Begin編集長金森陽氏×スタイリスト鈴木肇氏×SHIPS栗田 いまの時代のIVYスタイルを語る!
SHIPS MEN
IVYリーグの大学生を真似た上品でカジュアルな装い。それを真似たスタイルが日本に上陸したのは1960年代前半。それから約50年、日本のメンズカジュアルの世界ではその文脈がいまだ継承されている。SHIPSにおいても、今シーズンはIVY回帰ともいうべきアイテムが続々入荷中。そこで、Begin編集長の金森陽氏、スタイリストの鈴木肇氏をお呼びし、銀座店店長の栗田泰教と現代のIVYスタイルについて座談会をおこなった。
栗田 今シーズン、SHIPSではクラシックなアメカジアイテムが増えていて、メンズに関してはIVY的な着こなしを提案しているんです。そこで今回は、トレンドの最前線にいるおふたりに、IVYをテーマに商品を選んで頂き、着こなしを含めてお話を伺えればと思っています。まずは弊社について軽くお話をすると、もとはミウラ &サンズという西海岸を意識したショップから始まり、1977年に東海岸スタイルを提案するショップとしてSHIPSがスタートしたんですね。なので、IVY的な要素は外せないものですし、現在まで根本にはその精神があるんです。とはいえ、世代的に僕はIVYど真ん中ではなくて、どちらかといえば10代でクラシコイタリアを通り、10年前くらいにやっとIVYの魅力がわかってきたタイプなんですよ。
ウィングチップシューズ ¥59','850/Pantofola d'Oro
ローファー58','800¥/Paraboot
- 金森 僕もいま35歳なので、ワーク&ミリタリーから古着ブーム、そして裏原宿カルチャー全盛期に思春期を迎え、その後にデザイナーズブランドに興味を持って、会社に入ってからはドメブラ。アメリカントラッドを知るようになったのはBegin編集部に配属されてからなんです。いま思うと、父親のタンスに襟の後ろにボタンがあるBDシャツにサマーニットとかがあったんですけど、そのスタイルって自分とは遠い場所にあった気がします。でも、僕も歳を重ねたことで、IVYを切り口とした今っぽいアイテムを着るようにはなりましたね。
- 鈴木 いわゆる60年代のIVYと、いま語られているIVYは別物ですよ。VANヂャケットにしても日本的解釈なわけですし、僕らからしたらエッセンスや気分みたいなものです。だから、本当の意味でIVYを語ろうとすると、正解・不正解みたいな話になっちゃう。でも、新しいアメトラの流れとして考えると面白いと思うんです。このテイストを総称する新しい言葉が生まれたら、もっと広がるような気がしますね。
- 金森 IVYにしても僕らは「TAKE IVY」とかの写真を見て勉強して、空気感を表現しているだけだから自由度が高い。ジャケットのボタンを金ボタンにするだけでIVYみたいな、アイコンとして取り入れていますよね。
- 鈴木 そう、いま語られているIVYってアイコンなんですよ。今年でいえば、ボルドーカラーのアイテムとかね。
- 金森 今年は鮮やかでも少しスモーキーな色がトレンドですよね。ケーブル編みのニットがIVYなのかはわからないけど、そういうアイテムも人気ですよね。あと、バイカラーや太いボーダーのニットも人気です。ラガーシャツ風味にも見えますしね。まぁイメージは千差万別なのでマリンと感じる人もいるでしょうけど。
クルーネックニット¥29','900/Glenmac for SHIPS
- 栗田 では、ここらへんで、それぞれのおすすめアイテムを教えてください。
- 鈴木 IVYっていうと夏のスタイルが基本なので、冬のアイテムは難しかったですね。僕のイメージとしてはスポーティなアイテムが挙げられます。このラッセルのスウェットとか、スタジャンはIVYっぽいように感じます。
- 金森 チャンピオンではなくラッセルっていうのが甘酸っぱくていいね(笑)
- 鈴木 若い子でもおやじでも引っかかるアイテム。合わせ方によってはシティボーイにもなりますし。30?40代であれば、こてに紡毛のスラックスやシャツを合わせればOK。
- 金森 これとかスタジャンってだけでアイコンになりうるので、ツイードの身頃でも十分らしさは出てますよね。そんななか、僕はパラブーツのランスですね。IVYといえばローファーですけど、そのアイコンを残しつつボリューム感のある表情が今っぽいなと思いました。
- 栗田 僕もシューズなんですけど、これはアメリカを代表するロングウィングチップものをイタリア的な解釈で落とし込んでいるのがポイントですね。甲の低さや加工感も含めて、クラシックな感じが魅力です。
- 栗田 先ほども少しお話が出ましたが、IVYに限らずアメリカものが廃れない理由はどこにあると思いますか?
- 金森 若い子は別として、僕らの年齢はまだメイド イン USAに憧れがあって、どこか「安心」という側面があるからじゃないですかね。デニムやチノや軍モノがベースとして身近にあって、それらに合うものがずっと提案されていますし合わせやすいんですよ。
- 鈴木 ループが終わらない感じがしますね。特に日本では根強い人気があるので、日本がトレンドの軸を作り始めている気がします。
- 金森 昔から考えると、自分が紺ブレを着る日がくると思わなかったですよ。アメカジに関しては本家アメリカが変わらないですからね。そういうなかで日本人デザイナーやショップの方々がアメリカの工場を探してきたり、上手くアレンジとして取り入れて発展させている気がします。
- 鈴木 逆に言うと、かつてのIVYそのままはNGなんです。それだとコスプレになってしまう。
- 金森 定番的な着こなしをしていても、デザインの効いたものがワンポイントで入っていたり、シルエットが今っぽかったり、足もとで遊んでみたりが必要ですよね。
- 鈴木 パンツのインチを上げてみるだけで個性になると思うんです。着こなし次第でパーソナルものになりますから。
- 金森 そもそもIVYは着こなしやすいアイテムが多いから、ワンポイントでいまどきのものを拾うだけでパーソナルな着こなしができる。小物使いだけでも変わると思うんですよね。
- 栗田 今年話題の大柄のチェックとか、ブリティッシュなアイテムとも相性がいいですしね。
- 金森 IVY話とアメトラ話が行ったり来たりしてしまいましたけど、結局、アメカジは下火になることはあっても無くならないですね。
- 鈴木 ループは終わりそうにない。僕はそこから新しいステージが生まれることを期待しています。それができるのは日本人だと思っていますから。
- 栗田 その感覚はすごくわかります。取り留めがないようで、実はいまの気分が明確にわかる座談会になったと思います。今日はありがとうございました。
スタジャン?70','350 GB Sport
ニット?17','850/SHIPS
シャツ?11','550/SHIPS AUTHENTIC PRODUCTS
パンツ?12','600/SHIPS AUTHENTIC PRODUCTS
シューズ?58','800/Paraboot
金森 陽
2001年、Begin編集部に配属。2012年6月まで在籍し、MEN'S EX編集部へ異動。2013年9月にBegin編集長に就任。
鈴木 肇
Beginを中心に多くのメンズファッション誌で活躍中の人気スタイリスト。