涼しげなシアー、洗練された雰囲気のセットアップ。
数あるトレンドキーワードの中でも2020年春夏に特に注目したいアイテムを、モード誌や広告で活躍するスタイリスト飯島朋子さんが解説。各アイテムの着こなしポイントや飯島さんがリアルに欲しいアイテムを交えながらご紹介します。また、SHIPSのシーズンテーマでも表現される、誰もが一度は考えたことのある「女性らしさ」とはなんなのか。ファッションから考える飯島さんが思う「女性らしさ」についてのインタビューも必見です。
飯島朋子さんが注目する
トレンドキーワード
KEYWORD1トランスペアレント
軽やかで儚さも感じさせる、透けたシアー素材やトランスペアレントは部分的に取り入れるだけで旬な着こなしが楽しめます。
KEYWORD2フラワープリント
フェミニンな小花柄よりも、インドや南アフリカっぽエキゾチックな花柄を選ぶと今年っぽさが出ます。
KEYWORD3セットアップ
19FWに続きセットアップ人気が高いのが今年の特徴。綺麗に、でもどこか崩してラフさがある着こなしが◎。
KEYWORD4シャツ
シャツは個人的に好きで毎シーズン注目していますが、トレンドと相まって透け感のあるものが人気です。
飯島さんが注目するトレンドキーワードをもとに
アイテムを選ぶポイントや着こなし術を解説!
KEYWORD 1 トランスペアレント
※20SS SHIPS WOMEN'S CATALOGUEより抜粋
シャツ ¥13,600(+tax) / SHIPS
パンツ ¥38,000(+tax) / CURRENTAGE
ネックレス ¥11,800(+tax) / CATHS
ベルト ¥13,600(+tax) / MAISON BOINET
20SSでは透け感のあるシアー素材やトランスペアレントが多く出ていますが、
飯島さんはどのようなデザイン、アイテムに注目していますか?
透け感のあるシフォン素材を使ったものは、この時期になると毎年出ていたとは思うのですが、トレンドとして台頭してきたのは新しい傾向ですよね。見た目にも涼しいし春夏にはぴったりのアイテムだと思うのですが、実は着こなしが難しいアイテムでもあるんです。
全体的に透けていたり、部分的だったり、合わせるアイテム次第で表情が変わりますよね。
そうなんです。透け感があるからこそ合わせるアイテムが重要になります。私はあまり肌を出すのが好きではなくて、特に腕を出すのはお尻を出して歩いているくらい恥ずかしいんです(笑)。でも首回りが透けているのは平気なんですよね。透け感の好き嫌いって人それぞれ持っていると思うので、自分に合うアイテムを見つけるというのも大事だと思っています。一部分だけ透け感があるものを選ぶとコーディネートを組みやすいので、透け感に抵抗がある方はそういったものを選ぶといいですよ。
リラックス感漂う
リネン100%の心地いい肌触り
このシャツは洗いざらしで少し透け感もあって、夏にぴったりですよね。私がシャツを選ぶときのポイントは袖の余裕があるかどうか。身体にフィットするものだと暑いし、かっちりしすぎてしまうので、シャツがもつ上品さを残しつつもリラックス感があるものを選ぶようにしています。
シャツ ¥23,600(+tax) / 120%lino
KEYWORD 2 フラワープリント
※20SS SHIPS WOMEN'S CATALOGUEより抜粋
ブラウス ¥38,000(+tax) / WRYHT
スカート ¥14,500(+tax) / SHIPS
エスパドーリュ ¥16,300(+tax) / Casa dc Vera
いままで春といえば小花柄のブラウスだったり、スカートだったり、
そういったフェミニンなものが多く出ていたと思うのですが、20SSは少し雰囲気が違いますよね。
イギリスっぽい小花柄はこの時季の主流だったと思いますが、今回は一枚でパンチのある大きめのパターン柄が多い印象です。シンプルなシャツにパンチのあるフラワーモチーフのパンツを合わせるとか、そのアイテムを加えれば絵になるようなデザイン性の高いものが多いかもしれません。
昨年の19SSもエキゾチックな柄物がトレンドになっていて、
そのおかげか柄物への抵抗感が薄れているような気がしますよね。
フラワーモチーフの洋服って、日常生活の中で頻繁に着るアイテムではないと思うんです。でも、今季のような大きめでエキゾチックな花柄だと、意外とどんなタイプの人でも取り入れやすいのかなと思います。
