JAM HOME MADE × MADSAKI JAM HOME MADE × MADSAKI

JAM HOME MADE × MADSAKI

千駄ヶ谷の1stショップをオープンさせてから15周年という節目を迎えた「ジャム ホーム メイド(以下ジャム)」。アニバーサリーイヤーの今年は、長年のファンならずとも見逃せない企画が目白押しだ。同時にジャムのマスターピースプロダクトをベースにしたアプローチで、親交の深いアーティストMADSAKI氏とのコラボプロダクトも発表。こちらは、メッセージ性の強い言葉遊びを独特なタイポグラフィで表現した作品性の高いラインナップになっている。そこに込められた思いとは? アートの現状も踏まえて、今回MADSAKI氏本人にお話を伺った。氏が辿り着いた直接的な言葉が紡ぎ出すアートが意味するもの、ジャムとの関係、そしてユニークな視点の先にあるものとは?

「人種や年齢、性別やその人の境遇によって
まったく解釈が変わるメッセージなんです」

ーー今回はジャム ホーム メイドと久しぶりにコラボレーションを発表されましたが、そもそも同ブランドと仕事をするようになったのはいつからですか?

(ジャムの)ディレクターの増井さんから声をかけてもらって、雑誌の企画で女性のモデルにペイントを施したのが始まりですね。それが2007年ぐらいですかね

ーーバッグや財布といった小物にアートを施すというのは、難しさはありませんか?

増井さんとは個人的にもよく食事に行ったりして、普段から仕事以外でもコミュニケーションを取っているんですよ。僕のことも良く理解してくれていて、仕事の時はこういうものが欲しいとか、具体的に分かりやすい指示をくれます。だから全く問題ないんです。センスも抜群だし。いつも僕が想像した以上のものが生まれるから、僕はいつもそれを楽しみにしているという感じです。渡した自分の作品がどういうアイテムになるかなって

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完成したウォレットを見て大満足のMADSAKI氏。「常に自分の想像を超えてくるモノ作りに驚かされます」。
基本的にジャムとのコラボの際は、文字の配置やバランス、配色等は、信頼するディレクターの増井氏に一任している。

ーー現在は、言葉遊びでメッセージを発するという手法で作品を発表していますが、一つの作品を作り上げるのに製作期間はどのぐらいかかるのでしょうか?

今の作風は、書くのには時間はかからないんですけど、作品自体のコンセプトであったりとか、英語で書くフレーズを決めるまでは数ヵ月かかりますね。考えてる時間であったり、頭の中でいろいろ練り上げてる時間のほうが100倍長いです。書くこと自体は早いですが

ーー今までいろいろなスタイルでアートをやられていますが、現在のスタイルもやはり変わっていくのでしょうか?

これまでいろんなスタイルでやってきたアートは、全部自分の過程というか、その時々の自分であって、自分がやりたかったことです。その流れのなかで、今は文字に辿り着いたということですね。ただ、このやり方が自分はしっくりきているので、多分このままずっとやっていくんじゃないかなとは思います

ーータイポグラフィと直接的なメッセージで伝えるアートの魅力とは、どんなところにあると思われますか?

何を書くか、どういうふうに見せるかで全然伝わり方が変わってきます。めちゃくちゃひどいことを文字で書いても、タイトルをニュートラルにすることで思わず笑えるとか。僕は日本人として向こう(アメリカ)で育ってまたこっち(日本)に帰ってきて、こういうことをやっているんですが、そういう境遇みたいなものも文字に影響が出てくるとも思います。今はこういうやり方が一番素の自分が出せるし、一番やってて楽しいんですね。なんといっても自分の作品を指差して笑えるっていうのが一番いいところだと思います。やりがいがあるし、英語だから外国人もわかる。ほんとに大爆笑するんですよ。常に日本人の自分とアメリカ人の自分が内面で戦っているんですが、このアートをやり出したことでやっと和解できたかなって思っています

ーーMADSAKIさんはアメリカには正確にはどのぐらいいらっしゃったんですか?

6歳から25年いたので、向こう(アメリカ)の方が全然長いです。日本語を話しているけど中身は日本人じゃない。2重人格ですね。向こうに入った瞬間に性格変わるんで(笑)。全然違いますもん

ーー日本でのアート活動はアメリカと比べてどう感じますか?

正直、全然やりにくいですね(笑)。日本は好きなんですが、アートをやる国ではまだないなとは思います。漫画はあるけどアートはない。それを飾る壁もないし、アートを買うっていう文化もまだまだ浸透していない。そういう面ではやりづらいかなと思います。でも誰かがやらなければならないし、そういう文化が根付いていない国でやってるからこそ楽しい部分もありますし

ーーMADSAKIさんのような方々がいることで、その道筋ができるといいですね。

そうですね。僕は別に絵を描くことだけがアートだとは思っていないんで。
生きてること、生活すること自体がすべてアートだと思っていますから。別に何をやっていてもいいんですよね。ただ、自分の作品を作るときは本当にプライベートな時間ですし、それがプライベートな作品っていうだけで

ーーそんななか今回のジャムとのコラボですが、具体的にはどういうイメージで作られたんでしょうか?

