新進気鋭ブランドVOTE MAKE NEW CLOTHESのデザイナー二人を直撃!
この春デビューを果たした期待の新ブランド、VOTE MAKE NEW CLOTHES(ヴォート メイク ニュー クローズ)。SHIPS JET BLUEではいち早くこのブランドをキャッチ。二人のデザイナーにインタビューを刊行した! 次の時代を担う存在となり得る気鋭ブランドの魅力とは!?
――デビューしたばかりのブランドということで、まだ耳覚えのない人も多いと思います。まずはブランドスタートのいきさつから教えていただけますか。
木山 もともと僕と瀬川は知り合いで、原宿にあったプロペラというショップで働いていたんです。で、プロペラが無くなってからはそれぞれの道へ。僕はバックドロップ、瀬川はナンバーナインと一時違うルートを歩んだのですが、その後またベンデイビスのプロジェクトラインを手がける会社で合流。そこで新しい何かをはじめようと意気投合して、VOTE MAKE NEW CLOTHESをスタートすることになりました。
――もともと自分たちでブランドを立ち上げる構想があったのですか?
木山 もちろんそれもありますが、もっと自由な環境でポジティブに仕事をしたいという思いが強かったですね。当たり前のことだし悪いことではないのですが、大きな会社やブランドに携わっているとやはり規制が多いんです。でも個人的にはそこにジレンマを感じていたりして……。もっと自由にやりたいという欲求が増していった結果、だったら自分たちでブランドを立ち上げようと。
――もっと自由にクリエイションがしたかったということですか?
木山 クリエイションもそうですが、もっとベースの部分ですね。朝決められた時間に会社に行って、18時まできっちり働く。もちろんそれは当たり前のことなのですが、いつのまにかそうすること自体が目的になってしまっているような気がしたというか……。でもそれってともすると本末転倒ですよね。僕らは面白くていいものを作るのが最大の目的なわけで、そのために一番いい方法を選んだほうがいい。極端なハナシ、遊んだ方がいいものができるのならその方がいいワケです。でもそれってやっぱりサラリーマンだと難しいでしょう。ということはやっぱり独立しなければいけないなと。
――可能性が制限されていることに窮屈さがあったと。
木山 そういうことですね。
――ブランドを立ち上げるにあたってあらかじめコンセプトはあったのですか?
木山 前の会社でハッシュブラウンというブランドをやらせてもらっていたんです。アメカジベースだけどちょっと変わったミックス感覚のある実験的なブランドだったのですが、それが結構好評で。VOTE MAKE NEW CLOTHESはいわばその延長にあるブランド。もっとアイテムを削り、密度を高めていったという感じです。
――アメカジベースと言っても西海岸的なアメカジとは大分印象が違いますよね。
木山 特にNYがお互い好きなので、ベースはそっちにあります。
――西と東の違いって具体的にはどういうものなのでしょう?
木山 簡単に言ってしまえば、西の方がゆるいですよね。それに対して東は隙がない。
瀬川 今は結構東よりの古着屋も増えてきているんですよ。NYの古着ってヨーロッパからボストンに入ってくるんです。
だから必然的にヨーロッパの匂いがする。そのミックス感覚がNYですよね。
――ファーストコレクションをTシャツに限定したのはなにか理由があったのですか?
木山 単純に密度の高いものが作りたかったということです。あれこれ作りたいものをただ作るのではなくて、いいものを作れるという自信のあるものからしっかり作りこんで提案をしたかった。にわか仕込みの服はいらないんですよね。
瀬川 中途半端なものは作りたくない。そんな中で一番僕らの中でできていたのがカットソーだったんです。だから最初はそこに集中して、自分たちが100%納得できるものを作りあげた。もちろん今後、妥協のないモノ作りの背景が整っていけばコレクションは増やそうと思っています。
――デザインをする上で特にこだわったところはどこですか?
