日本のビジネススタイルの教科書的存在「AERA STYLE MAGAZINE」。本連載では、編集長の山本晃弘氏に、スーツのトレンドを軸に、ビジネススタイルに置けるさまざまな”アレコレ”を語っていただきます。今回は働き方改革などで、ビジネススーツはどう変わるか。ここ最近話題になっている”スニーカー通勤”にチャレンジする場合、春のスーツはどのように選ぶべきか、そのヒントをご教示いただきます。
「スーツにスニーカーを合わせるという、新たなトレンドに注目です」
ーーカジュアルシーンではリラックス感を強調した装いが流行中ですが、今年の春、ビジネスシーンではどう変わると見ていますか?
「昨年の秋冬は英国的なクラシックスーツが流行し、それもトレンドとして残っています。しかし今年の春は、スーツにとって、そしてスーツの着方にとって、また大きな転換期になりそうです。それはスポーツ庁が推進している『FUN+WALK PROJECT』という取り組みが大きい。歩くことで健康に、生活を豊かにすることを目指す取り組みですが、スーツにスニーカーを合わせるというまったく新しいスタイルを提案しています」
ーー”スーツにスニーカー”。これはドレスの定石に照らすと、かなり抵抗もあるかと思います。
「すでに、多くの方々からAERA STYLE MAGAZINEは、”スーツにスニーカー”をどのように捉えているかと、問い合わせが寄せられています。それはビジネスマンのみならず、靴業界、スーツ業界の方々からも聞かれます。一言で”スーツにスニーカーを合わせる”と言っても、そこにはいくつかのグラデーションがあるので、上手にバランスを取ることが重要です」
ーー業種にもよるのでしょうが、通勤時のみスニーカーを履くか、一日中スニーカーを履いて過ごすかで全然違うスタイルになりそうです。
「カジュアルシーンでは、セルジュ・ゲンズブールがやったようなドレスパンツに白スニーカーを合わせるという着こなしは昔からある鉄板です。しかし、着こなしにルールが求められるビジネスの場での正解は、まだ誰も提示できていない状態といえます」
ーーだとすれば今年は、2005年にスタートした「クールビズ」以来の節目になるかもしれませんね。
「AERA STYLE MAGAZINEでは2つの提案を用意しました。かっちりとした着こなしが必要な方と、ややくだけた装いでも働ける方で分けています」
ーー前者と後者では、どのように違うのでしょうか。
「まず、前者からお話しします。こちらの方々は職種ゆえに、『FUN+WALK PROJECT』の動きを少しだけ取り入れることになると思います。その際、スーツの素材選びが重要です。天然素材で涼しげに織られたものやストレッチの効いた化繊を混紡したものなど、きちんと見えて機能に優れた素材を選ぶのがベターです。シャツもジャージー素材などがいいでしょう。そしてシューズですが、見た目はドレッシーでありながら、アッパーがクラシックな革靴のデザインで、ソールに機能的な素材を使っているものが選択肢に入りますね」。
ーースーツに合わせるバッグも変わってきそうですね。
「これまでは2ハンドルのブリーフケースを提案してきましたが、歩くときに両手が自由になっていた方が歩きやすいでしょう。ブリーフケースのようにも持てて、バックパックとしても背負えるものをオススメします。いわゆる2WAY、3WAYの持ち方ができるバッグです。バッグを背負うことによるスーツへのダメージを考えると、スーツはタフな機能素材やシワの回復力に優れたものを選ぶのが賢明ですね」。
明るいグレージュのスーツは、コットン素材を使うことで、軽快なムードに拍車がかかります。インナーは白のニットポロで爽やかに見せるのが正攻法。トップスが明るい分、足元はローファーで引き締めます。
ジャケット ¥35,000(+tax) / SHIPS
パンツ ¥14,800(+tax) / SHIPS
ニットポロシャツ ¥20,300(+tax) / Mc Lauren
ローファー ¥79,000(+tax) / CROCKETT & JONS
SHIPS別注のTUMIシリーズがリニューアルして再登場。ネイビーのバリスティックナイロンとレザーのコンビで、より統一感が増して、スタイリッシュな印象に。トーンオントーンのコーディネートの完成度もアップします。
3ウェイバッグ ¥60,000(+tax) / TUMI for SHIPS
ーーややくだけた装いでも働ける方の場合は、いかがでしょうか?
