絵本専門誌『MOE』の増刊としてスタートし、2013年にリニューアル創刊した子育て情報誌『kodomoe(コドモエ)』。人気絵本『ノラネコぐんだん』のキャラクターをマスコットキャラにしたり、毎号の付録に描きおろし絵本をつけたりと、独自路線で多くの親子を魅了しています。今回はその編集長を務める安藤三四郎さんに、雑誌を通じて紹介している「親子時間の楽しみかた」についてお話を伺いました。小学生のお子さんをもつパパでもある安藤編集長にとっての「子育て」とは?
??安藤さんはいつから『kodomoe』の編集長を務めていらっしゃるのですか?
2015年2月からです。それまでは少女漫画の編集を10年、プロモーションの仕事を10年していました。
??じゃあ、雑誌の編集長を務めるのは初めてだったのですね。
そうなんです。漫画雑誌ではない雑誌に関わるのも、編集長として働くのも初めて。ましてや子育て情報誌というジャンルですから、最初はちょっと戸惑いましたね。でも、私自身も子をもつ親なので関心のある分野でしたし、自分の体験を少しでも活かせたら…と思いながら手探りでスタートしました。
??編集長になって初めて手がけたのはどんな企画でしたか?
『アドラー式育児法 オープンカウンセリング』という連載企画です。これは、読者のママからいただいた子育てに関する悩み相談を、アドラー心理学をもとに解決していくというもの。アドラーはフロイト・ユングと並ぶ三大心理学者のひとりですが、日本ではそこまで有名ではありませんでした。近年『嫌われる勇気』という本がベストセラーになってからは一気に話題が沸騰し、「子育てに活かせる」と親御さんたちの間でも注目され始めているんです。
??アドラー心理学。確かに最近よく名前を耳にするようになりました。どういう部分が子育てに活かせるのですか?
アドラー心理学では、子どもをひとりの人間として捉え、行動や人生を自分で選ばせることを重視しています。たとえばお子さんが出先で「おもちゃを買って」と駄々をこねたとしましょう。床に寝転がってジタバタする我が子を、いつもなら「恥ずかしいからやめなさい」などと叱りたくなりますよね。でも、駄々をこねる行為をやめさせたいのは私たち親であって、その目的に子どもが従わないから怒りの感情が湧くのです。そこで大切なのは、「自分の目的を押しつけているだけではないか?」と冷静に一呼吸おき、子どもに選択肢を与えること。ここでこのまま駄々をこね続けるか、やめておいしい夕食を食べに行くか。子どもが自分でどちらかを選んだら、その選択にとことん付き合ってあげてください。そうするうちに子どもはおのずと取るべき行動を学びますし、親が感じる思い通りにいかないイライラも減っていきます。
??なるほど。すぐに日常で使えそうな実用的なテクニックですね。
子育てには技術が重要だと思います。こう言うと事務的に聞こえてしまうかもしれませんが、実際に子育ての技術を必要としている親御さんは多いと思うんです。その技術がママの心と体を助けると思っています。そんな「使える」情報をお伝えしたくて、この連載を始めました。アドラー心理学に精通されている向後千春教授と、10代の頃からアドラー心理学を学んできたというアナウンサーの吉田尚記さんに、アドバイザーとして登場していただいています。
??子育ての方法論を教えてもらえるのは、読者の方々にとって心強いでしょうね。
読者モニターのみなさんからも、「誰も答えを教えてくれないから、これでいいのかな?と不安になる」という声がよくあがっています。そういった方々の不安を取り除き、いい方向へ背中を押してさしあげられるような内容をお届けしたいですね。
??人気漫画家・ヤマザキマリさんのインタビュー企画なども好評と聞きました。
はい。これは、先輩ママの波乱万丈な子育てエピソードを通じて、「子育てに正解・不正解はない」「いまのままで大丈夫」というメッセージを伝えたいと考えて生まれたシリーズ企画です。方法論を伝える『アドラー式育児法』のコンセプトと相反すると思われるかもしれませんが、どちらの企画も、子育てに奮闘するママさんたちに「自己肯定」をしてもらいたいという思いが根底にあります。子育ては本当に大変だと妻を見ていても思うので、読んでいて心が軽くなったりポジティブになれる雑誌をつくることが、私の理想です。
??安藤さんの息子さんは、どんなお子さんですか??