ジャムはブランドとしてブライダルリングに力を入れていますし、僕も実際そのマリッジリングを作ったんですよ、叩いて。一つのリングを夫婦で糸ノコで切って分け合って作るというそのコンセプトが凄く好きで。もちろん共感もできますし。15周年ということもあったので、そのジャムが大切にしている“結婚”を一つのテーマにして作品を作りたいと思ったんですね。“everything will probably be alright.”っていう表現は、簡単に言えば“多分、物事はうまくいくんじゃない?”ってことなんです。決して“物事は全部うまくいくよ”って言いきっていないところがポイントで。結局、結婚もマリッジブルーになったりとか、いろんな問題が出てくることもあるじゃないですか。夫婦喧嘩もそうですし、極端に言えば離婚だとか

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MADSAKI氏のアートワークの原型。こちらをもとにアイテムによって配置などが微調整された。

ーーでも前向きなメッセージではあるんですね。

そう。前向きではあるけど、不安はあるみたいな(笑)。こんなこと相手に言われたら凄い不安になると思うんですよね

ーーそうですね。でもリアルな結婚観かもしれないですね。

そうです。でも結婚だけではなくて、その未来と新生活に向けての不安も冗談で表現したという感じなんです。“多分大丈夫じゃない?”っていう

ーーあとは自分たちで頑張ってくださいってことですかね?

そうそう(笑)。あとは楽しんでっていう。こんなのを書かれた鞄を持ってたら面白いかなって思うんです。例えば大きいバッグを親が、小さいバッグを子供が持って親子二人で歩いていたら、また違った意味合いになる。外国人が見たらまた解釈も変わってくるだろうし。同じメッセージでも持つ人によって全然違うものに見えてくるんです。そうやって物の存在感が変わるところが大きなポイントですね

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ちなみに今回のコラボでは、Tシャツも発売される。もちろんこちらも大人用と子供用の2パターンで展開。

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こちらがジャム ホーム メイドが提案するマリッジリングのひとつ「JAMリング」 。新郎新婦でこれを糸ノコで切り、実際に叩いてお互いのリングを作り合うという画期的な提案だ。MADSAKI氏もこちらのリングをご夫婦で愛用している。

ーー確かに直接的なメッセージですけど、イメージできるアートですね。

そうですね。人種や年齢、性別やその人の境遇によってまったく解釈が変わるメッセージなんです

ーー今回もご自分の想像を超えたモノになったということですね

もちろんですね。ジャムのアイテムっていうのはシンプルで完成度が高いじゃないですか。そんな洗練されたものに絵なんかはのっけたくないんですね。でも逆に正反対なこういう汚い文字が乗ることで面白いものになるという。ちょっとした破壊みたいなものですけど(笑)

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愛され続ける定番ブラックライドトート。PVC加工を施したボディは軽量でいて耐水性に優れている。無駄を削ぎ落としたミニマルな意匠にMADSAKI氏のアートが加わることで、強力なメッセージツールに生まれ変わった。大人用と子供用というサイズ展開で、親子揃って楽しめるのがポイントだ。大きめなポケットを内蔵しているため、タブレットなどのビジネスツールもしっかり収納できる。

左:バッグ ¥25,000 [W52×H32×D15.5cm](+TAX)/JAM HOME MADE 右:バッグ ¥15,000 [W28×H20×D15cm](+TAX)/JAM HOME MADE

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こちらは、SHIPS JET BLUEのエクスクルーシブとして特別に製作されたウォレット。長財布と二つ折りタイプの2種で、やはりPVC加工で仕上げている。ディレクターの増井氏が微調整した文字の配置バランスもMADSAKI氏が大絶賛。「外国人がもしこの財布を拾っても、メッセージを読んで届けてくれる、かも。」という逸品だ。

左:ウォレット ¥22,000[W19×H9.5×D2cm](+TAX)/JAM HOME MADE for SHIPS JET BLUE
右:ウォレット ¥18,000[W12×H9×D3cm](+TAX)/JAM HOME MADE for SHIPS JET BLUE

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MADSAKI(マッドサキ)

1974年大阪生まれ。6歳の時に渡米し、25年間NYで過ごす。美大を卒業し、本格的にアーティスト活動を開始したのは2001年。以来、著名な企業やファッションブランド等と画期的なグラフィック作品を多数発表し続けている。日本では一大ブームとなったピストバイクを広めた一人として、ストリートシーンでも認知されている。近年は東京を拠点に活動し、直接的なメッセージを独特なタイポグラフィで伝えるという自身のスタイルを追求。国内外でインスタレーションや個展を精力的に開催している。
www.madsaki.com

JAM HOME MADE

http://jamhomemade.com/