“SHIPS史上、最高のオリジナルシャツを作りたい”――そんな思いからスタートした渾身のプロジェクトがついに完成を迎えました。SHIPS指折りのこだわり派である商品企画担当・矢吹宗士が理想とするシャツを形にするには、最高の技術をもつ作り手を探さなければならない。そしてたどり着いたのは、大阪のビスポークシャツメーカー「レスレストン」でした。多くの服好きたちが“日本一のシャツメーカー”と絶賛する超実力派との初コラボ。その裏側をお届けします。
セレクトショップとのWネームは初めてだそうですね。
レスレストン二代目・久木元陸央さん(以下久木元)「そうですね。ビスポークシャツが本業なもので、今までは既製シャツをまとまって作るだけの体制が整っていなかったことと、いたずらに手を広げてクオリティを落としたくないという思いから、こういった企画には参加していませんでした。しかし最近になってようやくキャパシティが広がってきたところに、矢吹さんからお話をいただいたんです。非常に熱心なアプローチをいただいて、矢吹さんの“本気”が伝わってきたこともあり、今回初めてのWネームシャツを作ろうという運びになりました」
Wネームシャツの特徴はどんなところですか?
久木元「SHIPSさんのために型紙から起こした力作です。矢吹さんからいただいたリクエストをレスレストンなりに解釈して、形にしたものですね。具体的には、まず肩のインカーブ。前身頃とヨークの付け線を、直線ではなく窪ませるように描いています。これによって、肩周りの曲線美を強調することができるのです。袖山の高さも細かく変更して、日本人に多い前肩体型にフィットさせています」
久木元「それから、運針(ステッチの細かさ)も通常より精緻にしていますね。3pあたり約28針のピッチで縫製しています。繊細なステッチの魅力を際立たせるために糸の素材も変えているんですよ」
相当細かなところまでこだわっていただきましたね。
久木元「矢吹さんの細かさも半端じゃないので(笑)、うちも全力で取り組みました。他にリクエストをいただいた箇所としては、まず背中をスプリットヨークにすること。これはデザイン上の好みに関係する部分なのですが、アメリカントラディショナルをルーツとするSHIPSさんにはこちらのほうが合っているような気がしますね。ちなみに一枚ヨークだと継ぎ目がないぶん、シンプルな印象になります」
久木元「それから、カフスのタックは通常2本のところ、3本タックに変更しました。これはパンツの1プリーツと2プリーツの違いに近いイメージでしょうか。3本タックのほうがカフス周りがゆったりとして見えるので、クラシックな雰囲気になります」
完成したシャツの出来ばえはいかがですか?
久木元「SHIPSさんならではの個性と、レスレストンらしさをいい具合に融合できたと思っています。自信を持って送り出せる出来ですね。レスレストンは1986年の創業以来、“シャツをドレスクロージングの主役にする”という目標を掲げてきました。スーツにはお金をかけても、シャツは脇役だから安いものでいい、という風潮が日本にはまだまだあると思うのですが、肌に直接触れるシャツこそ、実はクオリティの差が如実に表れます。今回、SHIPSさんとコラボレーションできたことで、そのことを広く世に発信できるチャンスになるはず。ぜひ、店頭で実物をご覧いただきたいですね」
SHIPS商品企画担当・矢吹宗士が語る「究極のオリジナルシャツ」のクオリティ
続いて、当企画の発案者である矢吹に、その思いと完成したシャツの出来ばえについて語ってもらいましょう。社内でもこだわり派と評判の人物だけに、「究極のオリジナルシャツ」の実現かけても並々ならぬ情熱が込められていました。
今回の企画を始めた理由は?