また、今まで主流だった小花柄は組み合わせ次第で幼く見えてしまう可能性もあったのですが、色や線がはっきりしている大きめのモチーフだとモダンな雰囲気を出すこともできるので、一枚取り入れるだけでもお洒落度がアップする優秀アイテムだと思います。
KEYWORD 3 セットアップ
※20SS SHIPS WOMEN'S CATALOGUEより抜粋
ジャケット¥54,000(+tax) / venit
ブラウス ¥13,600(+tax) / SHIPS
パンツ ¥39,000(+tax) / venit
サンダル ¥14,500(+tax) / JVAM
セットアップはメンズっぽさがあって着こなしが難しそうだと思っていたのですが、
20SSでは女性でも着やすいものが増えましたよね。
セットアップは合わせるアイテム次第でかっちり見えたり、抜け感を出してあげるとレディライクな着こなしが楽しめたりもするところが面白いですよね。今っぽく着こなすなら肌見せが重要。特にデコルテを抜いてあげないと畏まった雰囲気になってしまうので、キャミソールや首回りが広く開いたトップスを合わせるとバランス良く仕上がります。
カジュアル感というよりは肌見せのバランスが重要なんですね。
そうですね、春夏なので素材は硬くないものがいいと思います。あとはユニフォーム感がでないようにジャケットだけワンサイズあげて着るとか、ちぐはぐ感を出すことでオフィスカジュアルっぽくならずに着こなせると思うんですよね。
飯島さんが持っているセットアップは何色ですか?
セットアップで着ることはないのですが、ネイビーとホワイトを持っています。柔らかな印象のベージュは人気も高いし素敵だとは思うのですが、寒色を好んで着る私には難しい色だなと思っていて。人それぞれ似合う色やワードローブが異なるので、自分に合った一着を見つけるのもファッションの楽しい部分だと思います。
アイテム次第で表情を変えてくれる
ワイドシルエット
ワードローブに寒色系が多いので、ブルー系のアイテムには自然と目がいってしまいます。女性もののジャケットはウエストにくびれがあるものが多いのですが、このジャケットは身幅にゆとりがあるので幅広いアイテムにもマッチしやすいと思います。ワイドなパンツも夏っぽくて◎。
ジャケット ¥42,000(+tax) / Uhr
パンツ ¥32,000(+tax) / Uhr
KEYWORD 4 シャツ
※20SS SHIPS WOMEN'S CATALOGUEより抜粋
シャツジャケット ¥13,600(+tax) / SHIPS
スカート ¥46,000(+tax) / Uhr
ピアス ¥8,600(+tax) / PHILIPPE AUDIBERT
毎シーズン出ているシャツも、今季は変化があったりしますか?
私自身シャツがもともと好きで毎シーズン必ずチェックしているのですが、今季の特徴といえば厚手のシャツ型トップスですね。19FWにCPOジャケットが流行ったのでその延長で、シャツとして着れて、ボタンを開ければアウターにもなってくれる、そういったデザインが多く出ているなと思います。あとはやはりブラウスというよりはコットン系のシャツですね。スタンダードではあるけれど、セットアップからの派生で世の中的に盛り上がりを見せているような気はします。
飯島さんはいつもシャツを着ているイメージです。
長年着ているからか、シャツを着ると安心するんですよ。シャツのアイロンがけも大好きで。襟とカフスに糊剤を使っても1着5分程度でアイロンがけが終わるくらい得意なんですよ(笑)
シャツに対するこだわりはありますか?
普通の人にとってのシャツワンピースも、私にとっては“長めのシャツ”なんです。メンズを着ることもあるし、レディースの大きめサイズを着て丈感を楽しむこともあるし、もうジャストサイズって何?ってなるんです(笑)。シャツも透け感の話と一緒で人それぞれのこだわりがあると思うんです。ジャストが好きな人もいれば、オーバーサイズが好きな人もいる。スタンダードなアイテムだからこそ、自分なりの着こなしやこだわりを見つけてコーディネートを楽しんでみるのもいいと思いますよ。
羽織としても活用できる
ドロップショルダーのワンピース
Tシャツとデニムといったカジュアルなアイテムを合わせてワンピースの一番上のボタンだけを閉めるとか、そういう着こなしがしたいですね。ストライプがもつ柄の強さをカジュアルなアイテムで緩和してあげると抜け感が出るので、柄物を合わせる時には試してみてください。
ワンピース ¥27,000(+tax) / TICCA × SHIPS
INTERVIEW
女性らしいってなんだろう?
