村上 淳が語る   「toast(トースト)とモノづくりと……」 村上 淳が語る   「toast(トースト)とモノづくりと……」

村上 淳が語る
「toast(トースト)とモノづくりと……」

ファッション、スケート、芝居、ブーツ作りetc.……と、あらゆるフィールドを行き来してきた村上 淳氏が、スニーカーとアイギアに特化したブランド「toast(トースト)」をスタートさせた。長年、苦楽を共にしてきたもう一人の村上(久典)氏と、さらに一歩進んだモノづくりにトライする意図とは?

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「とにかく丈夫な“ズック”が作りたかったんです」

??今、「toast」を始めた理由はどこにあるのでしょうか?

「10年ほど前から、自分はmade in GM japanというブランドを通して、ブーツ作りに力を注いできたんですね。それで、とにかく学ばなきゃならないことが多くて。結果、その間ほとんどブーツしか履かずにいろんなデータを取っていたんですが、いい職人やいい工場を探していくなかで、(ビジネスパートナーの)仙台の村上(久典)と、何か新しいことを始めようと思ってた矢先に、ムーンスターという企業に出会ったんです。僕のモノづくりの絶対条件は、“丈夫であること”なんですけど、ムーンスターは、それを充してくれる企業なんです」

??それでスニーカーを作ってみようと思ったのでしょうか?

「僕の場合、舞台をやるので、いろんな動きをするんですよ。日常とは違って飛んだり跳ねたりするなかで、それに耐えうるようなズックが作りたくて」

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モノづくりのパートナーでありよき助言者、“もう一人の村上”こと村上久典氏。靴作りのスペシャリストで、made in GM japanも共に手掛けている。

??ズックというのは、履き倒せるスニーカーということですかね?

「いや、あくまでイメージです。ベストのことを僕はチョッキっていうし(笑)。そういうスニーカーが作りたいとなって、まずは丈夫さを追求していったところで、ムーンスターさんと出会ったんです。義務教育を受けた人なら誰でも体育館履きのシューズを履いた経験があると思うんですけど、激しい運動をしたからといって体育館履きのシューズは、そう簡単には壊れなかったですよね。少なくとも、ソールが取れたという話は、僕は一度も聞いたことがない。そういうタフさのあるシューズのイメージがズックなんです。それを実現するためにヴァルカナイズ製法で作っていますけど、ムーンスターさんが今までやったことのないソールの厚さまで攻めています。そういう丈夫さをクリア上で、デザインをちゃんとしていきたいんですよ」

??なるほど。デザインに関しては、アッパーを囲むように張られたラバーが、特徴的ですね。

「そうですね。でもこれは見た目だけじゃなくて、理にかなっていると思いますよ。防水性であったりタフさを増幅させていますから。単にソールを貼るんじゃなくて、一つラバーを挟むことで、より強度が増しているんです。もちろん見た目にしても、ラバーとアッパーが同色でもトーンが微妙に異なりますからグラデ感が出ますし。さらに履けばもっと見え方も変わってきますから」

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??確かにラバーが入るだけでユニークに見えますね。タフさに関してですが、やはりスケートは意識されているのでしょうか?

「いや、僕らが80年代にスケートを始めた頃に求められたスニーカーの強度と、今のスケートブランドが追求している強度は、全然違うと思うんですよ。toastの靴は、トゥの部分にラバーを盛ってるので、実際にスケートをしても強度的には全然問題はないんですが、だからといってスケートを意識した靴ではないです」

??そうなんですね。では、デザイン的なイメージは何かあるのでしょうか?

「やっぱり、今持っている服に即戦力で仲間入りできるか? ということが重要だと思っています。toastのスニーカーを買ったからといって、それに合わせるためにパンツやトップスを買い替えたりする必要はないようにイメージしています。価格も抑えられているので、当たり前に使いやすいスニーカーだと思います」

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「履く人のベースになる靴だと思っています」

??今後バリエーションは、増えていくのでしょうか?