矢吹 「クールビズやデニム通勤など、ビジネススタイルのカジュアル化が進む昨今、制服的なドレスシャツの需要は減少しつつあります。しかしだからこそ、本当にいいシャツの魅力をお客様にご提案して、袖を通すだけで気分が高揚するような、積極的に楽しむためのドレスシャツをお求めいただきたい。そんな思いからこの企画はスタートしました。そのためには、中途半端な上質さでは駄目。ひと目で惹きつけられるようなオーラのあるものを作りたいと思いました。そこで、日本最高峰のシャツメーカーであるレスレストンさんにコラボを持ちかけて、インポートを凌駕するオリジナルシャツを目指したのです」
レスレストンのシャツ作りについてどう思いますか?
矢吹「素晴らしいの一言ですね。縫製はこれ以上ないほどに精緻ですし、裾の三つ巻きやサイドの伏せ縫い、剣ボロ裏の処理など、どこを見ても美意識が詰まっています。見えないところだからといって手を抜くということが一切ないですね。そして何より、着た時に美しい。襟の立体的なロールなどは絶品です。レスレストンのシャツは地襟を2枚はぎにして、正バイアス(斜め45°)使いしているのが特徴的。これにより襟が首回りへ立体的に沿い、美しいロールにも繋がるのです」
ここまで細かいディテールにこだわる理由は?
矢吹「ひとつひとつのディテールは、一見些細なことに見えます。しかしこういった細部の積み重ねこそ、シャツ全体の美観や着心地につながるもの。ベーシックなドレスシャツだからこそ、微差を突き詰めることがクオリティに直結するのです」
実はコストパフォーマンスも相当高いとか。
矢吹「実はほかにも随所にこだわりを凝縮していて、ここでは語りきれないほど。オリジナルシャツとしては最高級の価格帯になりますが、ここまで作り込んで2万円台前半というのは、費用対効果として相当高いと自負しています。レスレストンさんにも多大なご協力をいただきました。縫製のクオリティは間違いなく世界に誇るレベルですし、雰囲気もインポートブランドに匹敵する仕上がりです。“お客様に感動を与えるシャツ”を目標としていましたが、想像以上の出来ばえになりました。胸を張っておすすめしたいですね」
王道の白無地ブロード。
クラシックなセミワイドカラーで、スーツからジャケパンまで幅広く合う一着。
¥22,700(+tax)/LES LESTON for SHIPS
同じセミワイドカラーで、ブルーベースのストライプもラインナップ。
派手すぎない柄で着回しやすいのも魅力です。
¥22,700(+tax)/LES LESTON for SHIPS
シャンブレー調のボタンダウンカラー。
本来スポーティなシャツですが、レスレストンならではの精緻な仕立てによりエレガントな表情に。
¥22,700(+tax)/LES LESTON for SHIPS
トラディショナルな趣が漂うクレリックのタータンチェックシャツ。
ラウンドカラーを採用しているのもポイントです。
¥22,700(+tax)/LES LESTON for SHIPS
1986年に久木元 亨氏が創業したビスポークシャツメーカー。最高品質のジャパンメイドにこだわり、大阪・中之島に本店を構える。これ見よがしな主張を極力排除することで、時代を問わない普遍性のあるシャツ作りを志している。シャツ箱には「WearWash Enjoy!」のスローガンがプリントされているが、これはシャツをもっと自由に、楽しんで着てほしいという思いから。
レスレストン久木元 陸央さん
創業者である父・亨氏とともにブランドを切り盛りする二代目。幼少期からシャツ作りの現場に触れ、学生時代からシャツ作りを手伝うなど、シャツ作りのサラブレッドとして育つ。中之島の本店で接客やビスポークシャツの型紙作り・生地裁断などを行うほか、国内外のトランクショーも取り仕切る。
SHIPS 商品企画担当矢吹 宗士
銀座のテーラーにてモデリストとして企画・生産・パタンナーなどの経験を積んだのち、商社勤務や国内外の紳士服ファクトリーの技術指導者を経て、2016年にシップス入社。スーツやシャツなどオリジナルのドレスクロージング全般の商品企画開発を担当する。