Batten Sportswearブルックリン発の都会派スポーツウエア
2011年、ニューヨークのブルックリンを拠点にスタートしたBatten Sportswear(バテン・スポーツウエア)。デザイナーは日本人の長谷川 晋也氏。自らも追及しているサーフィンや、アウトドアカルチャーからインスピレーションを受けた都会的なウエアは地元でも大きな話題になっている。アメリカ生産にこだわり、自らヴィンテージウエアの猟犬だと語る長谷川氏。今回はそんな注目のデザイナーにメールインタビューをお願いした。
――ブランド名の由来を教えてください。
長谷川 Battenは僕のアメリカ人の妻の旧姓です。4年前に結婚して、彼女が僕の姓(長谷川)を受け継いだのでそのお返しにつけました。
――ブランドのコンセプトを教えてください。
長谷川 「都会の街にも対応できるアウトドアギアと日常着」です。
――ブランド立ち上げまでの経緯を教えてください。
長谷川 FIT(ファッション工科大学)を卒業後、ニューヨークのヴィンテージ洋服屋であるWhat Comes Around Goes Aroundでセールスとして勤務し、その後Engineered Garmentsの鈴木大器氏がデザインを担当していたWoolrich Woolen Millsのプロジェクトに参加しました。アシスタントデザイナーとして勤務していましたが、鈴木大器氏の契約が終了したのに伴い、同社を退社して2011年に自分の会社を設立してブランドを立ち上げました。
――サーフィンが趣味とお聞きしていますが、アメリカ西海岸ではなく東海岸でブランドを立ち上げた理由と、それぞれのカルチャーの違いを教えてください。
長谷川 サーフィンと聞くと、やはり西海岸のカリフォルニアをイメージされる方が多いと思います。音楽、ファッション、ライフスタイルといったサーフカルチャーもまた、西海岸を中心に確立されてきた歴史があります。東海岸(ニューヨーク)にもサーフィンをする人は存在するのですが、では何が東海岸のサーフスタイルなのかということに私もずっと疑問を持っていました。正直なところ今でも答えがわかりません。でも、それを模索しながら表現できたら面白いのではないかとずっと思っていました。
ニューヨークでサーフィンはマイナーなスポーツでしたが、最近はSaturdays Surfなどの人気に伴いニューヨークのサーフィン人口も急増しました。これは今までにない、サーフィンブームだと思います。ニューヨークタイムズなどの新聞でも、このような状況がよく取り上げられます。おそらくこのような状況を経ながら、東海岸のサーフカルチャーも徐々に確立されて行くのだろうと思っています。
西と東の一般的なカルチャーの違いですが、妻の実家がロスなので頻繁にカリフォルニアに行く機会があります。ニューヨークとの違いで印象的なのは、時間の経過具合いですね。 ロスはのんびりしています。土地も広いし、天気にも恵まれています。一方、ニューヨークはアパートも狭いですし、冬は寒いし…。 でも、海は西も東もどこにでもあり、どちらにも波があります。絵を描くときのキャンバスは一緒でも、描く人のバックグランドが違えば出来上がるものも変わって行く。サーフィンも同じことがいえるような気がします。
西海岸(ロスアンジェルス)ののんびりした雰囲気はとても魅力的です。では、ニューヨークを出てロスに住みたいかといえば、そうでもないですね。やはり、僕にはニューヨークの生活が肌に合っているような気がします。街で歩く人たちのエネルギッシュなヴァイブがしっくり来るのだと思います。
――サーフィン以外で、現在楽しんでいることを教えてください。
長谷川 近々、赤ちゃんが生まれるのでその準備を楽しんでいます。子供部屋を作っていろいろデコレーションしたり、妻と育児教育のクラスを受けたり…。初めての子供なので非常に楽しみです。
――ヴィンテージウエア好きと伺っていますが、長谷川氏のバックボーンとなっているものを教えてください。
長谷川 高校生のときにアメカジや渋カジのブームがあり、またフランシスコッポラの映画「アウトサイダー」に憧れて、その頃からアメリカの洋服や古着を着るようになりました。上野の洋服屋や高円寺の古着屋にもよく行き、その頃に着たり見たりしたものが今でも心の中に強く残っています。長い月日が経った今でも、それらの経験がバックボーンになっているとことは確かだと思います。
ヴィンテージウエアが好きな理由の一つとして、人生と似た要素があるところがありますね。古着屋に行って探していたものが見つかるというのは、確率的に考えても相当低いんです。でも、普段行かない土地で、たまたま入った古着屋で偶然見つかったりなんてこともあります。運命によって左右されるときもある、人生に似ています。
――アウトドアウエアの要素を取り入れたアイテムが多いですが、アウトドアでの着用はどの程度のアクティビティに耐えられることを想定していますか? それとも完全な街向けとして考えていますか?
