DJ/選曲家・松浦俊夫による、音楽の裏ミシュランガイド? DJ/選曲家・松浦俊夫による、音楽の裏ミシュランガイド?

DJ/選曲家・松浦俊夫による、音楽の裏ミシュランガイド?

毎週水曜、23:00?24:00にInterFMで放送されている松浦俊夫の人気ラジオ番組『TOKYO MOON』。そこでオンエアされた膨大な楽曲のなかから選りすぐった、ディスクガイドとコンピレーションCDが発売された。ここでは同企画の全貌と、音楽とのつきあい方、楽しみ方について話を聞いた。

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自分の本でありながら、読んでいてすごく楽しめました

??ディスクガイドのほうは、いろいろな方がライターとして参加されているんですね。

松浦 音楽の魅力を言葉で伝えようという意識が自分にはあまりないので、そこは文章に長けている方にお願いしようと思ったんです。一部自分でも書いてますが、普段から雑誌やSNSなどを拝見していて、音楽に対する切り口がユニークで適任だなと思った方にお願いしています。ですので、こちらが一方的に知っているだけでお会いしたことのない方にも今回執筆のお願いをしました。

??音楽を聴いて「いいな」と思うのと、それをテキスト化する作業にはやはり違いがありますか?

松浦 そうですね。しかも、今回は391枚も紹介しているので、すべてを自分で書くと平坦な本になってしまうと思ったんです。お願いすることで、よりこれらの作品が違った切り口で紹介できるだろうというのもあって。実際、皆さんの文章を読ませていただいたとき、自分の本でありながらすごく楽しめました。

??番組でも曲の紹介はされていますよね。

松浦 するにはするんですけど、自分は喋りよりも曲を聴いてもらいたいと思っているので…。60分番組のなかで12?13曲くらいかけていて、喋るのは15分に1回程度、しかも1分も話さないです。その代わりに、番組終了と同時にプレイリストを公開しているので、そこから先は楽曲に興味を持たれたリスナーの方々にお調べいただきたいと考えています。

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音楽とのふとした出会いを大事にしていきたい

??ディスクガイドには、「あなたの人生を変えてしまうかもしれない391のディスク」という副題がついてますが、番組当初からそこがコンセプトにあったのですか?

松浦 そうですね。あまり知られていないですが、この番組は「ふとしたきっかけで、あなたの人生を変えてしまうかもしれない」というのをコンセプトにスタートしたんです。ラジオではなかったですけど、僕自身もふとしたきっかけで耳にした音楽によって、いまの仕事に導かれた経緯があるので。やはり、そういう出会いを大事にしていきたいなと思っていて。

??松浦さんが経験された、「ふとしたきっかけで人生を変えられた音楽」とはどういうものだったのですか?

松浦 1986年4月に観た、東京コレクションでの菊池武夫さんのファッションショーです。『MR ミスターハイファッション』という雑誌のプレゼントコーナーでチケットが当たって、ひとりで観に行っていて。そのときにかかっていたのが、いわゆるラテンジャズだったんですけど。その音楽に合わせて、クラシカルなスーツのセットアップにハットを被った、ロンドンの黒人ジャズダンサーたちが踊っていて大きな衝撃を受けたんです。当時、大学受験に失敗して、そのまま浪人生活を始めるかどうかという目的を見失っている時期で、すっと音楽に導かれていった。それから数ヶ月後には菊池さん関連の店でバーテンになるなど人生が大きく変わっていったんです。

??番組を続けるなかで、リスナーのそういったエピソードみたいなのは届きますか? 番組へのお便りとか。

松浦 以前はメールで下さっていました。最近はリアルタイムにtwitterでハッシュタグを付けてツイートして下さるので嬉しいですね。

??そこで気になるやりとりとかは。

松浦 自分が狙った意図を汲んでくれていると嬉しいですね。普通ではかからない2曲が、なぜ前後してかかったのかとか。ジャンルやアーティストではなく、ムードでつなげていることが多いんですけど、その自分しかわからないであろうキーワードみたいなところに気づいてくれると嬉しい。

