TOPICS BRAND SAYAKA DAVIS
ニューヨークを拠点に活動しているデザイナー・Sayaka Tokimoto Davisさんが、2012年よりスタートした「SAYAKA DAVIS」。もともとニットデザイナーとしてキャリアを誇るSayakaさんが手掛けるブランドという事で、国内外から注目と期待が集まっています。そんな新進気鋭のブランドが、2014SSよりSHIPS WOMENでも取扱いを開始! ということでそれに先駆けてSayakaさん、SHIPS MAGに登場です!
「幼い頃からアートに興味を持っていました。特にきっかけというものがあった訳ではありませんが、表現すること、物を作り出すことへの関心が次第にファッションへ向いて行き、中学生の頃から独学で洋服を作るようになりました。
ファッションの持つ力に私はいつも助けられているんです。
その日着ている洋服が気持ちを後押ししてくれたり、楽しい気分にさせてくれたり、姿勢を正してくれたり。日常に寄り添うものだから、面白いのだと思います」
「専門学校では主に布帛(ふはく)の勉強をしていたので、ニットデザインに携わるのは初めてでした。
最初は全く違う言語を学ぶような感覚でしたが、すぐにニットの魅力にとりつかれました。糸を選ぶことから始まり、それをどのゲージでどのような組織と色で編み、どんな仕上げをして形に落とし込むのか。ニットデザインには果てしない可能性があって、そしてなかなか一筋縄に行かないところがまた面白く、やってもやってもまったく飽きないものです」
「実は小学生の頃から夢見ていたんです。欧米映画のファンで(笑)。専門学校を卒業してから日本のアパレルで5年働き、良い区切りで、自分の中で時が来たかなと感じたので決断しました」
「クリエイティブディレクター・デザイナーの二人には大変影響を受けました。彼らに出会っていなかったら今の自分はいないと思います。強い個性、感性の鋭さ、発想の豊かさと自由さ、そして人間性。一緒に物作りをさせて頂いて学んだ事は数知れません。自分らしい、自分ならではの表現という事を真剣に考えることが出来たのはこの経験があっての事です」
「日本の美学の根底にあるのは、実はミニマリズムなのではと思っています。侘び寂びや味と言った表現は他の言語に置き換えがたいものです。渡米は私にとって自分のアイデンティティを再確認するきっかけとなり、自分のDNAと個性を持って表現したいものは何かという事を考えさせてくれました。
私はゴテゴテしたものは苦手で、コンサバティブなものには心躍らないところがあり、洗練されていて、エキサイティングというものを作りたいといつも思っています。
今シーズンのお洋服で言うと、例えばシンプルなシャツドレスは上襟の後ろ側を少しだけ細くして、襟を折り返したときにほんの少しだけ配色が見えるようにしたり、前から見たときにはシンプルなドレスなのを、後ろにランダムなタックを入れることで大胆にボリュームを出したり……。ミニマルな中に、素材の独特な表現と、細かなディテール、大胆さと意外性を意識した物作りをしています」
「江戸時代の画家、円山応挙の描いた屏風画、”氷図”からインスピレーションを受けました。白いキャンバスの上に氷の亀裂が描かれた、至ってシンプルな絵ですが、そのシンプルな中から張り詰めた空気やそこに広がる世界が感じられて、この奥行きは本当にすごいなと思いました。
余白の美という観念は日本独自の美学で、日本の禅庭園もそうですが、余白をいかに残すかという事は、逆に見る者の想像力を働かせる効果があるのだと言います。
その一方ヨーロッパの芸術はいかに空間を埋めるかという観念がもとになっていて、その違いが面白いなと思いました」
「素材はコットン、リネン、シルクと全て天然素材を使いました。そして色は純白に大地の色、空の色を意識したカラーストーリーで、プリントは岩の写真を加工したものです。自然という事にこだわったのは、日本の芸術は自然と密接な関係があると思うからです。
ニットはサラッとした紙のような肌触りのコットン糸を使い、組織の表面感や、包み込むようなケープシルエットに。平面的に表現されることの多いニットを、どう立体的に仕上げるかというところにこだわりました。布帛のドレスやトップスは立体の布で遊びながら組んだパターンで、大胆な広がりや膨らみがキーワードになっています」
「蚤の市を探索したり、美術鑑賞したり、友人を招いてホームパーティをしたり、夏にはピクニックをしたり。。。いろんな国の料理に挑戦して作るのが趣味です。最近はずっとインド料理ブームです。スパイスの使い方に魅了されています」
〇大変なこと
「こちらに移り住んだ当時は文化の違いに戸惑うこともありました。日本人では謙虚な姿勢というのは尊敬されるものですが、NYでは謙虚さだけでなく、自分でアピールしていく事もやはり日本以上に求められていて。結局、中身がついてこないと何事もなせない訳ですが、伝えたいことをどう伝えるかというプレゼンテーション能力の大切さを学びました!」
〇楽しいこと
「クリエーター仲間にいつも刺激をもらっていて、それが楽しいですし、本当に感謝しています。みんなで何かやってやろう、という感じで盛り上がっています。
日々の仕事に追われて、というのを理由に逃してしまっているものも多いですが、アートショーやシアタープレイ、コンサートなど毎日いろいろなところで行われていて、インスピレーションには尽きない街だと思います」
「人の持つエネルギーが面白い街です。沢山の人々が、皆いろいろな思いや夢があって世界各国からNYへ集まってきていて。そういった人々と出会えるのが喜びです。
まだまだ開拓されていないエリアも多いですが、開発のスピードが早くて、 ここ1,2年でも随分変化があります。常に何かが起こっている、変わっているという空気にわくわくします」
「SAYAKA DAVISの強いアイデンティティを育てて、ブランドとしての世界観を深めて行きたいです。
ファッションにはやっぱり夢があるし、そういう人の心を動かすものを生み出して行きたいと思っています。そしてずっと大切に使って頂けるような、”本質”のデザインとクオリティーを追求して行きたいです」
「洋服だけに限らず、一生何か物を生み出していく事に携われたらいいなと思っています。創造しているときが一番楽しくて幸せなので。
そして今は都会で暮らしていますが、田舎での暮らしも好きで。両方でバランスよく生活出来たら理想ですね。。。あとは世界バックパッカー旅行をしてみたいです!」
デザイナー Sayaka Tokimoto Davis
1984年生まれ。日本のアパレルメーカーでニットデザイナーとして活動後、2009年に渡米。2012年に自身のブランド「SAYAKA DAVIS」を立ち上げる。