35thスペシャルインタビュー −ELLE maman 佐野未代子編集長−
ママの在り方と「STYLISH STANDARD」
8月末にオープンしたばかりの話題のママ向けウェブサイトELLE maman。
自身も中学生の息子さんをもつ編集長・佐野さんが語る「STYLISH STANDARD」な世界観とは?
オープンしたばかりのウェブサイトについても色々とお伺いしました。
―まず、「STYLISH STANDARD」というテーマについて、どのようにとらえましたか?
佐野 「STYLISH STANDARD」なもの、ことは人それぞれ。スタイリッシュもスタンダードも人の数だけあると思います。ELLE mamanを立ち上げた理由にも実はそんな思いがあってのことなんです。ママの形も人それぞれで、結婚の形も母親の形も育児の形も人の数だけあっていい。私自身もシングルマザーですし、こうあるべきと何かにくくるのではなく、すべてが入るものを作りたくてこのウェブサイトを立ち上げました。
―佐野さんにとっての「STYLISH STANDARD」なものとは?
佐野 「実用性があって、シンプルで普遍的な美しさがあるもの」が私にとってのスタイリッシュであり、スタンダードです。子どもを産んでから、ものは少なく持って、大切に長く使いたいと思うようになりました。だから、丈夫で、アイデア次第で広い用途に使えて、時代に左右されない色や形のものが好きなんです。
例えば圧力鍋ならFisslerだよね、みたいな王道アイテムが好きです。ファッションで言えば、私のスタンダードアイテムはブラックのワンピース。人に会ったり、ひたすら内勤したり、仕事の内容は毎日変わります。その中で自分をニュートラルなスタンスに見せられるブラックワンピは私の制服です。会議の時には落ち着いた印象を演出してくれますし、ちょっとリップを変えればパーティにもマッチしてくれますからね。
左/「母が友人にプレゼントし、その方から譲り受けた育児書。母自身も愛読していた、我が家の子育てバイブルともいえる一冊です。頑張りすぎて育児疲れをしていた時期、この本を読んで楽になりました」
右/「“すてきなあなたに”は、編集者になりたいという志向を私の中に築いた、原点ともいうべき一冊。本当に好きなもの、必要なものだけを選ぶ審美眼こそが編集者の磨くべきスキルなのだと立ち返らせてくれる本です」
「ドイツ・Silit社のミルクパン。エコロジカルな企業理念も好きで長年愛用しています。ごはんも炊けて、揚げ物、煮物もできてとにかく万能。そのまま冷蔵庫保存もOK。保温力が高いので余熱調理もできます。ガス代も調理時間も節約できますし、これと圧力鍋と中華鍋の3つがあれば、我が家の食事はすべてまかなえます」
―ELLE mamanを立ち上げたいきさつについてお聞かせください。
佐野 子育てしている女性たちは忙しくて、自分の時間を作ることがとても難しいと感じていました。そんななかで、シンプルに情報やメッセージを伝える情報サイト、しかも「そのメディアにアクセスすることで、子どもと自分の生活がもっと素敵なものになる」とわくわくしてもらえるようなものが作りたいということが、ELLE mamanの原点です。そして母としての生き方はひとつじゃないということを伝えたいという強い気持ちもありました。出産は女性の人生における一大イベント。生活も大きく変化しますし、子どもを持つことに不安を感じている方もたくさんいらっしゃると思います。でも、その変化は決して悪いものではなく、いいものだから大丈夫!といいたくて。今子育てをしている方、これから産みたいと思っている方、独身の若い女性、様々な女性たちに“子どもを産み、育てる”というひとつの生き方をポジティブな情報として発信していきたいと思っています。
―具体的にどんなコンテンツがあるんですか?
佐野 ベトナム、オーストラリア、フランス等、世界中の様々な街で子育てする日本人ママたちのブログを紹介しています。同じ日本人でも、住む国によって育児の仕方も変わるもの。個人的にもとても興味深く、一読者としてすべてのブログを毎日熟読しています。さらに、9月下旬からはキッズ&ベビーのEコマース連動も展開していきます。ママってなかなかゆっくり買い物する時間がないんです。ですから、気になる情報を見ていて、欲しいものがあったらそのままお買い物もできちゃう、というシステムを作りました。そこでSHIPS KIDSさんの商品もご購入いただけますよ。ほかにも、ファッションスナップ、レシピ、ビューティなど、内容盛りだくさんです。
―佐野さんご自身、仕事と子育ての両立は大変なのでは?
佐野 産休明けはもうめちゃくちゃでした。離婚したのもちょうどその頃で、息子が5歳くらいになるまではそれはもう大変で。仕事と育児の両立とか、生活への不安とか、息子の成長についての不安とか。きりがないほど悩んでいました。そんなとき支えにしていたのは、独身時代に先輩に言われた「終わらない仕事はないよ」という言葉。育児もきっと同じ、と思うようにしてきました。そして、小学校3','4年生の頃に息子と相性のいい先生に出会え、それからはだいぶ楽になりましたね。子育ても出会いです。登場人物が増えることによってお互い楽になりますし、子どもはその中で振る舞いを覚えていきます。 保育園に入れるのもママと離れてかわいそう、ではなく、小さい時から人と出会える機会がたくさんあってうちの子はラッキーだった!って思うんです。
―子育てで一番大切にしていることは?
佐野 食事です。味覚は深く記憶に残るもの。私自身も母の作ってくれたチョコレートケーキの味が未だに忘れられません。あれを超えられるものはありません。だからできるだけ、息子においしいと言ってもらえるごはんを作ろうと努力しています。食事から生まれるコミュニケーションがあると思うので、食事の時間はとても大切にしています。
―最後に、今回の取材テーマはいかがでしたか?
佐野 私、実は取材されるのは苦手なんです。(笑)でも、「STYLISH STANDARD」というテーマは「ELLE maman」ともフィットしていて、私にでもお話しできることがあるんじゃないかと思ってお引き受けしました。何がいいかというのは本当に人それぞれです。大切なのはその人のベース。自分の意志や生き方をしっかりと持っていれば形は自由です。そして、それぞれのスタンダードで物事をジャッジしていけばいいんだと思います。
ELLE maman
ハースト婦人画報社が自分らしい子育てと生活を実践する女性たちに向けて提案する新しいウェブマガジン。雑誌やイベントなど、さまざまな形で情報を発信するメディアです。「エル・ジャポン」11月号(9月28日発売)には、別冊付録として登場。要注目です。
佐野 未代子
1993年、ハースト婦人画報社(旧婦人画報社)に入社。「mc Sister」、「美しいキモノ」、「ヴァンテーヌ」にて編集業務に携わり、2007年よりELLE ONLINEに配属。2011〜2012年1月までチーフエディターを務めたのち、現職「ELLE maman」の編集長に就任。13歳の息子を持つシングルマザー。