いま小学1年生で、私に似て文化系です(笑)。私が休みの日には一緒に図書館に行ったり、家でアニメを観たりしています。この前びっくりしたのは、読んでいた本の奥付を熱心に眺めて「○年発売で○刷かぁ、すごいなぁ」などと言っていたこと。私が家でよく言っている言葉なので、すり込まれてしまったみたいです(笑)。
??へぇ!(笑) パパの普段の何気ない言動をよく見ているんですね。将来の夢とかは?
宇宙飛行士になりたいと言っています。これもおそらく、私が観ていたアニメの影響ですね。
??『kodomoe』の編集長になって、子育てに役立ったことなどはありますか?
たくさんありますよ。たとえば、息子は集団行動が苦手で、それを『アドラー式育児法』でお世話になっている先生に相談してみたことがありました。すると「集団行動ができないことを改善したいのは親であって、子どもの意志ではない。子どもが“みんなと遊びたい”と言ってきたら、そこで初めて手助けをすればいい」というアドバイスが返ってきて。その考えかたを教わってからは、子どもを注意したり叱ったりする前にワンクッションおいて考えられるようになりました。
??子育てをしていておもしろいと感じることは?
子どもが生まれるまでは「自分はきっと子育てに向いていない」と思っていました。子どもという存在を深く考えたことがなかったので、我が子にどんな感情が湧くか想像できなかったのです。でも実際に生まれてみると、私の関心はほぼ100%息子に向き、自分のことは完全に二の次に。ここまで夢中になれる興味の対象は、大人になるとなかなか現れないものですから、大げさではなく新しい人生が始まったような感覚でした。いままで知らなかった自分の一面が見えたり、初めての感情が生まれたりする子育ては、向いていないと思っている人ほど実は楽しめるのかもしれませんね。
??息子さんにしてほしいファッションはありますか?
おべっかを使うわけではありませんが、私の若い頃はちょうどセレクトショップのブームで、SHIPSさんの服をよく着ていました。本当は今日も着てくるか散々迷ったのですが、ちょっといやらしいかなと思ってやめたんです(笑)。なので息子にもSHIPSをぜひ着せたいですね。おそろいなんかもやってみたいです。
??そうなんですね、ありがとうございます! SHIPSのキッズアイテムで気になるものがあればぜひ教えてください。
『ALPHA』のフライトジャケット『MA-1』ですね。ひと目惚れしました。子ども服って、自分が着てみたかった服を子どもに着せるという楽しさもあるので、息子に託そうと思います(笑)。
??『kodomoe』でもファッション関連の企画はありますか?
毎号1企画以上は掲載するようにしています。先ほどの方法論の話になりますが、キッズファッションこそメソッドが必要な分野だと思うんです。「子どもだから何でも似合う」ではなく、「体型別のアウターの選びかた」だったり「一番おしゃれに見えるパンツの丈」だったり、お手本を提案することが大切かなと。
MA-1(100?140cm) ¥10,800(+tax)/ALPHAMORE
??「子ども向け」「ママ向け」と分けて紹介するのではなく、親子でファッションを楽しむ方法を紹介する企画が多い印象です。
そうですね。具体的なシチュエーションを想定して、それにあわせた親子のコーディネートを提案する形にしています。より実用的なコーディネートになるように、お子さんのいるスタイリストを起用するなど工夫しています。ファッションセンスは一種の「才能」ですから、それを誰でも楽しく実践できるように方法論として紹介していくことが、『kodomoe』のファッション企画の最大のポイントだと思っています。
??では最後に、安藤さんにとって「子育て」とは?
「地図のない旅」ですね。目的地が見えず、正しい道もわからない、長い長い旅。『kodomoe』は、そんな旅の真っ只中にいるママたちにとっての道しるべのような雑誌でありたいと思っています。
安藤 三四郎 Sanshiro Ando
東京生まれ。
株式会社白泉社にて、少女漫画の編集を約10年、プロモーション業務を約10年担当。
2015年2月より『kodomoe』編集長を務める。
小学生の息子をもつパパでもあり、休日は一緒に図書館に出かけるなどして「親子時間」を楽しんでいる。
kodomoe 12月号
巻頭特集
子どもの心を豊かにする新定番「2歳からの育児品」
編集部と読者ママがタッグを組み、自我が目覚める2歳から使ってほしいこだわりの育児品を厳選!
3大付録
?ノラネコぐんだん ミニトートBAG
?描きおろし絵本『ど』 いざわかつあき作・こやまともこ絵
?綴じ込み付録 シルバニアファミリー クリスマスカレンダー