sesame編集長・丹後浩一氏インタビュー  〜親子で楽しむfashionのススメ〜 sesame編集長・丹後浩一氏インタビュー  〜親子で楽しむfashionのススメ〜

sesame編集長・丹後浩一氏インタビュー
〜親子で楽しむfashionのススメ〜

大人のファッション誌かと見紛うほどのハイセンスな誌面構成で、子どもを持つママたちに絶大な人気を誇る『sesame(セサミ)』。創刊から今年で40周年という、日本のファッション誌界をリードしてきた雑誌でもあります。実は、SHIPSも今年で創業40周年。これは何かのご縁!ということで、編集長を務める丹後浩一(たんごひろかず)さんにインタビューのお時間をいただきました。『sesame』で大切にしていること、最近のキッズファッションのトレンド、親子でのファッションの楽しみ方などを、編集長ならではの視点で語っていただきました!

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メンズ・レディスファッション誌を経て『sesame』へ

――丹後さんはいつから『sesame』に携わっているのですか?

 『sesame』編集歴は10年くらいですね。2010年に初代編集長の堀田が退任し、それから私が編集長を務めています。

――それまでもキッズ関連誌の編集をされていたのですか?

 実は違うんです。もともと『Checkmate』というメンズファッション誌の編集をやっていて、その後レディスファッション誌『vita』に携わりました。休刊を機に転職することにしたのですが、その際も「キッズをやりたい」と思っていたわけではありませんでした。『sesame』はキッズファッション誌の中でも異色な存在だったので、大人向け雑誌をやってきた自分の経験を活かせたら面白いんじゃないかな、と思ったんです。当時の『sesame』は、さらなる進化に向けて新しい風を求めていた時期でもあり、お互いの需要と供給が一致したタイミングでした。

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――当時の編集長の堀田さんは、『sesame』を創刊された方でもありますよね。丹後さんを新たな編集者に迎えて、どんな雑誌づくりを目指していたのでしょうか。

 まずは好きにやってみて、という感じでしたね。巻頭ページから自由に任せてもらった記憶があります。服だけにフォーカスするのではなく、撮影の仕方だったり、ロケーションだったり、全体の雰囲気だったりをかなりモードにつくり込みました。『vita』でやっていたことを取り入れるなど、キッズ雑誌としては斬新な誌面だったんじゃないかな。

いま、「旅」×「ファッション」がアツい

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――お話を伺っていると、キッズファッション誌であることをあえて意識されていない印象ですね。

 そうですね。もちろん商材は子供服ですし、読者もお子さんをお持ちのお母さんなので、キッズ雑誌であることには変わりません。ただ、それにとらわれて可能性を狭めることはしたくないと思っています。そもそも創刊当初の『sesame』は、新谷雅弘さんのデザイン、糸井重里さんのコピー、安西水丸さんや南伸坊さんのイラストなど、錚々たるクリエイターの若手時代の感性が結集された雑誌でした。『an・an』や『non-no』がスタートしたばかりの時代に、海外ロケをしたり、カルチャー誌のような誌面をつくったりと、始まりからして『sesame』はファッション誌の枠を超えていたんです。

――表紙はいつも外国人のモデルですが、そこにもこだわりが?

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 ええ。表紙や巻頭のファッション特集に登場するモデルは、創刊からこれまでずっと基本的に外国人。「日本よりも海外」ということではなく、国の概念を超えてファッションをグローバルに発信し続けたいという想いが根底にあるんです。掲載する服のブランドも国内外はもちろん問いません。ちなみに3月号の表紙は、私がいま最も勢いを感じているブランド『MSGM』のキッズライン。こちらの写真は、撮影中の外国人モデルとのオフショットですね。スタッフからは「まるでイタリア人の親子みたい!」と言われました(笑)。

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――最近ではどんな企画に力を入れていますか?

 星野リゾートさんとのコラボで、『Travel Japan!』というプロジェクトを進めています。写真を通じて「日本の旅」の魅力を届けるというコンセプトで、フォトブックを別冊付録として発行したり、写真展を開催したりしています。「旅」×「ファッション」は、私がいま最も注目しているキーワード。旅行するときって、どんな服を着るかウキウキしませんか? 行く場所によってコーディネートが変わってきますし、いつもと違うファッションにも挑戦しやすい。『Travel Japan!』の写真を見て家族で旅に出たくなる、そしてその中でファッションについて思いを巡らせる……そんな連鎖が生まれれば、と思っています。

