2019年春夏よりデビューする
注目ブランド「Pheeta（フィータ）」

セレクトショップでのディレクターを務めてきた神出奈央子さんが新しく手がける新ブランド「Pheeta(フィータ)」。これまでたくさんのモノづくりの現場を見てきた神出さんの経験を生かして誕生したPheetaには、ブランドコンセプトでもある「繋ぐ服」への想いやこだわりが込められています。そんなインタビューとともに、ファーストコレクションをお届けします。

──「Pheeta」とはどのようなブランドですか？

神出　「“繋ぐ服”をコンセプトにしています。現在、洋服の消費サイクルがどんどん早く、使い捨てのような感覚になっているのではと感じることがあります。例えば和装文化の時代は、なかなか着物が買えなかったことなどもあり、自分の着物を子供に引き継いでいましたよね。そんな風に永く愛される一着を目指して作っていきたいと思っています」

──「繋ぐ服」というコンセプトには、次の世代に服を繋いで行くという意味が込められているのですね。

神出　「そのなかには服飾生産の技術や文化も含まれています。現在、Pheetaはインドにある１社の工場で、縫製まで一貫して行っています。もともとレース工場だったのですが、３〜４年前、初めて訪れた際に、動いているリバーレース機を見てとても感激しました。リバーレースとは19世紀初頭に開発された古い織機で作られるレースで、現在機械が生産されていないことはもちろん、機械を動かせる職人自体も非常に少なくなっています。現在協業しているインドの工場では、古い機械が世界中のオークションに出品されるたび自分達で買い集め、現在12台まで所有しています。現在はレースだけではなく縫製も行なっており、手仕事がとても上手な職人が多数在籍していることもあり、縫製まですべて一貫してお願いしています。Pheetaの特徴として、手仕事の美しさが挙げられるのですが、そういった次の世代に繋いでいきたい服飾技術を用いたアイテムだけを展開しています」

──ブランド名である「Pheeta」とは？

神出　「もともとヒンディー語で“レース”という意味を持つ言葉ですが、ヒンディー語で“ヒータ”と読むものを、英語読みにアレンジして“フィータ”としました。レースも一本の糸が編まれて繋がって行き形成されていくので、服が作られて行く過程であったり、人と人が繋がっていく時間の流れだったりを表せたらと思い、つけた名前です。ネームや下札もすべて円の形にしているのですが、線が繋がって円(縁)になるという想いを表現しています」

──とても繊細な作りですが、素材へのこだわりを教えてください。

神出　「基本的にはコットンやリネンなどの天然素材を使用しています。レースは繊細なのですが、例えば今日着ているkateというシリーズにはポプリンと呼ばれるシャツによく使われるしっかりとした素材を用いることで、永く使っていただけるように仕上げています。引っかかりさえ気をつけていただければ、ご自宅でネットに入れて押し洗いが可能です。お手入れしやすくすることで、特別な日の一着として着ていただくことはもちろん、永くたくさん着ていただきたいと考えています。手入れを繰り返し何年も着ていただくうち、クタッとしてきたり、色が褪せたり、生地が柔らかくなったりすることで、また違った表情を楽しんでいただけると思います。自分だけの洋服にしていただけたら嬉しいです。」

──男性の服のようなこだわりを感じます。

神出　「ピンタックも機械では折れない幅にこだわり、全部手仕事で行っています。少しマニアックな話になってくるのですが、そういうディテールにはこだわっています」

──デザインするときのインスピレーションを教えてください。

神出　「インドの工場に行って、実際に見た生地やその場で職人さんと色々話して感じることも多いのですが、デザインの一番最初は言葉から入ります。今回のコレクションなら“静謐(せいひつ)”とか“知性”など、自分がイメージしている言葉をたくさん書き出していきます。そうしてイメージを固めていく中で、アムリタ・シェール・ギルというインド人の女性のアーティストにたどり着きました。彼女が描く絵はとても芯が強く、その色使いや強い女性像をインスピレーションに、今回のコレクションを作りました」

──今回のコレクションで特に注目してほしいアイテムはありますか？

神出　「グリーンやブルーは今シーズンのPheetaを象徴するキーカラーです。なかでもブルーは、アムリタ・シェール・ギルの作品の中からインスピレーションを受けてカラーを作ったものです。アムリタ自身の自画像があるのですが、その中でブルーともグリーンともつかない、絶妙なカラーの洋服を着ていて。アムリタブルーと呼んでいます」

──Pheetaの服を着ることで、たくさんの女性がアムリタのようなアイデンティティを持つことができたらいいですね。

神出　「私自身もそうですが、日々忙しく生活する中で現代社会に自分自身も消費されているなと感じる時があります。そういったときにPheetaのモノづくりを通じて、本質に気づかされることも少なくありません。おこがましい言葉になってしまうのですが、お客様にも何かそういった価値観や感覚に触れてもらえるきっかけとなるような服であれたら、とても光栄だなと思います」