2013年にスタートを切ったブルックリン生まれのブランド「Adsum(アドサム)」。デザイナーのピートは、数多くのスポーツを楽しんできた自身のライフスタイルと、世界的なメゾンやカジュアルブランドで培った経験を活かし同ブランドを始動させた。NYらしい無駄を削ぎ落とした都会的なデザインと洗練された素材使い、そしてスタイリッシュなシルエットは、もうすでにニューヨーカーはもちろん、世界の主要都市で注目されている。今秋、その中心人物のピートに加え、キーパーソンであるクリスチャンとマックの3人が来日。この貴重な機会に、世界が注目するAdsumの等身大のブランド像とこれからの展望について語っていただいた。
NYやアメリカ北部のスポーティなスタイルが自分たちのベースです
??まずはお三方のブランドでの役割に関して教えてください。
ピート「僕は社長でデザインをしています。言ってみればクリエイティブディレクターのような感じですね。クリスチャンは生産管理やアドバイザーのような役割で、マックは僕のデザインアシスタントやフォトグラファーだった経歴を活かしてビジュアル撮影などをしています。Adsumはこの3人のコラボレーションみたいなものなんです。3人が共通して興味のあるものは沢山ありますし、その通じ合うものについてそれぞれがアイデアを出してブランドを作っているような感じですね」
??3人は昔からお知り合いだったんですか
クリスチャン「ピートと僕は同じ大学でそのときからの友達なんです。だから10年ぐらい前からお互い知ってますね」
ピート「マックはKBSNPというエージェンシーで、ナイキ関連の仕事をしていたんですけど、僕がそこから引き抜いたんです。彼のバックグラウンドはフォトグラファーなので、それも一つの強みになっています」
??なるほど。Adsumというブランドとして、最も大切にしていることはなんですか?
ピート「僕たちのブランドは、NYやアメリカ北部のスポーティなスタイルがベースになっています。マックはスケート、クリスチャンはずっとラクロスをしていて、自分はラグビーやサッカー、スノボをやっていました。なので、みんなスポーツという共通のバッググランドがあります。アメリカの都会的なスタイルにスポーツのエッセンスが入っているというのが、自分たちが大切にしていて追求しているスタイルです」
??西海岸のスポーティなスタイルとは違うんですね。
クリスチャン「そうですね。スポーツウェアがソースであり、動きやすいというキーワードはありますが、Adsumはクリーンなスポーツウェアみたいなものを意識しています。プレッピーな要素も入ったりするのが自分たちのスタイルですし、西海岸のものとは明確に違いますね」
??東京も今、改めてスポーティなスタイルが注目されていますが、実際に来てみて何か感じるところはありますか?
ピート「すごいフィットした感じのシルエットがアメリカでは多いんですが、東京ではバギーな人もいますし、その逆もいますし、いろいろなフィットをいろいろな人が着ていると感じますね」
??そういえば、3人は東京が今回で初めてですか?
ピート「僕は2回めで、彼ら二人は初めて。このブランドを始める前に僕はマーク・マクナイリーの元で働いていたんですけど、彼と一緒に日本に来たことがありますよ。そのときはグラフィックの仕事をしていました」
??今も東京はエキサイティングに感じますか?
ピート「そうですね。やっぱり世界で一番好きな都市の一つですよ。どのお店も行ってみて楽しいし、今も日本のメンズのデザイナーから影響を受けることは多いですね」
??現在のニューヨークはどうですか? 例えばファッションでいえば何か変化は起こっていますか?
ピート「いっぱいいろんなスタイルがあるから一概には言えないんですけど、ハイファッションからストリートキッズまでとにかく幅が広いのは変わりませんね。でも若手で才能のある人がいっぱい出てきているように感じます。今までファッション業界で全く経験がなかった若い人たちも、NYではどんどんビジネスを初めています。彼らはソーシャルメディアを使っていろいろと情報を得ているのが今の特徴だと思いますね」
??そうなんですね。NYのエリアでいうと、ずばりどこが面白いですか?