「スリッポンとかももちろん考えていますけど、しばらくは現在の形のままでいきたいですね。この形にくるまで相当練っているので。色に関しては、最初のシーズンは、黒、マスタード、ピンクがあります。でも実は、ピンクは“ mmj ” という僕の名前がついているんですよ。定番色とは別に、より自分らしい“ mmj ”と呼ぶカラバリは、今後も展開していくと思います」

??どんな“ mmj ”が出てくるのかは、シーズンによって変わってくるということですね。

「はい。次はコンセプチュアルな“ mmj ”も考えています。今は、いろいろとアイデアもありますし、それをできるかどうかをジャッジしてくれるパートナーの村上くんもいて、引き受けてくれる職人もいる。本当にそれはいい図式です。僕もこういう形でしかもう物は作りたくないです」

??なるほど。toastのモノづくりは、理想的な形でできているんですね。

「そうですね。toastは飛び抜けた奇抜さはないんですけど、即戦力になる靴ですし長く付き合える強みがあると思っています。これから出来上がってくるサングラスもそうですが、“考えたらいつもの間にかよく身に着けている”というものにしたいんです。それで、奇抜さがないぶん、企業や他のブランドにもこの靴を自由にいじってもらえたら嬉しいですね。その場合は、絵型もすべてお渡ししますので(笑)。アウトソールとヒールパッチが赤という以外は、すべて自由に変えられますよ」

??カスタムするのは自由ってことですね

「そうです。自分はそれが何であれ、若い頃から物に対しては、“ベース”として捉える傾向がありました。どれだけカスタムできるかを自分なりに楽しんできましたし。toastも履いてくれる人にとって、あくまでベースになる靴でありたいんです。そのために、いろいろなテストを繰り返してここに行き着いているんですよ。一度履いてもらえれば、それがわかると思います。今ある靴と取り替えても全然違和感はないはずです」

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スニーカーとカメラ_1

物をベースとして捉えて、常にカスタムを楽しんできた村上氏。愛用のカメラ、 ライカM3にも“自分色”を施している。

??いろいろな経験を踏まえて、多くの人に楽しめるスニーカーにたどり着いた、そんなイメージですね。

「まさにそういう靴だと思います。昔、自分が10代の頃はいろんな人の真似をしてモノづくりをしていました。例えばジョニオくんだったり、(藤原)ヒロシくんだったり。教えてもらったものをそのまま世に出していた時期もありますし。真似をすることは悪いことだとは思いませんが、それが20代になって自分というフィルターになって、そこからさらに30代以降は、周りにいろんな意見を言ってくれる人たちができたんです。今は、みんなのフィルターを通っていますから、濾過されてよりいいものができるようになったと思います。とはいえ、できたものを押し付けがましく薦めようとは思いません。僕のモットーは“美しく謙虚に”ですから。いつでも“もしよろしければ”という感覚で物作りをしていますよ」

スニーカーとカメラ_1

ヴァルカナイズ製法で驚くほどタフに仕上げた1stモデル「 jam 」。ソールとアッパーの間に配されたラバーパーツが特徴的なアクセントになっている。それでいてステッチワークや装飾は極力そぎ落としたミニマル顏。合わせる服を選ばない。ちなみにこちらは、もっとも村上氏らしいカラバリの“ mmj ”

スニーカー ¥18,000(+tax) / toast

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村上 淳(むらかみ・じゅん)

1973年大阪府生まれ。10代の頃からモデルとして活動を開始し、1993年には、『ぷるぷる 天使的休日』で映画デビュー。以後俳優として、映画、テレビ、舞台などで幅広く活躍。また、モノづくりも数多く手がけ、2008年には、村上久典氏とブーツブランド「made in GM japan」を立ち上げる。長年の靴作りで深めた知識やノウハウを生かし、2017AWシーズンよりフットウェアとアイウェアに特化したブランド「toast」をスタートさせる。

【出演情報】
映画『AMY SAID』(9/30(土)テアトル新宿にて公開)、『月と雷』(10/7(土)テアトル新宿にて公開)、『blank13』(来年2/3(土)シネマート新宿にて公開)。TX土曜ドラマ24「居酒屋ふじ」、TBSテッペン!水ドラ!!「わにとかげぎす」にレギュラー出演中。NHK-BSPドラマ「全力失踪」第5話(10/1(日)OA予定)出演。NHKドラマ10「マチ工場のオンナ」レギュラー出演予定(11/17(金)OA開始)。