れたストーリー展開が面白いです。
――モノ作りをするからこそ、日頃意識してやっていることはありますか?
人との出会いはとても重要ですね。出会った人がイメージに繋がる事もとても多いですね。DJをやることによってもそれがさらに広がっているのでお互いにすごく影響し合っていると思います。あとは、美術館にはまめに行くようにしていますね。庭園美術館は建物の感じも好きです。あとよく行くのは、国立新美術館かな。
――ディレクションをするときのこだわりは?
光と空気感と人間感です。ファッションは、人が着るものだから、感情を感じ取れることでより伝わる気がしています。なので、モデルもパーフェクトなポージングをする子というよりも表現力が豊かな子が好みかな。
――お気に入りの本もたくさんお持ちのようですね。
はい。ディレクションソースにもなっているものばかり。
奥)Gypsies/Josef Koudelka(写真)雑誌『ハイファッション』にいた頃、フォトグラファーのヨーガンテラーのインタビューを読んで、その中でボヘミアン(流浪の民)に影響を受けているっていう話をしていたんです。それから凄く興味を持つ様になって探した大事な一冊。ドキュメンタリーならではの人間の生き生きとした姿が映し出されていて、見た瞬間なんて強くて美しいんだろうって、本当に衝撃を受けましたね。見ていて吸い込まれます。右)Alexey Brodovitch/Gabriel Bauret (著)アレクセイ・ブロドヴィッチは、アートディレクターの先駆け的な人物で、私が最もリスペクトしているアートディレクターです。この人のデザインしたページのシンプルさ、潔さは、写真の良さが最大限に活きていてすごく昔の作品なのにいつ見てもフレッシュに見えるのがすごいですね。自分が考えすぎて、煮詰まったときに見る一冊です。中)Laduree/Serge Gliezes (著)',' Mathieu Garcon (著)パリ=ラデュレっていうくらい大好きで、パリに行ったらここのサロンドテに必ず立ち寄ります。ラデュレが持っているクラッシックだけど革新的な部分に影響されます。ショーウィンドーも毎回凄く素敵。この本はパリで買ったもの。ファンタジックで幸せな気分になれる色の組み合わせがたくさん載っているのでカラーパレットとしても参考にしています。左)RUBYPAPER /Mayu Kondo(ディレクション)私が自主発行しているインディペンデントマガジンです。写真やアートが好きでこの仕事をしているので、クリエイターが自由に表現できる、日本から発信するような媒体を作りたいと思って作りました。ファッションも音楽もアートも私にとって全て繋がっているので、これを通じて様々なカルチャーをリンクさせていけたらいいなと思います。
『RUBYPAPER』issue02
9月1日発売。全52ページ/オールカラー 500円(税込み) http://rubypaper.jimdo.com/
日本ならではの美意識や表現というものにさらにクローズアップした今作。気鋭の映画女優である安藤サクラを姉で映画監督の安藤モモ子が撮りおろしたカバーストーリーに加え、日本の女性デザイナーたちにフォーカスしたポートレート集、注目のB-BOY彫刻家、小畑多丘をフィーチャーし作品及びインタビューや工藤キキのイラストも掲載される等、前作同様、多くのクリエイター、アーティスト達が参加し、ファッション、アート、音を独自のスタンスでリンクさせた内容となっている。
近藤 麻由??MAYU KONDO
アートディレクター、クリエイティブディレクター、グラフィックデザイナーとして、ブランドやセレクトショップの広告、カタログ制作等を手掛ける他、"PUNKADELIX"名義でDJとしても活動。また、自身がクリエイティブディレクションを勤める自主制作のヴィジュアルマガジン『RUBYPAPER』を2010年より発行している。
http://punkadelix.exblog.jp/
http://www.thevoice.jp/brain/mayu_k/index.html
combine Nakameguro
Tell. 03-3760-3939
営業時間
平日:18:00~26:00
土日祝:12:00~26:00
http://www.combine.jp/