2017秋冬シーズン、正式にスタートを切った「unfil(アンフィル)」。上質で着心地のよい素材感、ゆったりとしたシルエット、温かみのあるカラーリングetc.……。今の時代の空気をふんだんに取り入れたこのニューブランドは、大人が自然体で着られるストリートウェアを体現している。デザイナーの藤原氏とSHIPS JET BLUE バイヤー 村松が、新たなプロジェクトの全貌を語る。
??「unfil」は、今季デビューを果たしたばかりですが、SHIPS JET BLUEで取り扱いを開始するにあたって、どんな経緯があったのでしょうか?
村松「今までのSHIPS JET BLUEにはない新しいストリートウェアを探していたときに、たまたまルックを見る機会がありまして。個人的にもすごく好みだったので、急遽連絡して伺ったのが最初ですね」
??簡単にブランドコンセプトを教えていただけますか?
藤原「“大人の着られるストリートウェア”というのが、自分のなかでは隠れたテーマです。そもそもは、大人でも満足して着られる素材感やシルエットを大切にしたブランドを純粋に作りたくて始めました。古着やストリートウェアには、影響を受けていますが、(村松さんに)そういう自分が好きなエッセンスを感じていただけたのは、正直嬉しかったですね。わかる人にしかわからないようなディテールもたくさんあるので」
??生産は日本で行っているのですか?
藤原「そうですね。もともと僕は、イリアンローブ・アイエル バイ サオリコマツというレディスのニットブランドのプレスをやっていたのですが、それが前身です。10年ほど活動していたので、日本国内には多くのネットワークを持っています。その生産背景を活かしつつ、ニットだけではなく、カットソーや布帛も含めてトータルで提案できるブランドとしてスタートしました。スタッフは、僕と前身のブランドのデザイナー、アシスタントの3人です」
??前身がニットブランドということは、やはりニットが強みなのでしょうか?
藤原「そうですね。確かに、ニットはすごく得意ですね。それは強みとして打ち出していくつもりです」
??なるほど。SHIPSとしては、unfilのどういったところにフォーカスして展開をしていくのでしょうか?
村松「全体的な色の使い方とか、着こなし提案も含めて、すごくバランスのいいブランドだと思っています。ファーストコレクションのルックブックもインパクトがありましたし、そういう見せ方も合わせてトータルの世界観を一緒に打ち出していきたいですね。藤原さんとは同年代ですし、お互いが通ってきたファッションやカルチャーも近いですから。実際に洋服を見てシンパシーを感じる部分は多いです」
??それは興味深いですね。サイジングや質感にリラックスしたムードを感じるのですが、それは意図したものなのでしょうか?
藤原「そうですね。自分も2000年代前半はタイトなシルエットを好んで着ていた時期もありますが、ここ10年ぐらいはそういった洋服にはなじめなくなってきていて。最近は、リラックスして自分らしくいられる服が好きですし、抜け感というか、自然体のムードを大切にしています」
??具体的に影響を受けたカルチャーやファッションシーンなどを挙げると、どういったものになるのでしょうか?
藤原「例えばチャンピオンのリバースウィーブなど、王道のアメリカの古着には影響を受けています。今回作っているスウェットパーカも、それがベースですし。ただ、まるっきり同じような素材でかつてのアイテムを再現しても意味がないので、あえてハイゲージで目が詰まった素材にすることで光沢感を出しています。コーチジャケットも80?90年代のアウトドアブランドに見られたようなディテールを取り入れています。古着からヒントを得た要素を、今の素材やシルエットに落とし込むことは意識していますね」
??そういった古着のエッセンスや、ゆったりとしたシルエットを大切にしているということは、やはりターゲット年齢もやや高めなのでしょうか?
藤原「特に年齢は意識していません。それよりも服をある程度自分なりに楽しんで着てきた人に、納得して着てもらいたいですね。もちろん大人にも若い方にも通づるところはあると思います」
??なるほど。それはSHIPSとしても同意見ですか?
村松「そうですね。実は、そういう立ち位置のブランドは、少ないのが現状です。unfilは、たくさんの洋服に袖を通してきた30代中盤から40代の方も納得できて、しかもストリートを感じるようなエッセンスを持ち合わせています」
??まさに、“バランスがいいブランド”ということですね。
村松「そうだと思います。たとえば“何系”と形容する言葉は浮かびませんが、そこもまた大きな魅力ですよね」
??それは、オリジナリティが高いということだと思いますが。
藤原「そういう意識はありません。ただ、現状やられていないことを、モノづくりを通して表現することに意味があると思っています。それに共感をしてくれる人が増えてくれたら嬉しいですし。もともと前身がレディスなので、メンズはまだまだ認知度が低いんですが、徐々に浸透していければいいですね」
??レディスとメンズで素材使いなどは変えているんですか?
藤原「いえ。実はメンズもレディスも共通の素材が多いんです。メンズにもレディスならではの素材使いを躊躇なく採用しています。それは大きな特徴だと思いますね」
??色使いも優しい中間色などが多いように感じますが?
藤原「そうかもしれないですね。そのへんはレディスチームの意見も取り入れています。自分が好きな色ではなくても、レディスにマッチするものをあえメンズに取り入れることで、新鮮に見えることも多々ありますし。それは、メンズにとってもレディスにとっても、いい相乗効果になっています」
??素材使いなどで、特徴的なものを具体的に教えていただけますか?
藤原「今シーズンのベージュのニットは、キャメルとアルパカの混紡素材を使っています。国内で紡績からやっていただいたもので、他にはないものですね。実は以前、キャメル100%のものを作ったことがあるのですが、コシがなくて柔らかくなりすぎてしまったんですよ。それを踏まえてアルパカと混ぜることで、硬さとハリ感を出しました。ちょうどいい風合いに満足しています。カシミアで高級感を追求することもできますが、あえて獣毛で、メンズではそんなに使わない素材にトライすることに意味があると思うんです。そういうところが、このブランドの特徴の一つでもあります」
??確かにそういう素材使いは、オリジナリティにつながっていますね。
村松「メンズでこういうアプローチをするブランドには今まで出会えませんでした。この世界観は、ユーザーにとっても面白いと思いますし、広げていければいいですね」
??これからのブランドの打ち出しとして、意識していることはありますか?
藤原「固定概念にあまり捉われずにやっていきたいですね。いろんな方に着ていただきたいですし。特定の年齢層やイメージにカテゴライズされないブランドでありたいとも思っています。サイジングに関しては、しばらくは、今のリラックス感を重視したスタイルを変えるつもりはありません。個人的にも、キメすぎるのはそんなに好きではないので、リラックスできて自然体、そういう空気感を大切にしながらブランドを成長させていきたいです。そもそも、自分は格好良くキメキメというのは、多分できないと思っています(笑)」
元イリアンローヴ・アイエル・バイ サオリコマツのデザイナー、小松さおり、早川麻衣、藤原将平の3人で設立。2017年秋冬コレクションでデビューを飾る。素材の良し悪しを見極めてきたスペシャリストが作り込むラインナップは、温かみがあって、常に着る物に心地よさとリラックスムードを与える。メンズ、レディスに捉われない色使い、ゆったりとしたシルエットなど、都会的で抜け感のあるアプローチが持ち味。古着、モード、ストリートといった特定のテイストに固執しない自由な発想でモノづくりを追求している。
unfil HP: http://www.unfil-inc.com