出会いに向かっていく気持ちがあることも大事

??ムードでつなげているというお話が出ましたけど、「これからはジャンルではなく、空気、雰囲気、トーンで音楽を聴く時代」とういうことも提案されていますよね。その真意を教えていただけますか。

松浦 要するに、音楽の聴き方に決まりはないということです。いろんな音楽を聴いていくなかで、枝分かれして、さらに新しい音楽に出会う。音楽でもファッションでも、何かに一辺倒というのは面白くない。まずはいろいろ聴いてみて、そこで自分に合うものに出会えればいい、というのが僕の提案している聴き方。あくまでも感性で選べばいいわけだから難しいことではなくて。自分自身も日々新しい音楽と出会うなかで、驚きや発見があって、でもそういう体験は自分から積極的に行かないといけない。男女の出会いもそうだけど、ふとしたきっかけというのは、ある部分で、出会いに向かっていく気持ちがあることも大事だったりするんですよね。

??いまは流れている楽曲を聴かせて検索できるアプリもありますしね。

松浦 僕も使いますよ、よく使うアプリの5本指には入る。最近はまだリリースされていない曲でも結構出てくるので便利ですね。

??今回、ディスクガイドとコンピCDにまとめるきっかけは何かあったのですか?

松浦 ラジオを聴いてくださっている編集者の方から、切り口が面白いということで最初に書籍のお話をいただいて。「ジャンルではない聴き方を提案して欲しい」といわれたんです。もちろん、本のために選盤するやり方もあったんですけど、それだとどうしても狙ってしまいそうだなと思って。

??狙ってしまうというのはどういうことですか?

松浦 世の中にはすでにさまざまなディスクガイドがあるので、それとは被らないように、誰も持っていないようなアルバムを選んでしまいそうという意味で。でも、それは違うかなと思って、ラジオでかけた5年分のプレイリストから選ぼうと。

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曲の一部分を聴いただけでも、
改めていい曲だなって思えるものを選んでいます

??5年分のプレイリストを改めて見たときに発見などありましたか?

松浦 当初は日曜19時からの30分番組だったんです。なので、夕食の30分前のイメージというか、アペリティフを飲みながら料理を作っているイメージで選んでいて。そのうちに曜日や時間が変わっていくなかで(現在は水曜23:00?24:00)、音のコンセプトは残しつつ、エレクトリックミュージックが増えてきたり、もうちょっとストーリー性を出す方向に変わってきた気がします。

??とはいえ、選ぶ作業は大変ですよね。

松浦 大変でしたね。4000曲くらいあったので、聴き返すだけで3ヶ月くらいかかりました。

??そこからどう選んだのでしょう。

松浦 曲の一部分を聴いただけでも、改めていい曲だなって思えるものを選んでいます。1950年代から現在までジャンル関係なく。だから、変わった選び方になっているとは思います。そこから、パソコンのフォルダ上で、自分にしかわからないキーワードで20くらいに分けて、最終的にJAZZ、CINEMATIC、MOODS、SOUL、FOLK / ROCK、BRAZIL / ARGENTINA、 WALTZ、DANCE FLOOR、WORLD、WORD / BEATS、JAZ HIP JAP、 SEASONAL、LIFEという13のキーワードで分けていきました。

??13のキーワードは、ご自身で管理されているパソコン上のフォルダ名とは違うんですね。気になるので、当初あった松浦さんにしかわからないフォルダ名というのをひとつ教えてください。

松浦 う?ん、一番わかりづらいのは「Eclectic(エクレクティック)」っていうフォルダかな。折衷主義っていう意味なので、ごちゃ混ぜみたいな。ジャンル分けできない楽曲はそこにストックしていますね。

??やはり、ジャズが一番細かく分かれているんですか?