――服や施設を前面に押し出すのではなく、旅の雰囲気を重視した感じが新鮮ですね。

 星野リゾートさんからも、「施設にフォーカスしなくていい、旅をしたくなるような写真にしたい」と言っていただけて。同じビジョンを共有できるパートナーに巡り会えると、格段にいいものづくりができますね。

親子それぞれが、着たい服を着て楽しむ時代

――読者参加型のイベントの開催も盛んですよね。

 雑誌が売れにくいいまの時代、リアルとの連動は欠かせません。5年前に編集長になったとき、「本物」「本質」「体感」「体験」を新しいコンセプトに掲げました。ファッションの楽しさをより肌で感じてもらえるような雑誌にしたかったんです。それまでのキッズ雑誌はアパレルメーカーごととの繋がりが強かったのですが、メンズ・レディス雑誌でやっていた百貨店とのコラボを『sesame』でも始めました。お子さんがモデルのファッションショーや撮影会、ワークショップなど、読者のみなさんと一緒にファッションを盛り上げていくようなイベントを多数実施しています。

――最近のキッズファッションのトレンドはありますか?

 『sesame』に携わった当時は、「親自身が着たい服を子どもに着せる」という傾向が強かったように思います。でも最近は、子どもの個性や好みを尊重して、「それぞれが着たい服を着て楽しむ」という風潮になってきている。イベントなどで実際に親子のファッションを見ていると、「あ、親子だったんだ!」とビックリすることが多いですよ。だから『sesame』も、「お母さんが読む雑誌」ではなく「親子で一緒に読む雑誌」でありたいと思っています。もちろん、雑誌を買うのはお母さんなので、まずはお母さんたちに魅力を感じてもらわなきゃいけないんですけどね。特にF1層(20〜34歳の女性)に響かなければ、雑誌としての未来はありません。

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――だからこそ、子どもの目線に下げるのではなく、大人向け雑誌のようなアプローチを意識している?

 まさにそうですね。お母さんの感度が高いと、それはお子さんにも影響します。『sesame』を通じてファッションや生活への感度をさらに高めて、お子さんや旦那さんにどんどん伝線させていってほしいです。親も子どもも一人ひとりが「自分のファッション」を楽しめるようになれば、日本のファッション界はもっともっと盛り上がるでしょうね。

雑誌やショップの域を超えて、みんなで日本発のファッションを世界へ

――SHIPSも今年で40周年を迎えました。SHIPSにはどんな印象をお持ちですか?

 私がSHIPSを着始めたのは大学生の頃。地元の神奈川から渋谷に来てセレクトショップを巡ったり、お金がなかったから似たような服を古着屋で探したり(笑)。当時を思い返しても、SHIPSには「ブレない」という印象があります。『STYLISH STANDARD』をコンセプトにされていますよね? 最近はノームコアなんていうワードも出てきましたが、それよりもずっと以前から「スタンダード」を提案し続けているスタンスはすごいと思います。

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――先ほど「自分のファッションを楽しむ」という言葉もありましたが、「自分のスタンダードを持つ」ことがファッションを楽しむ第一歩と言えそうですね。

 いろんなものを見ていろんなことを体験して初めて、自分なりの判断軸が生まれてくるんだと思います。SHIPSのショップスタッフの方々って、いい意味でファッションおたくが多くないですか?(笑) ショップに行けばいろんなことを教えてくれるから、その中で自分の見る目を養うことができる。『sesame』もそんな存在でありたいな、と思うんですよね。

――最後に、これからチャレンジしてみたいことがあれば教えてください。

 『Travel Japan!』もそうですが、日本のよさを再確認できるような企画を増やしていきたいです。世界に日本を発信していくためにも、自国の魅力をもっと知ることが重要。SHIPSさんも去年から『SHIPS SOUVEN!RS』(メイドインジャパンとコラボレーションアイテムを中心にセレクトした“おみやげ”ショップ)をスタートしましたよね。あれ、すごくいいと思っているんです。今度、SHIPSさんとも何かコラボができたら面白いですね。「雑誌」とか「ショップ」とか「メーカー」の域を超えて、みんなで日本のファッションやカルチャーを世界へ広めていけたらと思っています。

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丹後 浩一 Hirokazu Tango

神奈川県出身。姉の影響で『Olive』や『mc Sister』を読んで育ち、気づけばファッションが大好きに。大学卒業後はメンズファッション誌『Checkmate』の編集に5年ほど携わり、その後レディスファッション誌『vita』の編集者へ。『vita』の休刊を機に、当時『sesame』を出版していた角川SSコミュニケーションズに転職。『sesame』の編集を経て、2010年より編集長を務めている。

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