「社内のデスクワークで過ごす時間が多い職種や、クリエイティブ職などを想定していますが、そういった方々にはセットアップを推奨しています。」
ーーセットアップとはもともとスーツと同義ですが、今では微妙にニュアンスが異なるように思います。
「多くのショップやブランドでは、化繊やコットンなどを用いた、芯地を省略したようなスーツを指してセットアップと呼んでいます。上下別々に購入できるというのも特徴の一つ。そういったセットアップの場合、インナーはTシャツもありです。それがカジュアルすぎるという場合は、ニットTシャツやニットポロ、開襟シャツを選ぶといいでしょう。足元は、キャンバス地のホワイトスニーカーも合いますし、もっとスポーティなものでもいいでしょう。バッグは、バックパックでもいいと思います」。
ーー”スーツにスニーカー”も新しい考え方ですが、”スーツにバックパック”というのも新しいアプローチですよね。
「これに関してはAERA STYLE MAGAZINEのウェブサイトで、アンケートを取りました。回答数も非常に多く、関心度の高さに驚きましたね。だいたい、40%くらいの方が、スーツにバックパックもありだと考えているようです。アウトドア用のものなどではなく、スクエアデザインでシンプルなもの、お色も黒やネイビーがベターですね」。
ネイビーソラーロのスーツは、上品な光沢が涼しげ。インナーとスニーカー、ともに白で揃えてツートンコーディネートでまとめました。トラッドの王道色ネイビーなので、足元はスポーティなスニーカーでもバランスが取れます。
ジャケット ¥35,000 / SHIPS
パンツ ¥14,800 / SHIPS
ポロシャツ ¥15,700 / GUY ROVER
スニーカー ¥18,500 / WALSH for SHIPS
ゴートスキンを採用した高級感あるデイパック。ストラップは表地にレザー、肌に触れる裏地はナイロンを採用。さらに、背中部分にもナイロンを採用しフィット感を高め、デイリー使いしやすいデザインがポイント。
デイパック ¥46,000(+tax) / TOFF & LOADSTONE
「ワントーンを恐れない」
ーー装いがカジュアルになる分、落ちついた色合わせに徹したほうがいいかと思います。手軽に決まるコツはありますか?
「例えばベージュのセットアップに、ブラウンのスニーカー。ネイビーに白シャツであれば、白のスニーカーを合わせるなど、トーンを揃えたり、どこかで色を拾うというのが手軽にできるテクニックですね。まったくかけ離れた色を合わせると、途端にくだけた印象が強くなってしまいますので、注意が必要です」
ーーストイックな色合わせが、大人っぽく見せるコツなんですね。
「チェックやボーダのインナーも避けるのが無難です。『これって地味すぎない?』と思うくらいくらいがちょうどいい。トーンを統一したり、色を2色に絞ったりすると、装いにビジネスにふさわしい緊張感が生まれます」。
一見すると普通の白Tシャツですが、実は鹿の子編みで仕立てられています。布帛のものより、上品かつ清涼感たっぷりに見せてくれます。
Tシャツ ¥9,000(+tax) / LACOSTE × SHIPS
ジャケット ¥35,000(+tax) / SHIPS
ジョン スメドレーのニットポロは台襟がないので、襟をジャケットの外に出しても、艶っぽくならずに、大人っぽく見せられます。
ニットポロシャツ ¥26,000(+tax) / JOHN SMEDLEY
ジャケット ¥35,000(+tax) / SHIPS
「ルールはみんなで作るもの」
ーースーツにスニーカーを合わせるという新しい着こなしは、手を出しづらい方も多いかと。ですが、多様化する働き方に即してビジネスマンの装いも変わって行くことも必要なことだと思います。
「これまでAERA STYLE MAGAZINEでは、スーツにローファーを履くことを禁止していました。でもスニーカーがありなら、ローファーもありですよね。ルールとは本来民主的なものです。時代の流れに即して、みんなで考え、適宜修正しながら作り上げていくもの。そういった意味で言うと、後年振り返ってみた時に、今年はスーツの着方が大きく”進化”した年として記憶されることになるのかもしれませんね」
PROFILE
MEN’S CLUB、GQ JAPANなどを経て、2008年より現職。最先端モードから服飾史に至るまで、ファッションに関するあらゆる見識を備えた“目利き”としても知られている。現在は、トークショーやイベントなどを通して、装いやファッションに関する素朴な疑問に答えるアドバイザーとしても活動。初の執筆書「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」を3月16日に出版したばかり。
http://asm.asahi.com
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4295401714/impresscommunications-22/
日本のビジネススタイルの教科書的存在「AERA STYLE MAGAZINE」。本連載では、編集長の山本晃弘氏に、スーツのトレンドを軸に、ビジネススタイルに置けるさまざまな”アレコレ”を語っていただきます。今回は働き方改革などで、ビジネススーツはどう変わるか。ここ最近話題になっている”スニーカー通勤”にチャレンジする場合、春のスーツはどのように選ぶべきか、そのヒントをご教示いただきます。
「スーツにスニーカーを合わせるという、新たなトレンドに注目です」
ーーカジュアルシーンではリラックス感を強調した装いが流行中ですが、今年の春、ビジネスシーンではどう変わると見ていますか?