飯島さんが考える女性らしさ
ファッション誌でも目にすることが多い「女性らしい」というキーワード。素材やシルエットだけでなく、その言葉が意味する女性像とはなんなのかスタイリストとしてさまざまなシーンを見てきた飯島さんに伺いました。
今シーズンのSHIPSが掲げているシーズンテーマにおいても「女性らしさ」への意識が高いのですが、 飯島さんにとっての女性らしさとは何ですか?
日本って男性目線で考える女性らしさというものがあるじゃないですか。だからモテ系という男性目線のキーワードも多く出ていると思うんです。でも、本来の女性らしさってそうじゃないなって。モテとかそういう部分を意識せず、なるべくナチュラルにヘルシーでいられる方が、本来の女性らしさが際立つ。若い時って情報や流行に振り回されがちだけど、30代を過ぎると自分の判断で何かを手にすることが多くなると思うんです。そのひとつとして、女性らしさも確立してくるのかなと私は思っています。
コーディネートで女性らしさが生まれるというわけではないと。
今までは“これを買ったら間違いない!”というフレーズも多く出ていたと思うのですが、何かを買えば女性らしくなれるという時代ではなくなっている気がするんです。情報がたくさんあって、シーズン毎のトレンドも幅広くなっている。その中から自分だったらどう着るかを考えて、独自のこだわりを見つけてあげることで、自然と女性らしさが磨かれていくのではないかなと思います。
自分らしさが確立することで、おのずと女性らしさが生まれるということですね。
振り返ってみると、私も20代の頃は周りを気にしていたんです。自分に自信がなかったから自分なりのこだわりだけで物を見ていたというか。でも、年齢を重ねるごとに自分が大切にしたいことが何か分かってきたんです。シャツが好きだからアイロンをかけるみたいな、そういう習慣になっていることも“自分らしさ”なんだって。
飯島さんが憧れる女性像というのはありますか?
女性らしさとは違うかもしれませんが、ジョージア・オキーフやパティ・スミスといったアーティストに憧れます。単純にかっこいいというよりは、誰よりも繊細な人たちなんですよ。繊細さを追求していくとそこには強い女性像があると思うんです。繊細な人って人を寄せ付けないじゃないですか。自分にはそれが難しいので、そういう自分にはないものを持っている人に憧れを抱いているという部分も大きいです。だから自分が知らないことや、感じとれない部分を勉強するという感じで、自分磨きの原動力になっています。
パトリシア・リー・"パティ"・スミス
パンクの女王として知られるアメリカ・シカゴ出身のミュージシャン。ファッションアイコンとしても注目され、メンズアイテムを自分なりに着こなす装いは1970年代のファッションシーンに革命を起こした。
ジョージア・オキーフ
20世紀のアメリカ美術を代表する女性画家。近年では彼女の作品だけでなく、モダンなライフスタイルやファッションが注目され、国内外のファッションブランドがコンセプトとして取り上げることも。
目標とする人がいるというのは、自分を見つめ直すきっかけにもなりますね。
憧れの人がいると、知りたい!って思うじゃないですか。その人を知るために勉強して、それが自然と自分の糧になる。そういうことの積み重ねが芯のある女性をつくるのかなって思います。子どもの頃から男の子らしくしなさい、女の子らしくしなさいって言われた人も多いかと思うんですけど、自分らしくいることがこれからの時代は重要になってくると思うんです。だから、あなたが思う女性らしさを年齢を重ねながら追求していくのも楽しいと思いますよ。
PROFILE
飯島朋子(いいじま・ともこ)
スタイリスト
神奈川県生まれ。雑誌「SPUR」「GINZA」「FIGARO」など、
数々のファッション誌や広告などでスタイリングを担当。