移り住んだLAにてビートメイカーとしての才能を開花させ、現在では日本のクラブシーン及び多くの“音楽玄人”たちから支持を集めているBudaMunk〈ブダモンク〉。5/27に満を持して2ndソロアルバムを発売する氏に、今の心境とともに、昨今ファッションシーンでもよく耳にするようになった“90年代”というキーワード、はたまたプライベートでも愛用しているという「ディケーズハット」の魅力に至るまで、幅広く話を伺った。氏の新作からも感じ取ることができるメロウでどこか懐かしい響きは、新しいカタチとなって確実に次の世代へと受け継がれているようだ。常に冷静にシーンを見続けている本人の目には、今のクラブやヒップホップ、さらにはファッションを取り巻く環境や状況はどう写っているのだろうか?
LAに移住したことで生活の中で聞こえてくる音楽がヒップホップになった
??これから発売される新作は、BudaMunk名義のアルバムとしては2作目になるんですね。
そうですね。これまでもいろいろとやってきてはいるんですが、MCとかをしっかりとフィーチャリングしてソロ名義で出すのは、今回が2枚目です。
??活動としても間もなく10年という節目を迎えようとしている時期でもありますね。
LAでの活動は、オフィシャルでリリースをしていなかった時期もあるので。日本に帰ってきた2006年からのキャリアとしては、確かに間もなく10年ということにはなります。
??LAに移住したのが90年代ということもあるのかもしれませんが、今作も含めてやはりその時代の影響というのは大きいのでしょうか?
それはあると思います。ちょうどヒップホップが好きになったのが90年代で、一番のめり込んだのが90年代の半ばぐらいですから。LAに引っ越したのはまさにその時期で。ヒップホップのシーン自体が盛り上がっていたタイミングだったのでやはり影響は大きいですよね。日本のシーンはこっちにいなかったので全然わからないんですが、確か雑誌のウーフィンが出るか出ないかぐらいの時期だったと思います。
??そのLAに移住したタイミングで、ビートメイカーになるというのは決めていたのでしょうか?
まだ自分は16歳だったので、そういうふうに具体的な願望はなかったですね。ただ、向こう(LA)に行ったことでヒップホップに関する情報量が格段に増えたんです。テレビにしてもラジオにしても、生活の中で聞こえてくる音楽がヒップホップになったんで。当時はそういう環境のなかで、さらにCDやレコードを買ってひたすら聴くという毎日でした。ターンテーブルは日本で買ったものを持ってはいたんですけど、まだDJとかもできるスキルもなくて。90年代後半から2000年ぐらいにかけてですかね、ようやくDJをやるようになったのは。そのうちローカルのクラブでも活動を始めたんです。ビートも作ってみたいと思うようになったけど、当時はどうやって作っていいかもわからなくて。ネットも今ほどは普及していないので、調べるのも大変でしたから。ただ、どうやらMPCという機材を手に入れれば作れるらしいという情報は入手して(笑)
今の若い世代が作る90年代風の音楽が自分には新鮮に感じる
??それでMPCを手に入れてビートメイクを始めたんですね。
そうですね。今も一緒にやっているジョー・スタイルスと友達になって、彼からMPCの使い方をいろいろ聞いて遊んでいるうちに、ビートも作るようになっていったんです。
??その当時と今現在でビートの作り方は、変わらないですか?
基本的には変わってないですね。最近はパソコンを使って作ることもありますが、やっぱりMPCがメインです。生音を入れるときは、自分が楽器を弾けるわけではないので、友達でもあるクロマニョンのタクさんやマバヌアが入れてくれることが多いです。MPCでサンプリングするという手法は、どんなに時代が進化しても廃れることはないんじゃないですか。自分が取り入れている古いジャズにしてもR&Bにしても、その時代の音を再現するのはどんなソフトを使ってもムリなので。サンプリングはやっぱり意味のある作り方だと思います。
??LAの今のヒップホップやクラブシーンに関しては、率直にどう感じていますか?
自分ももう10年近く日本に住んでいるので、LAのシーンはそこまでは詳しくはないんですが、一年に一回ぐらい行って見る限りでは、確実に自分がいた頃とは違っていますね。まず、イベントにしても何にしてもやる側もお客さんも新しい世代に入れ替わっている。それが凄く面白くて。若い連中が90年代風の音を意識的に出してはいるんだけど、自分が知ってる90年代のものとは全然違う。でも、それが新しく聞こえるっていう。
??若い世代が新鮮な音楽を作り出しているということですね。
そうです。彼らがやっている音楽も90年代のブーンバップが根底にあるとは思うんですが、昔のそれとは違うものに聞こえるのが新鮮なんです。ただ、LAでも主流というかウケがいいのはトラップとかサウスっぽいものですけどね。若い世代には特に、派手で賑やかな感じが支持されていますけど、徐々にチルでメロウなものも増えてもいいのに、とは思います。もちろん若い子たちが、パーティしたい、騒ぎたいっていうのもわかるけど(笑)
??今回のアルバムは、そういった古き良き90年代的なイメージも込められているんですかね。
それはあるんですが、それだけじゃなくて新しいこともやってます。自分は90年代の汚い音質がずっと好きだったんで、そういうのを追求してきたんですけど、今回のアルバムではスタジオでミックスもちゃんとやって、綺麗にするところは綺麗にして、高いクオリティを意識しています。もちろんこれまでやってきたことと大きくは変わりませんが、新しいチャレンジが随所にあるので、そこも聴いてもらいたいですね。
音楽もファッションも自然な質感こそ共感できる
??90年代というワードは、ファッションでも最近よく聞かれますが、それを感じることはありますか?