「昨年の秋冬は英国的なクラシックスーツが流行し、それもトレンドとして残っています。しかし今年の春は、スーツにとって、そしてスーツの着方にとって、また大きな転換期になりそうです。それはスポーツ庁が推進している『FUN+WALK PROJECT』という取り組みが大きい。歩くことで健康に、生活を豊かにすることを目指す取り組みですが、スーツにスニーカーを合わせるというまったく新しいスタイルを提案しています」
ーー”スーツにスニーカー”。これはドレスの定石に照らすと、かなり抵抗もあるかと思います。
「すでに、多くの方々からAERA STYLE MAGAZINEは、”スーツにスニーカー”をどのように捉えているかと、問い合わせが寄せられています。それはビジネスマンのみならず、靴業界、スーツ業界の方々からも聞かれます。一言で”スーツにスニーカーを合わせる”と言っても、そこにはいくつかのグラデーションがあるので、上手にバランスを取ることが重要です」
ーー業種にもよるのでしょうが、通勤時のみスニーカーを履くか、一日中スニーカーを履いて過ごすかで全然違うスタイルになりそうです。
「カジュアルシーンでは、セルジュ・ゲンズブールがやったようなドレスパンツに白スニーカーを合わせるという着こなしは昔からある鉄板です。しかし、着こなしにルールが求められるビジネスの場での正解は、まだ誰も提示できていない状態といえます」
ーーだとすれば今年は、2005年にスタートした「クールビズ」以来の節目になるかもしれませんね。
「AERA STYLE MAGAZINEでは2つの提案を用意しました。かっちりとした着こなしが必要な方と、ややくだけた装いでも働ける方で分けています」
ーー前者と後者では、どのように違うのでしょうか。
「まず、前者からお話しします。こちらの方々は職種ゆえに、『FUN+WALK PROJECT』の動きを少しだけ取り入れることになると思います。その際、スーツの素材選びが重要です。天然素材で涼しげに織られたものやストレッチの効いた化繊を混紡したものなど、きちんと見えて機能に優れた素材を選ぶのがベターです。シャツもジャージー素材などがいいでしょう。そしてシューズですが、見た目はドレッシーでありながら、アッパーがクラシックな革靴のデザインで、ソールに機能的な素材を使っているものが選択肢に入りますね」。
ーースーツに合わせるバッグも変わってきそうですね。
「これまでは2ハンドルのブリーフケースを提案してきましたが、歩くときに両手が自由になっていた方が歩きやすいでしょう。ブリーフケースのようにも持てて、バックパックとしても背負えるものをオススメします。いわゆる2WAY、3WAYの持ち方ができるバッグです。バッグを背負うことによるスーツへのダメージを考えると、スーツはタフな機能素材やシワの回復力に優れたものを選ぶのが賢明ですね」。
明るいグレージュのスーツは、コットン素材を使うことで、軽快なムードに拍車がかかります。インナーは白のニットポロで爽やかに見せるのが正攻法。トップスが明るい分、足元はローファーで引き締めます。
ジャケット ¥35,000(+tax) / SHIPS
パンツ ¥14,800(+tax) / SHIPS
ニットポロシャツ ¥20,300(+tax) / Mc Lauren
ローファー ¥79,000(+tax) / CROCKETT & JONS
SHIPS別注のTUMIシリーズがリニューアルして再登場。ネイビーのバリスティックナイロンとレザーのコンビで、より統一感が増して、スタイリッシュな印象に。トーンオントーンのコーディネートの完成度もアップします。
3ウェイバッグ ¥60,000(+tax) / TUMI for SHIPS
ーーややくだけた装いでも働ける方の場合は、いかがでしょうか?
