脳内洋服アスリートmuller of yoshiokuboデザイナー久保嘉男
世界的にも注目されているブランドyoshio kubo(ヨシオクボ)、そのレディースラインmuller of yoshiokubo(ミュラー オブ ヨシオクボ)、そしてundecorated MAN(アンデコレイテッドマン)のデザイナーでもある久保嘉男さんにインタビュー。今回は、muller of yoshiokuboについて詳しく伺ってきました。
??muller of yoshiokuboでは、本格的なドレスとカジュアルな洋服が混在していますが、それは何か意図があるんですか?
カジュアルダウンしているといえばしているんですが、あえてカジュアルなものを作っているというイメージはないんです。全身キメキメよりは、そこにわざと、ジージャンやライダースを着てハズシを作るのが、おしゃれだと思うので、自分が元々作っていたドレッシーなものだけでは足りないかなって思ったんですよ。
??組み合わせて着るために作り始めたということですか?
そうですね。最初レディースは、24型くらいの少ないドレスから始めたんですけど、やるからには東京で一番かっこいいブランドにしたいと思っているので、自分のブランドだけで全身のトータルコーディネートができたらいいなって。
ハイゲージニット?36','750、ニット?17','850、ノーカラーコート?51','450、ダッフルコート?72','450/以上すべてmuller of yoshiokubo
??男性がドレスのデザインをするのは珍しいですよね。
最初はドレスを作るなんて思ってもいなかったんですが、ニューヨークのSOHOで見た一枚のドレスに感動して、こんなにも素晴らしいデザイナーがいるんだって思ったんです。それで、ロバート・デインズのアシスタントに付いて、その時に日本人には馴染みのない安くても30万円以上はするようなオートクチュールのドレスを作っていたんですが、フィッティングを重ねるうちに、女性がどんな気持ちでこんな高いドレスを着て、どういう気分になるかっていうことを知って、そんな素敵な瞬間を与えられる服が作れたらいいなって思ったんですよね。スカートは、男性も穿くことがありますが、ワンピースやドレスって女性しか着られないものなので、“ミュラー”って“女”っていう意味なんですけど、ゴリゴリの男っぽい服を作っている「yoshio kubo」の中でも、女性しか着られないものを作りたいって思いました。
ストラップドレス?38','850、キュロットドレス?57','750、レイヤードドレス?30','450、バルーンスカートドレス?47','250/以上すべてmuller of yoshiokubo
??日本ではあまりドレスを着る習慣がないですよね。
僕は、20年前くらいからアメリカで『SEX and the CITY』みたいなドラマを見ていて、普段からドレスを着ておしゃれして、無理をしてでもヒールの高い靴を履くみたいな文化っていいなって思っていたんです。日本もそういうふうになればいいなと思って。
??muller of yoshiokuboの他に、2つのメンズブランドもやられていますが、デザインをするときの切り替えは大変じゃないですか?
レディースの服を作るときは、本当に女性の気持ちになって作らないとだめだと思っているので、「かわいい」とか、口で言うだけじゃなく、本当に心から思って作っています。
??(笑)。3つもブランドをやっていると相当な量のデザインをしていると思うんですが、減らしたいと思うことはないですか?
メンズもレディースもやっているからこそ、素材的にもおもしろい洋服が作れるっていう部分もありますし、1回始めたことは、続けないとダサくないですか? 売れないからすぐ辞めるじゃなくて、どうやったら売れるかを徹底的に考えます。
??着てもらいたい女性のイメージはありますか?
特にイメージはないんですが、ミュラーの服は日本人に合うシルエットにしてあるので、細くないと着られなかったりもするかもしれません。ある程度限られた中でおしゃれするっていうのが、ファッションだと思うし、無理してでも着たいって思うのが、女性のかわいいところだと思うんですよね。だからこそ、この服を痩せても着たいって言わせるくらい素敵な服を作らなきゃいけないって思っています。でもそうでもして、着ていただけたときのシルエットは、僕の相当こだわっている部分なので、喜んでもらえる自信があります。
??シルエットとか、そういった細かい部分にまでこだわる所は、男性のデザイナーさんならではですね。
そうですね。細かく何ミリ単位で考えています。あとは女性のうれしいポイントを押さえたモノ作りっていうのもこだわっている部分で、例えばファーをふんだんに使って小顔に見せたりなど、そういうところも細かく考えています。
??どういうときにデザインを思いつくんですか?
いつでも、どこでもですね。人が身につけているものに対して、かわいいけど、僕だったらこうするなぁとか。おじさんの曲がったネクタイを見て、曲がっているのもありだなって思ったり、もう毎日いつでもどこでも服のことしか考えてないです。長くこの脳みそで生きているので、それが普通なんですけど。
??息抜きは何をしていますか?
写真を撮るのが好きです。家族の写真とか色々なものを撮るんですが、その瞬間がすごく楽しいです。
??では最後に、今後の展望を教えて下さい。
とにかく長く続けていくことが大事だと思っています。アイディアが尽きることはないんですけど、毎回120%の力でやらないとお客さんも付いてきてくれないだろうし。しんどいけど、そのぐらいが調度いいと思うんですけどね。
やっぱり、こだわって作った服こそ売れるので今後もそういうものを作っていきたいです。
2012S/Sのため価格未定
久保嘉男
「Philadelphia University’s school of Textile & Science」卒業。2000年からニューヨークのオートクチュールデザイナーロバート・デインズ氏のもと、4年間クチュールコレクションのすべての作製に携わる。その後帰国し、2004年9月に「yoshio kubo 」を、2007年にレディースライン「muller of yoshiokubo」、2008-09秋冬よりメンズの別レーベル「undecorated MAN」を発表。