「PERK」という雑誌を知っていますか? それはいま、ファッション業界やおしゃれな人たちの間で話題になっている注目の雑誌。高感度で、可愛くて、かっこよくて、エッジィで、とにかくいまの気分がぎゅっと詰まっているんです。そんな「PERK」の編集長である千葉琢也さんにインタビューを敢行! メンズ誌も手掛ける千葉さんならではの視点で、ファッションや雑誌についての今の想いを語ってもらいました。
カルチャーとファッションが密に関わった女性誌を作りたい
――千葉さんはメンズ誌「GRIND」も手掛けていますが、「PERK」創刊にはどんな意図があったのですか?
もともと「Ollie」というストリート誌の編集長をやっていて、5年経った時に「GRIND」を始めて、ちょうどまた5年くらい経ったので何か新しいものをやろうと思っていたんです。いつかは女性誌をやろうという気持ちもありましたし。「GRIND」ではストリートファッション・カルチャーの価値を、ファッションや大人という側面からワンランク上のものにするという考えをもってやってきて、ある程度その役割を果たせるようになってきたかなと感じられるようになってきました。そんな中でレディースでも「ストリート」の自立精神だったり、ファッションとサブカルチャーと密接な繋がりを表現する雑誌をやりたいと思っていたので、良いタイミングがきたかなと思い始めました。
――雑誌の休刊や廃刊が相次いでいたりと、出版業界が厳しいとされる中で新たに女性誌を出したというのはある意味挑戦でもあったと思うのですが。
そうですね…。でもそれはあまり考えなかったですね。結局は僕らは雑誌の編集者なので、どんなに売れなかろうが雑誌を作るということに変わりないというのはあって。ただ、昔に比べて雑誌の役割はどんどん変わってきていると思うんです。情報というより、よりスタイルだったり、人間像、思想、哲学、そういう部分のメッセージをしっかり発信していかないと存在の意味がないなと思っています。
――「PERK」が掲げているテーマや、イメージしている女性像とは?
基本的には「ストリート」なんですが、カジュアルという意味ではなくて、いわゆるストリート、街であったり、自分の個性をどう表現するかというインディペンデント性であったり、街から生まれるサブカルチャーとそこから生まれるファッションというものを軸に考えています。PERKの掲げる女性像の視点から、ハイモードもストリートも扱って世界中のファッションが好きな女の子たちに向けて、インスピレーションになるような雑誌にしたいと思っています。載ってるファッションをそのままマネしてもらうというよりは、そこから自分なりのスタイルを考えてもらうためのインスピレーション源になれればと考えています。
バックボーンや文化的土壌を理解した上でのクリエイション
――では誌面作りにおいてこだわっていることは?
あまりマニアックにならないようにしたいなとは思ってますね。メンズ誌ってメンズ特有のマニアックな情報というか、バックボーンまでしっかり説明するということまでやるんですけど、PERKを作るときはそこをがんばりすぎないで、もっとファーストインパクトで勝負できるようにしたいなと考えています。まずはファーストインパクトで「かわいい」「カッコイイ」「ワクワクする」という感情に訴えかけるようにしたいですね。そのためにメンズ誌でやってきたようなバックボーンやストーリーをしっかり詰めて表現するようにしていますね。
――確かに女性ってビジュアル重視というか、男性ほどうんちくを求めていないというか。よっぽどのファッションオタクやコアな人でない限りそこまで求めないですよね。
そうだと思います。ただもちろん作る上では深いところまでがっちりやってるつもりですけど、それをそこまで説明する必要はないかなと。それに今の感覚を持っている人たちってなんとなく分かってますよね。みんな結構詳しいし、おしゃれな人が多いと思うので。そんな感覚を持った人たちに読んでもらいたいですね。
――世界的に見てもモードとストリートのMIXが当たり前になった時代ですが、この関係性についてはどう見ていますか?