マック「それは3人で論争になると思います(笑)。僕はブルックリンのウィリアムスバーグの南の方と、それをちょっと右の方に行ったベッドフォード=スタイべサンドですね。昔は治安が悪かったですが、そこがだんだん変わってきて面白い人たちが集まってきていると感じます。あとブッシュウィックもクールですね。かつてはファッションといえばマンハッタンのSOHOでしたけど、今はブルックリンに流れてきています」
クリスチャン「僕も確かに今はブルックリンがクールな場所だとは思いますが、 ファッションでいえば、結局今もSOHOが抜きん出ていると思っています」
ピート「僕は、ブルックリンが流行っているので、迷ったあげく最近ブルックリンに引っ越した一人なんですけど(笑)。でも自分のなかではファッションといえばローワーイーストサイドが盛り上がっている場所だと思います。カナダのトロントからNYに移住したとき一番最初に住んだ場所ですし、NYならではの殺伐とした感じが今でも残っているエリアだと思います」
こだわった生産背景は自分たちで直接交渉をして広げていきました
??Adsumはそういう場所に集まる人たちが着るような洋服をイメージしているんでしょうか?
マック「もちろんそういう人たちにも着てほしいと思っていますよ。ただ、自分たちはNYの一部の場所にいる人たちのために洋服を作っているわけではありません。自分たちのライフスタイルに共感してくれる人たちであれば、どこの国の人たちにも楽しんでもらえると思っています。もちろん日本の人たちにも。それはストリートキッズかもしれませんし、大人かもしれません」
??確かにAdsumのミニマルなデザインは、幅広く受け入れられそうですね。素材感などでこだわっている部分はありますか?
ピート「ビリオネアボーイズクラブで新商品の開発の仕事をしていたので、その経験を活かして、フィットや生地感にはすごくこだわっています。それはブランドとしてもとっても重要なことです。生地をケチってクオリティを落とすようなことは絶対に避けなければなりません。今回のコレクションも生地は日本とイタリアのものしか使っていませんし、縫製も最高だと思うアメリカとカナダの工場で仕上げています」
??そういった生産背景は、ご自分のネットワークが元になっているんですか?
ピート「いや、これまでのキャリアで培ったネットワークや誰かに紹介してもらったものではなくて、工場や生地に関しては自分たちで直接アクセスして生産背景を広げていきました。例えばホールリバーシャツという有名なマサチューセッツのシャツ工場があるんですけど、そこにはマックと二人でNYから4時間ぐらいかけてドライブして直接交渉したんですよ。突然行ったので向こうは驚いていましたが(笑)」
??そんな地道な努力をしながら物作りをしているんですね。会社規模はもうちょっと大きくしたいと思っていますか?
「それはもちろん考えていますが、この3人に加えて実はもう一人最近増えたんです。とはいえ今の時点では4人で大丈夫かなと思っています」
??4人の今後が楽しみですね。Adsumの服は本当に着やすいので、今盛り上がっているアジア圏でもきっと受け入れられると思いますよ。
クリスチャン「そうなるといいですね。アジアは今まで行ったことがないところばかりなので、いろんな場所に出向いて行ってこれからのヴィジョンを考えていきたいですね」
ピート「もちろん韓国も中国も気になっています。今は規模を大きくするというよりも、チームとして自分たちの能力を効率的に活かすことを模索する段階だと思っています。それは今のところ、すごくうまくいってますよ」
ボタンダウンシャツ ¥30,000(+TAX)/Adsum
ファティーグパンツ ?30000(+TAX)/Adsum
バンドカラーシャツ ¥30,000(+TAX)/Adsum
チェックシャツ ¥34,500(+TAX)/Adsum
コート ¥75,000(+TAX)/Adsum
アノラック ¥90,000(+TAX)/Adsum
右からピート、クリスチャン、マック。Adsumは、2013年に大学の同級生だったピートとクリスチャンが中心となりブルックリンで設立された。ちなみにピートは、ボッテガ・ヴェネタやマーク・マクナイリー、ビリオネアボーイズクラブなどで洋服作りのキャリアを積んでいる。多様なスポーツに精通した3人のアイデアとNYならではの洗練されたデザイン性がAdsumの持ち味。上質な素材とタフな縫製にこだわった都会派スポーティカジュアルを提案している。