松浦 自分のパソコン内はそうですね。ジャズといってもCDショップとかで分類されてそうなものもあれば、そうでないものもあって。たとえロックでも、ジャズな気分のものも含まれてるから。全部で12個くらいに分けています。

??ジャズカテゴリーだけで12個! 一方で、日常的に多くの音楽を聴きすぎて、作り手として混乱することはないですか? 情報が多すぎてしまうみたいな。

松浦 HEXなどの活動もしていますけど、自分はミュージシャンだとは思ってなくて、あくまでもDJだと思っているので。外的な刺激を受けて、自分ならこんな感じにするみたいなものがあるので混乱はしないですけど…。思い通りに作れなくてイラ立つことはありますよね、ミュージシャンでないぶん。

書籍とCDがどう受け取られるかは、重要なターニングポイント

??コンピレーションCDも発売されますが。

松浦 厳密にいうと本に掲載されていないものも収録されているんですけど。でも、実際にオンエアした楽曲であることは間違いないです。かなり大人っぽい感じだと思います。ダンスミュージックもあるし、映画音楽もあるし、原田知世さんの曲もある。ある意味でデタラメだけど、聴いていただければ「なるほどね」と思えるものになっているかな。年齢層高めに作っています。

??どういった人たちに届いて欲しいと思いますか?

松浦 音楽が好きでいまでも聴いている人たちや、学生時代にはよく聴いていたけれど、最近はあまりという人たちに手に取って欲しいですね。まったく興味のない人には、よくわからないと思うので。でも、この『TOKYO MOON』という書籍とCDが、いまの時代にどう受け取られるかっていうのは、結構重要なターニングポイントだと思っていて。

??というのは?

松浦 音楽を聴いている、聴いていた人たちは、音楽を扱っているお店には行かなくなっていても、本屋さんには行っているんじゃないか? という。わかりやすい音楽ではないので、それをどうやって伝えるか、本屋さんにはひとつの可能性があると思うんです。CDは買わなくても本は買っているかもしれないし、クラブには行かなくなったけど本屋さんには行っているかもしれない。

??最近はおしゃれな本屋さんも増えましたし。

松浦 そうそう、僕も音楽コレクターなわけではないし。音楽が中心にありながら、ファッションも好きだし、食べることも飲むことも映画を観ることも好きなんです。そういうなかで、新しい出会いを求めてみようよっていう。

??感覚的にはレストランガイドの音楽版みたいな感じですね。

松浦 そうですね、個性的でクセのあるお店が揃ってるって感じですかね。裏ミシュラン的な(笑)

??まさにそんな感じがしました、これからもう一度じっくり読ませていただきます。今日はありがとうございました。

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TOKYO MOON MUSIC FOR LIFE

シンコーミュージック・エンタテインメント刊
¥2,200(+TAX)

「TOKYO MOON」でオンエアされた曲の収録アルバム(一部シングルや12インチ含む)を松浦俊夫が厳選。13のキーワードに分類された、ジャンルや時代を越えた391枚のディスクガイド。

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TOKYO MOON
-Songs Of Yesterday-

V.A.(Selected by Toshio Matsuura)
P-VINE RECORDS
CD+デジタル配信 ¥2,000(+TAX)

「Songs Of Yesterday」な気分にフィットする大人な13曲をセレクトした、コンピレーションアルバム。

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TOKYO MOON
-Speak Low-

V.A.(Selected by Toshio Matsuura)
ユニバーサル ジャズ
CD+デジタル配信 ¥2,000(+TAX)

「Speak Low」な気分にフィットする大人な16曲をセレクトした、コンピレーションアルバム。

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松浦俊夫 Toshio Matsuura

1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。日本におけるクラブカルチャー創世記の礎を築く。12年間で5枚のフルアルバムを世界32ヶ国で発売し、高い評価を得た。
独立後も精力的に国内外のクラブやフェスティバルでDJ。さらにイベントのプロデュースやファッション・ブランドなどの音楽監修を手掛ける。2013年、4人の実力派ミュージシャンとともに、東京から世界に向けて現在進行形のジャズを発信するプロジェクト「HEX」を始動。Blue Note Recordsからアルバムをワールドワイド・リリース。
InterFM「TOKYO MOON」(毎週水曜23:00?)好評オンエア中。

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撮影協力WINE LIVING Signature

住所:東京都港区南青山3-18-19 フェスタ表参道ビル4F
電話:03-6459-2980
営業時間:月曜?金曜 15:00 - 26:00 (L.O.25:00)、土曜 11:30 - 26:00 (L.O.25:00)、日曜 11:30 - 19:00 (L.O.18:00)
http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130602/13148134/