「社内のデスクワークで過ごす時間が多い職種や、クリエイティブ職などを想定していますが、そういった方々にはセットアップを推奨しています。」
ーーセットアップとはもともとスーツと同義ですが、今では微妙にニュアンスが異なるように思います。
「多くのショップやブランドでは、化繊やコットンなどを用いた、芯地を省略したようなスーツを指してセットアップと呼んでいます。上下別々に購入できるというのも特徴の一つ。そういったセットアップの場合、インナーはTシャツもありです。それがカジュアルすぎるという場合は、ニットTシャツやニットポロ、開襟シャツを選ぶといいでしょう。足元は、キャンバス地のホワイトスニーカーも合いますし、もっとスポーティなものでもいいでしょう。バッグは、バックパックでもいいと思います」。
ーー”スーツにスニーカー”も新しい考え方ですが、”スーツにバックパック”というのも新しいアプローチですよね。
「これに関してはAERA STYLE MAGAZINEのウェブサイトで、アンケートを取りました。回答数も非常に多く、関心度の高さに驚きましたね。だいたい、40%くらいの方が、スーツにバックパックもありだと考えているようです。アウトドア用のものなどではなく、スクエアデザインでシンプルなもの、お色も黒やネイビーがベターですね」。
ネイビーソラーロのスーツは、上品な光沢が涼しげ。インナーとスニーカー、ともに白で揃えてツートンコーディネートでまとめました。トラッドの王道色ネイビーなので、足元はスポーティなスニーカーでもバランスが取れます。
ジャケット ¥35,000 / SHIPS
パンツ ¥14,800 / SHIPS
ポロシャツ ¥15,700 / GUY ROVER
スニーカー ¥18,500 / WALSH for SHIPS
ゴートスキンを採用した高級感あるデイパック。ストラップは表地にレザー、肌に触れる裏地はナイロンを採用。さらに、背中部分にもナイロンを採用しフィット感を高め、デイリー使いしやすいデザインがポイント。
デイパック ¥46,000(+tax) / TOFF & LOADSTONE
「ワントーンを恐れない」
ーー装いがカジュアルになる分、落ちついた色合わせに徹したほうがいいかと思います。手軽に決まるコツはありますか?
「例えばベージュのセットアップに、ブラウンのスニーカー。ネイビーに白シャツであれば、白のスニーカーを合わせるなど、トーンを揃えたり、どこかで色を拾うというのが手軽にできるテクニックですね。まったくかけ離れた色を合わせると、途端にくだけた印象が強くなってしまいますので、注意が必要です」
ーーストイックな色合わせが、大人っぽく見せるコツなんですね。
「チェックやボーダのインナーも避けるのが無難です。『これって地味すぎない?』と思うくらいくらいがちょうどいい。トーンを統一したり、色を2色に絞ったりすると、装いにビジネスにふさわしい緊張感が生まれます」。
一見すると普通の白Tシャツですが、実は鹿の子編みで仕立てられています。布帛のものより、上品かつ清涼感たっぷりに見せてくれます。
Tシャツ ¥9,000(+tax) / LACOSTE × SHIPS
ジャケット ¥35,000(+tax) / SHIPS
ジョン スメドレーのニットポロは台襟がないので、襟をジャケットの外に出しても、艶っぽくならずに、大人っぽく見せられます。
ニットポロシャツ ¥26,000(+tax) / JOHN SMEDLEY
ジャケット ¥35,000(+tax) / SHIPS
「ルールはみんなで作るもの」
ーースーツにスニーカーを合わせるという新しい着こなしは、手を出しづらい方も多いかと。ですが、多様化する働き方に即してビジネスマンの装いも変わって行くことも必要なことだと思います。
「これまでAERA STYLE MAGAZINEでは、スーツにローファーを履くことを禁止していました。でもスニーカーがありなら、ローファーもありですよね。ルールとは本来民主的なものです。時代の流れに即して、みんなで考え、適宜修正しながら作り上げていくもの。そういった意味で言うと、後年振り返ってみた時に、今年はスーツの着方が大きく”進化”した年として記憶されることになるのかもしれませんね」
PROFILE
MEN’S CLUB、GQ JAPANなどを経て、2008年より現職。最先端モードから服飾史に至るまで、ファッションに関するあらゆる見識を備えた“目利き”としても知られている。現在は、トークショーやイベントなどを通して、装いやファッションに関する素朴な疑問に答えるアドバイザーとしても活動。初の執筆書「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」を3月16日に出版したばかり。
http://asm.asahi.com
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4295401714/impresscommunications-22/