スタイリストの哲学  ?小松嘉章の場合? スタイリストの哲学  ?小松嘉章の場合?

スタイリストの哲学 ?小松嘉章の場合?

スタイリストの哲学 ?小松嘉章の場合?

SHIPS JET BLUE

ファッションシーンの第一線で活躍し、牽引する存在であるスタイリスト。彼らなしではファッションカルチャーはここまで成熟し得ないと言っても過言ではないほど重要な存在です。SHIPS JET BLUEでは毎回そんな彼らにスポットを当てて成り立ちや哲学をインタビュー。その素顔と魅力に迫ります。 今回のゲストは、メンズノンノでも人気スタイリストとして活躍し、最近ではミュージシャンや広告とその活動の場を広げている小松嘉章さん。現在に至るまでの道のりやその目線、フェチなものまでお話を伺いました。未来のスタイリスト必読、スタイリストの哲学「小松嘉章」編。

??まずはスタイリストを目指したきっかけから教えてください。

服好きの姉の影響を受けて、小さい頃からファッションには興味があったんです。小学生の頃から4つ上の姉に連れられて服を見にいっていたりして、漠然とファッションっておもしろいなと。中学生くらいになってからは、オシャレな先輩に影響を受けてスケボーを始めたり、ファッション誌を読むようになったんですね。それで、スタイリストという職業を知りました。僕は秋田県の田舎の出身で、服を買う時は隣の盛岡までいっていたのですが、盛岡出身の大先輩のスタイリストさんが第一線で活躍しているのを目の当たりにして、東北の出身の方でこんなに活躍している人がいるなんてすごいなと純粋に憧れを抱いたのが、スタイリストを意識したきっかけでした。

??小松さんが今31ですから、今から16、17年前の話ですね。その頃は確かにスタイリストという職業が脚光を集め始めた頃で、すごく盛り上がっている時代でしたね

でも一体どうすればそういった職業に就けるのかまったく分からなくて。とりあえず東京に行くしかない!くらいしか思いつかなかったんです。でも高校に入り、東京に行った姉のところに遊びにいく名目で原宿や渋谷に通うようになって、専門学校があることを知って。本当は大学に行くつもりだったのですが、親には大学受験を受けると言いつつ、勝手に文化服装学院の入学試験を受けて…。受かってから打ち明けたのですが、大激怒でしたね。でもなんとか説得をして、その道に進ませてもらうことになったんです。

??文化服装学園はやっぱりスタイリスト科に?

はい。そこでいろんなことを学びましたね。仲間内で情報交換をしながら、飲み物も我慢して服を買い漁っていました。僕は当時モードファッションがすごく好きで、レディースのスタイリングがしたいと思っていたので、雑誌を見たり、すでにアシスタントについてる知人から情報をもらったりして、レディース誌を中心にやられているスタイリストさんを探し、学校を卒業してすぐ履歴書を送りアシスタントにつかせて頂きました。

???いよいよスタイリストの“現場”に飛び込んだわけですが、実際にその世界に入ってみていかがでしたか?

厳しかったですね。ただ、すごくシビアで厳しい世界だと言うことは在学中から聞いていたので、挫折をするようなことはなかったかな。徹底的に打ちのめされましたけど(笑)、そういうのをあらかじめ受け入れていた部分があったというか。結果がすべての世界で、たとえ理不尽なことがあっても人のせいにはできない。クリエーションのこともそうですが、やっぱり考える力やメンタル面でも鍛えられました。

???アシスタントはどのくらいやったんですか?

5年です。独立してすぐはやっぱり仕事もなかったので大変でしたが、いろんなご縁が重なって、メンズ雑誌の仕事をやらせてもらうように。それから少しずつで、今に至るという感じです。

???小松さんが求めるスタイリングとはどういうものですか?

基本的にクリーンな世界観が好きですね。スタイリングにしても、写真にしても。自分のスタイリングにしてもそうですね。昔から白いアイテムが大好きで、10代の頃なんかは毎年必ずホワイトデニムを一本買い足していました。ぼろぼろになるまではいて、また翌年買い替えるみたいな。昔から靴も白が多かったかな。気がついたら全身白ってこともあったりして(笑)。

???それって結構ハードル高いですよね

別に白を着こなしてやろうって特別意識していたわけではないんですが。自然とそうなっていたって言う感じですね。やっぱりいまでも白モノは集めてしまいます。Tシャツやパンツはもちろん、ネクタイとかリストバンドまで。ついどこかに白を入れたくなるんですよね。ちなみに最近のお気に入りは、マイケルジョーダンのリストバンド。中学生のときに持ってましたが、懐かしさとあえて今だからこそのこれみたいな感じがいいですね(笑)。それとこのマルタンマルジェラのTシャツは18歳の頃から持っていますが、捨てられないんです(笑)。

???でも確かに、小松さんはいつも白をどこかに身につけている印象ありますね。着こなし方のルールというかコツはありますか?

特別はないですが…でも白って一言に言っても実はいろいろあるんですよね。黄色っぽい白、青っぽい白、蛍光色的な白…。素材によってもまたニュアンスが変わりますしね。ベーシックな色ですが、そういう細かいところを意識して取り入れると、また楽しみが増えると思います。

???確かにそういう目線で見ると、白もバリエーション豊富ですね。興味深いです。

例えば襟もとからすこし白のインナーをのぞかせるだけでコーディネートって適度に引き締まるんですよね。そしてそれがニットなのかカットソーなのかシャツなのか。どんなトーンのものなのか。素材感や微妙な色みの違いで印象も結構変わる。スタイリングをする上での基礎的な要素が詰まったアイテムみたいなものだと思うんです。

???そういった細やかさが、スタイリングのクオリティにつながっているのかもしれませんね。

ただ要領が悪いだけっていうハナシもありますが…(苦笑)。

???今年でキャリアは5年目を迎えるということですが、今後の目標などはありますか?

今は時間の流れが早すぎて、なかなか長期的なスパンで目標を立てられない時代ではありますが、ただ“今”の時代感をしっかり捉えながら、ひとつひとつの質を高めていきたいと思っています。スタイリングもそうですし、着せつけや絵づくりもそう。アドバンテージを上げていきながら、自分の中にあるブレない感覚も大事にする。あと、今でもレディースのスタイリングはやりたいと思っているので、それにも挑戦したいです。やりたいことはまだまだ尽きません。

小松 嘉章


1982年秋田生まれ。文化服装学院を卒業し、スタイリストTAKAO氏に師事。5年間のアシスタント時代を経て2009年に独立。感覚的でいながらクレバーなスタイリングを武器に、メンズファッション誌をはじめ、アーティストや広告など多方面で活躍中。