障害者採用活動を積極的におこなっているSHIPSでは、「障害があっても、自分の可能性を信じられる社会を創る。」という『UNROOF(アンルーフ)』 の企業理念に賛同。2020年8月よりSHIPSの4店舗と公式オンラインショップで、『UNROOF』の革小物の取り扱いをスタートした。障害という従来のネガティブなイメージを覆す、品質やデザイン性の高いものづくり。それは、これまでの常識にとらわれない個性豊かな生産現場から生まれていた。ここでは、『UNROOF』の工場(東京・久米川)にお邪魔し、制作工程を追いながら活動内容について話を訊いた。
西武新宿線の西武新宿駅から、急行で約30分の場所にある久米川駅。そこから10分程度歩くと、ミシンなどが置かれたガラス張りの空間が見えてくる。ここが革小物ブランド『UNROOF』が生まれる場所だ。明るく清潔なスペースは一見工場とは思えない。歩道から中の様子を伺うこともでき、朝は保育園に向かう子供たちが手を振って通り過ぎていく光景が微笑ましい。
「『UNROOF』は、革小物の委託生産工場として2017年8月にスタートしました。主に精神・発達障害をもっている方を雇用しており、ガラス張りの1階で外が見える場所、近くにメンバーが住める環境という点でこの地になりました。精神障害というと閉鎖的なイメージがありますが、そういうものを払拭したいという思いもありました」。そう語るのは、『UNROOF』の事業部長を務める岩城弘佳さん。
UNROOF 事業部長の岩城弘佳さん
現在も主な収益は革小物の委託生産だが、職人の技術が向上するなかで「技術を生かした独自のもの作りがしたい」「給与面でのステップアップも可能にしたい」という想いにより、2019年にオリジナルブランドの『UNROOF』がスタートした。
「UNROOFとは、天井がないという意味です。つまり、障害があることで仕事内容や給与の制限が生まれがちな、現在の社会を変えたいという思いがあります」(岩城さん)
技術指導に関しては、長年革小物工場で働いていた荻原明さんがメンバーと一緒に働きながら伝えている。
『UNROOF』で使われている革の原皮は、食肉用の日本産の牛。それを姫路のタンナーが染料染めで仕上げている。また、工場の電力は自然エネルギーを使い、紙はリサイクルペーパー、従業員は水筒を持参し、公共交通期間で通勤するなど、「循環」を基本としたエシカルな取り組みをおこなっている。課題であった革のはぎれも、最近はカラーサンプルとして発送する取り組みをスタートした。
「SHIPSさんで取り扱われているレザーは、風合いの違う4種類の仕上げを施したものです。ムラ感があるような、個体差のあるものをあえて選んでいるのが特徴です」と、荻原さん。
革を裁断し、パーツごとに適切な薄さに梳(す)き、組み上げて縫製していく。作業一つひとつに、職人の丁寧なものづくりが感じられる。
「障害をもっている方を雇用しているのは、彼らの能力がものづくりに向いていると思われたからです。障害の特徴や度合いはグラデーションになっているため、決め付けはよくないことなのですが、細かいところによく気づき、追及心のある方が多いです。パッと見ではわからないステッチの歪みや、細かい革の傷によく気づいてくれます。さらに、よりよくするためにどうするか、常に考えながら日々作業されています」(岩城さん)
発達障害は、先天的な脳機能・構造の問題と言われている。生活において困らなければ障害ではないので、診断も医師によって違いがあるなど明確にできない部分も多い。
「時と場合によっては、自分も当てはまるなということもありますから。なので、障害があるから違うというよりも、ただの個性の違いであって、それをどううまく生かしていくか。そういう意識で接しています。本当に人それぞれなので、よく話し合い、理解し合うとトラブルも少なくなります」(岩城さん)
『UNROOF』の製品を生産している坂本実萌さんにも話を聞いた。
「私は最初に働いた会社でうまくいかず、大人になってから発達障害と診断されました。その後、障害者枠で就職活動をしていたとき、この特性の理解があまりにもされていないことにモヤモヤが募ったんです。そこで見つけたのが、この工場でした。
UNROOFの生産をおこなってる坂本実萌さん
障害者自身も、障害に対する考え方はそれぞれなので意見の相違はあります。でも、ここで働いている人たちは、何かにトライしたい、前向きに自分ができることを発信したい、そういう思いが強い人が多いですね。
仕事なのでシビアな面もありますが、妥協をしない人たちがいて、自分のメンタルも強くなりますし、作るものがモノなのですぐに評価もされる。いい意味でも悪い意味でも“見える”のがいいですね」
「将来的には、友達が『UNROOF』を使っていたり、多くの人にとって身近なブランドになったら嬉しい」とも語ってくれた坂本さん。
『UNROOF』ではボーダーレスをテーマに、右利きと左利き用の仕様や、性別に関係なく使えるデザインの商品を展開している。そのように、多くの人に寄り添う機能面の開発は今後も続けていきたいという。
多様性を意味するダイバーシティが注目される時代。障害があるということをデメリットにとらえるのではなく、『UNROOF』のように個性豊かで、いい物をつくるブランドや企業は今後も増えていくと予想される。そんな時代に先駆け、まずは『UNROOF』の製品を通じて、企業の「義務」ではない、よりポジティブな障害者雇用が周知されることを期待したい。
「SHIPSさんで販売されることはとても嬉しく思っています。まずは知っていただくことが重要なんです。障害者雇用は難しい、お金にならないという、社会の中にある意識の天井を取り払いたい。そして、ファッションの世界の人に、こんなにかっこいいものがあると知って欲しい。そのためにも、今後も高品質でデザイン性の高いものを作っていきたいです」(岩城さん)
革の質感が美しく際立つ、シンプルで堅牢なロングウォレット。お札の入るポケット×2、カードポケット×9、ファスナー付きポケットという使いやすい構成も魅力です。
カラー:ブラック/ ベージュ / バーガンディ / ブルー
ロングウォレット 各¥20,000(+tax)/UNROOF × SHIPS
小さなバッグにもさっと収納できる手のひらサイズの3つ折りウォレット。小銭がすぐに取り出せるなど機能性も十分です。カードは3枚収納可能。
カラー:ブラック/ ベージュ / バーガンディ / ブルー
3つ折りウォレット 各¥15,000(+tax)/UNROOF × SHIPS
内部に本革の仕切りを装備しており、整理も簡単なカードケース。最大75枚収納可能だが、どの量でもマチが厚みを調整してくれるので美しいフォルムがキープされる。
カラー:ブラック/ ベージュ / バーガンディ / ブルー
カードケース 各¥9,000(+tax)/UNROOF × SHIPS
各商品には、職人さんの手書きによるメッセージをプリントしたメッセージカードが一点一点に付属される。こんなところにも『UNROOF』の想いが感じられる。