木山 Tシャツってみんなが持っているものですよね。だからどこかで違いを出さないと意味がない。そこで一番こだわったのは素材です。例えば一見普通に見えるTシャツも88%コットン12%レーヨンというヴィンテージ風の生地を使っているところが特徴。洗えば洗うほど古着のような風合いと着心地が生まれるのがポイントです。また昔のアンダーウエアなどに使われていた接結素材なんかも使っています。ただそれってすごく分かりにくい部分ではあるので、ネックの生地を別生地にしたり、ビッグシルエットにしたりして視覚的な変化も演出しています。中でもビッグシルエットのTシャツはかなり好評。ブランドの象徴的なアイテムになっていますね。
――タイポグラフィーもアイコニックですよね。
木山 ただそのままプリントしても面白くないのでそれぞれフォントを変えています。USネイビーのものカレッジフォントとか、フォントにもいろいろソースがあって、それらの組み合わせでシンプルな中にもちょとした個性をプラスしているんです。
――デザインはお二人でやられているということですが、役割の分担はあるのでしょうか?
木山 特にありません。基本的に二人でデザインを出しあって、それを話し合いの中でブラッシュアップしながらアイテムを作っています。
瀬川 「北斗の拳」に近いんじゃないかな。武論尊と原哲夫みたいな(笑)。デザインって言っても難しい顔付き合わせてやっているわけじゃなく、ほんと無駄話から生まれることが多いんですよ。ドリフの“もしものコーナー”的な。
木山 「これってもしここがこうだったら面白くない!?」ってね。
瀬川 そうそう。でもそこから始まってイメージが膨らんで、形になっていくんです。最終的に「結構良いじゃん!」みたいな。
――それこそ会社のデスクに座ってては生まれにくいものですよね。
瀬川 二人とも本当に好きなんですよね、服とファッションが。それがまず大前提にあって、なおかつ同じ時代を生きてきた。だから話もすごく早いんですよ。
木山 「これ??ぽくない?」みたいな。
瀬川 笑。そうそう。ツボが一緒。そういうライブ感と言うかグルーブ感がすごく大切だと思うんです。難しい顔して難しい生地触って難しいパターン引いていても、楽しいアイデアってなかなか出てこないんですよね。
――ファーストコレクションはTシャツに絞っての展開ですが、今後さらにアイテムのバリエーションを増やしていく予定はあるのでしょうか?
木山 Tシャツは定番として据えつつ、秋冬はジーンズやチノパンも登場する予定です。
瀬川 好きでやっている分、自分をごまかすことはできないからジーンズ作りなんかもすごく大変。でももう構想は出来上がっていて、後は形にするだけの段階です。僕ららしい面白いものができると思うので、楽しみにしていてください。
――楽しみにしています。今日はありがとうございました!
フットボールTシャツ
昔のアンダーウエアなどに使われていた、2枚の生地を繋ぎ合わせた接結素材を使用。ふっくらとした質感が特徴で着心地が快適だ。右のTシャツは“U”の文字がフロッキープリントになっている。
Tシャツ ?8','190/VOTE MAKE NEW CLOTHES
シンプルTシャツ
コットン88%レーヨン12%のヴィンテージ風素材を使用。洗うほどに風合いが豊かになり、着心地のしなやかさも増す。後ろのネック部分が別生地に切り替えられていて後ろ姿も隙なし。
Tシャツ ?6','090/VOTE MAKE NEW CLOTHES
ビッグT
VOTE MAKE NEW CLOTHESのアイコニックなアイテムであるビッグTシャツ。ひとつひとつフォントを変えたタイポグラフィーがユニーク。左は赤い部分、右は“S”の文字がフロッキープリント。
Tシャツ ?7','140/VOTE MAKE NEW CLOTHES
VOTE MAKE NEW CLOTHES(ヴォート メイク ニュー クローズ)
木山明久氏と瀬川修氏からなるデザインユニット「MEAN MACHINE DESIGN」が手がける新進気鋭のドメスティックブランド。NYを中心とする東海岸のアメカジをインスピレーションソースにした新しいストリートスタイルを提案する。