既存の服に対するパターンに新たな可能性と価値を融合させ、“佇まいの美しさ”を引き出すコレクションを提案している「Ujoh(ウジョー)」。独創的ながらも洗練されたアイテムがどのように生み出されるのか、Ujohデザイナーの西崎 暢氏にお話を伺いました。
アレンジできる余白を残せるような
スタイリングが面白くなるデザインが2018FWのテーマ
アレンジできる余白を残せるような
スタイリングが面白くなるデザインが
2018FWのテーマ
ーー2018 SSシーズンからKhajuでの取り扱いが始まりましたが、印象に残っていることはありますか?
前シーズンは、バイヤーさんの買い付けの段階から凄く印象に残っています。Ujohというブランドを理解してくれて、面白いことをやりたいというのが伝わってくるセレクトをしてくれたんですよ。結構攻めたアイテムも取り扱ってくれたのですが、そのアイテムを大阪のショップスタッフさんが着こなしている写真をインスタで見たんです。それが凄く良くて。久しぶりにお店が作り手を刺戟するというパターンでしたね。
ーー2018 FWのテーマを教えてください。
2018 FWの主なテーマはブリティッシュ・トラディショナルです。伝統的で普遍的なスタイルと、上質な服を着崩す人が増えた80年代のスタイルを組み合わせた今っぽいスタイルを意識しました。今回のコレクションのなかでもリバーシブルで着られるコートとスリーピースのアイテムが気に入っています。スリーピースはメンズライクなイメージが強いのですが、それをあえて女性らしくスタイリッシュに仕上げました。リバーシブルのコートは実はショーでスタイリングをしてみてから裏面でも着られる仕様に決めたんです。
ーーショーの最中に最終的なデザインが決まることがあるんですね。
ショーの3日前にモデルを入れて、自分たちでスタイリングをするのですが、その時にコートを裏返して着てみようと。デザインをしている時は裏返す可能性を考えて裏地にもこだわっていましたが、最終的にどう着地させるかは後々固めるというやり方が多いですね。あまり早くから盛り上がって決めてしまうと飽きてしまうといいますか、鮮度が落ちてしまうので。
ショーの直前に仕様を決定したというリバーシブルコート
品のある着こなしを楽しめる女性らしいスリーピース
ーーワンピースやスカートなど、西崎さんが普段着用することのないウィメンズアイテムをデザインするうえで難しさを感じることはありますか?
男性だから理解ができないというわけではないのですが、女性ならではの視点が汲み取れていないといけないので、女性のパタンナーやスタッフとの会話を大事にしています。女性スタッフの話を聞いていると、そこには女性が思う理想的な女性像が描かれているんですよね。そこに男性が女性に向ける視点をプラスしてデザインを考えていく作業が楽しくもあり、難しくもあります。
多くの選択肢のなかから
Ujohに共感してくれる人へ向けて
ブレない服作りを続けたい
ーーデザインの参考にしているものはありますか?
一歩先のものを作るという立場上、“こういうものがあったらいいのにな”ということを常に考えています。パタンナーは紙と定規と鉛筆があったらどこでもデザインを起こすことができるので、ある意味インドアなんですよね。なので、デザインを考えるために旅をしたり映画を見たりということはしていません。最近はコレクションの前になると『encens magazine(エンシェンスマガジン)』という海外のファッション誌を見ることが多いです。今のトレンドとヴィンテージアイテムをうまくミックスさせていて、今しかできない切り口で表現しているので見ていて面白いですよ。常にチェックしているのは、Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)に在籍していた頃の先輩・後輩たちの活躍ですね。今は海外のメゾンにいる先輩や後輩がどのようにブランドっぽさと自分らしさをミックスさせているかを見るのは、作り手として刺激になります。
ーー今回、Khajuで取り扱いのあるビックシルエットのワンピースは、一見パリッとした生地にも見えるのに、触ってみると滑らかな質感。素材への強いこだわりも感じられますが、生地からインスパイアされることはありますか?
ワンピースに使用したウールのギャバジンは、世界中のメゾンが使っている尾州[ルビ:びしゅう](愛知県、岐阜県)の生地屋さんで出会ったもの。生地の希望を伝えると要望に合わせたものを出してくれるんですけど、その人が選んだ生地じゃないと出来ない服もあるくらい的確なんですよね。生地が持つ個性を熟知しているので、そこでの会話から“この生地ならこんなデザインをしてみたい”とアイディアが生まれることはあります。
ウールのギャバジンを使用したワンピース
ーー最近の傾向としてスタンダードなアイテムの人気が高まっている印象ですよね。Ujohのアイテムは個性的な部類に入ると思うのですが、日本で販売していくなかでの戦略などはありますか?
スタンダードなデザインの方が万人受けするというのは分かっているのですが、今はそこにあまり興味がなくて。Ujohはいわゆる定番というものがないんですよ。過去にリリースしたアイテムをまた作って欲しいという要望も頂くのですが、新しいものを作っていきたいなという思いがあって。シンプルやベーシックが悪いとは思わないのですが、日本で展開していくうえでUjohはファッションを刺激する立場でありたいと感じています。Ujohを着ることで“ファッションって楽しいな”と思ってもらえるような服を展開していければいいなと思いますね。
ーーでは最後に、これから店頭でUjohの洋服を手に取るお客さまへメッセージをお願いします。
服はその人を表現するコンテンツでもあるので、自分と向き合い、色々なものから選択する中でUjohを選んで欲しいなと思います。1万人に一人くらい「Ujohがすごく好き!」という人がいればいいですね(笑)。Ujohというブランドに共感できる人と繋がっていけたらいいなと思います。
歩くたびに裾からのぞく鮮やかなグリーンが目をひくコートはリバーシブル仕様。レザーパイピングが洗練されたムードを盛り上げてくれる。
リバーシブルコート¥79,000(+tax) / Ujoh
ワンピースのサイドに配されたスナップボタンを外すと大胆なスリットのあるシルエットとなり、パンツ合わせでスタイリッシュに着こなすことが可能に。
サイドスリット シャツドレス¥47,000(+tax) / Ujoh
心地よい肌触りのワンピースは一枚でさらっと着こなしたい。シルエットに立体感を生む独創的なパイピングデザインが凛とした雰囲気を演出してくれる。
ドレス¥55,000(+tax) / Ujoh
前面が大きく開いていることにより、合わせるアイテムによって表情を変える。同柄のパンツを合わせれば、セットアップ風に着こなせる。
ギャザー ドレス¥39,000(+tax) / Ujoh
やりすぎ感のないワイドボトムは幅広いスタイリングに対応。歩く度に揺れる華奢なベルトが女性特有の格好良さを引き出してくれる。
パンツ¥39,000(+tax) / Ujoh
2009年に「Ujoh(ウジョー)」を設立。2016年にはGIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)による若手デザイナーサポートプログラム支援を受け、ミラノファッションウィークでコレクションを発表。日本のファッションシーンを率いるデザイナーのひとりとして期待されている。
2018年9月23日には、Ujoh 2019 SSのコレクションをミラノで発表する。