長谷川 コレクションの中で、アウトドア用と街着用を分けて作っています。例えば、60/40を使っているTravel Shell Parkaは実際にハイキングで使用することを想定して作っています。ボードショーツも実際のサーフィンのために開発しました。僕自身、サーフィンの際に着用し、シーズン毎にマイナーチェンジを繰り返しています。リュックサックも同様です。今後新たな素材にも挑戦して、アウトドアに対応できるアイテムをもっと増やして行ければと思っております。
街着用のコレクションは、自分が個人的に好きな’60年後半から’80年初めころのスタイルから影響を受けたものが多いです。時代背景がそうなのか、その頃の洋服を見たり、着たりしているとポジティブで元気な気分になります。必然的にモノづくりをする立場になっても、そのヴァイブが形にあらわれているような気がします。
――アメリカメイドの良さはどこにあると思いますか?
長谷川 「カッコ良くないから、カッコいい」。荒削りというか、ある意味ネガティブな要素として受け取られるものも、使って行くうちに、使い手にあった表情に変わって行く。デリケートとは相反するモノに美を見いだせるというのでしょうか。Made in USA を代表する(今は違いますが)levi’s の501は洗う前にはゴワゴワしていて到底カッコいいとは言いがたいものです。しかし、洗って着用していくうちに自分の体に合った美しいものに変貌します。それがMade in USAの良さなのでしょう。そんな部分に魅了されていると思います。
――Batten Sportswearは、アメリカではどのように受け入れられていますか?
長谷川 アメリカ国内でMade in USAの商品がもてはやされるようになりましたが、それらの商品のほとんどがワークウェアをルーツにしているものでした。Batten Sportswearの商品はMade in USAでありながらそれとは違ったスタイルなので、逆に珍しく受け取られているようです。
――最後に、都市(街)とサーフという組み合わせという意味において、Saturdays Surfは意識しますか? また、そのようなスタイルは東海岸ではどんな位置づけにあるのでしょうか?
長谷川 特に意識はしていないですね。でも、SOHOというマンハッタンを代表するエリアと海をリンクさせるのは素直にかっこいいと思います。今のニューヨークサーフィンブームの火付け役であることは間違いないでしょう。これらのムーブメントが10年、20年後にニューヨークでサーフスタイルが確立する上での要素になって行くのは間違いないと思います。
ニューヨークでサーフィンがライフスタイルの一部になるのは十分可能性だと思います。車中心社会のカリフォルニアなど西海岸では、出勤前にサーフィンをするというのはよくあることです。ニューヨークでも地下鉄に乗れば海に行けますから可能です。実際のところ、僕も車を所有する前は早朝に地下鉄で海に行って、サーフィンが終わってそのまま地下鉄で出勤していました。こんなライフスタイルもニューヨークでどんどん増えて行くのではないでしょうか。
――お忙しいなか、ご回答ありがとうございました。
大きなリブが配されている点など、‘70年代後半〜’80年代のデザインを彷彿とさせるクラシックな風合いのフリースジャケット。胸ポケットには65/35クロスを使用している。
フリースジャケット ?17','850/Batten Sportswear
ウール生地を使ったマウンテンパーカ。こちらも’70年代後半のアウトドアウエアを連想させるデザイン。背面上部には大きめのファスナーポケットが装備されている。
マウンテンパーカ ?54','600/Batten Sportswear
吸湿速乾性に優れ、耐久性も高いことで、当時の最先端素材だった60/40クロスを使用したマウンテンパーカ。内側に大きめポケット×3、背面上部にはファスナーポケットを装備している
マウンテンパーカ ?44','100/Batten Sportswear
デニムジャケットのようなデザインが特長のボアジャケット。若干、着丈が長めになっているのがポイント。表面にはネップ感のある生地が使われている。左袖にポケットあり。
ボアジャケット ?42','000/Batten Sportswear
デニム地を使用した中綿入りのベスト。裾部分には冷気を遮断するためのギャザーを装備。シンプルなデザインなので、アウターとしてはもちろんレイヤードスタイルにも活躍してくれる。
ベスト ?32','550/Batten Sportswear
クラシックなデザインがキュートなバックパック。ファスナーポケットと重なるように付けられた両サイドのスリットは、スキー板を通せる設計になっている。街でも山でも使える本格派だ。
バックパック ?26','250/Batten Sportswear