今、多くのファッショニスタから熱視線を浴びる気鋭のNYブランド「PALMER TRADING COMPANY(パーマー トレーディング カンパニー)」。USAメイドの「Dickies(ディッキーズ)」とのコラボラインを筆頭に、古き良きアメリカのユースカルチャーを想起させるヒップな装いを提唱する同ブランドは、日本国内でも注目度が急上昇している。その根底にはどんなモチーフや哲学が隠されているのか? このほど来日を果たしたメインディレクターのウィリー・チャバリア氏に、ご自身の出自や物作りに対するこだわりについてお話を伺った。
日本ではヴィンテージを自由にミックスして着こなしているのが面白い
??端的にPALMER TRADING COMPANYとはどんなブランドなのでしょうか?
「簡単に言えば、ヴィンテージと現在のスタイルをミックスしたものが自分たちのスタイルです。モチーフになっているのはカリフォルニアにいるメキシカン、CHICANO(チカーノ)たちの装いですね」
??それは自分が生まれ育った場所などが関係しているんですか?
「そうですね。そもそも自分はメキシコ系移民の多いカリフォルニア州フレズノというところで育ちました。チカーノたちが身近にいたんですが、なかでもハットを被って奇抜なスタイルをしたり、肩の張ったロング丈のジャケットにワイドパンツを穿いたり、ズート・スーツに身を包んだりしていた若者たちを“パチューコ”と呼んでいました。彼らのスタイルは、1930?50年代のワークスタイルが元になっているんです。言ってみれば、エイミー・ワインハウスみたいな感じですかね(笑)。PALMER TRADING COMPANYは、1940?70年代初期ぐらいまでのパチューコの格好がイメージソースになっています」
??それではブランドとしては、パチューコのスタイルが常に基本になっているんですか?
「そうですね。大きくはそうなんですが、例えば今回の秋冬コレクションで言えば、50年代のワークウェアもクローズアップしています。それに加えて、今自分はデンマークに住んでいるんですが、シャープで洗練されたデンマークのカルチャー要素も今後は取り入れていきたいと考えています」
??今回SHIPSで展開されるオールブラックのディッキーズは、どんな発想が元になっているのでしょうか?
「今季SHIPSではブラックのみを展開しますが、コレクションとしてはもちろんカーキなどの代表色も作っていますよ。形は全て50sのイメージ。もともと自分たちのブランドがベースにしているのは、1953年に作られていたディッキーズのワークパンツなんですが、今シーズンはまさにそれを再現しています。今も唯一稼働しているテキサスのオリジナルのファクトリーで作りました」
??そういった古き良き太いワークパンツに、ジャケットを合わせるというような装いがブランドとして打ち出しているスタイルなんですか?
「それはありますね。パチューコっていうのは実際はすごいエレガントで、ワイドパンツに細身のジャケットや着丈の短いトップスを合わせたりするんです。そういったコーディネイトは自分たちのイメージの一つですね」
1940?70年代初期ぐらいまでのパチューコの格好がイメージソースです
??ご自身のベースにあるパチューコのスタイルに加えて、NYブランドとしての意識みたいなものもコレクションには反映されているのでしょうか?
「もちろんそれはありますね。15年ぐらい前にNYに移ってラルフ ローレンの仕事をしていたんですが、そこでいろんなことを学んだんです。その後にヴィンテージに特化したお店を始めて、ジョンストンズやディッキーズなどいろいろなブランドとコラボをするようになったんです。自分の土台になっているのは、いつだってカリフォルニアのチカーノですが、NY でビジネスをやる上で目の当たりにしたコスモポリタンなルックにも多大な影響を受けています」
??イメージソースにあるNYのスタイルとは、具体的にどんなスタイルなのでしょうか?
「いろんなカルチャーが集まって、それをミックスしているのがNYのスタイルだと思います。重要なのは、ブランドやテイストだけではなく、それをどう着こなすかということ。もともとラルフ ローレンのスタイルが好きでNYに渡りましたが、そういうNYらしいスタイルについても学ぶことができました」
??なるほど。それではご自分と所縁のある都市とは別に、日本のマーケットから影響を受けることはありますか?
「そうですね、もともとはヴィンテージのリプロなどは好きじゃなかったんですが、日本人の自由な発想と再現力にはいつも感心しています。あと着こなしに関しても。日本では、いろんな人がヴィンテージを自由にミックスして着こなしているのが面白いですし、そこにびっくりさせられますね」
??ヴィンテージウェアが世界中からコレクトされている日本で服を探したり、買いだめしたりすることはあるんですか?
「そうですね。実はマサチューセッツにも家があるんですけど、その近所で年に3回大きなヴィンテージフェアがあるんです。日本でもそうですが、ヴィンテージはそういう大きなところで買うことが多いですね。自分が売ったものと似たものをまた買ったりするんですけど(笑)」
??最後に、これからのブランドとしての目標があれば教えてください。
「ディッキーズに限らず自分が大好きなブランドはまだまだいっぱいありますし、リスペクトする人もたくさんいます。そういう方々とユニークなコラボレーションができたら本望ですね。あと自分のライン(ウィリー チャバリア)ももっと充実させていきたいですね」
50sのワーカーが愛用した小さなショールカラーのワークジャケットを再現。身幅がゆったりとしたボックス型のシルエットは、パチューコに不可欠なスタイルでもある。
ショールジャケット ¥48,000(+tax)/PALMER TRADING COMPANY×Dickies
こちらはラペル仕様のワークジャケット。ショールジャケット同様に見頃サイドには3本ステッチが採用されている。タフで男らしいアメリカンワークを体現した1着だ。
ジャケット ¥47,000(+tax)/PALMER TRADING COMPANY × Dickies
古き良きワークシャツに見られるデザインを踏襲したプルオーバー風シャツジャケット。肉厚のコットン仕様のボディは、経年変化で擦れやアタリが生まれることで味わいが増す。
シャツジャケット ¥36,000(+TAX)PALMER TRADING COMPANY ×Dickies
シンプルな一枚仕立てのワークジャケットは、50sワークの王道の一つ。小さな胸ポケットにはヴィンテージを想起させるオールドタイプのディッキーズのロゴが配される。
ワークジャケット ¥47,000(+TAX)PALMER TRADING COMPANY ×Dickies
ブランドのアイコニックなアイテムでもあるワークパンツは、1953年当時に作られていたシルエットを継承している。現代的な5ポケットとフロントがパッチポケット仕様の2型が登場。
パンツ 各?33000(+tax)/PALMER TRADING COMPANY × Dickies
WILLY CHAVARRIA ウィリー・チャバリア
カリフォルニア州フレズノ生まれ。メキシコ系アメリカ人(チカーノ)が多い治安の悪い地区で育ち、多感な時期には奇抜なファッションを楽しむ通称“パチューコ”に影響を受ける。NYに移住し、ラルフ ローレンのメンズデザインを担当。その後、NYでヴィンテージウェアに特化したお店「PALMER TRADING」をオープンさせる。現在は、ディッキーズやジョンストンズなどとのコラボラインも含むオリジナルブランド「PALMER TRADING COMPANY」に加えて、テーラリングに重きを置いた「WILLY CHAVARRIA」を手掛けている。