雑誌を作る立場としては、ストリートから見てモードはどうなのか?とか、モードから見てストリートは――とかをあまり考えすぎないようにしています。考えすぎると逆に意識しちゃうので、あまり意識せずにフラットに見て、どっちもいいと思っています。モードとストリートのMIXを雑誌で実現させるにはいろいろと難しい事情なんかもあるんですが、海外誌ではそれがOKになっていたりするんですね。それがむしろ今の感覚だと思うし、普通のことだと思うんです。ただファッションの長い歴史と伝統の中でいえば、ストリートというカルチャーや時代はまだ歴史の浅いものです。だからこそストリートを扱うなら、洋服やブランドの背景、その裏側にあるカルチャーをしっかりわかった上でやっていかないと日本ではまだまだ認めてもらえないと思います。PERK自体もまだはじめたばかりなので、ある程度の時間も必要になって来るでしょうし。メンズ的な感覚かもしれないですが、そういう歴史や文化的な側面をしっかり押さえて作っていきたいと思っています。それってスタイリングだったりビジュアルに説得力があって、しっかりしたクオリティで見せるから、「NO」って言えないんだと思うんです。スタイリングに関して、服やブランドのバックボーンをちゃんとわかった上でMIXしている。そういう部分では海外のスタイリストはしっかりしていると思うし、文化的土壌がちゃんとあるっていうんですかね。すごくメンズ的な感覚ですけど、僕もそういうところは意識してやりたいなとは思ってますね。
――そのメンズ的感覚がどこかしらに落とし込まれているから、「PERK」には新しさを感じるんだと思います。
そう思ってもらえてると嬉しいですね。PERKでお願いしているスタイリスト、ファトグラファーはみなさん、そういったストリートのバックボーンやファッションの歴史をわかってらっしゃる方ばかりなので僕自身いつも勉強になります。そういう背景的なことがもっとビジュアル以外のところからでも感じられるものが多くなってくれば、ファッションってもっと奥深いものになると思うんですよね。
グローバルな視点で、情報をどこまで深く、どう広げていけるか
――チョイスするブランドも、らしさが出ますよね。メンズブランドが混ざってたりして。
ブランドもインターナショナルな視点、街の視点で考えたいので、そういう選び方をしているかもしれませんね。あとは撮影で海外に行くことも多いので、お店やストリートからキャッチする情報が結構あるんですよ。世界の街の視点ということを考えても、海外でのシューティングは大事だと思っています。それに今はSNSがあって世界中の早い情報をみんな持っているので、特に若い女性の感覚って完全にグローバルだと思うんですよね。
――そうですよね、今はSNSが普及しているので情報を得るスピードはみんな早いんですよね。むしろ雑誌じゃ追いつかない。
そうなんですよ。追いつかないのでそっちの勝負をしちゃいけないっていうのはありますね。スピードがあるのは当たり前で、それは同じように共有していて、雑誌やファッションのプロとしてどうやるのか、というところが重要ですね。あとはそこからどれだけ広がりを持たせられるのか。それ以上の深い世界があるというか、そういう所まで持っていけるといいですけどね。
――そうですね。雑誌に求められるものが変わってきましたね。では千葉さんご自身が今シーズン注目しているトレンドやアイテムなどについて聞かせてください。
個人的にはパンクっぽいノリのものがいいなと思ってるんです。でもガチガチにパンクってわけじゃなくて。あとはビッグシルエットですかね。アイテムで言ったらワイドパンツとか。ただ、個人的にも「PERK」のスタッフにもいつも言っていることなんですが、最終的にはあまりトレンドを押し付けないで、最後は自分らしく、その人なりに取り入れてもらうのがいいと思っています。「自分ならどうするか」を考えてもらうのがPERKのひとつのメッセージでもあるので。
――では最後になりますが、「PERK」を通して伝えていきたいことは?
単純なことですけど、もっと女の子がよりおしゃれを楽しめたらいいなと思います。
今ってシンプルがいいみたいな傾向があって、それがトレンドみたいな感じになっている気がします。でも逆に考えれば、もっとおしゃれをしたいとか、この服を着て出掛けたら楽しそうだなとか、そういうことの方がより自然で人間的で、シンプルだと思うんです。雑誌を作ってる立場としては、「PERK」を読んで、服を買いに行って、「出掛けるのが楽しみだな」っていう気持ちになってもらいたいですね。
MA-1っていつでも人気がありますよね。古着のようにガンガン洗って着るのが可愛いかなと思います。ブランド的にもそういう楽しみ方ができると思うし、リバーシブルなので裏返しにして着てもいいし。スタンダードなアイテムだからこそ、どう自分らしく、今っぽく着るかっていうのを考えるのが楽しいアイテムですよね。
MA-1¥8,000(+TAX)/ROTHCOMORE
ライダースでもスウェードなのでハードすぎないのがいいですね。ライダースって辛口な感じもあるし実際ハードルの高いアイテムだけど、これは女の子でも取り入れやすそうですよね。トレンドの色味と素材感でライダース、というバランスがすごくいいと思います。
ライダースジャケット¥42,000(+TAX)/KhajuMORE
個人的にも注目しているビッグシルエット。普通に可愛いし、誰にでも合うと思います。ズルズルの丈感で穿いて、足元はスニーカーとかが可愛いですね。トップスは白Tとかよりは、デザイン性のあるものを合わせるのがいいなと思います。
パンツ¥30,000(+TAX)/RUMBLE RED
千葉琢也
株式会社ミディアムから発行されているメンズストリート誌「Ollie」の編集長を経て、現在は「GRIND」と「PERK」の編集長を兼任。
「PERK」次号は10月10日発売!
perk-mag.com
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