ファッションも音楽と共通してますよね。90年代っぽいものが流行っていますけど形とか質感は新しい。結局昔と同じことをやっても意味がないんで、やっぱり進化させているっていうことだと思うんです。音楽も同じで。90年代に受け入れられたブーンバップをそのままやっても何の意味もなくて、2015年にできることをやらなければならない。それが絶対に正しいと思って自分もやっています。
??ディケーズハットは、よく自分のスタイルに取り入れているようですが?
ここのハットも90年代っぽいデザインが多いですよね。初めて見たときからいいなと思いましたね。LAの友達にディビアーシーっていうプロデューサーがいて彼が教えてくれたんですけど、日本でも探してよく被るようになりました。
??帽子自体はよく被りますか?
いっぱい持ってますね。一時期はみんなニューエラでしたけど、今は5パネルっていうか、被りの浅いカタチがまた盛り上がってますね。それこそ90年代にみんな被っていたようなスタイルです。今はデニムにしてもそうですけど、ファッションは90年代そのまんまというより、70年代のクラシックな要素とかも混ざっているような気がします。今までのいいものがミックスされて新しいものになっている。ディケーズハットもそういうデザインが多いと思います。
??今のファッションは温かみがありつつも新しいというのは、自身が目指している音とも共通項が見出せそうですね。
そうですね。自分は単に新しいとか、機械的な音色とかあんまり好きじゃないんで。ビートを作る時も自分のタイミングでパットを叩いて作っていくタイプなんで。普段の格好も子供の頃からアースカラーとかが好きで。ビートも格好も自然な質感に共感する部分があると思います。
???音楽もファッションもそういった質感が若い世代にも広がりつつあるのでしょうか?
どんどん広がってるような気がします。NYのビショップ・ネルーとか、ジョーイ・バダスとかもそうですけど、90年代の良さを理解しながらもそれを今のスタイルでやろうとしている若いアーティストはどんどん出てきています。みんな本質的なヒップホップの良さに気づき出したんじゃないですかね。それはいい流れだと思いますし、若い人がやることで注目もされますから。自分もかつてのシーンのよい部分を活かしながら、今しかできない音を追求していくことに変わりはないですね。
BudaMunk(ブダモンク)
東京都出身。16歳でLAに移住し、DJやビートメイクを始める。2004年にはMC兼ビートメイカーであるジョー・スタイルス、OYGとKeentokersとしてLAのアンダーグラウンドシーンで活動を開始。現地のビートバトルで日本人初の優勝を飾る。2006年に帰国。レーベルJazzySportに所属するとともに日本国内での活動も本格化させる。2008年にはビートバトル“Goldfinger’s Kitchen”で優勝。知名度が増していくと同時に多くの作品に参加。その後、5lack(S.L.A.C.K.)、ISSUGIとのユニットSick Teamを結成。ソロ作品も含めハードワークを続けながら多様な作品を発表するとともに、盟友mabanuaとのユニットであるGreen Butterの活動も同時進行させる。2014年にはアメリカの著名なレーベルDelicious Vinylからのリリースも実現させた。満を持して2015年5/27に、ソロとしては2枚目となるアルバム『The Corner』をリリース。
『The Corner』
BudaMunk ?2300(+TAX)/Jazzy Sport
BudaMunkのソロ名義としては約4年ぶりとなるフルアルバム。5lack、OYG、mabanua、ISSUGIといったお馴染みの面々に加えて、
EVISBEATS、KOJOEなどの強力なMC陣が参加。ニュースクール好きの大人世代は文句ナシに共感できる日本語ヒップホップ。もちろん若いジェネレーションにも新鮮に聞こえるメロウかつ深みのある全10曲が揃う。ちなみにジャケットやアーティスト写真は、日本のファッションシーンでもよく知られている守本勝英氏による撮り下し。
ブリムの小さな別注のハットは、大胆な切り替えと配色が持ち味。アメリカと日本の国旗をミックスしたような1ポイントも強力なアクセントに。90sのストリートカルチャーを想起させるコンパクトなシルエットが魅力だ。
ハット 各¥6,000(+TAX)/Decades Hat Co. × SHIPS JET BLUE
こちらは6枚ハギのB.B.キャップタイプ。やはり色使いと切り替えがポイントになっている。ペールトーンの色使いが、真夏の装いに軽やかにマッチする。ありがちなBボーイスタイルをは一線を画する華やかさがプラスできる。
キャップ 各¥6,000(+TAX)/Decades Hat Co. × SHIPS JET BLUE